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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D3 |
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管理番号 | 1327954 |
審判番号 | 不服2016-4885 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-04-04 |
確定日 | 2017-05-02 |
意匠に係る物品 | 天井直付け灯 |
事件の表示 | 意願2015- 4494「天井直付け灯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成27年(2015年)3月2日の意匠登録出願であって,本願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「天井直付け灯」であり,本願意匠の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって,願書の【意匠の説明】には「透光部分を示す参考正面図および透光部分を示す参考拡大右側面図において薄墨の着色で示す部分が透光部分である。」と記載されている(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものである。 平成26年(2014年)10月27日に特許庁が発行した意匠公報に記載された意匠登録第1510212号(意匠に係る物品,天井直付け灯)の意匠(破線部を含む。以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)。 なお,同公報には「『透光部を示す参考斜視図』中,斜線部は透光性を有する。」と記載されている。 第3 本願意匠と引用意匠の対比 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「天井直付け灯」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「天井直付け灯」である。 2 本願意匠と引用意匠の形態 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。例えば,引用意匠の【底面図】に表された形態を【正面図】の形態として認定し,引用意匠の【正面図】に表された形態を【平面図】の形態として認定する。 (1)共通点 両意匠には,以下の共通点が認められる。 (A)全体の構成についての共通点 全体が,横長状で厚みのある基台部の前方に,横長状の透光部を設けて一体としたものである。 (B)基台部の態様についての共通点 (B-1)側面から見た基台部の態様 基台部は,側面から見て,横向きの略扁平台形状であって,後端側の上端部及び下端部が水平状に形成されている。 (B-2)略倒U字状部 側面から見た基台部中央には略倒U字状部が形成されている。 (C)透光部の態様についての共通点 (C-1)正面から見た透光部の態様 正面から見て,透光部の横幅:縦幅の比が,本願意匠では約16:1であり,引用意匠では約18:1であるので,ほぼ共通している。 (C-2)側面から見た透光部の態様 側面から見て,透光部の上端部と下端部は直線状に形成されて,後端部が鉛直線状に表されており,前端部は略弧状に前方に膨出している。 (D)透光部と基台部の関係についての共通点 側面から見て,透光部の厚み(最大横幅)は基台部の最大横幅の約1/2である。 (2)差異点 一方,両意匠には,以下の差異点が認められる。 (a)透光部の態様についての差異点 (a-1)透光部前端の膨出の程度と透光部の厚み 側面から見た透光部前端の膨出の程度は,本願意匠の方が引用意匠に比べて小さく,また,本願意匠の透光部では,縦幅に占める厚み(最大横幅)の割合が約1/5であるが,引用意匠の透光部ではその割合が約1/3である。 (a-2)側面視透光部の上端部及び下端部の傾斜の有無 側面から見て,本願意匠の透光部では,上端部及び下端部が基台部側に向けて若干内側に傾斜しているが,引用意匠の透光部の上端部及び下端部は水平状に表されている。 (b)基台部の態様についての差異点 (b-1)基台部の正面の構成態様 正面から見た基台部全体の横幅:縦幅の比は,本願意匠の基台部では約8:1であり,引用意匠の基台部では約5.5:1である。 (b-2)上部斜面:中央平坦面:下部斜面の縦幅の比 上部斜面:中央平坦面:下部斜面の縦幅の比は,本願意匠では約1:2:1(「内部構造を省略したA-A拡大断面図」から認定した。)であるが,引用意匠では約1:1:1である。 (b-3)側面視基台部の態様 側面から見た基台部の縦幅:横幅の比は,本願意匠では約5:1であり,引用意匠では約6:1である。そして,側面から見た基台部の略扁平台形状斜辺は,本願意匠では急傾斜に表されているが,引用意匠では緩傾斜で表されている。 (b-4)小円形部の有無 側面から見た本願意匠の基台部には,略倒U字状部の上下に小円形部が表されているが,引用意匠の基台部には小円形部は表されていない。 (c)透光部と基台部の関係についての差異点 (c-1)正面から見た構成態様 正面から見た基台部上部:透光部:基台部下部の縦幅の比は,本願意匠では約1:2:1であり,引用意匠では約5:4:5である。 (c-2)透光部の左右の余地部の有無 引用意匠の透光部の横幅は基台部の横幅よりもやや小さいため,透光部の左右の基台部中央平坦面に余地部が表れているが,本願意匠では,透光部の横幅が基台部の横幅とほぼ同じであるので,そのような余地部は表れていない。 (c-3)引用意匠では,側面から見た透光部の縦幅が基台部の略扁平台形上底の縦幅よりも僅かに小さいので,正面から見ると,透光部の上端(又は下端)と基台部略扁平台形上底上端(又は下端)が離れて2重線状に表れているが,本願意匠では,両者は離れておらず,2重線状に表れていない。 第4 類否判断 1 意匠に係る物品 両意匠は,共に天井直付け灯であるから,両意匠の意匠に係る物品は同一である。 2 天井直付け灯の意匠の類否判断 天井直付け灯は天井面に設置される照明器具であり,通常の使用状態において需要者が天井直付け灯を観察するに当たっては,その天井直付け灯を主として正面方向又は正面斜め方向から眺めることとなり,透光部の正面視態様,基台部の正面視態様及び正面から見た両者の構成態様について特に注意を払うことになる。したがって,天井直付け灯の物品分野の意匠の類否判断においては,上記の項目を特に評価し,かつそれ以外の項目も併せて,各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。 3 両意匠の形態の共通点の評価 両意匠の共通点で指摘した,全体の構成についての共通点(A)及び側面から見た基台部の態様についての共通点(B-1)は,本願の出願前に「天井直付け灯」の物品分野においては普通に見受けられるものであるから(例えば,意匠登録第1495421号の意匠(参考意匠1)。別紙第3参照。),需要者はこれらの共通点に特に注目するということはできない。 また,側面から見た透光部の前端部が略弧状に膨出している共通点(C-2)や,側面から見た透光部の厚みが基台部の最大横幅の約1/2である共通点(D)についても,「天井直付け灯」の物品分野においては透光部の前端部を略弧状にすることはありふれており,透光部の厚みにも様々なものがあるから,いずれも需要者が注視する共通点であるとはいい難い。 そうすると,(A),(B-1),(C-2)及び(D)の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。 そして,側面から見た基台部中央に略倒U字状部が形成されている共通点(B-2)については,略倒U字状部を設けた意匠が「天井直付け灯」の物品分野において本願の出願前に普通に見受けられる(例えば,上記参考意匠1(別紙第3参照)及び意匠登録第1501834号の意匠(参考意匠2,別紙第4参照)。)ことを踏まえると,共通点(B-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 さらに,正面から見た透光部の横幅:縦幅の比がほぼ共通している点(本願意匠では約16:1であり,引用意匠では約18:1である共通点(C-1))は,例えば,上記参考意匠1(別紙第3参照)のその比も約18:1であるから,この共通点(C-1)のみをもって両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすということはできない。 したがって,共通点(A)ないし(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,総じて小さい。 4 両意匠の形態の差異点の評価 これに対して,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 まず,基台部の態様についての差異点(b)で指摘した,正面から見た基台部全体の横幅:縦幅の比の差異(b-1:本願意匠では約8:1であり,引用意匠では約5.5:1である。),及び上部斜面:中央平坦面:下部斜面の縦幅の比の差異(b-2:本願意匠では約1:2:1であるが,引用意匠では約1:1:1である。)は,側面から見た基台部斜辺の傾斜の程度の差異(b-3:本願意匠では急傾斜であり,引用意匠では緩傾斜である。)とあいまって,需要者に異なる視覚的印象を与えているので,差異点(b-1)ないし(b-3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 次に,差異点(c-1)で指摘した,正面から見た基台部上部:透光部:基台部下部の縦幅の比の差異(本願意匠では約1:2:1であり,引用意匠では約5:4:5である。)は,本願意匠の透光部の縦幅が基台部上部(又は基台部下部)の縦幅の約2倍であるところ,引用意匠では,本願意匠の透光部の縦幅は基台部上部(又は基台部下部)よりも小さくなっており,この差は需要者に別異の美感を与えているということができる。したがって,差異点(c-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 そして,差異点(c-2)で指摘した,透光部の左右の余地部の有無の差異は,基台部中央平坦面の両端部に関する差異であって,両意匠を正面方向又は正面斜め方向から眺める需要者の目に留まるものであり,需要者が抱く美感に変化をもたらすというべきであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 他方,差異点(a-1)で指摘した,側面から見た透光部前端の膨出の程度の差については,「天井直付け灯」の物品分野において透光部前端の膨出の程度には様々なものがあるから,需要者が注視する共通点であるとはいい難い。また,縦幅に占める厚みの割合が約1/5であるか(本願意匠),約1/3であるか(引用意匠)の差異は,「天井直付け灯」の物品分野において透光部の厚みには様々なものがあり,実際に本願意匠のように縦幅に占める厚みの割合が約1/5である意匠が,本願の出願前に普通に見受けられる(例えば,前記参考意匠1。別紙第3参照。)ことから,需要者は本願意匠の約1/5の厚みの割合に対して特段注意を惹くとはいい難いので,本願部分の引用部分に対する差異として当該差異を殊更評価することはできない。したがって,差異点(a-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 また,差異点(a-2)で指摘した,側面視透光部の上端部及び下端部の傾斜の有無の差異については,本願意匠における基台部側に向けての内側の傾斜は僅かなものであって,水平状に表されている引用意匠に比べて,需要者の視覚を通じてまとまった一つの美感を起こさせるというには及ばず,需要者の注意を強く惹くものであるとはいい難いので,傾斜の有無の差異が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといわざるを得ない。 さらに,差異点(b-4)で指摘した,側面視基台部の小円形部の有無の差異(本願意匠にはあるが,引用意匠にはない。)や,差異点(c-3)で指摘した,透光部の上端(又は下端)と基台部略扁平台形上底上端(又は下端)が離れているか否かの差異(引用意匠では離れており,本願意匠では離れていない。)も,両意匠の視覚的印象を異にして,上述した両意匠の共通点を大きく損ねるほどのものであるとはいい難いので,差異点(b-4)及び差異点(c-3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 そうすると,差異点(a),差異点(b-4)及び差異点(c-3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 5 総合判断 以上のとおり,両意匠の形態の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいのに対して,両意匠の形態の差異点(b-1)ないし(b-3),差異点(c-1)及び差異点(c-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きく,その余の形態の差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいとしても,形態の共通点を圧して,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 6 小括 したがって,両意匠の意匠に係る物品は同一であるが,両意匠の形態については,差異点は,共通点を圧して両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼし,両意匠を全体として比較した際には両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は引用意匠に類似しない。 第5 むすび 本願意匠は,原査定の引用意匠に類似することを理由にして,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同条同項の規定によって意匠登録を受けることができないとすることはできない。 また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-04-17 |
出願番号 | 意願2015-4494(D2015-4494) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 朝康 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 小林 裕和 |
登録日 | 2017-05-19 |
登録番号 | 意匠登録第1578915号(D1578915) |
代理人 | 小淵 景太 |
代理人 | 臼井 尚 |
代理人 | 吉田 稔 |
代理人 | 土居 史明 |
代理人 | 鈴木 泰光 |
代理人 | 田中 達也 |
代理人 | 鈴木 伸太郎 |