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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C1
管理番号 1327948 
審判番号 不服2016-16448
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-02 
確定日 2017-04-11 
意匠に係る物品 垂直ブラインド織物 
事件の表示 意願2015- 8756「垂直ブラインド織物」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,大韓民国への2015年2月24日の出願に基づくパリ条約による優先権等の主張を伴う,平成27年(2015年)4月17日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「垂直ブラインド織物」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引例意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。

この意匠登録出願の意匠は,3層のメッシュ地を2列のブラインドスラット片が連結するブラインド生地に係るものであるが,この種物品分野において,メッシュ生地の間のブラインドスラット片を,明色,中間色,暗色を順に並べた構成態様に形成することは,本願出願前において公然行われているところである(引例意匠1)。
そうすると,本願意匠は,本願出願前に公然知られた3層のブラインド生地の意匠(引例意匠2)において,その前面の1層を,本願出願前において公然行われているブラインド生地の態様に表し,スラット片の,明色,中間色と暗色の順を単に変更して,公然知られた態様のブラインド生地に形成したまでのものであるから,当業者であれば容易に創作できたものと認められる。


引例意匠1(別紙第2参照)
特許庁普及支援課が2015年2月13日に受け入れた
大韓民国意匠商標公報 2015年2月13日15-06号
ブラインド用生地(登録番号30-0784227)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH27405810号)

引例意匠2(別紙第3参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2012-197552
「3層構造を有する3次元立体形状織物」の【図9】及び【図12】に表されたブラインド生地の意匠

3.請求人の主張の要旨
(1)本願意匠の認定
本願意匠は,天然繊維又は合成繊維から形成される前方の織物,中間の織物及び後方の織物を有している。これらの前方の織物,中間の織物及び後方の織物は,太陽光を透過する性質(太陽光透過性)を有している。横長のストリップ形状とされた複数の連結織物が前方の織物と中間の織物との間,及び,中間の織物と後方の織物との間に,横方向に延びるように配置されている。右側面図及び左側面図に示すように,連結織物は,S字カーブを呈して前方の織物と中間の織物とを連結し,中間の織物と後方の織物とを連結している。部分拡大図に示すように,連結織物と前方,中間,後方の各織物との連結部分は,カーブを描きつつ柔らかく(折り目なく,鋭角に)接続している。
(2)本願意匠と引例意匠1との対比
本願意匠は,前方の織物と中間の織物との間,及び,中間の織物と後方の織物との間の両方にブラインド(連結織物)が構成される,いわゆるデュアルブラインドであるのに対し,引例意匠1(特許庁普及支援課が2015年2月13日に受け入れた大韓民国意匠商標公報2015年2月13日15-06号 ブラインド用生地(登録番号30-0784227)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH27405810号))は,前方シートと後方シートとの間に構成される単一のブラインドである。この点で,本願意匠と引例意匠1との間には,美観上の大きな相違がある。また,本願意匠の前方の織物は,ストリップ形状の連結織物に接続されており,引例意匠1の前方シートとは形式の点でも形状の点でも大きく異なる。
(3)本願意匠と引例意匠2との対比
引例意匠2(特開2012-197552「3層構造を有する三次元立体形状織物」の[図9]及び[図12]に表されたブラインド生地の意匠)は,本願の出願人による発明に基づくものであり,単にブラインドの製造方法とその構造を開示するものであって,ブラインドの形状やデザインを開示するものではない。そもそも,この特開2012-197552号公報の図9や図12に表されたものは,技術的思想としての発明の理解を補助するために示された図面であり,審美性に係る意匠の創作性が理解可能な程度に示されたものとは言えない。更に,引例意匠2の表面層と裏面層については,本願意匠のように太陽光の透過性があるかどうかは明らかとなっていない。
引例意匠2において,各連結層(200,400)には,形状が定形である接結部(110,310,510)が形成されている。連結層と表面層500,中間層300及び裏面層100とが接続される場合において,この接結部は一定の幅を有している。しかし,本願意匠においては,連結織物は,単に太陽光を遮る機能を発揮すればよく,連結織物と前方の織物,中間の織物及び後方の織物との接続部分は一定の幅ではない。本願意匠は,種々の効果を発揮するように用いられ,しかも,審美的な感性を向上させるが,引例意匠2にはこのような審美的な機能も効果もない。

4.当審の判断
本願意匠が,当業者であれば,容易にその意匠の創作をすることができたものか否かについて,以下検討する。
(1)本願意匠
本願意匠は,意匠に係る物品を「垂直ブラインド織物」とし,全体を,略縦長長方形状のメッシュ状の薄い生地(以下,「垂直織物地」という。)を前後方向に間隔を空けて3層とし,3層の垂直織物地の各層の間に側面視略倒S字状に設けられた連結片(以下,「連結片」という。)によってつないだものである。
垂直織物地は,正面視の縦横比を約2:1とし,メッシュ状の透ける生地であり,正面視及び背面視すると,垂直織物地を通して横長細帯状の連結片が縦方向に等間隔に9列視認できるもので,正面側の連結片は明色,中間色,暗色の3色であって,背面側の連結片は明色のみであり,側面視すると連結片の略倒S字状が前列と後列で同じ高さに配されている。
また,連結片を平坦にして3層の垂直織物地を重ねて畳んだ状態において,正面視において連結片の上下が僅かずつ重なり明色,中間色,暗色の太幅の帯状が連なる織物に見えるもので,正面側のそれぞれの連結片は木目状の模様であり,背面側のそれぞれの連結片は無模様である。
そして,正面側の垂直織物地を中間の垂直織物地とずらして重ねることによって,連結片が正面視で平坦となって遮光でき,同様に背面側の垂直織物地を中間の垂直織物地とずらして重ねることでも遮光でき,さらには,正面側及び背面側の垂直織物地と中間の垂直織物地の3枚を重ねて遮光することもできるものである。
(2)原査定の拒絶の理由の引例意匠
(ア)引例意匠1
引例意匠1は,意匠に係る物品を「ブラインド用生地」とし,全体を,略縦長長方形状のメッシュ状の薄い生地である垂直織物地を前後方向に間隔を空けて2層とし,垂直織物地の各層の間を側面視略「?」状の連結片によってつないだものである。
垂直織物地は,正面視の縦横比を約1.3:1とし,メッシュ状の透ける生地であり,正面視及び背面視すると,垂直織物地を通して横長細帯状の連結片が縦方向に等間隔に9列視認できるもので,正面視及び背面視において連結片が明色,中間色,暗色の3色からなり,連結片を平坦にして2層の垂直織物地を重ねて畳んだ状態において,正面視において連結片の上下が僅かずつ重なり明色,中間色,暗色の太幅の帯状が連なる織物に見えるものである。
(イ)引例意匠2
引例意匠2は,発明の名称を「3層構造を有する3次元立体形状織物」とし,【図9】及び【図12】に第1実施例に係る図に3次元立体形状織物であるブラインドが表されている。引例意匠2は,全体を,略縦長長方形状のメッシュ状の生地である垂直織物地を前後方向に間隔を空けて3層とし,垂直織物地の各層の間を側面視略倒S字状の連結片によってつないだものである。
垂直織物地は,メッシュ状の生地で,正面視及び背面視すると,細帯状の表面接結部が縦方向に等間隔に【図9】では4列【図12】では3列視認できるものであって,側面視すると連結片の略倒S字状が前列と後列で僅かにずれて中間接結部を介して接合されたものである。
(3)創作容易性の判断
まず,この種のブラインドの物品分野においては,全体を,略縦長長方形状のメッシュ状の薄い生地を前後方向に間隔を空けて2層とした垂直織物地と,2層の垂直織物地の間に連結片を設けることは,引例意匠1に見られるように,本願出願前より既に見られるありふれた態様といえるものである。また,正面視及び背面視において連結片が明色,中間色,暗色の3色からなる態様も引例意匠1に見られるように,本願出願前より既に見られる態様といえるものである。
そして,全体を,略縦長長方形状のメッシュ状の生地を前後方向に間隔を空けて3層とした垂直織物地と,3層の垂直織物地の各層の間に側面視略倒S字状の連結片によってつないだものも,引例意匠2に見られるように,本願出願前より既に見られるありふれた態様といえるものである。
しかしながら,引例意匠1に表されたものは,2層に重なる垂直織物地であり,連結片は側面視略「?」状に設けられたものであり,引例意匠2に表された略倒S字状の連結片は表面接結部や中間接結部によって垂直織物地に連結され,表面接結部や中間接結部がはっきり視認できるものであり,本願意匠の接続態様とは異なるものである。
そして,正面視及び背面視において連結片が明色,中間色,暗色の3色からなる態様が引例意匠1に見られるように,本願出願前より既に見られる態様といえるものであったとしても,本願意匠の態様は,正面視において連結片が明色,中間色,暗色の3色で,背面視においては明色のみとなるもので,側面視すると連結片の略倒S字状が前列と後列で同じ高さに配されたものであり,正面側の連結片は木目状の模様を有するものであるから,その具体的な態様が引例意匠1及び引例意匠2のいずれの態様とも異なるものであり,引例意匠1の垂直織物地を3層として引例意匠2の連結片の形状にしたとしても,それらの意匠から,本願意匠の態様を直ちに導き出すことができるとはいえない。
この種のブラインドの明暗や模様については,様々な種類のものが存在し,模様を表すことも通常行われているところであるが,背面側の連結片を明色の無模様とし,正面側の連結片を明色,中間色,暗色の3色で表し,正面側の連結片が木目状の模様を有するものであり,本願意匠の態様は特徴的なものであって,独自の創作がなされているものといえ,当業者にとって,本願意匠の連結片の態様を容易に創出し得るものということはできない。
そうすると,本願意匠の形態は,特に連結片の色分けや木目状の模様は,本願意匠の独特の態様といえるもので,当業者であれば容易に創作することができたものとはいうことができないものである。
よって,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,引例意匠1及び引例意匠2に見られる,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠ということはできない。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり,原査定の拒絶の理由によっては,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-03-29 
出願番号 意願2015-8756(D2015-8756) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内藤 弘樹 
特許庁審判長 山田 繁和
特許庁審判官 正田 毅
斉藤 孝恵
登録日 2017-05-19 
登録番号 意匠登録第1578916号(D1578916) 
代理人 梶 俊和 
代理人 丹羽 宏之 
代理人 中村 英子 

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