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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 J1
管理番号 1329141 
審判番号 不服2017-920
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-23 
確定日 2017-05-08 
意匠に係る物品 分光分析用基板 
事件の表示 意願2016-9317「分光分析用基板」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)4月27日付けの出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「分光分析用基板」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第2 原審の拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠(平成28年4月27日提出の意匠登録願(整理番号2016-0305)(意願2016-9316号=意匠登録第1568796号)の意匠。別紙第2参照)に類似する意匠と認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものである。

第3 手続の経緯
原審の上記拒絶の理由に対して,出願人は,平成28年12月14日に意見書を提出し,本願意匠は本意匠に類似するため,意匠法第10条第1項の規定により,意願2016-9316号意匠を本意匠とする関連意匠として意匠登録されるべきものであると主張したが,同年12月22日付けで拒絶査定がなされたため,審判請求と同日の平成29年1月23日に手続補正書を提出し,願書に記載の「本意匠の表示」を削除し,本願を関連意匠の意匠登録出願ではないものに変更すると共に,審判請求書において,意匠法10条1項の規定に該当しないとした拒絶の理由は解消したため,原査定を取り消して本願は登録すべきものであるとの審決を求めている。

第4 当審の判断
1.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品について
両意匠の意匠に係る物品は,いずれも「分光分析用基板」であるから一致する。

(2)本願意匠部分と本意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ,及び範囲
本願意匠部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)は共に,正面図において基板の左側約5分の2部分である(正確には,素子用凹部及びカバー部の孔部を除く部分である。)から,その用途及び機能,並びに位置及び範囲は一致し,大きさは当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内のものである。

(3)両部分の形態について
まず,共通点として,
(A)正面図において全体が角丸横長長方形の基板の,左側約5分の2部分の,略正方形部分である点,
(B)基板本体部の上面に設けた,底面中央に素子用凹部を備えたカバー用凹部(以下,単に「凹部」という。)である点,
(C)中心に孔部を備えた,凹部と略相似形のカバー部で,基板本体部とカバー部の上面部を僅かな段差としている点,
(D)端部に切欠き部を一つ設けたカバー部によって,凹部とカバー部の間に,空隙部を備えた点,
が認められる。

他方,主な相違点として,
(ア)凹部の平面形状について,本願意匠は,正円形であるのに対して,本意匠は,角丸正方形である点,
(イ)カバー部の平面形状について,本願意匠は,直線状に切り欠いた部分が1か所ある正円形であるのに対して,本意匠は角丸正方形で,1か所の角のみ面取り状とした形状である点,
が認められる。

2.両意匠の類否判断
共通点(C)及び(D)は,この種物品分野において,新しい態様であるとしても,いまだ概念的な共通点と認められ,共通点(A)及び(B)を含めて,これらの概念的な共通点のみで,両部分の類否判断を行うことは適当ではないと考えられる。
これに対して,相違点(ア)は,本意匠は,凹部の面積が大きくとられているのに対して,本願意匠は,本意匠よりも小さな面積であり,この凹部の面積と形状の違いは,素子用凹部に素子を嵌め込む作業のしやすさなどを喚起させる要素であるから,これらの相違点は,需要者に対して,両意匠は異なる印象を与えるものであって,両意匠の類否判断に多大な影響を及ぼすものである。
相違点(ア)及び(イ)によって,本願意匠は,どの方向でカバー部を嵌め込んでも必ず嵌まるため,使用時に方向を気にすることなく作業が行え,需要者に作業効率を高める期待を持たせる形状であるのに対して,本意匠は,略正方形であるから,四方向でしか嵌まらないため,その分作業効率が落ちることが考えられる形態であるから,これらの相違点は,需要者に対して,両意匠は異なる印象を与えるものであって,両意匠の類否判断に多大な影響を及ぼすものである。
そうすると,相違点を総合して評価すると,全ての共通点から醸し出される共通感を越える異なった印象を両意匠に与えるものであるから,需要者に両意匠が別異であると認識させるものといえる。
したがって,両意匠の意匠に係る物品は一致し,両部分の用途及び機能,並びに位置及び範囲は一致し,大きさは当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内のものであるが,両部分の形態は,上記検討のとおり,類似しないから,両意匠は,類似しているとはいえない。

第5 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,本意匠に類似せず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであるが,前記第3に記載のとおり,請求人が平成29年1月23日に提出した手続補正書によって本願願書の本意匠の表示を削除する補正がなされ,原審の拒絶の理由は解消しているので,当該拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-04-14 
出願番号 意願2016-9317(D2016-9317) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (J1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 杉山 太一 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 刈間 宏信
橘 崇生
登録日 2017-06-09 
登録番号 意匠登録第1580288号(D1580288) 
代理人 野間 悠 
代理人 野村 信三郎 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 布施 哲也 

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