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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2 |
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管理番号 | 1329149 |
審判番号 | 不服2017-643 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-01-17 |
確定日 | 2017-05-23 |
意匠に係る物品 | 車輌用ホイール |
事件の表示 | 意願2015- 28356「車輌用ホイール」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,2015年6月30日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)12月21日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「車輌用ホイール」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表わされた部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。各図の表面に描かれた細線は,いずれも立体表面の形状を表す影線である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 本願に対する原査定の拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,特許庁特許情報課が2006年5月18日に受け入れた米国特許商標公報(2006年4月25日発行)に記載の「ホイール(登録番号US D519,433S)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH18508302号)における本願部分に対応する部分(以下,本願部分に対応する引用意匠の部分を「引用部分」という。)としたものであって,引用意匠及び引用部分の形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「車輌用ホイール」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「ホイール」であって,いずれも10個のボルト穴を有する大型車輌用のホイールであるから,本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。 2.本願部分と引用部分の対比 (1)部分意匠としての用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分と引用部分(以下「両意匠部分」という。)の用途及び機能は,タイヤを保持し,タイヤに動力を伝達するための自動車用パーツであって,その位置,大きさ及び範囲は,ホイールリムの正面側端部に形成された略倒円錐台状のディスクの垂直面部分に形成された10個のボルト穴,及びディスクの傾斜面部分に形成された10個の飾り穴を除いたホイールの部分であるから,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。 (2)両意匠部分の具体的形態 両意匠部分の形態を対比すると,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。 以下,対比のため,引用意匠の図面の図の表示を本願意匠の図面に合わせ,引用意匠の「FIG.1」を「斜視図」とし,引用意匠の「FIG.2」を「正面図」とし,引用意匠の「FIG.3」を「右側面図」とする。また,本願の願書添付図面中,「平面図」は「底面図」の誤りであると認められるので,この「平面図」を「底面図」として本願意匠を認定している。 まず,共通点として, (A)両意匠部分全体は,周面中央部分を略円弧状に窪ませた略倒円筒形状のホイールリム(以下「リム部」という。)のリム部内周面の正面側端部に,扁平な略倒円錐台状のディスク(以下「ディスク部」という。)を,正面側に突出させた配置で配設した構成としたものであって, (B)リム部は,その正面及び背面側両端部に,リムフランジを形成し,リム内周部を端部に向かってラッパの口状に広がる形態としている点, (C)ディスク部は,正面側に突出した垂直面部分と傾斜した周面部分から構成され,垂直面部分はその中心部分に略大径円形状のハブ穴を一つ設けて略円環状の垂直面(以下「略円環状垂直面」という。)とし,周面部分は僅かに内側に湾曲した傾斜面とし,その正面側端部付近に形状線を1条周方向に形成している点, が認められる。 他方,相違点として, (ア)略円環状垂直面の背面側におけるハブ穴の周囲に形成された切り欠き部の有無について,本願部分は,該部位に背面視略半円状の切り欠き部を,略円環状垂直面の正面側部分にのみ僅かな厚みを残しつつ等間隔に10個形成しているのに対して,引用部分には,そのような切り欠き部を形成していない点, (イ)略円環状垂直面の正面側における外周付近の態様について,本願部分には,何も施されていないのに対して,引用部分は,該部位に略円形状の形状線若しくは模様線を一つ施している点, が認められる。 3.両意匠部分の形態の評価 まず,共通点(A)の両意匠部分全体の態様,共通点(B)のリム部の態様,及び共通点(C)のディスク部の態様は,両意匠の基調を形成し,需要者に共通の印象を与えるものであるが,これらの態様はトレーラー等の大型車輌用のホイールにおける典型的なありふれた態様にすぎないものであるから,上記共通点(A)ないし(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの,これらの共通性のみをもって両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 これに対して,相違点(ア)の略円環状垂直面の背面側におけるハブ穴の周囲に形成された切り欠き部の有無については,トレーラー等の大型車輌ではその荷重を支えるため,2つのホイールの略円環状垂直面同士を対向した配置で後輪側のハブにボルトにて締着し,ダブルタイヤとすることが極普通に行われているところ,このダブルタイヤにおいては,車体外側に取り付けられるホイールの本願部分における背面側が車体外側に向けられて装着されることとなる。 このように,この物品を後輪に使用した時には,正面側が隠れ,背面側のみが看者に観察可能となるものであって,かつ,ハブ穴から突出した車軸の周囲に10個の略半円状の切り欠き部が花弁のように配設されている本願部分の特徴的な態様は,看者に従来のホイールにはない新規な態様をもつものであるとの印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。 次に,相違点(イ)の略円環状垂直面の正面側における外周付近の態様については,前輪のホイールとして使用する場合には,略円環状垂直面は車体外側に向けて装着されるため,該部位は看者にとって目に付く部分となるから,この相違点(イ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も一定程度あるといえる。 そして,この相違点(ア)によって生じる視覚的効果は大きく,相違点(イ)の視覚的効果と相まって生じる別異の印象は,両意匠部分の類否判断を決定付けるほど大きいものである。 4.両意匠の類否判断 上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品については共通し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲についても共通しているが,両意匠部分の形態については,共通点が類否判断に及ぼす影響は両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点(ア)が類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点(イ)と相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠部分は類似しないものである。 したがって,本願意匠と引用意匠とは類似しないものと認められる。 第4 結び 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-05-09 |
出願番号 | 意願2015-28356(D2015-28356) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(G2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小松 芳実 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 神谷 由紀 |
登録日 | 2017-06-02 |
登録番号 | 意匠登録第1579829号(D1579829) |
代理人 | 丸山 敏之 |
代理人 | 長塚 俊也 |
代理人 | 宮野 孝雄 |
代理人 | 久徳 高寛 |