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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M2 |
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管理番号 | 1327949 |
審判番号 | 不服2016-12573 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-08-19 |
確定日 | 2017-04-19 |
意匠に係る物品 | 排水マス |
事件の表示 | 意願2015- 13783「排水マス」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成27年(2015年)6月23日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「排水マス」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,本願意匠が類似するとして拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠,すなわち,電気通信回線の種類:インターネット,掲載日(公知日):2014年11月24日(下記掲載ページから,引用意匠に係る製品である「宅内マスシリーズ 縦回転90°合流マス」が本願出願前である2014年11月24日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものと推認される。),掲載者:東栄管機株式会社,表題:新製品情報 宅内マスシリーズ 縦回転90°合流マス,掲載ページのアドレス:http://toeikanki.jp/contents/news/856.products.html,のリンク先のチラシ.pdfに掲載された,新製品情報に表された「宅内マス」(添付イメージ中,かぎ括弧内)の意匠であって,その形態は,同サイト掲載ページの写真に現されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「排水マス」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「宅内マス」であるが,いずれも主管及び枝管を有する排水用のマスであるから,本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。 (2)形態 両意匠の形態を対比(なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 まず,共通点として, (A)全体は,略垂直円筒形状のマス本体の略下半分に,直線状に形成された主管と,この主管から正面側に向かって湾曲して形成された枝管を配設し,マス本体の上方部分に略円筒形状の点検口を形成した構成からなるものであって, (B)主管は,その右端部に主管より拡径した略円筒形状の流入口,その左端部に主管より拡径した略円筒形状の流出口を配している点, (C)枝管は,正面側の開口部に拡径した略円筒形状の枠体を設け,その部分にエルボを嵌着し,主管の流入口から流出口の間において,平面視横ノの字状に湾曲しつつ主管と合流している点, (D)点検口の横幅(直径)は,右側面視における主管右端部から枝管の開口部枠体までの横幅とほぼ同じ長さとしている点, (E)点検口内周面とマス本体内周面との境目に段差部(以下「内周段差部」という。)を一段形成し,この内周段差部に対応するマス本体外周面の部分から枝管湾曲部上方部分までの範囲に,縦方向の筋状模様を複数形成している点, が認められる。 他方,相違点として, (ア)エルボの態様について,本願意匠は,略半球状のドーム部及びドーム部から水平方向右側にドーム部の高さと同じ直径の略円筒管を一体的に形成した構成であって,その略円筒管先端部に拡径した流入口を設けているのに対して,引用意匠は,略頭切円錐状のテーパー部及びテーパー部の正面側先端部から水平方向右側に湾曲した略L字状の円筒管を一体的に形成した構成であって,その略L字状円筒管先端部に拡径した流入口を設けている点, (イ)マス本体背面側の態様について,本願意匠は,内周段差部に対応するマス本体外周面の部分から主管上方部分までの範囲に,略垂直面を形成したものであって,この略垂直面部分に縦方向の筋状模様を4条形成しているのに対して,引用意匠は,その形態が不明な点, (ウ)主管及び枝管の底面側に設けられた脚部の態様について,本願意匠は,底面視略コの字状に折り曲げた板体を,主管底面側左右端部付近及び枝管底面側先端部付近に1つずつ配設しているのに対して,引用意匠は,その形態が不明な点, が認められる。 2.両意匠の形態の評価 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。 まず,共通点(A)の全体の態様は,主管及び枝管を有する排水用マスの形態を概略的に捉えたに過ぎないものであるから,この共通性のみをもって両意匠の類否判断を決定することはできない。 次に,共通点(B)ないし(D)の各部の態様も,この排水マスの分野においては既に見られるもの(参考意匠:日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成27年(2015年)5月11日)に記載された,意匠登録第1523338号(意匠に係る物品,汚水ます)の意匠,別紙第3参照)であるから,これらの共通点(B)ないし(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。 一方,共通点(E)の内周段差部を設け,マス本体外周面の内周段差部に対応する部分から枝管湾曲部上方部分までの範囲に,縦方向の筋状模様を複数形成した態様は,特徴的なものであるが,目につきにくい部位に形成されたものであるから,この共通点(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。 そして,これらの共通点(A)ないし(E)の全体から生じる視覚的効果が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度認められるものの,共通点全体としては,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 これに対し,相違点(ア)の流出口用エルボの態様については,枝管からの流入量の関係や,設置場所のスペースとの関係からその流出口用エルボ部分の形態を重視するものであり,略半球状のドーム部までの厚みに収まる本願意匠の形態と,略L字状の円筒管が突設して取り付けられ,設置時によりスペースを必要とする引用意匠の形態とは,看者に対して全く別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。 そして,この相違点(ア)によって生じる視覚的効果は,大きな影響を類否判断に与えるものであるから,この相違点(ア)が与える別異の印象は,両意匠の類否判断を決定付けているといえる。 一方,相違点(イ)の点検口背面側の態様,及び相違点(ウ)の主管及び枝管の底面側に設けられた脚部の態様については,引用意匠の形態が不明であるため,それらが与える印象の相違も明らかではないが,これらは使用時には隠れる部位における僅かな形態の相違であると認められるものであるから,上記相違点(イ)及び相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響があったとしてもそれらは小さいものであると認められる。 3.両意匠の類否判断 上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については共通するものの,その形態においては,共通点が類否判断に及ぼす影響は両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点(ア)が類否判断に及ぼす影響は大きく,この相違点(ア)から生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を決定付けており,両意匠に異なる美感を起こさせるものであるから,本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-03-15 |
出願番号 | 意願2015-13783(D2015-13783) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(M2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中村 純典 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 江塚 尚弘 |
登録日 | 2017-05-12 |
登録番号 | 意匠登録第1578154号(D1578154) |