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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 C5 |
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管理番号 | 1329151 |
審判番号 | 不服2017-1090 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-01-25 |
確定日 | 2017-05-17 |
意匠に係る物品 | ボトル |
事件の表示 | 意願2015-17951「ボトル」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,2015年2月13日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成27年(2015年)8月13日付けの意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という)は,意匠に係る物品を「ボトル」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第2 原審の拒絶の理由 原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,「 本願意匠は,飲料用ボトルに係るものであるが,この種物品分野において,ボトルの蓋部を注出口に取り付ける手法は種々行われているところであり,注出口に被せた蓋部が容器部の上部に接合する態様に形成することは,出願前に普通に行われている手法である(例示意匠1,2)。 そうすると,本願の意匠は,出願前に公然知られた水筒の意匠(例示意匠3)の容器部と出願前に公然知られた水筒の意匠の蓋部(例示意匠4)を出願前に普通に行われている手法で表して,ボトルの意匠としたまでのものであるから,当業者であれば容易に創作をすることができたものと認められる。 (例示意匠1(当審注:別紙第2参照)) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2010年 3月10日に受け入れた 内国雑誌「Casa BRUTUS 」2010年 3月10日4号 第29頁所載 水筒の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HA22001818号) (例示意匠2(当審注:別紙第3参照)) 特許庁普及支援課が2011年 4月28日に受け入れた 米国特許商標公報 2011年 4月 5日11W14号 包装用容器(登録番号US D635457S)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH23305822号) (例示意匠3(当審注:別紙第4参照)) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2012年 4月 6日に受け入れた Global Sources Gifts & Premiums 12号 第45頁所載 水筒の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HB24001173号) (例示意匠4(当審注:別紙第5参照)) 特許庁普及支援課が2012年 8月 7日に受け入れた 米国特許商標公報 2012年 8月 7日 飲料容器(登録番号US D664809S)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH24313708号)」としたものである。 なお,原審の拒絶理由通知書においては,例示意匠1について「外国雑誌」と記載されているが,正しくは「内国雑誌」であり,単純な誤記と認められる。 第3 当審の判断 以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。 1.本願意匠の形態 本願意匠は,(1)容器と蓋から成るものであって,(2)当該容器は,上方と下方が膨出し,その間が湾曲状に凹んだ瓢箪型のもので,(3)その蓋は,扁平な円筒状の上部に円環状把持部を立設したものである。 そして,詳細には,(4)容器の縦横(最大径)比は,約3:1であり,(5)上方膨出部も下方膨出部も,端から約1/8の位置で最大径とし,(6)端から最大径の位置までの外形線を正円弧に近い曲線とし,(7)そこからは比較的緩やかな凸曲線及び凹曲線によって最小径の位置までつながっており,おおむね上下対称形としたものである。 蓋については,(8)蓋本体部の縦横比は,約1:2であり,その上に正面視で富士山形になだらかにつながった,側面視で倒立U字状の,把持部を設けたもので,その全体の高さは,蓋本体部の直径とほぼ同じであり,(9)把持部の貫通孔の周りにはそぎ切り口を設けているものである。 2.本願意匠の創作の容易性について この種物品分野において,(1)注出口に被せた蓋が容器の上部に接合する形態にすること,(2)容器を縦長の瓢箪型とすること,(3)扁平な円筒状の上部に円環状把持部を立設し,その正面視を富士山形に,側面視を倒立U字状とすることは,本願出願前より公知であるから,これらの態様に基づく形態については,創作が困難であったと認められない。 しかし,より具体的な形態までを詳細に検討すると,(4)上下膨出部につき,本願意匠は,端から約1/8の位置で最大径とし,端から最大径の位置までの外形線を正円弧に近い曲線とし,そこからは比較的緩やかな凸曲線につながっているのに対して,例示意匠3は,端から約1/6の位置で最大径とし,端から最大径の位置まで,及び,そこから中間部分の凹曲線までの外形線を,ほぼ同じ曲率の,本願意匠より緩やかな凸曲線としている。これにより,本願意匠は,上下の膨出部が,おおむね球状に認められ,かつ,嵩による比重が本体両端に寄っているように認められ,張りのある感じの形状になっているのに対して,例示意匠3は,なだらかで,やや中央寄りに比重が寄っているように認められ,本願意匠のような張りを感じない形状である。この点については,本願意匠は,例示意匠3を基に,常とう的に行われる変更の範囲で創作できた形状,又は,部分的な改変で創作できた形状,とはいえないものである。 また,(5)蓋の形態につき,本願意匠は,蓋本体部の縦横比は,約1:2であり,その貫通孔の周りのそぎ切り口を太幅としているのに対して,例示意匠4は,蓋本体部の縦横比を約1:3とし,貫通孔の周りのそぎ切り口を細幅の面取り状としている。この種物品分野において,蓋本体部の縦横比の比率を必要に応じて変えることは,常套的に行われる変更と認められ,本願意匠の比率に決定することに対して,創作が困難であったとは認められない。さらに,そぎ切り口の態様については,物(この場合は指)を挿入する貫通孔の周りに,入れやすいように面取り状とすることは,極常套的に行われる造形手法と認められる。しかし,本願意匠程の太幅とすることは,常套的に行われる面取り状の範囲を超えており,面取りを設けることとは創作趣旨が異なっていると認められるため,例示意匠4を基に,常とう的に行われる変更の範囲で創作できた形状,又は,部分的な改変で創作できた形状,とはいえないものである。 3.結び したがって,本願意匠は,原審で示された例示意匠を基にしては,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,原審の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-04-07 |
出願番号 | 意願2015-17951(D2015-17951) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(C5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 油科 壮一、内藤 弘樹 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 橘 崇生 |
登録日 | 2017-06-16 |
登録番号 | 意匠登録第1580811号(D1580811) |
代理人 | 山田 強 |
代理人 | 廣田 美穂 |