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審決分類 審判    B3
管理番号 1327960 
審判番号 無効2013-880009
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-03-08 
確定日 2014-11-10 
意匠に係る物品 コンタクトレンズ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1458210号「コンタクトレンズ」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第1458210号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件登録意匠,すなわち,本件意匠登録第1458210号の意匠(別紙第1参照)は,平成24年(2012年)1月12日に意匠登録出願(意願2012-411。以下「本願」という。)されたものであって,審査を経て同年11月22日に意匠権の設定の登録がなされ,同年12月25日に意匠公報が発行され,その後,当審において,概要,以下の手続を経たものである。
・本件審判請求(審判請求書提出) 平成25年3月 8日
・審理の方式の申立書 平成25年3月 8日
第2 当事者が提出した証拠
1 請求人が提出した証拠
(1)審判請求書の添付書類
甲第1号証 意匠登録第1437447号の意匠公報の写し
甲第2号証 BETTY Vol.5(2010年3月26日発売:株式会社笠倉出版社) 表紙・24頁及び裏表紙の写し
甲第3号証 小悪魔ageha 12月号(2011年12月10日発行:インフォレストパブリッシング株式会社) 表紙・48頁及び裏表紙の写し
甲第4号証 Happie nuts 12月号(2011年12月20日発行:インフォレストパブリッシング株式会社) 表紙・24頁及び裏表紙の写し
甲第5号証 ドンキホーテのWEBサイト http://www.donkigroup.com/にて紹介されている商品「TwinkleEyes DonguriSeries」のブラウンについて,http://www.donkigroup.com/fg/products/detail.php?product_id=709に掲載されている記事の写し(2013年2月27日検索結果)
甲第6号証 各部名称図
甲第7号証 比較画像表
甲第8号証 文言分説比較表
参考資料 意匠登録第1458210号(本件登録意匠)の意匠公報の写し
第3 請求人の申し立て及び理由の要点
請求人は,請求の趣旨を「登録第1458210号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,その理由を,要点以下のとおり主張し,その主張事実を立証するため,前章「第2」に掲げた証拠を提出した。
1 意匠登録無効の理由の要点
(1)本件登録意匠は,甲第1号証の意匠と類似するものであり,甲第1号証の出願日が平成21年(2009年)7月8日であり,かつ,甲第1号証の公報の発行日が平成24年(2012年)4月2日であるのに対し,本件登録意匠の出願日が平成24年(2012年)1月12日である。したがって,本件登録意匠は,甲第1号証の出願の後願となるので,意匠法第9条第1項により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
(2)本件登録意匠は,甲第2号証の意匠と類似するものであり,甲第2号証は平成22年(2010年)3月26日に発行されているのに対し,本件登録意匠の出願日が平成24年(2012年)1月12日である。したがって,本件登録意匠は,同法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
(3)仮に,本件登録意匠と甲第2号証とが類似しない意匠であったとしても,本件登録意匠の黒色模様と甲第2号証の黒色模様とは,酷似しており,本件登録意匠と甲第2号証の意匠とは,ブラウン色の配色を異にするに過ぎないので,本件登録意匠は,甲第2号証の意匠から容易に創作することができた意匠である。よって,本件登録意匠は,甲第2号証の意匠に基づいて,容易に創作することができたものであるから,同法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
(4)本件登録意匠は,甲第3号証及び甲第4号証の意匠と類似するものであり,甲第3号証は平成23年(2011年)12月10日に発行されており,甲第4号証は平成23年(2011年)12月20日に発行されており,本件登録意匠の出願日が平成24年(2012年)1月12日である。したがって,本件登録意匠は,同法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
(5)甲第3号証及び甲第4号証の意匠は,商品名「TwinkleEyes DonguriSeries」のブラウン色である。当該商品の詳細な画像は,甲第5号証にて紹介されている。甲第3号証ないし甲第5号証によって,当該商品は,本件登録意匠そのものであることが分かる。すなわち,本件登録意匠は,その出願前に,公然知られた意匠及び頒布された刊行物に掲載された意匠であったと言える。よって,本件登録意匠は,同法第3条第1項第1号及び第2号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
2 本件意匠登録を無効とすべき理由
(1)本件登録意匠の説明
甲第6号証に示すように,本件登録意匠は,基本的構成態様として,
ア 全体が球面体の一部を平面によって切り取った透光性を有する曲面体であり,
イ 曲面体の中心点を囲む小円形である「中央部」と,
ウ 曲面体の最外縁を略一定幅の細幅帯状に縁取る「縁部」と,
エ 縁部の隣接内側において濃色で帯状に模様が施された「外周部」と,
オ 外周部の内側において,模様を有する「内周部」と,
カ 中央部の外周を囲み,内周部を縁取るように施された黒色の模様を有する「内周縁部」とを有する。
具体的構成態様として,外周部の太さは,縁部を除いた外周部の直径をaとし,外周部の黒色が濃い箇所の平均の太さをbとした場合,外周部の全体に占める割合b/aは,約9%であり,外周部の模様は,その全体が,ほぼ黒色で配色されているが,内周部と外周部との境界部分では,一部に薄墨色の斑点が不規則に施されている。内周部の太さは,内周部の太さをdとした場合,内周部の全体に占める割合d/aは,約16%であり,内周部の模様は,濃いブラウン色と薄いブラウン色とが4つずつ交互に現れるようにベースの配色がなされた格子柄模様を有し,所々に黒色模様を有する。当該黒色模様は,略均一な間隔で外周部から延び出す16個の延出模様部によって構成されている。各延出模様部は,複数の黒色斑点を結合又は隣接させて配置させることによって,中心点に向かって外周部から延び出すように施されている。内周縁部の模様は,中央部の外周を囲むように施されたイモムシ状の黒色模様を有し,当該黒色模様が外側に向けて放射状に延びることによって,全体が略「太陽のコロナ」状の模様を有する。本件登録意匠の底面図では,平面視に現れるブラウン色の濃淡を表現するために,ブラウン色の濃淡が交互に配色されている。
(2)甲第1号証の意匠の説明
甲第6号証に示すように,甲第1号証に係る意匠は,基本的構成態様として,
ア 全体が球面体の一部を平面によって切り取った透光性を有する曲面体であり,
イ 曲面体の中心点を囲む薄墨色の小円形である「中央部」と,
ウ 曲面体の最外縁を略一定幅の細幅帯状に縁取る「縁部」と,
エ 縁部の隣接内側において濃色で帯状に模様が施された「外周部」と,
オ 周部の内側において,模様を有する「内周部」と,
カ 中央部の外周を囲み,内周部を縁取るように施された黒色の模様を有する「内周縁部」とを有する。
具体的構成態様として,外周部の太さは,縁部を除いた外周部の直径をaとし,外周部の黒色が濃い箇所の平均の太さをbとした場合,外周部の全体に占める割合b/aは,約9%であり,外周部の模様は,その全体が,ほぼ黒色で配色されているが,内周部と外周部との境界部分では,一部に薄墨色の斑点が不規則に施されている。内周部の太さは,内周部の太さをdとした場合,内周部の全体に占める割合d/aは,約16%であり,内周部の模様は,全体に薄墨色をベースにした格子柄模様を有し,所々に黒色模様を有する。当該黒色模様は,略均一な間隔で外周部から延び出す16個の延出模様部によって構成されている。各延出模様部は,複数の黒色斑点を結合又は隣接させて配置させることによって,中心点に向かって外周部から延び出すように施されている。内周縁部の模様は,中央部の外周を囲むように施されたイモムシ状の黒色模様を有し,当該黒色模様が外側に向けて放射状に延びることによって,全体が略「太陽のコロナ」状の模様を有する。
(3)甲第2号証の意匠の説明
甲第2号証の意匠は,その具体的態様において,内周部の模様が,全体にブラウン色をベースにした格子柄模様を有している点において,甲第1号証の意匠と相違し,その他は,甲第1号証の意匠と同一である。
(4)甲第3号証及び甲第4号証の意匠の説明
甲第3号証及び甲第4号証の意匠は,本件登録意匠と比べて,内周部の模様は,ブラウン色が多少暗い以外は本件登録意匠と同一であり,濃いブラウン色と薄いブラウン色とが4つずつ交互に現れるようにベースの配色がなされた格子模様を有する。なお,ブラウン色の多少の暗さは,雑誌の印刷上の問題であると考えられる。
(5)本件登録意匠と甲第1号証の意匠との対比
ア 本件登録意匠と甲第1号証の意匠の意匠に係る物品の対比
本件登録意匠及び甲第1号証の意匠ともに,意匠に係る物品は,コンタクトレンズであり,同一物品である。
イ 本件登録意匠と甲第1号証の意匠の形態の共通点及び差異点の列挙
上述及び甲第8号証の文言分説比較表に示したとおり,本件登録意匠と甲第1号証の意匠の形態とは,その基本的構成態様において,同一である。本件登録意匠と甲第1号証の意匠の形態とは,その具体的構成態様において,本件登録意匠の内周部の模様は,濃いブラウン色と薄いブラウン色とが4つずつ交互に現れるようにベースの配色がなされた格子柄模様を有し,所々に黒色模様を有するのに対し,甲第1号証の意匠の内周部の模様は,全体に薄墨色をベースにした格子柄模様を有し,所々に黒色模様を有する点において相違し,その他は,同一である。なお,本件登録意匠の底面図では,平面視に現れるブラウン色の濃淡を表現するために,ブラウン色の濃淡が交互に配色されている。
ウ 本件登録意匠と甲第1号証の意匠の形態の共通点及び差異点の評価
このように,本件登録意匠と甲第1号証とは,内周部の模様の具体的構成態様において,配色の相違が存在する。一方,内周部の模様の配色部分の相違以外は,極めて酷似しており,甲第7号証に示した拡大平面図での比較からも分かるように,実質的に同一であると言える。したがって,内周部の配色の相違のみでは,その他の構成の実質的同一部分を凌駕するほどの相違とはならない。なお,本物品の分野において,平面視によって看者は意匠を認識するのが通例であるから,底面図での相違は,意匠の要部ではなく,類否判断に影響を与えるものではない。
エ 本件登録意匠と甲第1号証の意匠の意匠に係る物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく類否の結論
以上より,本件登録意匠と甲第1号証の意匠とは,類似する意匠であると言える。
3 むすび
したがって,本件登録意匠は,甲第1号証の意匠と類似する意匠であり,同法第9条第1項により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
また,本件登録意匠は,甲第2号証の意匠と類似する意匠であり,同法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。若しくは,本件登録意匠は,甲第2号証の意匠に基づいて,容易に創作することができたものであるから,同法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
また,本件登録意匠は,甲第3号証及び甲第4号証の意匠と同一又は類似する意匠であり,同法第3条第1項第1号乃至第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
第4 被請求人の答弁及び理由の要点
特許庁より,被請求人に審判請求書を送付し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,被請求人からの応答はなかった。
第5 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は,本願の願書の記載によれば,意匠に係る物品を「コンタクトレンズ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,意匠に係る物品の説明を「本物品は,模様及び色彩が施されたコンタクトレンズである。」とし,意匠の説明を「平面図及び底面図などにおける中心部の円形状部分は,透光性を有する。正面図,背面図,右側面図,左側面図の各図面において,撮影角度の関係で外周縁が円弧状に見えるが,完全な水平視では外周縁は水平な直線として表われる。」としたものである。
本件登録意匠の形態には,基本的構成態様として,以下の点が認められる。
(1)基本的構成態様について
全体が,球面体の一部を平面によって切り取った,透光性を有する部分を含む曲面体である。平面から見て,無模様部である,中心の「小円形状部」と周縁寄りの「最外周部」を除いた部分が,中央を中心とする3つの同心円状の部分に分けられる。その3つの部分は,外側から順に,最外周部の隣接内側に位置した黒色の部分(ただし,中心に向けて略棒状に延出した黒色部分を除く。以下「外周部」という。),外周部の内側に位置し,焦げ茶色及び黄土色に着色された略格子状の模様からなる部分等(ただし,外周部から中心に向けて略棒状に延出した黒色部分を含む。以下「内周部」という。),及び内周部の内側に位置し,内周部から中心に向かって黒色に着色された略棒状の模様の施された部分(以下「内周縁部」という。)である。
また,具体的態様として,以下の点が認められる。
(2)具体的態様について
ア 外周部の態様について
外周部は,全体が,黒色に着色されているが,内周部と接する領域において,焦げ茶色及び黄土色の斑点状及び略棒状の模様が点在している。
イ 内周部の態様について
内周部は,下地として,焦げ茶色及び黄土色に着色された直角に交差する,幅がやや狭い直線が,規則正しく施されていることから,全体に略格子状模様が描かれている。また,その略格子状模様は,焦げ茶色及び黄土色に着色されて8つに分割されており,上下左右の4つが焦げ茶色に,斜め方向の4つが黄土色に着色されて,焦げ茶色と黄土色の境界が放射直線状に表れている。黄土色部分の面積が,焦げ茶色の面積に比べてやや広くなっている。さらに,黒色に着色され外周部から中心部に向けて延出した略棒状(太さ,長さが一様ではなく,やや曲がっているものもある。)及び斑点状の模様が複数描かれている。
ウ 内周縁部の態様について
内周部と同様に,下地として,焦げ茶色及び黄土色に着色された直角に交差する,幅がやや狭い直線が,規則正しく施されていることから,略格子状の模様が描かれている。他方,黒色に着色され,内周部から中心に向かって略棒状(太さ,長さが一様ではなく,やや曲がっているものもある。)及び斑点状の模様が複数密集して描かれている。略棒状模様は,長短さまざまであり,いずれも,中心点から,略放射状に配置されている。長い略棒状模様の中には,内周部の略棒状模様と連結して,あたかも一本の棒のように描かれているものもある。
2 無効理由の要点
請求人が主張する本件意匠登録の無効事由は,本件登録意匠が,意匠登録出願前に出願され,その後登録された意匠登録第1437447号(甲第1号証)の意匠と類似する意匠であり,最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないため,意匠法第9条第1項の規定により,意匠登録を受けることができないものであるから,本件意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とされるべきであるとするもの(以下,これを「無効理由1」という。),本件登録意匠が,意匠登録出願前に日本国内で頒布された刊行物(甲第2号証)に記載された意匠と類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するので,同項柱書の規定により,意匠登録を受けることができないものであるから,本件意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とされるべきであるとするもの(以下,これを「無効理由2」という。),本件登録意匠が,意匠登録出願前に日本国内で頒布された刊行物(甲第2号証)に記載された意匠に基づいて容易に創作することができたものであるので,意匠法第3条第2項の規定により,意匠登録を受けることができないものであるから,本件意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とされるべきであるとするもの(以下,これを「無効理由3」という。),及び,本件登録意匠が,意匠登録出願前に日本国内で頒布された刊行物(甲第3号証及び甲第4号証)に記載された,「TwinkleEyes DonguriSeries BROWN」の意匠と同一又は類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第2号又は第3号に規定する意匠に該当するので,同項柱書の規定により,意匠登録を受けることができないものであるから,本件意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とされるべきであるとするもの(以下,これを「無効理由4」という。)である。なお,請求人は,本件登録意匠が「TwinkleEyes DonguriSeries BROWN」の意匠と同一であることについて,本件登録意匠が意匠登録出願前に公然知られた意匠であると指摘し,本件登録意匠が意匠法第3条第1項第1号に規定する意匠にも該当すると主張しているが,上記意匠は刊行物(甲第3号証及び甲第4号証)に記載されているのであり,また,上記意匠と同一の意匠が紹介されているとされる甲第5号証の公開日が本件登録意匠の出願前であるかが判明しないことから,本件登録意匠が意匠登録出願前に公然知られた意匠であるとはいい難く,本件登録意匠が意匠法第3条第1項第1号に規定する意匠に該当するとの主張を採用することはできない。
3 無効理由1に対する判断
本件登録意匠が,意匠登録出願前に出願され,その後登録された意匠登録第1437447号(甲第1号証)の意匠(以下「甲1意匠」という。)と類似する意匠であるか否かについて検討する。
(1)甲1意匠
甲1意匠は,甲第1号証(別紙第2参照)の記載によれば,意匠に係る物品を「コンタクトレンズ」とし,その形態を,甲第1号証に記載されたとおりとしたものであり,意匠に係る物品の説明を「本物品は,模様及び色彩が施されたコンタクトレンズである。」としたものである。
甲1意匠の形態には,基本的構成態様として,以下の点が認められる。
ア 基本的構成態様について
全体が,球面体の一部を平面によって切り取った,透光性を有する部分を含む曲面体である。平面から見て,無模様部である,中心の「小円形状部」と周縁寄りの「最外周部」を除いた部分が,中央を中心とする3つの同心円状の部分に分けられる。その3つの部分は,外側から順に,最外周部の隣接内側に位置した黒色の部分(ただし,中心に向けて略棒状に延出した濃灰色部分を除く。以下「外周部」という。),外周部の内側に位置し,淡い灰色の略格子状の模様からなる部分等(ただし,外周部から中心に向けて略棒状に延出した濃灰色部分を含む。以下「内周部」という。),及び内周部の内側に位置し,内周部から中心に向かって黒色又は濃灰色の略棒状の模様の施された部分(以下「内周縁部」という。)である。
また,具体的態様として,以下の点が認められる。
イ 具体的態様について
(ア)外周部の態様について
外周部は,全体が,黒色であるが,内周部と接する領域において,淡い灰色の斑点状及び略棒状の模様が点在している。
(イ)内周部の態様について
内周部は,下地として,淡い灰色で直角に交差する,ある程度の幅を有する直線が,規則正しく施されていることから,全体に略格子状模様が描かれている。また,濃灰色で外周部から中心部に向けて延出した略棒状(太さ,長さが一様ではなく,やや曲がっているものもある。)及び斑点状の模様が複数描かれている。
(ウ)内周縁部の態様について
内周部と同様に,下地として,淡い灰色で直角に交差する,ある程度の幅を有する直線が,規則正しく施されていることから,略格子状の模様が描かれている。他方,黒色又は濃灰色の,内周部から中心に向かって略棒状(太さ,長さが一様ではなく,やや曲がっているものもある。)及び斑点状の模様が複数密集して描かれている。略棒状模様は,長短さまざまであり,いずれも,中心点から,略放射状に配置されている。長い略棒状模様の中には,内周部の略棒状模様と連結して,あたかも一本の棒のように描かれているものもある。
(2)本件登録意匠と甲1意匠の対比
ア 意匠に係る物品
本件登録意匠は「コンタクトレンズ」であり,甲1意匠も「コンタクトレンズ」であるので,本件登録意匠と甲1意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。
イ 形態の共通点
両意匠の形態には,以下の基本的構成態様の共通点が認められる。
(ア)基本的構成態様の共通点
全体が,球面体の一部を平面によって切り取った,透光性を有する部分を含む曲面体である。平面から見て,無模様部である,中心の「小円形状部」と周縁寄りの「最外周部」を除いた部分が,中央を中心とする3つの同心円状の部分に分けられる。
また,以下の具体的態様の共通点が認められる。
(イ)外周部の態様について
外周部は,全体が,黒色に着色されているが,内周部と接する領域において,斑点状及び略棒状の模様が点在している。
(ウ)内周部の態様について
内周部は,下地として,淡い色で直角に交差する直線が,規則正しく施されていることから,全体に略格子状模様が描かれている。また,外周部から中心部に向けて延出した略棒状(太さ,長さが一様ではなく,やや曲がっているものもある。)及び斑点状の模様が複数描かれている。
(エ)内周縁部の態様について
内周部と同様に,下地として,淡い色で直角に交差する直線が,規則正しく施されていることから,略格子状の模様が描かれている。他方,黒色を含む色の,内周部から中心に向かって略棒状(太さ,長さが一様ではなく,やや曲がっているものもある。)及び斑点状の模様が複数密集して描かれている。略棒状模様は,長短さまざまであり,いずれも,中心点から,略放射状に配置されている。長い略棒状模様の中には,内周部の略棒状模様と連結して,あたかも一本の棒のように描かれているものもある。
ウ 形態の差異点
一方,両意匠の形態には,以下の差異点が認められる。
(ア)外周部の態様についての差異点
本件登録意匠の斑点状及び略棒状の模様は焦げ茶色及び黄土色であるが,甲1意匠のそれは淡い灰色である。
(イ)内周部の態様についての差異点
本件登録意匠では,略格子状模様がやや幅狭の直線で描かれ,焦げ茶色及び黄土色に着色されて8つに分割されており,上下左右の4つが焦げ茶色に,斜め方向の4つが黄土色に着色されている。そして,焦げ茶色と黄土色の境界が放射直線状に表れて,黄土色部分の面積が焦げ茶色の面積に比べてやや広くなっており,略棒状及び斑点状の模様は黒色である。これに対して,甲1意匠には2種類の色分けはなく,略格子状模様は淡い灰色で,ある程度の幅を有する直線で描かれており,略棒状及び斑点状の模様は濃灰色である。
(ウ)内周縁部の態様についての差異点
本件登録意匠では,略格子状模様がやや幅狭の直線で描かれ,焦げ茶色及び黄土色に着色されており,略棒状及び斑点状の模様は黒色である。これに対して,甲1意匠の略格子状模様は淡い灰色で,ある程度の幅を有する直線で描かれており,略棒状及び斑点状の模様は黒色又は濃灰色である。
(3)本件登録意匠と甲2意匠の類否判断
以上の本件登録意匠と甲1意匠の共通点及び差異点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価して,両意匠の類否を意匠全体として総合的に検討する。
ア 形態の共通点の評価
先ず,基本的構成態様の共通点,特に,平面から見て,無模様部である,中心の「小円形状部」と周縁寄りの「最外周部」を除いた部分が,中央を中心とする3つの同心円状の部分に分けられる共通点は,両意匠の基調を成すものであって,看者の注意を強く惹くことから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,内周縁部の態様についての共通点のうち,略棒状及び斑点状の模様が略放射状に配置されて密集して描かれている共通点は,看者の注意を惹くものであって,略棒状及び斑点状の模様の詳細について両意匠を見比べると,甲第7号証(別紙第3)に見られるように,模様全体の配置構成,模様が意匠全体に占める相対的な大きさ,及び個々の模様のかたちが酷似しており,この共通点は,看者に確たる視覚的印象を与えているというべきであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きい。
そして,全体が黒色で着色されている外周部の態様についての共通点と,略格子状模様の下地を有する内周部の態様についての共通点も,看者に一定の視覚的印象を与えることから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
イ 形態の差異点の評価
これに対して,前記認定した差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,以下のとおり,いずれも小さいものであって,上記共通点が看者に与える美感を覆すほどのものではない。
(ア)外周部の態様についての差異について
斑点状及び略棒状の模様が外周部全体に占める大きさは小さく,看者がその色彩の相違を注視することはないので,同模様が焦げ茶色及び黄土色である本件登録意匠と,淡い灰色である甲1意匠との差異が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(イ)内周部の態様についての差異について
本件登録意匠に見られる略格子状模様の色分けは,焦げ茶色と黄土色が同系色であることからそれ程目立つものではなく,また,どちらの色も淡い色であるから,淡い灰色を有する甲1意匠の略格子状模様と見比べた際に,両意匠全体の美感を決定的に異にする程のものではないというべきである。併せて,下地の略格子状模様を焦げ茶色及び黄土色に着色して8つに分割させて,双方の色の面積を異にした意匠が,本件登録意匠の意匠登録出願前に既に見受けられることから(特許庁意匠課公知資料番号第HH19418686号。別紙第4参照。),本件登録意匠の黄土色部分の面積が焦げ茶色の面積に比べてやや広くなっている点を考慮しても,色分けされた本件登録意匠の略格子状模様に看者が特に注意を払うとはいい難い。さらに,本件登録意匠の略格子状模様が甲1意匠に比べて幅狭の直線で描かれている差異点も,看者がことさら注視する差異であるとはいい難い。したがって,略格子状模様の色分けの有無の差異と,焦げ茶色又は黄土色を有する本件登録意匠の甲1意匠に対する差異が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
内周部に見られる,略棒状及び斑点状の模様が黒色であるか,濃灰色であるかの差異についても,甲1意匠の濃灰色が明瞭に看取される濃度であるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(ウ)内周縁部の態様についての差異について
上記(イ)と同様に,略格子状模様の色分けの有無の差異と,焦げ茶色又は黄土色を有する本件登録意匠の甲1意匠に対する差異が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さく,甲1意匠の略棒状及び斑点状の模様に濃灰色が含まれる差異についても,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(4)小括
そうすると,両意匠の意匠に係る物品が共通し,両意匠の形態においても,共通点は,看者に対して視覚を通じてまとまった一つの美感を与え,両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものと認められるのに対して,差異点は,いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さく,これらが相まって生じる視覚的効果を考慮しても,共通点が看者に与える美感を覆して,両意匠を別異のものと印象付けるほどのものとはいえないから,本件登録意匠は,甲1意匠に類似するものと認められる。
したがって,本件登録意匠は,意匠登録出願前に出願され,その後登録された意匠登録第1437447号(甲第1号証)の意匠と類似する意匠であり,最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないため,意匠法第9条第1項の規定により,意匠登録を受けることができないものであるから,本件意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とされるべきであると,請求人が主張する無効理由(「無効理由1」)については,理由がある。
第6 むすび
以上のとおり,本件登録意匠は,意匠登録出願前に出願され,その後登録された意匠に類似する意匠であり,最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないため,意匠法第9条第1項の規定に違背して登録されたものであるから,その登録は,その余の点について審理するまでもなく,無効とすべきものである。
審判に関する費用については,意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 【別記】










審理終結日 2014-09-30 
結審通知日 2014-10-09 
審決日 2014-09-30 
出願番号 意願2012-411(D2012-411) 
審決分類 D 1 113・ 4- Z (B3)
最終処分 成立 
前審関与審査官 古賀 稔章並木 文子 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 小林 裕和
綿貫 浩一
登録日 2012-11-22 
登録番号 意匠登録第1458210号(D1458210) 
代理人 高山 嘉成 
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