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審決分類 審判    K6
審判    K6
管理番号 1329156 
審判番号 無効2016-880013
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-06-20 
確定日 2017-05-08 
意匠に係る物品 シャワーヘッド用カートリッジ 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1476774号「シャワーヘッド用カートリッジ」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申立及び理由
請求人は,平成28年6月20日付けの審判請求において,「登録第1476774号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,その理由として,要旨以下のとおり主張し,証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証の書証を提出した。

1.意匠登録無効の理由の要点
(1)本件登録意匠は,出願前に頒布された刊行物である甲第1号証の図2に記載された意匠(以下「甲第1号証意匠1」という。)(無効理由1),及び図1に記載された意匠(以下「甲第1号証意匠2」という。)(無効理由2)と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるので,本件意匠登録は同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
(2)本件登録意匠は,出願前に頒布された刊行物である甲第1号証意匠1及び甲第1号証意匠2に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるので,本件意匠登録は同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。(無効理由3)

2.本件登録意匠を無効とすべき理由
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は,意匠登録第1476774号の意匠公報に記載のとおり,意匠に係る物品を「シャワーヘッド用カートリッジ」とし,実線で表された部分を部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本件実線部分」という。)としたものであり,その形態(構成態様)は以下に示すとおりとしたものである。以下に,便宜上,本件実線部分を表すカートリッジ本体の拡大斜視図,同正面図,同平面図及びa-a’部分拡大図の一部を抽出して示す。
なお,意匠に係る物品の説明において,「この意匠に係る物品はシャワーヘッド用カートリッジであって,使用状態を示す参考図に示すように,本物品の内部に化粧剤等を充填し,シャワーヘッドに装着して使用されるものである。なお,本物品内部に充填された化粧剤等が,シャワーヘッド内部を流れる水流に溶出することによりシャワーヘッドから化粧成分等を含む水流を吐出することができる。」との記載がある。
ア 本件実線部分の用途及び機能について
本件実線部分は,その意匠に係る物品の説明及び使用状態を示す参考図の記載によれば,シャワーヘッド用カートリッジの端部に突設された接続口部の接続部分,すなわち,シャワーヘッド側の接続部材と嵌合する部分に係り,シャワーヘッドへの水溶液の流出路としての機能も有するものと認められる。
イ 本件実線部分の位置,大きさ,範囲について
本件実線部分は,全体が円筒状の蓋付きカートリッジにおいて,カートリッジ(本体)の上部(流出側)に位置し,カートリッジ(本体)の上端から全高の略5%の長さ,幅はカートリッジ直径の略2/3の大きさ,範囲を占める。
ウ 本件実線部分の形態について
(a)基本的構成態様について
本件実線部分は,全体が細目の短円筒状(短円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部からなり,上面はドーナツ状平坦面状(ドーナツ状平坦面状部)でその内側(中央)が開口する,との基本的構成態様を有する。
具体的構成態様は以下のとおりである。
(b)短円筒状部の外周面について
短円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)を略1/2とする短円筒状で,厚みの薄い鍔状の上縁部下の溝部に上縁部の厚みよりやや太いOリングが嵌めこまれたもので,下方円筒部は,その長さ(軸方向の長さ)を上縁部の厚みの2倍強(外径の略0.2の長さ)としている。短円筒状部の下端は,外方へ拡がる細幅のリング状水平面がある。
(c)短円筒状部の上面について
ドーナツ状平坦面状部は,外周縁から内周縁の開口部際まで平坦面状で,中央開口部はその内径が外径の1/2弱の大きさとしている。

(2)甲第1号証意匠1
甲第1号証意匠1は,2008年4月24日付けで特許庁が発行した公開特許公報,特開2008-93188号(発明の名称「シャワー用カートリッジ」)の図2に記載されたシャワー用カートリッジの意匠であり,その意匠は,甲第1号証に示すとおりである。本件実線部分に相当する部分は,段差の手前の細い円筒部分細い円筒部及びその根元の外方へ延びる段状水平面を含む部分である(以下「甲1相当部分1」という。)。
甲第1号証の明細書によれば,甲第1号証意匠1は,図2に表された「シャワー用カートリッジ」の意匠で,図4に示すようにシャワーヘッドに内挿されるものである。図面の簡単な説明によれば,図2は第2実施形態に係るカートリッジの(a)軸線方向断面図,(b)軸線直交方向断面図を示す。図4はカーリッジを内挿したシャワーヘッドの斜視図と記載されている
明細書によれば,[0001]において「この発明は,水道水等に,機能性水溶性物質,例えば,亜硫酸カルシウムやアスコルビン酸などの脱塩素剤,ヒアルロン酸や尿素などの保湿剤,各種ビタミン類やコラーゲンなどの薬用成分などを徐放してシャワーから噴出させるシャワー用カートリッジに関するものである。」と記載されている。
また,当該第2実施形態に係るカートリッジについて,[0028]から[0034]までの記載によれば,円筒状ケース11の内側に,軸線方向に延びる排水管12が設けられたもので,排水管12とケース11の間に機能性水溶性物質を溶出する粒状の濾材fが詰められるもので,シャワーヘッドに装着して通水すると,図2(a)の→に示されるように,通水口16を介して原水の水道水がケース11に流人し,濾材fに接触して,通水口17を介して排水管12の内径面から排出され,逆止弁18から流出するものである。
したがって,甲第1号証意匠1は,「シャワー用カートリッジ」に係り,図4に示すようにシャワーヘッドに装着して使用されるもので,本シャワーカートリッジの内部に,濾材,具体的には機能性水溶性物質,例えば,亜硫酸カルシウムやアスコルビン酸などの脱塩素剤,ヒアルロン酸や尿素などの保湿剤,各種ビタミン類やコラーゲンなどの薬用成分などが詰められ,これらの濾材が溶出した水をシャワーから吐出させるものと認められる。また,図2(a)においては,流出側を下にして配されているが,図4のシャワーヘッドに装着された状態では,流出側が上,通水口16が下となるように取り付けられるものである。
なお,図2は断面図であるが,当該第2実施形態に係るカートリッジについて,[0028]において,円筒状のケース11と記載されていること,図2(b)に表された軸線直交方向断面図が円形であること等を総合すると,その構成態様は以下のとおりと認められ,正面からの外観形状を本件実線部分に相当する部分に対応して実線と破線で描き分けると[説明図3]の「参考正面図」のようになると推認される。「参考正面図」において実線で表した部分が本件実線部分に相当する部分を示す。
したがって,本件登録意匠に対応するように,図2の上下を逆さにして,以下,述べる。
ア 甲1相当部分1の用途及び機能について
甲1相当部分1は,シャワーヘッド用カートリッジの端部に突設されたシャワーヘッドの通水路に接続されるキャップ14の突出部分,すなわち,シャワーヘッド側の接続部材と嵌合する部分に係り,シャワーヘッドへの水溶液の流出路としての機能も有するものと認められる。
イ 甲1相当部分1の位置,大きさ,範囲について
甲第1号証意匠1は,全体が円筒状のカートリッジの上下に接続口部を突設したもので,「甲1相当部分1」は,カートリッジの流出側端部([説明図3]においては上部)に位置し,カートリッジの先端から全高の略5%の長さ,幅はカートリッジ直径の略2/3の大きさ,範囲を占める。
ウ 甲1相当部分1の形態について
(a)基本的構成態様について
甲1相当部分1は,全体が細口の短円筒状(短円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部からなり,上面はドーナツ状平坦商状(ドーナツ状平坦面状部)でその内側(中央)が開口する,との基本的構成態様を有する。
各部の具体的構成態様は以下のとおりである。
(b)短円筒状部の外周面について
短円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)を略1/2とする短円筒状で,厚みの薄い鍔状の上縁部下の溝に上縁部の厚みよりやや太いOリングが嵌めこまれたもので,下方円筒部は,その長さ(軸方向の長さ)を上縁部の厚みの2倍弱(外径の略0.15の長さ)としている。短円筒状部の下端は,外方へ僅かに径を大きくしたリング状水平面がある。
(c)短円筒状部の上面について
ドーナツ状平坦面状部は,その内周縁に細幅斜面状の面取りがあり,中央開口部はその内径が外径の1/2強の大きさとしている。

(3)甲第1号証意匠2
甲第1号証意匠2は,2008年4月24日付けで特許庁が発行した公開特許公報,特開2008-93188号(発明の名称「シャワー用カートリッジ」)の図1に記載されたシャワー用カートリッジの意匠であり,その意匠は甲第1号証に示すとおりである。本件実線部分に相当する部分は[説明図4]に示すように,赤枠で囲まれた部分の,[説明図4]の右下に示す拡大図においてピンク色マーカーで示す部分(円筒部及びその根元の本件実線部分に相当する外方へ延びる水平面を含む部分)である(以下「甲1相当部分2」という。)。
甲第1号証の明細書によれば,甲第1号証意匠2は,図1に表された「シャワー用カートリッジ」の意匠で,図4に示すようにシャワーヘッドに内挿されるものである。図面の簡単な説明によれば,図1は第1実施形態に係るカートリッジの(a)軸線方向断面図,(b)軸線直交方向断面図を示す。図4はカートリッジを内挿したシャワーヘッドの斜視図と記載されている。
上記(2)甲第1号証意匠1で述べた明細書の[0001]における記載「この発明は,水道水等に,機能性水溶性物質,例えば,亜硫酸カルシウムやアスコルビン酸などの脱塩素剤,ヒアルロン酸や尿素などの保湿剤,各種ビタミン類やコラーゲンなどの薬用成分などを徐放してシャワーから噴出させるシャワー用カートリッジに関するものである。」は,甲第1号証意匠2においても共通する。
また,当該第1実施形態に係るカートリッジについて,[0022]から[0027]までの記載によれば,円筒状ケース1の内側に,軸線方向に延びる導水管2が設けられたもので,導水管2とケース1の間に機能性水溶性物質を溶出する粒状の濾材fが詰められるもので,シャワーヘッドに装着して通水すると,図1(a)の→に示されるように,通水口6を介して原水の水道水がケース1に流人し,濾材fに接触して,通水口7を介してケース1の外径面から排出され,下流端を開いた場合はそのまま排出されるものである。
したがって,甲第1号証意匠2は,「シャワー用カートリッジ」に係り,図4に示すようにシャワーヘッドに装着して使用されるもので,本シャワーカートリッジの内部に,濾材,具体的には機能性水溶性物質,例えば,亜硫酸カルシウムやアスコルビン酸などの脱塩素剤,ヒアルロン酸や尿素などの保湿剤,各種ビタミン類やコラーゲンなどの薬用成分などが詰められ,これらの濾材が溶出した水をシャワーから吐出させるものと認められる。また,図1(a)においては,流出側を下にして配されているが,図4のシャワーヘッドに装着された状態では,流出側か上となるように取り付けられるものである。
なお,図1は一部切欠き断面図であるが,当該第1実施形態に係るカートリッジについて,[0022]において,円筒状のケース1と記載されていること,図1(b)に表された軸線直交方向断面図が円形であること等を総合すると,その構成態様は以下のとおりと認められ,正面からの外観形状を本件実線部分に相当する部分に対応して実線と破線で描き分けると[説明図5]の「参考正面図」のようになると推認される。「参考正面図」において実線で表した部分が本件実線部分に相当する部分を示す。
したがって,本件登録意匠に対応するように,図1の上下を逆さにして,以下,述べる。
ア 甲1相当部分2の用途及び機能について
甲1相当部分2は,シャワーヘッド用カートリッジの端部に突設されたシャワーヘッドの通水路に接続されるキャップ4の突出部分,すなわち,シャワーヘッド側の接続部材と嵌合する部分に係り,シャワーヘッドへの水等(当審注:平成29年1月10日付け口頭審理陳述要領書により水溶液から訂正)の流出路としての機能も有するものと認められる。
イ 甲1相当部分2の位置,大きさ,範囲について
甲第1号証意匠2は,全体が円筒伏のカートリッジの上下に接続口部を突設したもので,甲1相当部分2は,カートリッジの流出側端部に位置し,カートリッジの先端から全高の略5%の長さ,幅はカートリッジ直径の略2/3の大きさ,範囲を占める。
ウ 甲1相当部分2の形態について
(a)基本的構成態様について
甲1相当部分2は,全体が細口の短円筒状(短円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部からなり,上面はドーナツ状平坦面状(ドーナツ状平坦商状部)でその内側(中央)が開口する,との基本的構成態様を有する。
具体的構成態様は以下のとおりである。
(b) 短円筒状部の外周面について
短円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)を略1/2とする短円筒状で,厚みの薄い鍔状の上縁部下の溝に上縁部の厚みよりやや太いOリングが嵌めこまれたもので,下方円筒部は,その長さ(軸方向の長さ)を上縁部の厚みの2倍弱(外径の略0.15の長さ)としている。短円筒状部の下端は,キャップ上面ではあるものの外方へ僅かに径を大きくしたリング状に相当する水平面がある。
(c) 短円筒状部の上面について
ドーナツ状平坦面状部は,その内周縁に細幅斜面状の面取りがあり,中央開口部はその内径が外径の1/2弱の大きさとしている。

(4)本件登録意匠と甲第1号証意匠1(無効理由1)
本件登録意匠に対応するように,図2の上下を逆さにして,以下,対比する(参照 甲第8号証)。
ア 意匠に係る物品について
本件登録意匠と甲第1号証意匠1は,ともにシャワーヘッド用カートリッジである点において共通する。
そして,カートリッジ内部に水溶性の化粧剤,薬剤等を充填し,シャワーヘッドに装着して使用するもので,シャワーヘッドから水流に溶出した各種成分を含む水,浄水等を吐出するとの具体的な用途及び機能においても共通する。
イ 本件実線部分と甲1相当部分1の用途及び機能について
両部分は,シャワーヘッド用カートリッジの接続部分,すなわち,シャワーヘッド側の接続部材と嵌合する部分であり,上面中央の開口部がシャワーヘッドへの水等の流出路としての機能も有する点で,用途及び機能が共通する。
ウ 本件実線部分と甲1相当部分1の位置,大きさ,範囲について
両部分は,円筒状のカートリッジの流出側端部に位置している点で共通し,その大きさ,範囲についても共通する。
エ 本件実線部分と甲1相当部分1の形態の共通点及び差異点について
本件実線部分と甲1相当部分1を対比すると,以下の共通点及び差異点がある。
A 共通点
(a)基本的構成態様
両部分は,全体が細口の短円筒状(短円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部からなり,上面はドーナツ状平坦面状(ドーナツ状平坦面状部)でその内側(中央)が開口する,との基本的構成態様において共通する。
具体的構成態様のうち,以下の点において共通する。
(b)短円筒状部の外周面について
短円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)を略1/2とする短円筒状で,厚みの薄い鍔状の上縁部下の溝に上縁部の厚みよりやや太いOリングが嵌めこまれたもので,下方円筒部は,上縁部の厚みより長いものとし,その下端部は外方へ細幅リング状に拡がる水平面がある点。
B 差異点
具体的構成態様のうち,以下の点において差異がある。
(a)下方円筒部の長さについて
下方円筒部の長さについて,本件実線部分の外径に対する下方円筒部の長さ(軸方向の長さ)は,甲1相当部分1の外径に対する下方円筒部の長さよりやや長い点。
(b)上面のドーナツ状平坦面状部の内周縁部の態様について
本件実線部分は,上面のドーナツ状平坦面状部は,外周縁から内周縁の開口部際まで平坦面状としているのに対して,甲1相当部分1のドーナツ状平坦面状部は内周縁に細幅斜面状の面取りがあり,中央開口部が上面全体に占める大きさを本件実線部分の中央開口部が上面全体に占める大きさより僅かに大きいものとしている点。
オ.両意匠の類否判断
上記(4)エ Aで述べた共通点である「全体が細口の短円筒状で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部からなり,上面はドーナツ状平坦面状で内側(中央)が開口する,との基本的構成態様」は両意匠(部分)全体を支配する骨格的態様であり,需要者(取引者を含む。)に視覚的に強い共通感を与えるものである。さらに,短円筒状部について,外径に対する長さ(軸方向の長さ)を略1/2とする短円筒状で,厚みの薄い鍔状の上縁部下の溝に上縁部の厚みよりやや太いOリングが嵌めこまれたものとし,下方円筒部は,上縁部の厚みより長いものとして,その下端部は,外方へ細幅リング状に拡がる水平面があるとの具体的構成態様が,上記の共通感を一層強めている。
これに対し,上記(4)エ Bで述べた差異点は,以下に述べるように,いずれも形態全体としてみれば,限られた部分における軽微な差異であって,類否判断に与える影響は微弱なものにすぎず,本件登録意匠は甲第1号証意匠1に類似することは明らかである。
(a)下方円筒部の長さの差異について
シャワーヘッド等に装着されるカートリッジの接続口の外周に,水漏れ等を防ぐシール用Oリングを嵌めた構成は,この種物品において極めてありふれた構成であるところ,Oリングから下方(根元側)部分の長さはシャワーヘッド等の取り付け側のサイズに対応して適宜変更されるもので,本件実線部分に見られるような当該部位の長さを上縁部の厚みより,より長くした態様は,例えば,以下に挙げた登録意匠にも見られるように,本件登録意匠の出願前より見られるありふれた態様であり,かつ,本件実線部分と甲1相当部分1における外径に対する下方円筒部の長さの差異は極めて僅かであり,取り立てて需要者(取引者を含む。)の注意を強く引くものとはいえず,限られた部分における軽微な差異にすぎない。
i)意匠登録第1034981号意匠(甲第2号証)
ii)意匠登録第1054878号意匠(甲第3号証)
iii)意匠登録第1182423号意匠(甲第4号証)
iv)意匠登録第1418739号意匠(甲第5号証)
(b)上面のドーナツ状平坦面状部の内周縁部の態様について
本件実線部分のように上面ドーナツ状平坦面がそのまま周縁際まで平坦面状とした態様は,以下の例示に見られるように,本件登録意匠の出願前より普通に見られる態様であり,面取りのない平坦な態様が格別新規な特徴あるものとはいえず,本件実線部分の開口部の大きさが甲1相当部分1に比べて若干小さい点についても微差の範囲であり,当該差異が需要者(取引者を含む。)の注意を強く引くものとは到底いえず,類否判断に与える影響は微弱である。
v)特開2005-23583号の図1,図5及び図6に表された意匠(甲第6号証)
vi)意匠登録第1318992号意匠(甲第7号証)
したがって,先に述べたように,両意匠の共通点は,両意匠の全体の骨格的態様を表出するものであって,需要者(取引者を含む。)の注意を強く引く部分であり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。これに対し,前述したごとく,(a)下方円筒部の長さの差異,及び(b)上面のドーナツ状平坦面状部の内周縁部の態様の差異は,いずれも両意匠全体に与える影響は小さく,これらの差異を総合してもなお,両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものであり,本件登録意匠には甲第1号証意匠1とは異なる意匠的効果を有する新規な特徴が格別見出せないものであるから,両意匠が類似することは明らかである。
カ 以上述べたとおり,本件登録意匠は,その出願前に特許庁が発行した特許公開公報に記載された甲第1号意匠1に類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当し,意匠登録を受けることができない意匠であり,同法第48条第1項第1号により無効とすべきものである。

(5)本件登録意匠と甲第1号証意匠2(無効理由2)
本件登録意匠に対応するように,図1の上下を逆さにして,以下,対比する(参照 甲第9号証)。
ア 意匠に係る物品について
本件登録意匠と甲第1号証意匠2は,ともにシャワーヘッド用カートリッジである点において共通する。
そして,カートリッジ内部に水溶性の化粧剤,薬剤等を充填し,シャワーヘッドに装着して使用するもので,シャワーヘッドから水流に溶出した各種成分を含む水,浄水等を吐出するとの具体的な用途及び機能においても共通する。
イ 本件実線部分と甲1相当部分2の用途及び機能について
両部分は,シャワーヘッド用カートリッジの接続部分,すなわち,シャワーヘッド側の接続部材と嵌合する部分であり,上面中央の開口部がシャワーヘッドへの水等(当審注:平成29年1月10日付け口頭審理陳述要領書により水溶液から訂正)の流出路としての機能も有する点で,用途及び機能が共通する。
ウ 本件実線部分と甲1相当部分2の位置,大きさ,範囲について
両部分は,円筒状のカートリッジの流出側端部に位置している点で共通し,その大きさ,範囲についても共通する。
エ 本件実線部分と甲1相当部分2の形態の共通点及び差異点について
本件実線部分と甲1相当部分2を対比すると,以下の共通点及び差異点がある。
A 共通点
(a)基本的構成態様
両部分は,全体が細口の短円筒状(短円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部からなり,上面はドーナツ状平坦面状(ドーナツ状平坦面状部)でその内側(中央)が開口する,との基本的構成態様において共通する。
具体的構成態様のうち,以下の態様において共通する。
(b)短円筒状部の外周面(当審注:平成29年1月10日付け口頭審理陳述要領書により下端部から訂正)について
短円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)を略1/2とする短円筒状で,厚みの薄い鍔状の上縁部下の溝に上縁部の厚みよりやや太いOリングが嵌めこまれたもので,下方円筒部は,上縁部の厚みより長いものとし,その下端は外方へ細幅リング状に拡がる水平面がある点。
(c)短円筒状部の上面について(当審注:平成29年1月10日付け口頭審理陳述要領書により追加)
ドーナツ状平坦面状部の中央開口部は,その内径が外形の1/2弱の大きさとしている点。
B 差異点
具体的構成態様のうち,以下の点において差異がある。
(a)下方円筒部の長さについて
下方円筒部の長さについて,本件実線部分の外径に対する下方円筒部の長さ(軸
方向の長さ)は,甲1相当部分2の外径に対する下方円筒部の長さよりやや長い
点。
(b)上面のドーナツ状平坦面状部の内周縁部の態様について
本件実線部分は,上面のドーナツ状平坦面状部は,外周縁から内周縁の開口部
際まで平坦面状としているのに対して,甲1相当部分2のドーナツ状平坦面状部
は内周縁に細幅斜面状の面取りがある点。
オ.両意匠の類否判断
上記(5)エ Aで述べた共通点である「全体が細目の短円筒状で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部からなり,上面はドーナツ状平坦面状で内側(中央)が開口する,との基本的構成態様」は,両意匠(部分)全体を支配する骨格的態様であり,需要者(取引者を含む。)に視覚的に強い共通感を与えるものである。さらに,短円筒状部について,外径に対する長さ(軸方向の長さ)を略1/2とする短円筒状で,厚みの薄い鍔状の上縁部下の溝に上縁部の厚みよりやや太いOリングが嵌めこまれたものとし,下方円筒部は,上縁部の厚みより長いものとして,その下端部は,外方へ細幅リング状に拡がる水平面があるとの具体的構成態様が,上記の共通感を一層強めている。
これに対し,上記(5)エ Bで述べた差異点は,以下に述べるように,いずれも形態全体としてみれば,限られた部分における軽微な差異であって,類否判断に与える影響は微弱なものにすぎず,本件登録意匠は甲第1号証意匠2に類似することは明らかである。
(a)下方円筒部の長さの差異について
シャワーヘッド等に装着されるカートリッジの接続口の外周に水漏れ等を防ぐシール用Oリングを嵌めた構成は,この種物品において極めてありふれた構成であるところ,Oリングから下方(根元側)の長さはシャワーヘッド等の取り付け側のサイズに対応して適宜変更されるもので,本件実線部分に見られるような当該部位の長さを上縁部より長くした態様,すなわち,カートリッジの接続口において先端縁部よりOリングから根元側部分の長さを長くした態様は,例えば,以下に挙げた登録意匠にも見られるように,本件登録意匠の出願前より見られるありふれた態様であり,かつ,本件実線部分と甲1相当部分2の下方円筒部の長さの差異は極めて僅かであり,取り立てて需要者(取引者を含む。)の注意を強く引くものとはいえず,限られた部分における軽微な差異にすぎない。
i)意匠登録第1034981号意匠(甲第2号証)
ii)意匠登録第1054878号意匠(甲第3号証)
iii)意匠登録第1182423号意匠(甲第4号証)
iv)意匠登録第1418739号意匠(甲第5号証)
(b)上面のドーナツ状平坦面状部の内周縁部の態様について
本件実線部分のように上面ドーナツ状平坦面がそのまま内周縁際まで平坦面状とした態様は,以下の例示に見られるように,本件登録意匠の出願前より普通に見られる態様であり,面取りのない平坦な態様が格別新規な特徴あるものとはいえず,当該差異が需要者(取引者を含む。)の注意を強く引くものとは到底いえず,類否判断に与える影響は微弱である。
v)特開2005-23583号の図1,図5及び図6に表された意匠(甲第6号証)
vi)意匠登録第1318992号意匠(甲第7号証)
したがって,先に述べたように,両意匠の共通点は,両意匠の全体の骨格的態様を表出するものであって,需要者(取引者を含む。)の注意を強く引く部分であり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものであるのに対し,前述したごとく,差異点(a)下方円筒部の長さの差異,及び(b)上面のドーナツ状平坦面状部の内周縁部の態様の差異は,いずれも両意匠全体に与える影響は小さく,これらの差異を総合してもなお,両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものであり,本件登録意匠には甲号第1号証意匠2とは異なる意匠的効果を有する新規な特徴が格別見出せないものであるから,両意匠は類似することは明らかである。
カ 以上述べたとおり,本件登録意匠は,その出願前に特許庁が発行した特許公開公報に記載された甲第1号意匠2に類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当し,意匠登録を受けることができない意匠であり,同法第48条第1項第1号により無効とすべきものである。

(6)本件登録を無効とすべき理由 (無効埋由3)
ア 本件登録意匠は,その出願前に公然知られたシャワーヘッド用カートリッジの意匠の接続部分の形状,すなわち,甲1相当部分1,及び甲1相当部分2を,単に,上面開口部周縁を面取りのない平坦面状とし,Oリングの下方(根元側)の円筒部を僅かに長くした程度にすぎないものであり,当業者であれば格別の創意工夫を要することなく,容易に創作することができたものであり,登録を無効とすべきものである。
イ 本件登録意匠
前記(1)に述べたとおりである。
ウ 甲号第1号証意匠1
前記(2)に述べたとおりである。
エ 甲号第1号証意匠2
前記(3)に述べたとおりである。
[説明図10]は,本件実線部分と,甲1相当部分1及び甲1相当部分2を抽出してそれぞれ対比する図を示す。なお,本件実線部分はほぼ実寸と推察される大きさで対比する図とした。
オ 本件実線部分と甲1相当部分1を対比すると,前記(4)で述べたように,両部分は以下の差異点を除きほぼ共通する。
(a)下方円筒部の長さについて
下方円筒部の長さについて,本件実線部分の外径に対する下方円筒部の長さ(軸方向の長さ)は,甲1相当部分1の外径に対する下方円筒部の長さよりやや長い点。
(b)上面のドーナツ状平坦而状部の内周縁部の態様について
本件実線部分は,上面のドーナツ状平坦面状部は,外周縁から内周縁の開口部際まで平坦面状としているのに対して,甲1相当部分1のドーナツ状平坦面状部は内周縁に細幅斜面状の面取りがあり,中央開口部が上面全体に占める大きさを本件実線部分の中央開口部が上面全体に占める大きさより僅かに大きいものとしている点。
カ 本件実線部分と甲1相当部分2を対比すると,前記(5)で述べたように,以下の差異点を除き共通する。
(a)下方円筒部の長さについて
下方円筒部の長さについて,本件実線部分の外径に対する下方円筒部の長さ(軸方向の長さ)は,甲1相当部分2の外径に対する下方円筒部の長さよりやや長い点。
(b)上面のドーナツ状平坦面状部の内周縁部の態様について
本件実線部分は,上面のドーナツ状平坦面状部は,外周縁から内周縁の開口部際まで平坦面状としているのに対して,甲1相当部分2のドーナツ状平坦面状部は内周縁に細幅斜面状の面取りがある点。
キ 上記(6)オ及びカの差異点についての創作容易性の検討
A 上記(6)オの差異点について
(a)下方円筒部の長さの差異について
この種シャワーヘッド等に装着されるカートリッジの接続口の外周に,水漏れ等を防ぐシール用Oリングを嵌めた構成は,この種物品において極めてありふれた態様であるところ,Oリングから下方(根元側)の長さはシャワーヘッド等の取り付け側のサイズに対応して適宜変更されるもので,Oリングから下方(根元側)の長さを,上縁部より長くすること,すなわち,カートリッジの接続口において先端縁部よりOリングから根元側部分の長さを長くすることは,以下に挙げた登録意匠(例えば,意匠登録第1034981号意匠(甲第2号証),意匠登録第1054878号意匠(甲第3号証)及び意匠登録第1182423号意匠(甲第4号証))に見られるように,本件登録意匠の出願前より,この種物品分野において,普通に行われているものであって,本件登録意匠は,単に接続口のOリングから下方(根元側)部分の長さを当業者にとってありふれた手法に基づき,僅かに変更したにすぎないものであるから,本件実線部分に見られる態様が,格別創作を要するものではない。
(b)上面のドーナツ状平坦面状部の内周縁部の態様について
本件実線部分のように面取りのない平坦円状とすることはありふれた態様であり(例えば,特開2005-23583号の図1,図5及び図6に表されたカートリッジの意匠の接続部分の形状(甲第6号証),並びに意匠登録第1318992号意匠(甲第7号証)),開口部の大きさについても,シャワーヘッド等の接続側の設計に応じて適宜変更されるもので,格別意匠的効果を有するものではない。
B 上記力の差異点について
(a)上記(6)オ(a)において述べたところと同様である。
(b)上記(6)オ(b)において述べたところと同様である。
ク したがって,上記で述べたこの種物品分野において公然知られた意匠を基礎として検討すると,本件登録意匠は,公然知られたシャワーヘッド用カートリッジの意匠である甲1相当部分1,及び甲1相当部分2を,単に,上面開口部周縁をありふれた態様である面取りのない平坦面状とし,上面中央開口部の大きさ及びOリングの下方(根元側)の円筒部の長さをシャワーヘッドの取り付け側の形状に対応して僅かに変更した程度にすぎないものであり,当業者であれば格別の創意工夫を要することなく,容易に創作することができたものであるから,登録を無効とすべきものである。
ケ 以上のとおりであるから,本件登録意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が公然知られた,シャワーヘッド用カートリッジの意匠の接続部分の形状(「甲第1号証意匠1」及び「甲第1号証意匠2」)に基づいて,容易に意匠の創作をすることができたものと認められ,意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当し,その意匠登録は同法第48条第1項第1号により無効とすべきものである。

(7)むすび
以上のとおり,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号及び意匠法第3条
第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるため,同法第4
8条第1項第1号により,直ちに無効とされるべきである。

3.証拠方法
(1) 甲第1号証:特開2008-93188号公報(写し)
(2) 甲第2号証:意匠登録第103498ト号公報(写し)
(3) 甲第3号証:意匠登録第1054878号公報(写し)
(4) 甲第4号証:意匠登録第1182423号公報(写し)
(5) 甲第5号証:意匠登録第1418739号公報(写し)
(6) 甲第6号証:特開2005-23583号公報(写し)
(7) 甲第7号証:意匠登録第1318992号公報(写し)
(8) 甲第8号証:対比図1
(9) 甲第9号証:対比図2


第2 被請求人の答弁及び理由
1.答弁の趣旨
被請求人は,請求人の申立及び理由に対して,「請求人の請求を棄却する。審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める。」との答弁をし,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第5号証の2の書証を提出した。

2.答弁の理由
請求人は,平成28年6月20日付審判請求書(以下「請求書」という)において,意匠登録第1476774号(以下,「本件登録意匠」という)は,出願前に頒布された刊行物である甲第1号証の図2に記載された意匠(以下「甲第1号証意匠1」という。),及び図1に記載された意匠(以下「甲第1号証意匠2」という。)と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるので,本件意匠登録は同法第48条第1項第1号により,無効とすべきであると主張する(請求書2頁)。
また,本件登録意匠は,出願前に頒布された刊行物である甲第1号証意匠1及び甲第1号証意匠2に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるので,本件意匠登録は同法第48条第1項第1号により,無効とすべきであると主張する(請求書2頁)。
しかしながら,被請求人は以下に述べる理由により,請求人の主張は認められるものではなく,本件登録意匠の登録は無効とすべきものではないと考える。
なお,本件登録意匠の実線部分(部分意匠として登録を受けようとする部分)を以下「本件実線部分」といい,請求人が本件実線部分に相当すると主張する甲第1号証意匠1の部分を「甲1相当部分1」,甲第1号証意匠2の部分を「甲1相当部分2」という。

3.被請求人の反論
<反論の要旨>
本件登録意匠(本件実線部分)は下記(a)?(e)を備えた点に独自の特徴が認められ,新規性及び創作非容易性を具備するものである。一方,甲1号証意匠1,2には,上記特徴は認められないことから,これらに基づき,本件登録意匠の登録が無効とされるべきではない。
(a)開閉可能な蓋を備えた,ボトル状のシャワーヘッド用カートリッジ(包装用容器に準じた機能を兼ね備えている)における,シャワーヘッドとの接続部(本件実線部分)を対象とした部分意匠であって,蓋の内部に位置している点。
(b)本件実線部分の上面に開口部を設け,水溶液の流出路としての機能と,蓋との嵌合部としての機能とを併せ持たせた点。
(c)本件実線部分の全長(上下幅)を長くして,蓋側の嵌合凸部を,開口部から深く差し込めるようにした点。
(d)開口部の直径を上面部外径の2分の1以下に留めるとともに,開口縁部をフラットに形成して,蓋側の嵌合凸部と確実に係合できるようにした点。
(e)本件実線部分の下端部に,Oリングよりも外方に突出したリング状突条部を形成し,シャワーヘッド側の接続部材を安定的に支持できるようにした点。

(1)本件登録意匠の認定について
本件登録意匠は,意匠登録第1476774号の意匠公報に記載の通り,意匠に係る物品を「シャワーヘッド用カートリッジ」とし,その形態は,本体と蓋体からなるものであって,図面中,実線で表された部分を部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(本件実線部分)としたものである。
意匠に係る物品の説明に記載したように,本件登録意匠に係る物品は,内部に化粧剤等を充填し,シャワーヘッドに装着して使用されるものであるが,カートリッジ本体に蓋が被覆されているため,化粧剤等を充填した状態で,あたかも化粧品ボトルのように販売,携帯,保管等できるものである。
このように,本件登録意匠の願書及び図面の全体から,本件登録意匠に係る物品は,シャワーヘッド用カートリッジとしての機能,用途に加え,化粧剤等を充填し包装する「包装用容器」に準じた用途,機能を兼ね備えたものと認定することができる。

(2)本件実線部分の認定について
(2-1)本件実線部分の用途及び機能
i)請求人は,「本件実線部分はシャワーヘッド側の接続部材と嵌合する部分に係り,シャワーヘッドへの水溶液の流出路としての機能も有するものと認められる」と主張する(請求書3頁)。
ii)この点について異論はないが,本件登録意匠は蓋付きのシャワーヘッド用カートリッジであって,「a-a’部分拡大図」に示すように本件実線部分の上面中央の開口部には,蓋側の係合凸部を嵌合できるようになっている。
さらに,「使用状態を示す参考図」に示すように,本件実線部分下端部には,リング状突条部が形成されており,シャワーヘッド側の接続部材を支持できるようになっている。
したがって,本件実線部分は,水溶液の流出路としての機能に加え,蓋部との嵌合機能,シャワーヘッド側の接続部材の支持機能をも併せ持っていると認定すべきである。
(2-2)本件実線部分の位置,大きさ,範囲
請求人による本件実線部分の位置,大きさ,範囲に関する認定は,構成や数値の認定において不明確な点や誤認がある。正確には,以下のように認定すべきである。
・ 本件登録意匠は,全体が円筒状のカートリッジ本体の片側のみに蓋付きの接続口部を突設したもので,「本件実線部分」は,カートリッジ本体の上部(接続口側)において,蓋の内側に位置している。
・ 「本件実線部分」の上下幅はカートリッジ本体軸方向全長の約6%の大きさ,範囲を占める。また,その直径(Oリングを除く)はカートリッジ本体直径の約64%の大きさ,範囲を占める。
(2-3)本件実線部分の形態
(a)本件実線部分の基本的構成態様
i)請求人は,「本件実線部分け,全体が細口の短円筒状(短円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部からなり,上面はドーナツ状平坦面状(ドーナツ状平坦面状部)でその内側(中央)が開口する,との基本的構成態様を有する。」と主張するが(請求書4頁),下方円筒部の下端に形成された「リング状突条部」が基本的構成態様に含まれていない。
ii)当該リング状突条部は,本件実線部分において,「鍔状の上縁部」と同程度のウェイトを占めている。
また,「使用状態を示す参考図」に示すように,シャワーヘッドの接続部材の安定的な支持に寄与する部分であり,カートリッジをシャワーヘッドに着脱する際に,需要者が着目する主要な構成の一つである。
したがって,リング状突条部は,基本的構成態様に含めるべきである。
iii)さらに,請求人が用いている「短円筒状(短円筒状部)」という部材名称について,後述するように,本件実線部分の円筒状部は,甲1相当部分1の約1.7倍もの長さに及ぶものであるから,これらを一括りに「短円筒状」とするのではなく,単に「円筒状(円筒状部)」とした上で,具体的な長さの違いを対比するのが望ましい。
iv)また,「ドーナツ状平坦面状部」という部材名称が,本件実線部分と甲1相当部分1及び2に共通して使用されているが,甲1相当部分1及び2の当該部には面取りがあって「平坦」ではないため,単に「ドーナツ状部」とするのが妥当である。
v)以上を踏まえ,本件実線部分の基本的構成態様は,次のように認定するのが適切である。
「本件実線部分は,全体が細口の円筒状(円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部,リング状突条部からなり,上面はドーナツ状(ドーナツ状部)でその内側(中央)が開口する,との基本的構成態様を有する。」
(b)本件実線部分の具体的構成態様
請求人による本件実線部分の具体的構成態様は,数値認定が不明確な点や誤認がある。より正確には,以下のように認定すべきである。
・ 円筒状部の外周面について
イ)円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)の比を約57%とする円筒状である。
口)厚みの薄い鍔状の上縁部下の溝部に,上縁部の厚みよりやや太いOリングが嵌め込まれている。
ハ)下方円筒部の長さ(軸方向の長さ)は,上縁部の厚みの約300%(当審注:平成29年1月24日付け口頭審理陳述要領書により訂正)である。
ニ)リング状突条部の直径は,下方円筒部の直径の約114%である。
・ 円筒状部の上面について
ホ)ドーナツ状部は,外周縁から内周縁の開口部間際まで平坦面状である。
へ)中央開口部はその内径が,ドーナツ状部外径の約43%の大きさである。

(3)甲第1号証意匠1について
甲第1号証意匠1については,請求人による認定に加え,甲第1号証の明細書によれば,上下両端部に通水口(キャップ13,14)を有するカートリッジであって,いずれの通水口にも蓋は被覆されていない。
よって,甲第1号証意匠1に係る物品は,内部に化粧剤等を充填した状態で,販売,携帯,保管等できるような「包装用容器」に準じた用途,機能を兼ね備えたものではないと把握される。

(4)甲1相当部分1について
(4-1)甲1相当部分1の用途及び機能
i)請求人による「甲1相当部分1は,シャワーヘッド側の接続部材と嵌合する部分に係り,シャワーヘッドへの水溶液の流出路としての機能も有するものと認められる。」(請求書7頁)との認定について,甲1号相当部分1全体としては,そのような機能を有するものと推定されるが,甲第1号証の明細書中からは,シャワーヘッドとの具体的な嵌合態様までは特定できない。
(4-2)甲1相当部分1の位置,大きさ,範囲
請求人による甲1相当部分1の位置,大きさ,範囲の認定は,構成,数値等に不明確な点がある。
より正確には以下のように認定すべきである。
・ 「甲1号証意匠1は,全体が円筒状のカートリッジ上下に接続口部を突設したもので,「甲1相当部分1」は,カートリッジ流出側端部(接続口側)において表面に露出するように位置している。
・ 「甲1相当部分1」の上下幅は,カートリッジの本体軸方向全長の約4%の大きさ,範囲を占める。また,その直径(Oリングを除く)はカートリッジ本体直径の約67%の大きさ,範囲を占める。
(4-3)甲1相当部分1の形態
(a)甲1相当部分1の基本的構成態様
甲1相当部分1の基本的構成態様は,以下のように認定すべきである。(請求人の主張(請求書7頁乃至8頁)に対し,下線部を修正している)。「甲1相当部分1は,全体が細口の円筒状(円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配しかもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部,リング状突条部からなり,上面はドーナツ状(ドーナツ状部)でその内側(中央)が開口する,との基本的構成態様を有する。」
(b)甲1相当部分1の具体的構成態様
甲1相当部分1の具体的構成態様は以下のように認定すべきである。
・ 円筒状部の外周面について
イ’)円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)の比を約33%とする円筒状である。
ロ’)厚みの薄い鍔状の上縁部下の溝部に,上縁部の厚みよりやや太いOリングが嵌め込まれている。
ハ’)下方円筒部の長さ(軸方向の長さ)は,上縁部の厚みの約200%である。
ニ’)リング状突条部の直径は,下方円筒部の直径の約103%である。
・ 円筒状部の上面について
ホ’)ドーナツ状部は,その内周縁に細幅斜面状の面取りがある。
へ’)中央開口部はその内径が,ドーナツ状部外径の約69%の大きさである。

(5)甲第1号証意匠2について
甲第1号証意匠2については,請求人による認定に加え,甲第1号証の明細書によれば,ケース(部材番号1)の両端部に通水口(キャップ3,4)を取り付けたカートリッジであって,いずれの通水口にも蓋は被覆されていない。
よって,それ単体では,内部に化粧剤等を充填した状態で,販売,携帯,保管等できるような「包装用容器」に準じた用途,機能を兼ね備えたものではないと把握できる。
(6)甲1相当部分2について
(6-1)甲1相当部分2の用途及び機能
i)請求人は,「甲1相当部分2は,シャワーヘッド側の接続部材と嵌合する部分に係り,シャワーヘッドへの水溶液の流出路としての機能も有するものと認められる。」と主張する(請求書11頁)。
ii)しかし,甲第1号証の図1及び,明細書【0025】【0027】の記載を参酌すると,甲1相当部分2は「原水の流出路」としての機能を有するものであって,請求人が主張するような「水溶液の流出路」としての機能は備えていないものと考えられる。
iii)また,甲第1号証の明細書中には,甲1相当部分2がシャワーヘッド側の接続部材に対し,どのように嵌合されるかについては何ら開示がないため,接続態様を具体的に特定することはできない。
(6-2)甲1相当部分2の位置,大きさ,範囲
請求人による甲1相当部分2の位置,大きさ,範囲の認定は,構成,数値等に不明確な点がある。
より正確には以下のように認定すべきである。
・ 甲第1号証意匠2は,全体が円筒状をなし,その周面に複数の通水口(明細書中の「通水口7」)を設けたカートリッジにおいて,本体の上下に接続口部を突設しかもので,「甲1相当部分2」は,カートリッジの流出側端部(接続口側)において表面に露出するように位置している。
・ 「甲1相当部分2」の上下幅は,カートリッジの本体軸方向全長の略4%の大きさ,範囲を占める。また,その直径(Oリングを除く)はカートリッジ本体直径の略67%の大きさ,範囲を占める。
(6-3)甲1相当部分2の形態
(a)甲1相当部分2の基本的構成態様
甲1相当部分2の基本的構成態様は次のように認定すべきである(請求人の主張(請求書11頁)に対し,下線部を修正している)。
「甲1相当部分2は,全体が細口の円筒状(円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部からなり,上面はドーナツ状(ドーナツ状部)でその内側(中央)が開口する,との基本的構成態様を有する。」
(b)甲1相当部分2の具体的構成態様
甲1相当部分2の具体的構成態様は次のように認定すべきである。
・ 円筒状部の外周面について
イ”)円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)の比を約37%とする円筒状である。
ロ”)厚みの薄い鍔状の上縁部下の溝部に,上縁部の厚みよりやや太いOリングが嵌め込まれている。
ハ”)下方円筒部の長さ(軸方向の長さ)は,上縁部の厚みの約200%である。
ニ”)本件実線部分のリング状突条部に相当するものは形成されていない。
・ 円筒状部の上面について
ホ”)ドーナツ状部は,その内周縁に細幅斜面状の面取りがある。
へ”)中央開口部はその内径が,ドーナツ状部外径の約50%の大きさである。

(7)無効理由1(本件登録意匠と甲第1号証意匠1の類否)について
(7-1)意匠に係る物品
i)本件登録意匠と甲第1号証意匠1の意匠に係る物品について,請求人は,「ともにシャワーヘッド用カートリッジであり,浄水等を吐出するとの具体的な用途及び機能においても共通する。」と主張する(請求書12頁乃至13頁)。
ii)しかしながら,上述のとおり,両意匠は,包装用容器に準じた用途及び機能を兼ね備えているか否かという点において相違する。
iii)これにより,例えば販売時において,本件登録意匠に係る物品は,化粧品のように販売することができる(乙第1号証参照)のに対し,甲第1号証意匠1に係る物品は,そのように販売することが企図されたものではないと思われる。
このような差異により,需要者が購入する際に異なる物品であると認識する可能性が多分にあるといえる。
さらに,詳細は後述するように,このような用途,機能の相違は,両意匠の当該部分の用途及び機能や,位置・大きさ・範囲,さらには形態にも大きな影響を及ぼしている。
よって,包装用容器に準じた用途,機能を兼ね備えているか否かという相違は,両意匠の類否判断において十分に考慮する必要がある。
(7-2)本件実線部分と甲1相当部分1の用途及び機能
i)当該部分の用途及び機能について,請求人は,「シャワーヘッド側の接続部材と嵌合する部分であり,上面中央の開口部がシャワーヘッドへの水溶液等の流出路としての機能も有する点で,用途及び機能が共通する。」と主張する。
ii)しかしながら,本件実線部分は,「水溶液の流出路」としての機能に加え,「蓋部との嵌合機能」,「シャワーヘッド側の接続部材の支持機能」をも併せ持っているのに対し,甲1相当部分は,単に,水溶液の流出路としての機能を有するのみである点に相違が認められる。
iii)「蓋部との嵌合機能」や,「シャワーヘッド側の接続部材の支持機能」は,充填物の密封性や,シャワーヘッドとの嵌合性を左右し,意匠の機能美を左右する部分であることから,需要者は,このような機能を有しているか否かという点に関心を抱くものといえる。
よって,このような機能及び用途の相違は,両意匠の類否判断において十分に考慮する必要があるというべきである。
(7-3)本件実線部分と甲1相当部分1の位置,大きさ,範囲
i)当該部分の位置,大きさ,範囲について,請求人は,「両部分は,円筒状のカートリッジの流出側端部に位置している点で共通し,その大きさ,範囲についても共通する。」と主張する。
ii)しかしながら,上述のように,請求人による当該部分の位置,大きさ,範囲の認定は,構成,数値等に不明確な点があり,それに基づいてなされた,上記認定は妥当性を欠くものである。
本件実線部分及び甲1相当部分1の位置,大きさ,範囲の正しい認定に基づけば,両部分には,次のような共通点と差異点があると認定すべきである。
・ 共通点1
両部分は,円筒状のカートリッジの流出側端部に位置している点で共通している。
・ 共通点2
両部分は,その直径(Oリングを除く)が,カートリッジ本体直径に対し,65%前後の大きさ,範囲を占める点において概ね共通している。
・ 差異点1
本件実線部分は,カートリッジ本体の上部(接続口側)において,蓋の内側に位置している。
これに対し,甲1相当部分1は,カートリッジの流出側端部(接続口側)において表面に露出するよう位置している。
・ 差異点2
本件実線部分は,その上下幅が,カートリッジ本体軸方向全長の約6%の大きさ,範囲を占める。
これに対し,甲1相当部分1の上下幅は,カートリッジの本体軸方向全長の約4%の大きさ,範囲を占める。
iii)上記差異点1は破線部分を参酌した差異点てあるが,本件実線部分は蓋部と密接な位置関係にあり,蓋との嵌合機能も備えている。
このように,破線部分と実線部分との関わりが深い場合,需要者が当該部分を観察する場合に破線部分を看過できないといえることから,破線部分をも参酌した上で,実線部分の位置,大きさ,範囲を認定すべきである(乙第2号証:知財高裁 平成18年(行ケ)第10317号審決取消請求事件「プーリー事件」)。
そのように認定すると,両部分は蓋の有無により,当該部分の位置等が根本的に異なるものとなっており,需要者に対し全く異なる美感を想起させる要因になっている。
よって,当該差異点は,両意匠の類否判断において重視すべきである。
iv)なお,上記差異点2は,具体的構成態様上の差異点としても認定し得るものであるため,類否判断への影響については後述する。
(7-4)本件実線部分と甲1相当部分1の形態
被請求人による本件実線部分及び,甲1相当部分1の形態(基本的構成態様及び,具体的構成態様)の認定に基づけば,両部分の共通点,差異点は次のように把握される。
〔1〕基本的構成態様の共通点
両部分は,全体が細口の円筒状(円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部とリング状突条部からなり,上面はドーナツ状(ドーナツ状部)でその内側(中央)が開口する,との基本的構成態様において共通する。
〔2〕具体的構成態様の共通点,差異点
・ 共通点I(Oリング)
両部分は,厚みの薄い鍔状の上縁部下の溝部に,上縁部の厚みよりやや太いOリングが嵌め込まれている。
・ 差異点I(円筒状部)
本件実線部分の円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)の比を約57%とする円筒状である。
これに対し,甲1相当部分1の円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)の比を約33%とする円筒状である。
つまり,外径が同じだとすると,本件実線部分の円筒状部の全長は,甲1相当部分1の同長の約1.7倍(縦長)ということになる。
・ 差異点II(下方円筒部)
本件実線部分の下方円筒部の長さ(軸方向の長さ)は,上縁部の厚みの約300%(3倍)(当審注:平成29年1月24日付け口頭審理陳述要領書により訂正)である。
これに対し,甲1相当部分1の下方円筒部の長さ(軸方向の長さ)は,上縁部の厚みの約200%(2倍)である。
つまり,上縁部の厚みが同じであるとすると,本件実線部分の下方円筒部の長さは,甲1相当部分1の同長の約2倍縦長ということになる
・ 差異点III(リング状突条部)
本件実線部分のリング状突条部の直径は,下方円筒部の直径の約114%であり突出があることを明確に看取できる。
これに対し,甲1相当部分1のリング状突条部の直径は,下方円筒部の直径の約103%にとどまり,突出は殆ど目立たない程度のものである。
・ 差異点IV(ドーナツ状部)
本件実線部分上面のドーナツ状部は,外周縁から内周縁の開口部間際まで平坦面状である。
これに対し,甲1相当部分1のドーナツ状部は,その内周縁に細幅斜面状の面取りがある。
・ 差異点V(上面の中央開口部)
本件実線部分上面の中央開口部はその内径が,ドーナツ状部外径の約43%の大きさであり,上面部の半分以下にとどまる。
これに対し,甲1相当部分1上面の中央開口部はその内径が,ドーナツ状部外径の約69%の大きさである。
(7-5)本件登録意匠と甲第1号証意匠1の類否判断
i)請求人は,「基本的構成態様は両意匠(部分)全体を支配する骨格的態様であり,需要者(取引者を含む。)に視覚的に強い共通感を与えるものである。さらに共通する具体的構成態様が,上記の共通感を一層強めている。これに対し,差異点は,いずれも形態全体としてみれば,限られた部分における軽微な差異であって,類否判断に与える影響は微弱なものにすぎず,本件登録意匠は甲第1号証意匠1に類似することは明らかである。」と主張する(請求書14頁)。
ii)しかし,上述のとおり,請求人の主張は,類否判断の前提となる意匠の特定(認定)において誤認を含んでおり,それに基づいて行われた上記の判断は妥当性に欠けるものである。また,共通点,差異点への評価にも妥当性に欠ける点がある。
iii)両意匠の共通点,差異点については,以下のように評価すべきであり,かかる評価に基づけば,両意匠が互いに非類似であることは明白である。
〔1〕基本的構成態様の共通点について
i)両意匠(両部分)のようなシャワーヘッド用カートリッジにおいて,本体端部を先細りの円筒状にしてシャワーヘッド側との接続部とし,その上面に流路としての円形開口部を形成するとともに,外周部には接続対象との気密性を確保するためのOリングを装着した構成は,カートリッジとしての基本的な機能を果たすために,ほぼ不可避的に採用されるものであって,一般的,普遍的形態といえるものである。
よって,このような構成自体は,特段,需要者の注意を惹くものではなく,類否判断への影響は微弱であるというべきである。
ii)さらに,上述のように,両部分の基本的構成態様は「リング状突条部」を構成要素に含んでいるが,甲1相当部分1のリング状突条部は,その直径が,下方円筒部の直径の僅か103%にとどまり,突出の存在を殆ど認識できない。
したがって,この点(具体的構成態様の差異点mに相当する)は,実質的には,基本的構成態様上の差異点に相当し得るものであり,両意匠に別異な印象をもたらしている。
加えて,本件登録意匠のリング状突条部の具体的形状は,意匠の外観を大きく左右するのみならず,シャワーヘッド側の接続部材を安定的に支持できるよう,他との差別化が図られた部分であり,需要者の注目を大いに受ける意匠的要部といえるものであって,類否判断への影響が大きいものと評価すべきである。
〔2〕具体的構成態様の共通点,差異点について
i)上述のように,機能上の制約等により基本的構成態様がほぼ定型化せざるを得ない中,他との差別化が可能となるのは,各構成要素の具体的構成態様である。
したがって需要者は,具体的構成態様のうち,装飾性や機能性への貢献の大きい部分に特に着目するものといえる。
ii)また,当該部分は,その全体としてシャワーヘッドや蓋との接続機能等を果たすものであるから,その全体を,まとまりのある一つのものとして把握するものである。
したがって,当該部分全体として,公知の意匠とは異なる外観や,機能美を獲得していれば,需要者は,その全体から,特有の美感を感じ取るものであるといえる。
iii)このような点を踏まえつつ,両部分の具体的構成態様の共通点,差異点が類否判断に及ぼす影響について検討評価する。
・ 共通点I(Oリング)について
両部分は,厚みの薄い鍔状の上縁部下の溝部に,上縁部の厚みよりやや太いOリングが嵌め込まれた点が共通するが,接続端部寄りにOリングを設けることは,接続部の気密性を確保するために,ほぼ不可避的に採用せざるを得ない構成であり,単に,このような点が共通するからといって,需要者が両意匠に共通の印象を抱くことは有り得ない。
・ 差異点I,II(円筒状部)について
i)差異点Iは,「円筒状部のプロポーションの違い」に相当し,端的に言えば本線実線部分の円筒状部は,甲1相当部分よりも2倍細長い円筒状である。
ii)また,差異点IIは,「Oリングより上の部分と下の部分(下方円筒部)の長さの違い」に相当し,本件実線部分は,上部分と下部分の長さ比率が約1:4であるのに対し,甲1相当部分1においては,約1:2である。
つまり,本件実線部分の下部分の長さ比は,甲1相当部分1に比べて,約2倍に及ぶということである。
iii)請求人は,円筒状部の相違について「本件登録意匠の出願前より見られるありふれた態様であり,かつ,(中略)外径に対する下方円筒部の長さの差異は極めて僅かであり,取り立てて需要者(取引者を含む。)の注意を強く引くものとはいえず,限られた部分における軽微な差異にすぎない。」と主張している(請求書15頁)。
iv)しかしながら,差異点I,IIにより,本件実線部分は相対的に下方円筒部が長く感じられ,重心が高く,すらっとしたスタイリッシュな印象を与えるのに対し,甲1相当部分1は本件実線部分と比較すると重心が低く感じられ,安定的でずんぐりとした印象を与える。
このような違いは,視覚的に非常に顕著なものであって,軽微な差異ではない。
v)さらに本件実線部分の円筒状部の全長は,シャワーヘッドに接続する際,相手方との接触面積をより大きくし,フィット感を高めることができるよう,意図的に選択された長さである。
また,当該円筒状部を長くすることで,内部に形成する導通路も長くでき,蓋側の嵌合凸部を深く差し込むことができるため,蓋との嵌合もより確実なものにできる。
このように,本件実線部分の円筒状部の長さは,単に従来意匠を踏襲したものなどではなく,機能性に配慮して意図的に選択されたものであり,当該円筒状部以外(リング状突条部や上面開口部)の形態と意識的に組み合わせたことで,意匠全体として,独自の機能美を感じさせるものとなっているのである。
これに対し,甲1相当部分1の円筒状部は,本件実線部分に比べて全長が相対的に短いため,シャワーヘッド側との接続面積を広く確保することができず,さらには蓋部と嵌合することは全く考慮されていないことから,本願意匠のような機能美は感じられない。
vi)このように,差異点I,IIにより,外観及び機能美の両面において顕著な違いがもたらされている。
当該部分の用途,機能がシャワーヘッドや蓋と接続,嵌合であることを考慮すれば,このような違いは需要者が特に着目するものであって,類否判断に与える影響は極めて大きいといえる。
・ 差異点III(リング状突条部)について
i)本件実線部分は,接続部先端の限られた範囲を対象としたものであるから,リング状突条部が当該部分に占める比重は大きく,両意匠の類否判断において重視すべき要素である。
ii)本件実線部分のリング状突条部は,Oリングの外径よりも外側に突出しているため,段差の存在を明確に看取でき,凹凸感を感じさせる。
これに対し,甲1相当部分1のリング状突条部の突出は,Oリング外径内に収まる程度の僅かなものであって,段差の存在は殆ど感じられず,凹凸感は無いに等しい。
iii)さらに,本件実線部分のリング状突条部は,シャワーヘッド側の接続部材を支持することができるため,上記差異点I,IIと相侯って,シャワーヘッドとより確実に係合することができ,優れた機能美を強く感じさせるものである。
これに対し,甲1相当部分1のリング状突条部は,用途は不明であるが,シャワーヘッド側の接続部材を支持できるような突出幅ではなく,本件実線部分のような機能美は感じられない。
iv)このように,リング状突条部の差異は,上記差異点I,IIと相侯って,外観的にも機能美の上でも両部分に顕著な違いをもたらしており,類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
・ 差異点IV,差異点V(上面の中央開口部)について
i)差異点IVは,上面の中央開口部の縁部における面取りの有無に相当し,差異点Vは,上面に占める中央開口部の大きさの違いに相当する。
ii)請求人は,「本件実線部分のように上面ドーナツ状平坦面がそのまま周縁際まで平坦面状とした態様は,本件登録意匠の出願前より普通に見られる態様であり,面取りのない平坦な態様が格別新規な特徴あるものとはいえず,当該差異が需要者(取引者を含む。)の注意を強く引くものとは到底いえず,類否判断に与える影響は微弱である。」と主張する(請求書16頁)。
iii)しかしながら,本件実線部分の開口部には面取りが設けられておらず,かつ開口部の面積は,上面全体の4割程度にとどまるため,フラットで開口が小さい印象を与えるのに対し,甲1相当部分1の開口部は縁部に面取りがあり,かつ,開口部の面積は,上面全体の7割近くあるため,凹凸感があって開口が大きい印象を与える。
このような違いは,視覚的に顕著なものである。
iv)さらに,本件実線部分の開口部には,蓋部の嵌合凸部が挿通されるため,両部がフィットするよう開口部縁部を平坦にしたものである。
また,本件実線部分上面全体に対する,開口部の面積比(約4割)は,水溶液の流路としての機能を確保しつつ,蓋部との嵌合を確実にできるよう意図的に選択されたものである。
よって,本件実線部分の開口部の態様からは,蓋部との嵌合性に配慮した独特の機能美が感じられるのに対し,甲1相当部分1は,蓋材が嵌合するものではなく,特段の配慮は認められない。
v)このように,開口部における差異点IV,Vは,他の差異点とも相侯って,外観及び機能美の両面に顕著な違いをもたらすものであり,当該部分の機能,用途を踏まえれば,需要者が特に着目するものであって,類否判断に与える影響は極めて大きいといえる。
〔3〕両意匠の類否判断
i)以上に述べたとおり,本件登録意匠と甲第1号証意匠1は,「意匠に係る物品の用途及び,機能」「意匠登録を受けようとする部分(当該部分)の用途及び,機能」「当該部分の形態」「当該部分の物品全体の形態の中での位置,大きさ,範囲」のいずれにおいても相違が認められ,需要者の視覚を通じて全く異なる美感を想起させるものである。
ii)また,冒頭に記載したように,端的にいえば,本件登録意匠(本件実線部分)は下記(a)?(e)を備えた点に新規な特徴が認められるものであるが,甲第1号証意匠1はもちろんのこと,請求人により提示された甲第1?7号証のいずれにおいても,このような態様を兼ね備えたものは見られない。
(a)開閉可能な蓋を備えた,ボトル状のシャワーヘッド用カートリッジ(包装用容器に準じた機能を兼ね備えている)における,シャワーヘッドとの接続部(本件実線部分)を対象とした部分意匠であって,蓋の内部に位置している点。
(b)本件実線部分の上面に開口部を設け,水溶液の流出路としての機能と,蓋との嵌合部としての機能とを併せ持たせた点。
(c)本件実線部分の全長(上下幅)を長くして,蓋側の嵌合凸部を,開口部から深く差し込めるようにした点。
(d)開口部の直径を上面部外径の2分の1以下に留めるとともに,開口縁部をフラットに形成して,蓋側の嵌合凸部と確実に係合できるようにした点。
(e)本件実線部分の下端部に,Oリングよりも外方に突出したリング状突条部を形成し,シャワーヘッド側の接続部材を安定的に支持できるようにした点。
iii)以上より,本件登録意匠は全体として,甲第1号証意匠1とは明らかに非類似の意匠であって,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するものではない。

(8)無効理由2(本件登録意匠と甲第1号証意匠2の類否)について
本件登録意匠と甲第1号証意匠2との類否に関しては,上述した甲第1号証意匠1との類否判断と異なる点を以下に指摘する。
(8-1)意匠に係る物品
前記(7-1)の主張内容に同じである。
(8-2)本件実線部分と甲1相当部分2の用途及び機能
前記(7-2)での主張内容に加え,甲1相当部分2は,「原水」の流出路としての機能を有している点においても本件実線部分「水溶液の流出路としての機能を有する」と相違している。
(8-3)本件実線部分と甲1相当部分2の位置,大きさ,範囲
前記(7-3)の主張内容に同じである。
(8-4)本件実線部分と甲1相当部分2の形態の共通点及び差異点
〔1〕基本的構成態様の差異点
本件実線部分は下端部にリング状突条部が形成されているのに対し,甲1相当部分2には,これに相当するものが形成されていない。
〔2〕具体的構成態様の共通点,差異点
・ 共通点I’(Oリング)
前記共通点Iに同じ
・ 差異点I’(円筒状部)
本件実線部分の円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)の比を約57%とする円筒伏である。
これに対し,甲1相当部分2の円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)の比を約37%とする円筒状である。
・ 差異点II’(下方円筒部)
前記共通点nに同じ
・ 差異点III’(リング状突条部)
本件実線部分のリング伏突条部の直径は,下方円筒部の直径の約114%であり,突出があることを明確に看取できる。
これに対し,甲1相当部分2にはリング状突条部に相当するものは形成されていない。
・ 差異点IV’(ドーナツ状部)
前記差異点IVに同じ
・ 差異点V’(上面の中央開口部)
本件実線部分上面の中央開口部はその内径が,ドーナツ状部外径の約43%の大きさである。
これに対し,甲1相当部分2上面の中央開口部はその内径が,ドーナツ状部外径の約50%の大きさである。
(8-5)本件登録意匠と甲第1号証意匠2の類否判断
〔1〕基本的構成態様の差異点について
i)基本的構成態様において,円筒状部の下端部にリング状突条部が形成されているか(本件実線部分),否か(甲1相当部分2)という差異は,外観的にも機能的にも主要な構成要素の違いであって,需要者に対し強い別異感をもたらすものであり,類否判断への影響は極めて大きいというほかない。
〔2〕具体的構成態様の共通点,差異点について
・ 共通点I’(Oリング)について
・ 差異点I’,II’(円筒状部)について
・ 差異点III’(リング状突条部)について
・ 差異点IV’(ドーナツ状部)について
(7-5)で述べた共通点I及び,差異点I?IVに関する主張内容と基本的に同じである。
ただし,差異点III’について,甲1相当部分2はリング状突条部に相当するものを備えていないため,本件実線部分との違いは甲1相当部分1以上に顕著であり,類否判断への影響はさらに大きいといえる。
・ 差異点V(上面の中央開口部)について
甲1相当部分2は,上面の中央開口部の内径が,ドーナツ状部外径に占める割合が約50%であり,この点のみに着目すれば,甲1相当部分(同割合約69%)よりも,本件実線部分(同43%)に近い。
しかし,甲1相当部分2の上面開口部は,縁部の面取りも含めると,ドーナツ状部外径の半分以上を占めており,開口部が小さいという印象を与えるものではない。
よって,円筒状部やリング状突条部の差異と相侯って,両意匠に別異な印象をもたらしているものと認められる。
〔3〕両意匠の類否判断
以上に述べたとおり,本件登録意匠と甲第1号証意匠2は,「意匠に係る物品の用途及び,機能」「意匠登録を受けようとする部分(当該部分)の用途及び,機能」「当該部分の形態」「当該部分の物品全体の形態の中での位置,大きさ,範囲」のいずれにおいても相違が認められ,需要者の視覚を通じて全く異なる美感を想起させるものである。よって,本件登録意匠は全体として,甲第1号証意匠2とは明らかに非類似の意匠であって,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するものではない。

(9)無効理由3(本件登録意匠の創作非容易性)について
i)請求人は,「本件登録意匠は,甲1相当部分1,及び甲1相当部分2を,単に,上面開口部周縁を面取りのない平坦面状とし,Oリングの下方(根元側)の円筒部を僅かに長くした程度にすぎないものであり,当業者であれば格別の創意工夫を要することなく,容易に創作することができたものであり,登録を無効とすべきものである。」と主張する(請求書22頁)。
ii)しかしながら,本件実線部分は,シャワーヘッド用カートリッジの端部に形成された接続部分の限られた一部分を対象としたものであって,その限られた範囲の中で,装飾性や機能性に配慮しながら,各部の具体的な態様を決定し,それら全体として最適な態様となるよう検討していくプロセスにおいて,創作性が発揮されるものである。
詳細は以下に述べるように,本件登録意匠は,まさにそうした部分において独自の創作性が発揮されたものであって,甲1相当部分1及び2に基づき当業者が容易に創作し得たものではない。
(9-1)本件実線部分と甲1相当部分1の対比
両部分には次のような差異点が認められる。
・ 物品全体における当該部分の位置
本件実線部分は,カートリッジ本体の上部(接続口側)において,蓋の内側に位置しているのに対し,甲1相当部分1は,カートリッジの流出側端部(接続口側)において表面に露出するよう位置している。
なお,請求人は,この差異点を看過している。
・ 下方円筒部の長さ
i)本件実線部分の外径に対する下方円筒部の長さ(軸方向の長さ)は,甲1相当部分の外径に対する下方円筒部の長さの約2倍である。言い換えれば,外径が同じであるとした場合,本件実線部分の下方円筒部は2倍縦長となる。
ii)なお,下方円筒部の長さの違いについて,請求人は「本件実線部分の外径に対する下方円筒部の長さ(軸方向の長さ)は,甲1相当部分1の外径に対する下方円筒部の長さよりやや長い」と認定している(請求書23頁)。
しかし,両部の間には,約2倍もの違いがあり,これは視覚的に非常に顕著な相違であって,機能性への影響も大きいことから「やや長い」という認定は適切ではない。
・ 上面開口部の大きさ態様
本件実線部分上面の中央開□部の大きさは,上面部の半分以下にとどまるのに対し,甲1相当部分1の開口部は上面部の約70%を占めるとともに,縁部に面取りがある。
・リング状突条部の態様
本件実線部分のリング状突条部は,下方円筒部から1割以上突出しているのに対し,甲1相当部分1のリング状突出部は,いえないほど僅かなものである。
なお,請求人は,この差異点を看過している。
(9-2)本件実線部分と甲1相当部分2の対比
両部分には次のような差異点が認められる。
・ 物品全体における当該部分の位置
(9-1)の「・物品全体における当該部分の位置」において述べたところと同様である。
・ 下方円筒部の長さ
(9-1)の「・下方円筒部の長さ」において述べたところと同様である。
・ 上面開口部の大きさ,態様
本件実線部分上面の中央開口部の大きさは,上面部の半分以下にとどまるのに対し,甲1相当部分2の開口部は上面部の約50%を占めるとともに,縁部に面取りがある。
・ リング状突条部の態様
i)本件実線部分は下方円筒部から1割以上突出するリング状突条部が形成されているのに対し,甲1相当部分2には,これに相当するものが形成されていない。
(9-3)本件登録意匠の創作性について
i)請求人は,請求人が指摘する差異点(a)(b)ごとに分けて創作非容易性の検討を行っている(請求書24乃至26頁)。
しかし,上述したように,本件登録意匠は,各構成要素の形状やプロポーション,さらにはそれらの組み合わせにおいて,無数の選択肢がある中で,装飾性や機能性に配慮しつつ,特定の形状,プロポーションを選択し,全体として新たな意匠となるようまとめあげた点に創作性を有するものである。
よって,本件登録意匠の創作非容易性の検討は,あくまでも,意匠全体に対して行うべきであり,差異点ごとに分けて検討するのみで,その全体を評価しない手法は妥当性に欠ける。
しかも,請求人は,物品全体における当該部分の位置の相違及び,リング状突条部における相違を看過した状態で創作非容易性の検討を行っており,適切な判断がなされたとは到底言えない。
ii)また請求人は,下方円筒部の長さに関し,甲第2乃至4号証意匠を証拠資料として挙げ,「Oリングから下方(根元側)の長さはシャワーヘッド等の取り付け側のサイズに対応して適宜変更されるもので(中略),本件登録意匠は,単に接続口のOリングから下方(根元側)部分の長さを当業者にとってありふれた手法に基づき,僅かに変更したにすぎないものであるから,本件実線部分に見られる態様が,格別創作を要するものではない」と主張している(請求書24頁)。
iii)さらに請求人は,上面開口部の態様について,甲第6及び7号証意匠を証拠資料として挙げ,「本件実線部分のように面取りのない平坦円状とすることはありふれた態様であり(中略),開口部の大きさについても,シャワーヘッド等の接続側の設計に応じて適宜変更されるもので,格別意匠的効果を有するものではない」と主張している(請求書25頁)。
iv)しかし,前述のように,本件登録意匠は,蓋付きのカートリッジであって,本件実線部分は,単に,シャワーヘッドとの接続の都合だけでなく,蓋との嵌合性にも配慮して,全体的なまとまりをもって創作された意匠である。
v)すなわち,前述した事項の繰り返しになるが,本件登録意匠において創作性が発揮されているのは,以下(a)?(e)の態様を兼ね備えた点である。
(a)開閉可能な蓋を備えた,ボトル状のシャワーヘッド用カートリッジ(包装用容器に準じた機能を兼ね備えている)における,シャワーヘッドとの接続部(本件実線部分)を対象とした部分意匠であって,蓋の内部に位置している点。
(b)本件実線部分の上面に開口部を設け,水溶液の流出路としての機能と,蓋との嵌合部としての機能とを併せ持たせた点。
(c)本件実線部分の全長(上下幅)を長くして,蓋側の嵌合凸部を,開口部から深く差し込めるようにした点。
(d)開口部の直径を上面部外径の2分の1以下に留めるとともに,開口縁部をフラットに形成して,蓋側の嵌合凸部と確実に係合できるようにした点。
(e)本件実線部分の下端部に,Oリングよりも外方に突出したリング状突条部を形成し,シャワーヘッド側の接続部材を安定的に支持できるようにした点。
このような配慮及び,それに基づいて創作された全体の態様は,甲第1乃至7号証意匠のいずれにおいても認められないもので,本件登録意匠独自のものである。
vi)また,請求人は「シャワーヘッド等の取り付け側のサイズに対応して適宜変更される」「シャワーヘッド等の接続側の設計に応じて適宜変更される」等と指摘するのみで,当該部分と蓋との嵌合性については,全く言及していない
このこと自体,本件登録意匠の創作において,蓋との嵌合性にも配慮するという着想及び,それを具体化した本件実線部分全体の態様が,極めて独自性の強いものであることを示すものである。
vii)さらに,請求人は,下方円筒部の長さや,上面開口部の大きさが改変可能であると主張するが,実際には,その長さ,大きさ,それらの組み合わせ方には無数の選択肢がある。
本件意匠の創作においては,そのような無数の選択肢がある中から,全体的なバランスや機能性に配慮しつつ,特定の長さや大きさを意図的に選択して,当該部分全体として,新たな美感を有する意匠としてまとめ上げているのである。
このような創作行為は,単に甲1乃至7号証の意匠が存在するからといって,当業者が容易になし得るものではない。
viii)なお,以下の審判事件は,本件登録意匠とは物品分野が異なるが,創作非容易性の判断について一定の基準を示すものである。
これらの審決で示された判断基準に照らしても,本件登録意匠は容易な意匠には該当しないというべきである。
・ 平成19年(行ヶ)第10078号「貝吊り下げ具」に関する審決取消請求事件(乙第3号証)
※以下に判決文の一部を転載する。
「・・・連結部の形状をどのようにするか(中略)については(中略),様々な意匠を選択する余地があるといえる。」
「そうすると,本願意匠と例示意匠1との相違点(中略)を,例示意匠2の2本の連結紐に置き換えることによって,本願意匠の特徴を形成することは,当業者において容易に創作し得たということはできない。」
「・・・その全体の印象として,特有のまとまり感のある,本願意匠の特徴を選択することは,当業者が容易に創作し得たとはいえない・・。」
・ 平成20年(行ケ)第10071号「研磨パッド」に関する審決取消請求事件(乙第4号証)
※以下に判決文の一部を転載する。
「・・・溝間隔の幅によって,(中略)形成される形状は様々であり,それぞれの場合において,当該意匠から受ける印象は異なる可能性がある。したがって,どのような溝間隔の幅を選択するかということは,当該意匠から受ける印象などをも考慮して決定されるものであり,その決定の過程においても相当程度の創作性を要するものと認められ・・・。」
viii)以上に述べた理由から,本件登録意匠は,甲第1号証の1及び2に基づいて当業者が容易に創作し得たものではなく,本件登録意匠は創作非容易性を具備している。
よって,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するものではない。

(10)むすび
以上に述べたように,「本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号及び同第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるため,同法第48条第1項第1号の規定により,無効とされるべきである」とする請求人の主張は成り立たない。

4.添付書類
(1)乙第1号証 出願人が運営するウェブサイトに掲載した本件登録意匠の実施品の紹介ページの写し
(http://www.mtg.gr.jp/products/beauty/product/obleu/cartridge/)
(2)乙第2号証 平成18年(行ケ)第10317号審決取消請求事件(「プーリー事件」)判決文の写し
(3)乙第3号証 平成19年(行ケ)第10078号審決取消請求事件(「貝吊り下げ具」)判決文の写し
(4)乙第4号証 平成20年(行ケ)第10071号審決取消請求事件(「研磨パッド」)判決文の写し
(5)乙第5号証 対比図


第3 口頭審理
本件審判について,当審は,平成29年2月7日に口頭審理を行った。(口頭審理において,審判長は,以後書面審理とする旨を両当事者に告知した。)

1.請求人
請求人は,平成29年1月10日付けの口頭審理陳述要領書及び平成29年2月6日付けの口頭審理陳述要領書(2)のとおり主張し,証拠方法として甲第10号証ないし甲第14号証を提出した。
《1》平成29年1月10日付けの口頭審理陳述要領書
〔1〕陳述の要領
(1)本件意匠登録を無効とすべき理由の要点
ア.無効埋由1
本件登録意匠(意匠登録第1476774号意匠)は,甲第1号証意匠1と類似する。
意匠に係る物品がシャワーヘッド用カートリッジである点において共通し,本件実線部分と甲1相当部分1を対比すると,両部分の用途及び機能,両部分の位置,大きさ,範囲が共通する。
そして,形態について,以下の共通点,差異点がある。
A.共通点
両部分は,(a)全体が細口の短円筒状(短円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部からなり,上面はドーナツ状平坦面状(ドーナツ状平坦面状部)でその内側(中央)が開口する,との基本的構成態様,及び具体的構成態様のうち,(b)短円筒状部の外周面について,短円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)を略1/2とする短円筒状で,厚みの薄い鍔状の上縁部下の溝に上縁部の厚みよりやや太いOリングが嵌めこまれ,下方円筒部は,上縁部の厚みより長いものとし,その下端部は外方へ紳陥リング状に拡がる水平面がある点において共通する。
B.差異点
(a)下方円筒部の長さについて,本件実線部分の外径に対する下方円筒部の長さ(軸方向の長さ)は,甲1相当部分1の外径に対する下方円筒部の長さよりやや長い点,
(b)上面のドーナツ状平坦面状部の内周縁部の態様について,本件実線部分は,外周縁から内周縁の開口部際まで平坦面状としているのに対して,甲1相当部分1は内周縁に絲1幅斜面状の面取りがあり,中央開口部が上面全体に占める大きさを,本件実線部分の中央開口部が上面全体に占める大きさより僅かに大きいものとしている点。
両意匠の共通点,差異点について,共通点は,両意匠の全体の骨格的態様を表出するものであって,需要者(取引者を含む。)の注意を強く引く部分であり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものであるのに対し,差異点(a)及び(b)の差異は,いずれも両意匠全体に与える影響は小さく,これらの差異を総合してもなお,両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものであり,本件登録意匠には甲第1号証意匠1とは異なる意匠的効果を有する新規な特徴が格別見出せないものであるから,両意匠は類似する。
イ.無効理由2
本件登録意匠(意匠登録第1476774号意匠)は,甲第1号証意匠2と類似する。
意匠に係る物品がシャワーヘッド用カートリッジである点において共通し,本件実線部分と甲1相当部分2を対比すると,両部分の用途及び機能,両部分の位置,大きさ,範囲が共通する。
そして,形態について,以下の共通点,差異点がある。
A.共通点
(1)ア.A.の共通点とほぼ同様である。(C)短円筒状部の上面について,中央開口部はその内径が外径の1/2弱の大きさとしている点においても共通する(なお,審判請求書19頁に誤記があったので修正する。(11)ウ.及びエ.参照)。
B.差異点
(a)下方円筒部の長さについて,本件実線部分の外径に対する下方円筒部の長さ(軸方向の長さ)は,甲1相当部分2の外径に対する下方円筒部の長さよりやや長い点(上記(1)ア.B.(a)の差異点と同様)。
(b)上面のドーナツ状平坦面状部の内周縁部の態様について,本件実線部分は,外周縁から内周縁の開口部際まで平坦面状としているのに対して,甲1相当部分2は内周縁に細幅斜面状の面取りがある点(上記(1)ア.B.(b)の差異点と中央開口部が全体に占める大きさに差異がない点を除き同様である)。
共通点,差異点について,共通点は,両意匠の全体の骨格的態様を表出するものであって,需要者(取引者を含む。)の注意を強く引く部分であり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものであるのに対し,差異点(a)及び(b)の差異は,いずれも両意匠全体に与える影響は小さく,これらの差異を総合してもなお,両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものであり,本件登録意匠には甲第1号証意匠2とは異なる意匠的効果を有する新規な特徴が格別見出せないものであるから,両意匠は類似する。
ウ.無効理由3
本件登録意匠は,甲1相当部分1,及び甲1相当部分2を,単に,上面開口部周縁を面取りのない平坦面状とし,Oリングの下方(根元側)の円筒部を僅かに長くした程度にすぎないものであり,当業者であれば格別の創意エ夫を要することなく,容易に創作することができたものである。
(i)本件登録意匠と甲1相当部分1との対比
共通点及び差異点は前記(1)ア.と同様である。
差異点についてみると,以下の点から当業者であれば格別の創作を要するものではないといえる(請求書24頁及び25頁)。
(a)下方円筒部の長さの差異について,カートリッジの接続口において先端縁部よりOリングから根元側部分の長さを長くすることは本件登録意匠の出願前より,この種物品分野において,普通に行われているものであって,ありふれた手法に基づき,僅かに変更した程度にすぎないものである。
(b)上面のドーナツ状平坦面状部の内周縁部の態様について,本件実線部分のように面取りのない平坦円状とすることはありふれた態様であり,開口部の大きさについても適宜変更される程度のもので,格別意匠的効果を有するものではない。
(ii)本件登録意匠と甲1相当部分2との対比
共通点及び差異点は前記(1)イ.と同様である。
差異点については,上記(i)(a)及び(b)と同様であり,中央開口部が上面全体に占める大きさはほぼ同じで違いはないから,当業者であれば格別の創作を要するものではないといえる(請求書25頁)。
したがって,本件実線部分は,上面開口部周縁を面取りのない平坦面状とし,Oリングの下方(根元側)の円筒部を僅かに長くすることに格別意匠の着想の新しさはなく,甲1相当部分1,甲1相当部分2から若干変更した程度との視覚的印象しかなく,甲1相当部分1,甲1相当部分2とは全く異なった意匠的効果を有するといえる程のものではなく,実線部分全体として観察する場合,未だ新たな美感を有する意匠ということができる程の着想,創作力を必要としたとは到底いうことができない。
(2)答弁書に記載された図について
ア.答弁書20頁に,本件登録意匠と甲第1号証意匠1を対比する図が記載されているが,本件登録意匠(本体の正面図より)との表示の下に配された図は,本件登録意匠の図(【カートリッジ本体の拡大正面図】)より,上縁部の厚みが薄くなっており,上縁部とOリングとの空隙が,本件登録意匠の図は,上縁部とOリングとの空隙と,Oリングと下方円筒部との空隙は,1対1であるにも拘わらず,当該図では,2対1と視認される程に改変されているところから,対比すべき本件登録意匠の提示に誤りがある([図1]参照)。
同様に,答弁書24頁,27頁,31頁及び35頁の本件登録意匠,及び乙第5号証の2に表された「本件登録意匠」の図も本件登録意匠とは異なるものであるので,対比すべき本件登録意匠に誤りがあるといわざるを得ず,作為的ともとれるもので,これに基づく被請求人の主張は失当である。
イ.請求人は,本件登録意匠と甲第1号証意匠1又は意匠2を適切に対比できるよう,甲第10号証対比図3を提出する。
対比図3の本件登録意匠の図(「カートリッジ本体の拡大正面図」)について,実際の実施製品の大きさは,乙第1号証の第4頁に「約(直径)21.5mm×(高さ)142mm」と記載されているので,これに基づき実施製品の大きさを想定して,カートリッジ本体の径が約21.5mmとなる大きさで配し,本件実線部分,甲第1号証意匠1及び意匠2の各短円筒状部の径をほぼ合わせて対比する図とした。
甲第1号証意匠1又は意匠2について,これらの図から推認される本件実線部分に相当する部分に対応して実線と破線で描き分けた「参考平面図」をそれぞれ追加して対比する。対比図3に示す本件登録意匠の「カートリッジ本体の拡大平面図」及び甲第1号証意匠1又は意匠2の各「参考平面図」において緑色着色部分は中央開口部,黄色着色部分は短円筒状部の上面を示す。
(3)被請求人の主張する<反論の要旨>について
ア.被請求人は,答弁書4頁の反論の要旨において,「本件登録意匠(本件実線部分)は下記の(a)?(e)を備えた点に独自の特徴が認められ,新規性及び創作非容易性を具備するものである。一方,甲1号証意匠1,2には,上記特徴は認められないことから,これらに基づき,本件登録意匠の登録が無効とされるべきではない。」と主張する。
(a)開閉可能な蓋を備えた,ボトル状のシャワーヘッド用カートリッジ(包装用容器に準じた機能を兼ね備えている)における,シャワーヘッドとの接続部分を対象とした部分意匠であって,蓋の内部に位置している点。
(b)本件実線部分の上面に開口部を設け,水溶液の流出路としての機能と,蓋との嵌合部としての機能とを併せ持たせた点。
(c)全長を長くして,蓋側の凸部を,開口部から深く差し込めるようにした点。
(d)開口部の直径を上面部外径の2分の1以下に留めるとともに,開口縁部をフラットに形成して,蓋側の嵌合凸部と確実に係合できるようにした点。
(e)下端部に,Oリングよりも外方に突出したリング状突条部を形成し,シャワーヘッド側の接続部材を安定的に支持できるようにした点。
しかしながら,(a)?(e)はいずれも甲1号証意匠1及び意匠2との類否判断を左右する要素としては微弱であり,(a)?(e)を備えた点が,格別新規な特徴あるもの,又は格別創作力を要するということはできないものであるから,上記主張は失当である。以下,その理由を述べる。
イ.前記(3)ア.(a)及び(b)の点について,本件登録意匠の意匠に係る物品の説明では,本件シャワーヘッド用カートリッジが,包装用容器に準じた機能を兼ね備えている旨は格別記載されておらず,本件登録意匠と甲第1号証意匠1及び意匠2は,シャワーヘッド用カートリッジである点で共通する。実線で表されたシャワーヘッドとの接続部分は,カートリッジの上部(流出側)に位置するものであり,破線で表された蓋の有無は類否判断に影響しないものであるから,蓋の内部に位置する点に格別特徴があり,又は格別創作力を要するとはいえない。むしろ,シャワーヘッド側の接続部材と嵌合する部分である点では甲第1号証意匠1及び意匠2と共通するものであるから,蓋との嵌合機能はシャワーヘッドに取り付け使用する前の付随的機能にすぎず,甲1号証意匠1及び意匠2との類否判断において,当該部分における用途及び機能が同一又は類似するかの判断に影響を及ぼす要素,又は格別の創作力を要するか否かの判断要素として考慮されるべきものではない。
ウ.ちなみに,被請求人が,本件登録意匠に係るシャワーヘッド用カートリッジは包装用容器に準じた機能を兼ね備えている旨を主張しているので,包装用容器の分野の登録例を見ると,[図2]に示すように,蓋付きの容器と,蓋無しの容器は,蓋部の有無にかかわらず実線部分が共通していれば,類似すると判断されている。すなわち,包装用容器の意匠であってさえ,実線部分の位置,大きさ,範囲の観点からは,蓋の有無が,部分意匠類否判断に影響を与える可能性は少ないことを示している(甲第11号証及び甲第12号証)。
エ.前記(3)ア.(c)及び(d)の点について,前記(3)ア.(c)の全長を長くした点は,請求書15頁?17頁で述べたように,ありふれた態様であり,前記(3)ア.(d)の開口部の直径を上面部外径の2分の1以下に留め,開口縁部をフラットに形成した点についても,開口部の直径を上面部外径の2分の1以下(略1/2弱)に留めた点は甲第2号証意匠と共通するものであり,開口部の大きさについて,需要者は,上面部外径の略1/2程度と認識するにとどまるものであるから,開口部直径が上面部外径の略2分の1以下であるか否かは類否判断の重要な要素ではなく,格別創作を要するものでもない.そして,開口縁部をフラットに形成した点についても,開口縁部をフラットに形成した態様は,請求書16頁及び17頁等で述べた普通に見られる態様であり,格別新規な特徴があるものとはいえず,これもまた需要者が注意を引く部分ではないこと,格別創作を要するものでもないことは明らかである。
したがって,前記(3)ア.(c)及び(d)の点は,甲第1号証意匠1及び意匠2とのそれぞれとの対比において,両部分の類否判断,及び格別創作を要したか否かの判断において重要な要素として考慮されるべきものではない。
なお,前記(3)ア.(c)において,被請求人が主張する「蓋側の凸部を,開口部から深く差し込めるようにした点」については,機能的な要素を主張するにすぎないものであり,意匠の新規性,創作非容易性の判断において格別考慮されるべき点ではない。
また,前記(3)ア.(d)において,被請求人が主張する「蓋側の嵌合凸部と確実に係合できるようにした点」についても,機能的な要素を主張するにすぎないものであり,上部(接続側)と蓋とが嵌合することは,「a-a’部分拡大図」及び,「内部機構を省略したA-A拡大断面図」より理解される。しかしながら,カートリッジとして未使用の際に蓋の内側突起が,カートリッジ(本体)開口部に挿入されることを説明するにすぎず,これら断面図によって,当該蓋の内側突起がカートリッジの開口部に挿入される機能を有することが理解されるとしても,当該蓋の内側突起部分,及びこれと嵌合するカートリッジ(本体)の開口部内壁は破線部分(意匠登録を受けようとする部分以外の部分)であり,しかも蓋部はカートリッジとして使用する際は,蓋は取り外してしまうものであるから,意匠の新規性,創作非容易性の判断において格別考慮されるべき点ではない。
オ. 次に,前記(3)ア.(e)の下端部に,Oリングよりも外方に突出したリング状突条部を形成した点についても,甲第1号証意匠1及び意匠2は,いずれも短円筒状部の下端に外方へ拡がる細幅リング状水平面(シャワーヘッドの接続部が止められる部分)を有している点では本件登録意匠と共通し,本件登録意匠のみの特徴とはいえない。
また,被請求人は,「リング状突条部」と認定しているが,正確には,実線部分は,突状リングの水平な上面部分を一点鎖線で囲み,意匠登録を受けようとする部分としたものであるから,リング状突出部の上面根元部分を実線部分とするものであり,「リング状突条部」との認定は適切でない。
しかも,披請求人が主張する「リング状突条部」がない意匠が,本件登録意匠の関連意匠(意匠登録第1476957号)として登録されている。
以上の点から,当該リング状突状部は本件登録意匠の要部ではなく,実線で表された部分であるとしても,評価の低い細部的な箇所といえるので,甲第1号証意匠1及び意匠2との対比において,意匠の類否判断を左右する特徴とはいえないことは明白である。
したがって,被請求人は,「本件登録意匠が(a)?(e)を備えた点に独自の特徴があり,新規性及び創作非容易性を具備するものである。」と主張するが,(a)?(e)の点は,いずれも甲第1号証意匠1又は意匠2との類否判断に影響を与える程の特徴ではなく,格別創作力を要するものでもなく,(a)?(e)の点を総合しても,未だ,新規性及び創作非容易性を具備するものとはいえない。
(4)本件登録意匠の要旨の認定について
審判請求書3頁?4頁((1))における本件登録意匠の要旨の認定に誤りはない。
ア.本件登録意匠の意匠に係る物品,本件実線部分の用途及び機能,位置,大きさ,範囲について
本件登録意匠は,意匠に係る物品について,被請求人は,「本件登録意匠に係る物品は,シャワーヘッド用カートリッジとしての機能,用途に加え,化粧剤等を充填し包装する「包装用容器」に準じた用途,機能を兼ね備えたものと認定することができる。」とし,本件実線部分の用途及び機能について,「本件実線部分は,水溶液の流水路としての機能に加え,蓋部との嵌合機能,シャワーヘッド側の接続部材の支持機能を併せ持っていると認定すべきである。」と主張する(答弁書6頁)。さらに被請求人は,本件登録意匠の実線部分の位置,大きさ,範囲について,「請求人による本件実線部分の位置,大きさ,範囲に関する認定は,構成や数値の認定において不明確な点や誤認がある。」正確には,「本件登録意匠は,全体が円筒状のカートリッジ本体の片側のみに蓋付きの接続口部を突設したもので,「本件実線部分」は,カートリッジ本体の上部(接続口側)において,蓋の内側に位置している。「本件実線部分」の上下幅はカートリッジ本体軸方向全長の約6%の大きさ,範囲を占める。また,その直径(Oリングを除く)はカートリッジ本体直径の約64%の大きさ,範囲を占める。」と認定すべきである旨主張する(答弁書6頁?7頁)。
しかしながら,本件登録意匠に係る物品について,本件登録意匠の意匠に係る物品の説明では,本件シャワーヘッド用カートリッジが,包装用容器に準じた機能を兼ね備えている旨は格別記載されておらず,シャワーヘッド用カートリッジとして使用されることに変わりはないのであるから,被請求人の主張は,用途,機能を不必要に限定的にとらえているものであり,理由がない。
本件実線部分の用途,機能について,「蓋部との嵌合機能,シャワーヘッド側の接続部材の支持機能を併せ持っていると認定すべきである。」との主張についても,シャワーヘッドに取り付けられるカートリッジの接続部分であり,上面中央の開口部がシャワーヘッドの流出路としての機能も有することが特定できれば十分であり,被請求人の主張は失当である。
本件実線部分の位置,大きさ,範囲の認定については,本件登録意匠はシャワーヘッド用カートリッジであり,実線部分はカートリッジ(本体)の一部に関するものであるから,「カートリッジ(本体)の流出側端部に位置する。」と認定するのが自然である。また,本件実線部分の位置,大きさ,範囲に関する数値の認定についても,需要者の視点に立って観察すると,被請求人が主張するような仔細な数値によって認識されるものではないから,披請求人の主張は失当である。
イ.本件実線部分の形態について-基本的構成態様について
被請求人は,基本構成態様について,「「リング状突条部」は,基本的構成態様に含めるべきである。」,「「短円筒状」とするのではなく,単に「円筒状(円筒状部)」とした上で,具体的な長さの違いを対比するのが望ましい。」,また,「「ドーナツ状平坦面状部」という部材名称が,・・・,単に「ドーナツ状部」とするのが妥当である。」と主張する(答弁書7頁?8頁)。具体的構成態様について,「請求人による本件実線部分の具体的構成態様は,数値認定が不明確な点や誤認がある。」として,「より正確には,以下のように認定すべきである。」と主張し,各部の構成比について詳細に%で示し認定する(答弁書9頁)。
しかしながら,「円筒状(円筒状部)」とすることは,短円筒状とするより,認定を曖昧にするものであり,むしろ概念的で適切でない。「リング状突条部」については,リング状水平面は本件実線部分の骨格的態様とはいえず,かつ,(3)オ.で述べたように「リング状突条部」との表現は適切でない。「ドーナツ状部」とすることについても,本件実線部分の上面は平坦面部を有するものであるから「ドーナツ状平坦面状部」との表現は適当であり,「ドーナツ状部」との表現はかえって形状を曖昧に示すものであり適切でない。各部の構成比について詳細に%で示し認定する点についても,需要者の視点に立って観察すると,被請求人が主張するように,細かく認識されるものではないから,被請求人の上記の主張は失当である。
ウ.本件実線部分の具体的構成態様における被請求人の認定の誤り
被請求人は,本件実線部分の具体的構成態様に関し,「下方円筒部の長さ「軸方向の長さ」は,上縁部の厚みの約400%である。」と認定する(答弁書9頁(b)ハ))。
しかしながら,本件登録意匠の意匠公報に表された図においては,上縁は約1mm,下方円筒部は約2.5mmであり,答弁書10頁上段に記載された本件登録意匠の【カートリッジ本体の拡大正面図】においても,上縁部約3mmに対して,下方円筒部8mm弱であり,若干の採寸による誤差を含むとしても上記「約400%」との認定は誤りである。
しかも,(2)ア.で述べたように,答弁書20頁の本件登録意匠(本体の正面図より)と表示の図,答弁書24頁,27頁上段,31頁及び35頁の本件登録意匠,及び乙第5号証の2に表された「本件登録意匠」の図は,本件登録意匠の図面(【カートリッジ本体の拡大正面図】)から,上縁部の厚み,上縁部とOリングとの空隙が改変されており,対比すべき本件登録意匠の提示に誤りがあり,これに基づく被請求人の認定は失当である。
(5)甲第1号証意匠1の要旨の認定について
審判請求書4頁?8頁((2))における甲第1号証意匠1の要旨の認定
に誤りはない。
ア.甲第1号証意匠1に係る物品,甲1相当部分1の用途及び機能について
被請求人は,「甲第1号証の明細書中からは,シャワーヘッドとの具体的な嵌合態様までは特定できない。」と主張する(答弁書11頁)。
しかしながら,意匠は物品の外観に係るものであるから,シャワーヘッドに取り付けられるカートリッジの接続部分に係ることが特定できれば十分であり,被請求人の上記主張は失当である。
イ.甲1相当部分1の位置,大きさ,範囲について
被請求人は,甲1相当部分1の位置,大きさ,範囲について,「請求人による甲1相当部分1の位置,大きさ,範囲の認定は,構成,数値等に不明確な点がある。」とし,「甲第1号証意匠1は,全体が円筒状のカートリッジ上下に接続口部を突設したもので,「甲1相当部分1」は,カートリッジ流出側端部(接続口側)において表面に露出するように位置している。」,「甲1相当部分1」の上下幅は,カートリッジの本体軸方向全長の約4%の大きさ,範囲を占める。また,その直径(Oリングを除く)はカートリッジ本体直径の約67%の大きさ,範囲を占める。」と認定すべきである旨主張する(答弁書11頁)。
しかしながら,前記(4)ア.で述べたと同様,本件登録意匠はシャワーヘッド用カートリッジであり,実線部分はカートリッジ(本体)の一部に関するものであるから,当該部分に相当する甲1相当部分1についても「カートリッジの流出側端部に位置する。」との認定が自然である。
また,甲1相当部分1の位置,大きさ,範囲に関する数値の認定についても,需要者の視点に立って観察すると,被請求人が主張するように,細かく認識されるものではないから,被請求人の上記主張は失当である。
ウ.甲1相当部分1の形態について-基本的構成態様
被請求人は,甲1相当部分1の形態について,本件実線部分と同様に,基本的構成態様について,「甲1相当部分1は,全体が細口の円筒状(円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部,リング状突条部からなり,上面はドーナツ状(ドーナツ状部)でその内側(中央)が開口する。」と認定すべきと主張する(答弁書11頁?12頁)。
しかしながら,(4)イ.で述べたと同様であるから,被請求人の上記主張は失当である。
エ.甲1相当部分1の形態について一披請求人の認定の誤り
被請求人は,甲1相当部分1の具体的構成態様において,円筒状部の外周面について,「円筒状部は,外径に対する長さ(軸方向の長さ)の比を約33%とする円筒状である。」,円筒状部上面について,「中央開口部はその内径が,ドーナツ状部外径の約69%の大きさである。」と認定すべきと主張する(答弁書12頁(b)イ’)及びへ’))。
しかしながら,甲第1号証において,外径は約7.5mm,円筒状部の長さ(軸
方向の長さ)は約3mmであり,ドーナツ状平坦面状部の外径は,約7.5mm,
中央開口部内径は約4mm強であり,若干の採寸による誤差を含むとしても,「約33%」すなわち略1/3,「約69%」,すなわち約7割との認定は誤りである。
加えて,答弁書21頁下段において,本件登録意匠と甲第1号証意匠1(被請求人作成の平面図)の対比図,及び同28頁の本件登録意匠と甲第1号証意匠1の対比図は,甲第1号証意匠1を本件登録意匠の図より大きく配置し,甲第1号証意匠1の開口部が大きいかのように錯視するべく配された図であり,対比図として不適切である。このことは,請求人が追加提出した甲第10号証を参照すれば明らかである。
したがって,被請求人が主張する甲1相当部分1の具体的構成態様の認定に誤りがあり,これに基づく被請求人の上記主張は失当である。
(6)甲第1号証意匠2の要旨の認定について
下記ア.で述べる審判請求書11頁の(4)ア.の記載及び18頁の(5)イ.の記載の一部を除き,審判請求書8頁?12頁((3))における甲第1号証意匠2の要旨の認定に誤りはない.
ア.甲第1号証意匠2に係る物品,甲1相当部分2の用途及び機能について
被請求人は,甲第1号証意匠2に係る物品,甲1相当部分2の川途及び機能について,甲1相当部分2について,「甲1相当部分2は「原水の流出路」としての機能を有するものであって,請求人が主張するような「水溶液の流出路」としての機能は備えていないものと考えられる。」と主張する(答弁書13頁)。
確かに,甲第1号証意匠2について,明細書【0027】の記載によれば,「シャワーヘッドに設けられたスイッチの操作に伴う導水管2の下流端を開閉する機構により,原水と浄水とを切り替えることができる。すなわち,下流端を開いた場合は原水が濾材fと接触せずそのまま排出され,下流端を閉じた場合は濾材fと接触し浄水が排出される。」と記載されているから,「水溶液の流出路」としての機能は備えていないものと理解される。
したがって,甲1相当部分2の用途及び機能について,水溶液の流出路であるか原水の流出路であるかまで詳細に特定する必要はないから,請求書11頁の(4)ア.の記載において,「水溶液の流出路」を「水等の流出路」に訂正する。これに対応して,請求書18頁の(5)イ.の記載において,「水溶液等の流出路」を「水等の流出路」に訂正する。
また,被請求人は,甲1相当部分2の用途及び機能について,「甲第1号証の明細書中からは,シャワーヘッドとの具体的な嵌合態様までは特定できない。」と主張する(答弁書14頁)。
しかしながら,意匠は物品の外観に係るものであるから,シャワーヘッドに取り付けられるカートリッジの接続部分に係ることが特定できれば十分であり,被請求人の上記主張は失当である(甲1相当部分1と同様。(5)ア.参照)。
(6)イ.甲1相当部分2の位置,大きさ,範囲について
被請求人は,甲1相当部分2の位置,大きさ,範囲について,「請求人による甲1相当部分2の位置,大きさ,範囲の認定は,構成,数値等に不明確な点がある。」とし,「甲第1号証意匠2は,全体が円筒状をなし,その周面に複数の通水口(明細書中の「通水口7」を設けたカートリッジにおいて,本体の上下に接続口部を突設したもので,「甲1相当部分2」は,カートリッジの流出側端部(接続口側)において表面に露出するように位置している。」,「「甲1相当部分2」の上下幅は,カートリッジの本体軸方向全長の約4%の大きさ,範囲を占める。また,その直径(Oリングを除く)はカートリッジ本体直径の約67%の大きさを占める。」と認定すべきである旨主張する(答弁書14頁)。
しかしながら,前記(4)ア.で述べたと同様,本件登録意匠はシャワーヘッド用カートリッジであり,実線部分はカートリッジ(本体)の一部に関するものであるから,当該部分に相当する甲1相当部分2についても「カートリッジの流出側端部に位置する。」と認定するのが自然である。「全体が円筒状をなし,その周面に複数の通水口を設けた」点は甲1相当部分2以外の部分であるから,詳細に認定する必要はない。また,甲1相当部分2の位置,大きさ,範囲に関する数値の認定についても,需要者の視点に立って観察すると,被請求人が主張されるように,細かな数値で認識されるものではないから,被請求人の上記主張は失当である。
ウ.甲1相当部分2の形態について
被請求人は,本件実線部分の形態について,基本的構成態様は,「全体が細口の円筒状(円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部からなり,上面はドーナツ状(ドーナツ状部)でその内側(中央)が開口する,との基本的構成態様を有する。」と認定すべきと主張し,具体的構成態様において,各部の構成比について詳細に%で示し認定する。そして,具体的構成態様ニ’’)において,甲1相当部分2には,「本件実線部分のリング状突条部に相当するものが形成されていない。」と認定する(答弁書14頁?15頁)。
しかしながら,「円筒状(円筒状部)」とすること,「ドーナツ状部」とすることは,むしろ概念的で適切でないことは,(4)イ.で述べたと同様である。
各部の構成比について詳細に%で示し認定する点についても,需要者の視点に立って観察すると,被請求人が主張するように,細かく認識されるものではない。さらに「リング状突条部」について,(3)オ.で述べたように,甲1相当部分2は,短円筒状部の下端に外方へ拡がる細幅リング状水平面(シャワーヘッドの接続部が止められる部分)を有している点では本件登録意匠と共通するものであるから,被請求人の上記の主張は失当である。
(7)無効理由1:本件登録意匠と甲第1号証意匠1の類否について
ア.本件登録意匠と甲第1号証意匠1との類否について,審判請求書12頁?18頁において主張した点に誤りはなく,被請求人の主張は失当であるので,以下述べる。
イ.被請求人は,被請求人が主張する本件実線部分と甲1相当部分1の要旨認定に基づき,共通点及び差異点を述べている。しかしながら,本件実線部分の下方円筒部の長さ(上縁部の約400%)の認定に誤りがあり,前提となる本件登録意匠の図に改変が見られ((4)ウ.),甲1相当部分1の円筒状部の外径に対する長さの比(約33%)及び中央開口部のドーナツ状部外径に対する内径の大きさ(約69%)((5)エ.)における認定を誤ったものであるから,これらに基づく共通点,差異点及び類否判断は妥当性に欠けるものである。
ウ.なお,念のため,本件登録意匠と甲第1号証意匠1の類否について被請求人が主張しているので,その点についてみると,被請求人は,意匠に係る物品について,「両意匠は,包装用容器に準じた用途及び機能を兼ね備えているか否かという点において相違する。」とし,当該相違は,「両意匠の類否判断において十分に考慮する必要がある。」と主張する(答弁書16頁)。
しかしながら,本件登録意匠の意匠に係る物品の説明では,本件シャワーヘッド用カートリッジが,包装用容器に準じた用途及び機能を兼ね備えている旨は格別記載されていない。これは,少なくとも披請求人は,出願時において,「包装用容器」に準じた用途,機能を兼ね備えたものである点について重要視していなかったことの証左であり,いずれにしても,包装用容器に準じた用途及び機能を兼ね備えているか否かの差異は具体的な用途及び機能における一部の差異にすぎず,本件登録意匠と甲第1号証意匠1は,シャワーヘッド用カートリッジである点において物品が共通するものであるから,被請求人の上記主張は失当である。
エ.被請求人は,本件実線部分と甲1相当部分1の用途及び機能についても,「本件実線部分は,「水溶液の流出路」としての機能に加え,「蓋との嵌合機能」,「シャワーヘッド側の接続部材の支持機能」を併せ持っているのに対し,甲1相当部分は,単に,水溶液の流出路としての機能を有するのみである点に相違が認められる。「蓋との嵌合機能」や,「シャワーヘッド側の接続部材の支持機能」は,充填物の密封性や,シャワーヘッドとの嵌合性を左右し,意匠の機能美を左右する部分であることから,需要者は,このような機能を有しているか否かという点に関心を抱くものといえる。よって,このような機能及び用途の相違は,両意匠の類否判断において十分に考慮する必要がある。」と主張する(答弁書17頁)。
しかしながら,シャワーヘッドに取り付けられるカートリッジの接続部分であり,上面中央の開口部がシャワーヘッドへの流出路としての機能も有する点において共通しており,しかも,蓋の内側嵌合部分及びカートリッジの開口部内壁は破線部分(意匠登録を受けようとする部分以外の部分)であり,「シャワーヘッド側の接続部材の支持機能」についても,シャワーヘッド用カートリッジが普通に有する機能にすぎず(例えば,甲第6号証の図9及び図11にも見られる。[図4]に赤線で示した箇所参照),類否判断において重要な要素として考慮される必要はない。したがって,被請求人の上記主張は失当である。
オ.被請求人は,本件実線部分と甲1相当部分1の位置,大きさ,範囲について,差異点1「本件実線部分は,カートリッジ本体の上部(接続口側)において,蓋の内側に位置している。これに対し,甲1相当部分1は,カートリッジの流出側端部(接続口側)において表面に露出するよう位置している。」について,「差異点1は破線部分を参酌した差異点であるが,本件実線部分は蓋部と密接な位置関係にあり,蓋との嵌合機能も備えている。このように,破線部分と実線部分との関わりが深い場合,需要者が当該部分を観察する場合に破線部分を看過できないといえることから,破線部分をも参酌した上で,実線部分の位置,大きさ,範囲を認定すべきである。」,「よって,当該差異点は,両意匠の類否判断において重視すべきである。」と主張する(答弁書18頁)。
しかしながら,本件実線部分と甲1相当部分1は,シャワーヘッド用カートリッジの流出側端部に位置している点で共通し,蓋が嵌合する内側突起部分及びカートリッジの開口部内壁は破線部分(意匠登録を受けようとする部分以外の部分)であり,実線部分であるカートリッジの接続部の上面は,格別蓋と接しておらず,本件実線部分については,破線部分と実線部分とのかかわりが深い場合といえないから,類否判断において重要な要素として考慮される必要はない。したがって,被請求人の上記の主張は失当である。
ちなみに,裁判例において,登録意匠の認定にあたり,部分意匠の位置等を確定するに当たっては,破線によって具体的に示された位置等を参酌することになると述べ,「しかしながら,・・・部分意匠に係る部分及び物品の各用途若しくは機能並びに部分意匠に係る物品における部分意匠創作容易性判断又は類否判断において参酌すべきことをいうにすぎないのであり,これらを部分意匠の構成それ自体に含めることは,その使用の目的に応じて適宜選択,変更するにすぎないとして意匠登録を受けないとしていた部分意匠に係る部分を,実質的には部分意匠に取り込むことになり,部分意匠登録出願の趣旨に反し,構成の特定方法としては相当でない」と判示していることからも(甲第14号証 知財高裁 平成24年(行ケ)第10449号 審決取消請求事件),本件登録意匠の破線部分は,あくまで破線によって具体的に示された位置等を参酌するにとどまり,部分意匠の構成それ自体に含めることは,構成の特定方法として相当でないことは明らかである。
カ.被請求人は,差異点I及びII(円筒状部)について,「差異点Iは,・・・本件実線部分の円筒状部は,甲1相当部分よりも2倍細長い円筒状である。」,「差異点IIは,・・・本件実線部分の下部分の長さ比は,甲1相当部分1に比べて,約2倍に及ぶということである。」と述べ,「差異点I,IIにより,本件実線部分は相対的に下方円筒部が長く感じられ,重心が高く,すらっとしたスタイリッシュな印象を与えるのに対し,甲1相当部分1は本件実線部分と比較すると重心が低く感じられ,安定的でずんぐりとした印象を与える。このような違いは,視覚的に非常に顕著なものであって,軽微な差異ではない。」と主張する(答弁書24頁及び25頁)。
さらに「本件実線部分の円筒状部の全長は,シャワーヘッドに接続する際,相手方との接触面積をより大きくし,フィット感を高めることができるよう,意図的に選択された長さである。また,当該円筒状部を長くすることで,内部に形成する導通路も長くでき,蓋側の嵌合凸部を深く差し込むことができるため,蓋との嵌合を確実なものにできる。」と主張する(答弁書25頁)。
しかしながら,上記差異点について,前提となる両部分の円筒状部,下方円筒部の要旨認定に誤りがあり((4)ウ.及び(5)エ.参照),かつ,本件登録意匠に実施製品の大きさを想定して対比する甲第10号証で明らかなように,下方円筒部における外径に対する長さの差異は若干の差異にすぎず,上記で主張されるような顕著な視覚的な印象の差異は見られない。
また,シャワーヘッド側との接続状態に併せて,円筒状部を長くした態様は,審判請求書15頁で述べたように,本件登録意匠の出願前より見られるありふれた態様の範躊にすぎず,フィット感を高める,蓋との嵌合を確実なものにできるとの点は機能的な要因によるありふれた変更にすぎず,外観上の僅かな差異の範囲としてしか表れないものであり,意匠の類否判断において重要な要素として考慮されるべきでないことは,前記(3)エ.でも述べたとおりである。
したがって,被請求人の上記の主張はいずれも失当である。
キ.被請求人は,差異点III(リング状突条部)について,「差異点I,IIと相侯って,外観的にも機能美の上でも両部分に顕著な違いをもたらしており,類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。」と主張する(答弁書27頁)。
しかしながら,両部分は,細幅リング状に拡がる水平面がある点では共通しており(審判請求書13頁,前記(1)ア.A.),細幅リング状水平面の幅の差異については,差異点として挙げるまでもない微差であり,かつ,前記(3)オ.で述べたとおり,被請求人が主張するリング状突条部が形成されている点は本件登録意匠の要部とはいえないことは明らかであるから,被請求人の上記主張は失当である。
ク.被請求人は,差異点IV,V(上面の中央開口部)について,「甲1相当部分1の開口部は縁部に面取りがあり,かつ,開口部の面積は,上面全体の7割近くあるため,凹凸感があって開口が大きい印象を与える。このような違いは,視覚的に顕著なものである。」(答弁書28頁),「本件実線部分の開口部の態様からは,蓋部との嵌合性に配慮した独特の機能美が感じられる・・・。」,「開口部における差異点IV,Vは,他の差異点と相侯って,外観及び機能美の両面に顕著な違いをもたらすものであり,当該部分の機能,用途を踏まえれば,需要者が特に着目するものであって,類否判断に与える影響は極めて大きいといえる。」と主張する(答弁書29頁)。
しかしながら,上記主張は,前提となる甲1相当部分1の中央開口部の内径のドーナツ状部外径に対する大きさが,約7割近くとの要旨認定に誤りがあり,被請求人の答弁書28頁上段の対比図は不適切であるから((5)エ.),明らかに,これに基づく被請求人の上記主張は失当である。
さらにいえば,甲第10号証で明らかなように,上記で主張されるような顕著な視覚的な印象の差異はなく,中央開口部は上面全体に占める大きさの若干の割合の差異にすぎず,審判請求書16頁及び17頁に例示して述べたように,面取りのない平坦な態様が格別特徴あるものとはいえず,需要者(取引者を含む。)の注意を強く引くものとは到底いえず,類否判断に与える影響は微弱であるとの主張に誤りはない。
ケ.被請求人は,両意匠の類否判断において,「本件登録意匠と甲第1号証意匠1は,「意匠に係る物品の用途及び,機能」「意匠登録を受けようとする部分(当該部分)の用途及び機能」「当該部分の形態」「当該部分の物品全体の形態の中での位置,大きさ,範囲」のいずれにおいても相違が認められ,需要者の視覚を通じて全く異なる美感を想起させるものである。」,「(a)?(e)を備えた点に新規な特徴が認められるものであるが,・・・このような態様を兼ね備えたものは見られない。」と主張する(答弁書29頁)。
しかしながら,上記(a)?(e)については,前記(3)で述べたとおり,いずれも意匠の類否判断を左右する要素としては微弱であり,これらの(a)から(e)の点を総合しても,未だ,本件登録意匠のみが有する特徴を見出すことができないものであるから,甲第1号意匠1と類似することは明らかであって,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。したがって,被請求人の上記主張は失当である。
(8)無効理由2:本件登録意匠と甲第1号証意匠2の類否について
ア.本件登録意匠と甲第1号証意匠2との類否については,前記(11)ア.?エ.において修正した点を除き,誤りはなく,審判請求書18頁?21頁(5)において述べたとおりであり,両意匠は上記修正した点があったとしても,当該修正は,両意匠の類否判断に影響を及ぼす程のものではないから,被請求人の主張は失当であるので,以下述べる。
イ.被請求人は,被請求人が主張する本件実線部分と甲1相当部分2の要旨認定に基づき,共通点及び差異点を述べている。しかしながら,本件実線部分の下方円筒部の長さ(上縁部の約400%)の認定に誤りがあり,前提となる本件登録意匠の図に改変が見られ((4)ウ.),甲1相当部分2にはリング状突条部に相当するものが形成されていない((5)エ.)と認定を誤ったものであるから,これに基づく共通点,差異点及び類否判断は妥当性に欠けるものである。
ウ.なお,念のため,本件登録意匠と甲第1号証意匠2の類否について被請求人は主張しているので,その点についてみると,意匠に係る物品についての被請求人の主張については(答弁書30頁),(7)ウ.で述べたと同様であり,被請求人の主張は失当である。
エ.被請求人は,本件実線部分と甲1相当部分2の用途及び機能について,「甲1相当部分2は,「原水」の流出路としての機能を有している点においても本件実線部分の(「水溶液の流出路としての機能を有する」と相違している。」と主張する(答弁書30頁)。
しかしながら,両部分は,水溶液の流出路であるか原水の流出路であるかまで詳細に特定する必要はなく,シャワーヘッドへの流出路としての機能も有するという点では用途及び機能が共通するので,被請求人の主張は失当である。
オ.本件実線部分と甲1相当部分2の位置,大きさ,範囲についての被請求人の主張(答弁書30頁)については,(7)オ.で述べたと同様であり,被請求人の主張は失当である。
カ.被請求人は,本件実線部分と甲1相当部分2の形態の共通点及び差異点につき,基本的構成態様の差異点として,「本件実線部分は下端部にリング状突条部が形成されているのに対し,甲1相当部分2には,これに相当するものが形成されていない。」点を挙げる(答弁書31頁)。そして,当該差異点について,「外観的にも機能的にも主要な構成要素の違いであって,需要者に対し強い別異感をもたらすものであり,類否判断への影響は極めて大きいというはかない。」と主張する(答弁書32頁)。差異点III’(リング状突条部)においても,甲1相当部分2はリング状突条部に相当するものを備えていないため,・・・類否判断への影響はさらに大きいといえる。」と主張する(答弁書32頁?33頁)。
しかしながら,請求書19頁(5)エA(b)で述べたように,両部分は下方円筒部の下端にリング状水平面を有している点で共通するから,被請求人の主張は失当である。
加えていえば,前記(3)オ.で述べたとおり,被請求人が主張するリング状突条部が形成されている点は本件登録意匠の要部とはいえないことは明らかである。
キ.被請求人が主張する差異点I’II’(円筒状部)については,(7)カ.で述べたと同様であり,差異点III’(リング状突条部)については,上記(8)カ.で述べたとおりであり,差異点IV’(ドーナツ状部)の面取りの有無は請求書21頁(5)オ(b)で述べたように類否判断に与える影響は微弱であるといわざるを得ないので,被請求人の上記主張(答弁書32頁)は失当である。
ク.被請求人は,差異点V(上面の中央開口部)について「甲1相当部分2は,上面の中央開口部の内径が,ドーナツ状部外径に占める割合が50%であり,この点のみに着目すれば,甲1相当部分(同割合約69%)よりも,本件実線部分(同43%)に近い。しかし,甲1相当部分2の上面開口部は,縁部の面取りも含めると,ドーナツ状部外径の半分以上を占めており,開口部が小さいという印象を与えるものではない。よって,円筒状部やリング状突条部の差異と相侯って,両意匠に別異な印象をもたらしているものと認められる。」と主張する(答弁書33頁)。
しかしながら,披請求人が主張する上記割合について,約43%であるか,約50%であるかの差異は,差異点として挙げるまでもない微差の範囲であり,両部分の中央開口部が上面全体に占める大きさは略1/2弱の大きさで共通するものといえるから,格別別異の印象をもたらすものではなく,被請求人の主張は失当である。
ケ.被請求人は,「本件登録意匠と甲第1号証意匠2は,「意匠に係る物品の用途及び機能」「意匠登録を受けようとする部分(当該部分)の用途及び,機能」「当該部分の形態」「当該部分の物品全体の形態の中での位置,大きさ,範囲」のいずれにおいても相違が認められ,需要者の視覚を通じて全く異なる美感を想起させるものである。よって,本件登録意匠は全体として,甲第1号証意匠2とは明らかに非類似の意匠であって,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するものではない。」と主張する(答弁書第33頁)。
しかしながら,上記(8)ア.?ク.のとおり,被請求人の主張を検討しても,いずれも理由がなく,本件登録意匠が甲第1号意匠2に類似することは明らかであるから,被請求人の上記主張は失当である。
(9)無効理由3(創作非容易性)について
請求書22頁?26頁で主張した点(訂正した点,(11)ア.?エ.を除く)に誤りはなく,被請求人の主張は失当であるので,以下述べる。
ア.本件実線部分と甲1相当部分1の対比(答弁書34頁),本件実線部分と甲1相当部分2の対比(答弁書36頁)については,無効理由1(7)及び無効埋由2(8)において,それぞれの対比で述べた内容と同様であるので援用する。
イ.被請求人は,本件登録意匠の創作性について,「本件登録意匠は,各構成要素の形状やプロポーション,さらにはそれらの組み合わせにおいて,無数の選択肢がある中で,装飾性や機能性に配慮しつつ,特定の形状,プロポーションを選択し,全体として新たな意匠となるようまとめあげた点に創作性を有するものである。よって,本件登録意匠の創作非容易性の検討は,あくまでも,意匠全体に対して行うべきであり,差異点ごとに分けて検討するのみで,その全体を評価しない手法は妥当性に欠ける。しかも,請求人は,物品全体における当該部分の位置の相違及び,リング状突条部における相違を看過した状態で創作非容易性の検討を行っており,適切な判断がなされたとは到底いえない。」と主張する(答弁書37頁及び38頁)。
しかしながら,全体的な創作性を判断するに当たり,まず各部分について判断する分析的手法をとることは当然にされるべきことであって,本件実線部分の各部分について分析すると,上面の内周縁を面取りのないありふれた平坦面状とした点,中央開口部をその内径が外径の1/2弱の大きさとした点,下方円筒部の長さを上縁部の厚みの2倍強とした点は,この種物品分野において格別創作を要するものではないことは明らかであり,本件実線部分は,上記各部の要素を総合して意匠全体として観察した場合にも,本件登録意匠独自の格別な意匠的効果を有するものとまではいえない程度の細部の変更をしたにすぎない。また,被請求人の主張する物品全体における当該部分の位置の相違及びリング状突条部における相違は取り立ててあげるまでもない微差にすぎない。したがって,被請求人の主張は失当である。
ウ.被請求人は,「本件実線部分は,蓋との嵌合性にも考慮して,全体的なまとまりをもって創作された意匠である。」として,「本件登録意匠において創作が発揮されているのは(a)?(e)の態様を兼ね備えた点である。」と主張する。また,「請求人は,・・・当該部分と蓋との嵌合性について全く言及していない。このこと自体,本件登録意匠の創作において,蓋との嵌合性にも配慮するという着想及び,それを具現化した本件実線部分全体の態様が,極めて独自性が強いものであることを示すものである。」と主張する(答弁書40頁及び41頁)。
しかしながら,前記(3)エ.で述べたように,本件実線部分の蓋との嵌合性について,蓋は,カートリッジ本体がシャワーヘッドに取り付けた場合には,取り外されるもので,しかも蓋との嵌合部を実線部分としたものではなく,創作容易性の判断において,通常破線部分については,部分意匠の位置等を確定するのに参酌するに留まるものであることは,前記(7)オ.においても明らかである。そして,上記(a)?(e)について,格別新規な特徴がないこと,格別創作力を要するものでないことは,前記(3)において述べたとおりであるから,被請求人の主張は失当である。
エ.被請求人は,下方円筒部の長さ,上面開口部の大きさについて,「実際には,その長さ,大きさ,それらの組み合わせ方には無数の選択肢がある。本件意匠の創作においては,そのような無数の選択肢がある中から,全体的なバランスや機能性に配慮しつつ,特定の長さや大きさを意図的に選択して,当該部分全体として,新たな美感を有する意匠としてまとめあげているのである。このような創作行為は,単に甲1乃至7号証の意匠が存在するからといって,当業者が容易になし得るものでなない。」と主張する(答弁書41頁)。
しかしながら,本件登録意匠の実線部分をみると,接続部分の限られた部分にすぎず,無数の多様な選択肢があるといっても,開口部の径,下方円筒部の長さの変更はシャワーヘッドとの嵌合によるところの技術的,機能的な要素にもとづくありふれた,かつ,僅かな変更の範囲にすぎず,面取りを設けないことにも格別意匠的効果があるものとは到底いえず,実線部分全体として観察する場合,未だ新たな美感を有する意匠とはいうことができる程の着想,創作力を必要としたとは到底いうことができない。したがって,被請求人の主張は失当である。
オ.被請求人は,創作非容易性の判断について一定の基準を示すものとして,判決を提示するが(答弁書第42頁),本件とは別件であり,本件登録意匠の創作非容易性の判断に直接影響するものではない。
(10)むすび
以上のとおり,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号及び意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるため,同法第48条第1項第1号により,直ちに無効とされるべきである。
(11)その他
平成28年6月20日に提出した請求書に誤記があったので以下のとおり訂正する。
ア.請求書11頁の「ア 甲1相当部分2の用途及び機能について」の欄に記載される「水溶液の流出路」の記載を「水等の流出路」に訂正する。
イ.請求書18頁の「イ 本件実線部分と甲1相当部分2の用途及び機能について」の欄に記載される「水溶液等の流出路」の記載を「水等の流出路」に訂正する。
ウ.請求書19頁の「(b) 短円筒状部の下端部について」の記載を「(b) 短
円筒状部の外周面について」に訂正する。
エ.請求書19頁のA.共通点について,「(b)短円筒状部の外周面について」の
下に,下記を追加し訂正する。
「(c)短円筒状部の上面について ドーナツ状平坦面状部の中央開口部は,その内径が外径の1/2弱の大きさとしている点。」
(12)これまでの全主張の要約
ア.請求の趣旨
登録第1476774号意匠の登録を無効とする。審判請求費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。
イ.本件登録無効の理由の要点
(ア)本件登録意匠は,出願前に頒布された刊行物である甲第1号証の図2に記載された意匠(以下「甲第1号証意匠1」という。),及び図1に記載された意匠(以下「甲第1号証意匠2」という。)と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるので,本件意匠登録は同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
(イ)本件登録意匠は,出願前に頒布された刊行物である甲第1号証意匠1及び甲第1号証意匠2に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるので,本件意匠登録は同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
〔2〕証拠方法
甲第10号証:対比図3
甲第11号証:意匠登録第1511092号公報(写し)
甲第12号証:意匠登録第1511418号公報(写し)
甲第13号証:意匠登録第1476957号公報(写し)
甲第14号証:平成24年(行ケ)第10449号判決(写し)

《2》平成29年2月6日付けの口頭審理陳述要領書(2)
〔1〕陳述の要領
平成29年1月10日付けで提出した目頭審理陳述要領書に追加する。
(1)本件実線部分,甲1相当部分1,甲1相当部分2について
以下の説明図のとおりである(請求書 22頁)。
(2)甲第1号証意匠2の相当部分(甲1相当部分2)について
ア.甲1相当部分2は,下図においてピンク色マーカーで示す部分(ピンク色の矢印の部分まで),すなわち,円筒部及びその根元の本件実線部分に相当する外方へ延びる水平面を含む部分である(請求書8頁及び9頁)。
イ.被請求人陳述要領書14頁,16頁に記載の対比図について,甲第1号証意匠2の甲1相当部分2の記載は,請求書で述べた相当部分とは異なり,外方へ延びる水平面を包むように表していないので失当である。乙9号証及び乙第10号証の甲第1号証意匠2の甲1相当部分2の記載についても同様である。
被請求人は,「請求人は,・・・と認定しているものと思われるが,本件登録意匠においては,カートリッジ本体は実線部分に含まれていないので,このような認定は適切ではない。」と主張する(被請求人陳述要領書15頁)。
しかし,本件実線部分はシャワーヘッド用カートリッジの接続口の接続部分,すなわち,シャワーヘッド側の接続部材と嵌合する部分に相当するものであり,リング状水平面はシャワーヘッド側の接続部材の下端が止められる部分,被請求人の主張する支持する部分である(請求書9頁)。
甲1相当部分2の細い円筒部の根元から外方へ延びる水平面も,シャワーヘッド側との接続部材の下端が止められる部分,被請求人の主張する支持する部分と推認されるから,請求書で述べた主張に誤りはない。
したがって,上記被請求人の主張は誤りであり,本件実線部分と甲1相当部分2は,短円円筒部下端部に細幅リング状水平面がある点で共通する。
さらに,被請求人陳述要領書14頁,16頁及び乙第10号証記載の図の本件登録意匠の図は,特許庁に提出された図面とは同一の図ではない。本件登録意匠,甲第1号証意匠1及び意匠2との対比は,特許庁に提出された図面に基づき対比されるべきであるから,上記対比図は不適切である。
(3)類否・差異点について
ア.下方円筒部の長さについて
被請求人は,下方円筒部の長さについて,「甲第1号証意匠1,2における同比率の1.5倍の長さに相当し,本件実線部分と甲1相当部分1及び2の間には,依然として明確な相違が認められる。」と主張する(被請求人陳述要領書8頁)。
しかし,下方円筒部を上縁部より長くした態様が極く普通に見られるもので(被請求人陳述要領書10頁),本線実線部分は,甲1相当部分1及び2よりやや長いとの印象を与える程度の軽微な差異にすぎない。
本件実線部分の1.5倍の長さは,具体的な実施製品においては,約3mmであり,比率0.5の差異は,約1mm程度の差異でしかない(甲第10号証)。
したがって,両者の下方円筒部の長さの差は上縁よりやや長いとの印象を与える程度で,取り立てて需要者の注意を強く引くものとはいえない軽微な差異である。
イ.上面のドーナツ状平坦面状部の内周縁部,開口部の大きさの差異
1)本件実線部分のドーナツ状平坦面状部の内周縁部を面取りのない平坦な態様とすることが格別新規な特徴あるものとはいえない(請求人陳述要領書11頁)。
2)開口部の大きさの差異についても,シャワーヘッド等の接続側の形状に対応して僅かに変更した程度にすぎない差異である。
被請求人は,開口径が上面部外径の2分の1以下である点を主張する(乙第7号証等)。しかし,需要者は,上面部外径の略1/2程度と認識するにとどまるものであるから,開口部直径が上面部外径の2分の1以下であるか否かは類否判断の重要な要素ではなく,そうすることに格別創作を要するとはいえない。
3)開口部の大きさの差異は,具体的な実施製品においては,甲第10号証(本件登録意匠を実施製品の大きさを想定して対比した図)に示すように,本件実線部分の開口径は約6mmであり,甲1相当部分1の上面外径を本件実線部分の上面外径とほぼ同じ大きさで対比した場合,甲1相当部分1の開口径は約7.5mmであり,その差は約1.5mm程度の差異でしかない。
また,本件実線部分と甲1相当部分2は,開口径が1/2弱である点で共通する(なお,甲第10号証は,ドーナツ状平坦面状部と開口部を色分けで示すための図であり,甲第1号証意匠2について,相当部分に含まれる水平面とそれ以外の部分の境界示す一点鎖線は描いていない)。
ウ.需要者の注意を引く部分について
1)需要者はカートリッジをシャワーヘッドにはめ込む際には,シャワーヘッドへの差し込み側はどこかを確認し,装填するものであり,シャワーヘッド用カートリッジの需要者はカートリッジの全体形状とともにカートリッジを取り付けるとの使用に当たってカートリッジ接続部分に注意を払う。
したがって,需要者は,カートリッジにおけるシャワーヘッドへの差し込み部であるシャワーヘッドの接続部に嵌合するための周面部,すなわち,嵌合用円筒部外周にこそ着目するが,接続の際に格別確認する必要のない開口部について孔の有無について認識するとしても,その孔の大きさ,面取りの有無については強く注意を引かれるものではない。
2)乙第1号証第2頁の宣伝等においても側面(円筒部外周部)が表されている。
(4)被請求人が主張する本件登録意匠の特徴について
ア.被請求人の主張点を整理すると(乙第6号証及び乙第7号証)
形態的特徴は,
(c)本件実線部分の全長(上下幅)を長くしている点。
(d)開口部の直径を上面部外径の2分の1以下に留め,開口縁部をフラットに形成した点。
(e)本件実線部分の下端部に,リング状突条部を形成した点。
ということになる。
イ.上記(c)?(e)について,いずれもありふれた態様で,甲1相当部分1,甲1相当部分2と対比した場合,
(c)全長の差異は,僅かな差異でしかない(前記(3)ア。で述べたとおり)。
(d)開口部の直径の差異も,本件実線部分と比較的大きい方の甲1相当部分1においても僅かな差異でしかなく,開口縁部の形状処埋(面取りの有無)も縁部の限られた部位における微差にすぎず,しかも本件実線部分の開口縁部をフラットに形成した点はなんら特徴があるものではなく(前記(3)イ。で述べたとおり),(3)ウで述べたように,需要者がさほど注意を引かない部分である。
(e)「リング状突条部」について,細幅リング状の水平面があるのみであるから「突条部」との主張は誤りである。本件実線部分からすれば,あくまでも細幅リング状の水平面があるのみであるから,細幅リング状の水平面があると認定されるべきである。
しかも,本件実線部分のリング状水平面はその外縁を一点鎖線で示すもので,短円筒部の下端の回りの僅かな水平面を特定しているにすぎず,破線で描かれ外郭形状に特徴があるとはいえない。
したがって,上記(e)は細幅リング状の水平面があることにおいて,甲1相当分1,甲1相当部分2と共通しており,本件登録意匠のみの特徴とはいえず,上記(c)及び(d)の差異を総合して実線部分全体として観察する場合,甲1相当部分1,甲1相当部分2と格別意匠的効果を有する新規な特徴が見いだせるものではない。かつ,当業者であれば甲1相当部分1,甲1相当部分2に基づき容易に創作できたものである。
ウ.被請求人が本件登録意匠の特徴と主張する,(a)実線部分は蓋の内部に位置している,(b)蓋との嵌合部としての機能を併せ持たせた点について
(a)実線部分は蓋の内部(内側)に位置しているとの主張ついて
仮に実線部分は蓋の内部(内側)に位置しているとしても,実線部分はカートリッジ(本体)の流出側端部に位置することには変わらず,実線部分の当該物品全体の形態の中での位置,大きさ,範囲が変わるものではない。したがって,被請求人の主張は理由がない。
(b)蓋との嵌合部について
機能的な要素を主張するにすぎないものであり,当該蓋の内側突起部分及びこれと嵌合するカートリッジ(本体)の開口部内部は破線部分であり,当該破線部分はあくまで破線によって具体的に示された位置等を参酌するにとどまるものであるから,意匠の新規性,創作非容易性の判断において格別考慮されるべき点ではない。

なお,被請求人は,「本件実線部分の上面において実線で表された開口部に,蓋側の嵌合凸部が差し込まれる構成を有しており,蓋と実線部分との構造的関連性が深いことから,類否判断においては,蓋の有無を軽視することはできないと考える。」と主張する(被請求人陳述要領書10頁)。
しかし,本件登録意匠の「使用状態を示す参考図」によれば,カートリッジとして使用する際は,単に開口部は水等の流出路口となる円形の孔にすぎず,蓋と実線部分との構造的関連性が深いとの主張は失当である。
エ.仔細な数値の認定
被請求人は,「構成や数値の認定に曖昧な点や誤認があり適切なものとはいえない。」と主張する(被請求人陳述要領書9頁)
しかし,実線部分は,実施製品にあっては,全長約7mm,円筒部の外径約13mm程度の大きさのもので,この種物品は通常肉眼で観察されるものであるから,細かな数値で認定しても,細かな数値の差異は,意匠の類否判断において,需要者が両意匠を観察する場合に認識できるような差異を示すものではないから,請求書で述べた主張に誤りはない。
(5)以上述べたように,本件登録意匠の実線部分である接続部分の態様は,請求書に挙げた意匠(甲第2号証?第7号証及び請求書10頁及び11頁参照)に見られるように,この種物品に係る分野において,その位置も物品の機能に由来する極く普通に見られるものであり,形態についてもこれらの意匠の接続部分の形態と何ら変わらず,取り立てて意匠的な特徴を有するものでも,格別創作力を有するものでもないことは明らかである。

2.被請求人
被請求人は,平成29年1月24日付け口頭審理陳述要領書及び平成29年2月21日付け上申書のとおり主張した。
《1》平成29年1月24日付け口頭審理陳述要領書
〔1〕本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分の位置について
平成28年11月21日付審理事項通知書において説明を求められた「本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分の位置」について,以下に説明する。
i)本件登録意匠は着脱自在な蓋を備えたものであって,意匠登録を受けようとする部分(以下,「本件実線部分」)は,蓋を被せた状態においては,蓋の内側に位置している。
さらに,本件実線部分は,上面開口部に蓋側の嵌合凸部が差し込まれる構成となっている。
ii)一方,蓋を外した状態において,本件実線部分はカートリッジ本体の上面に突出する細口部分の上半部に位置している。
また,前記細口部分の中程に形成されたリング状突条部の上面を実線部分に含むものである。
なお,シャワーヘッドに装着する際,本件実線部分はシャワーヘッド側の接続部材と嵌合する部位であるとともに,水溶液の導通路にもなる。
〔2〕本件実線部分の位置及び形態が意匠の外観や使用感に及ぼす影響について
さらに,本件実線部分の位置及び形態が,意匠の外観や使用感に及ぼす影響については,答弁書において主張したとおりであるが,新たに乙第6号証,乙第7号証を提出しつつ,以下に補足説明を行う。
i)蓋を被せた状態について(乙7号証のi)参照)
本件実線部分は,蓋によって被覆される位置に形成されているため,蓋を被せた状態においてはカートリッジ全体の外観が化粧品ボトルのように表れ,すっきりと洗練された印象を与えるものとなっている。
さらに,本件実線部分は機能的にも優れた特徴を備えている。
まず,本件実線部分の上面に形成された開口部は,開口径が上面外径の2分の1以下となるように形成されており,かつ,開口縁部は面取り等のないフラットな面に形成されているため,蓋側の嵌合凸部を差し込んだ時にガタツキが生じにくくなっている。
また,本件実線部分は円筒状部の上下幅(全長)が長く形成されているため,蓋側の嵌合凸部を深く差し込めるようになっており,蓋と本体を確実に係合できるようになっている。
これにより,本件登録意匠は,製品の販売,携帯,保管時における気密性に優れたものとなっている。
ii)蓋を外した状態について(乙7号証のii)参照)
本件実線部分は,下端部に一定幅で突出するリング状突条部を備えることで,蓋を外してシャワーヘッド側の接続部材に本物品を差し込む際に,接続部材の下端部をリング状突条部の上面で支持できるようになっている。これにより,カートリッジの差し込み過ぎが防止され,最適な位置にカートリッジをセットできるとともに,使用中もその状態を維持することができる。
また,リング状突条部より上の部分(円筒状部)の上下幅を長くすることで,この部分をシャワーヘッド側の接続部材に深く差し込むことができるようになっており係合状態が安定する。
iii)以上に述べた本件実線部分の位置及び形態上の特徴は,甲第1号証意匠1及び意匠2を始めとした従来意匠には認められないものであって独自性が高く,意匠の外観上も顕著に表れるものであることから意匠的に新規なものであって,かつ,高い創作性が発揮されたものである。
〔2-1〕請求人の口頭審理陳述要領書の主張に対する意見
(1)本件登録意匠に係る物品の用途,機能の認定について
請求人は,本件登録意匠が包装用容器に準じた機能を兼ね備えている旨は,願書の意匠の物品の説明において格別記載されておらず,シャワーヘッド用カートリッジとして使用されることに変わりはないのであるから,被請求人の主張は,用途,機能を不必要に限定的にとらえているものであり,理由が無いと主張する(平成29年1月10日付口頭審理陳述要領書(以下「陳述要領書」)12頁)。
しかし,本件登録意匠の願書,図面における下記i)?iii)の開示内容から,本物品が化粧剤等を充填した状態で販売されるものであって,包装用容器に準じた機能を兼ね備えていることは当業者にとって十分に理解可能であり,用途,機能を不必要に限定的にとらえたものではない。
i)意匠に係る物品の説明欄における「本物品の内部に化粧剤等を充填し」という記載から,内部に化粧剤等が充填されるものであることがわかる。
ii)内部機構を省略したA-A拡大断面図において蓋と本体の構造が開示されており,開口部が蓋側の嵌合凸部によって閉塞されていることがわかる。
iii)使用状態を示す参考図において蓋を外した状態の断面図が開示されていることから,シャワーヘッド装着時に蓋を外すこと,逆に,それ以外の時には蓋が装着されることがわかる。
よって,請求人による上記の主張には理由がない。
(2)答弁書20頁等の図と本件登録意匠(拡大正面図)の違いについて
請求人は,答弁書20頁等に掲載した本件登録意匠の拡大正面図の抜粋図が,本件登録意匠の図(【カートリッジ本体の拡大正面図】)から改変されていることから,対比すべき本件登録意匠の提示に誤りがある(図1参照)と指摘する(陳述要領書6頁他)。
この部分は本件登録意匠の【a-a’部分拡大図】に示すように,Oリングの上下に僅かな隙間があるが,【カートリッジ本体の拡大正面図】においては,図面が小さいため,本来であれば二本表われる隙間の線が潰れ,一本に見えている。
答弁書に掲載した図面は,できるだけ鮮明なものが望ましいと考え,出願図面のCADデータをPDF出力したものを利用したが,データ解像度等の違いから,本件登録意匠とは線の潰れ方に違いが生じてしまったものと考えられる。
両図の違いは,このような事情から,やむを得ず生じてしまったものであり,意図的に改変等を行ったものではない。
(3)本件実線部分の具体的構成態様の認定について
請求人は,本件登録意匠の意匠公報に表された図においては,本件実線部分の上縁部が約1mm,下方円筒部は約2.5mmであり,答弁書10頁上段に記載された本件登録意匠の【カートリッジ本体の拡大正面図】においても,上縁部約3mmに対し,下方円筒部8mm弱であり,若干の採寸における誤差を含むとしても,(被請求人による両部の長さの比率が)400%との認定は誤りであると指摘する(陳述要領書13乃至14頁)。
この点について,上記のとおり,意匠公報に表された一部の図面には潰れが生じており,数値を正しく計測することができないが,400%という数値が計測上の誤差であるとしても,上掲した,【a-a’部分拡大図】から判断すると,下方円筒部は,上縁部の3倍程度の長さ(300%)を有していると認定するのが妥当である。
このように認定した場合も,甲第1号証意匠1,2における同比率(約200%)の1.5倍の長さに相当し,本件実線部分と甲1相当部分1及び2の間には,依然として明確な相違が認められる。
(4)需要者の視点にたって観察すると,仔細な数値によって認識されるものではないという指摘について
請求人は,本件実線部分の位置,大きさ,範囲に関する数値の認定や,各部の構成比に関する認定について,需要者の視点に立って観察すると,被請求人が主張するように細かく認識されるものではないから,被請求人の主張は失当であると主張する(陳述要領書12頁乃至13頁)。
そして,審判請求書及び,陳述要領書において具体的な数値の認定をすることなく,本件登録意匠と甲第1号証意匠1,意匠2の共通点と差異点を認定している(陳述要領書2乃至4頁)。
しかし,意匠の対比において具体的数値を認定することは,意匠の類否判断を客観的に行うために必要なことであって,本審判事件に限らず,常套的に行われていることであるし,需要者は仔細な数値までは正確に認識していないとしても,数値の違いに象徴される形状の違いは認識するものといえる。
また,本件実線部分は,限られた一部分を対象とするものであるから,具体的数値の違いにより,需要者の視覚に与える印象も左右される。
以上の理由から,具体的な数値認定にもとづいて類否を論ずること自体は,類否判断の手法として失当であるとはいえない。
また,陳述要領書2乃至4頁に記載された請求人による共通点,差異点の認定は,審判請求書での認定事項と基本的に同じ内容であるが,答弁書で指摘したとおり,構成や数値の認定に曖昧な点や誤認があり適切なものとはいえない。
本件登録意匠と甲第1号証意匠1,意匠2の共通点と差異点は,答弁書において被請求人が主張したように認定すべきであり,対比の便宜のため,答弁書での認定事項について,乙第8号証の一覧を提出する。
なお,同一覧中赤字で表した部分については,答弁書で認定した数値(400%)を「300%」に訂正している。
なお,実際に需要者が意匠を観察するときは,数値的要素のみならず,対象物を立体的形状として認識するというのも,また事実である。
この点に配慮し,被請求人は,甲第10号証に掲載された図面から把握可能な範囲で甲第1号証意匠1及び2の参考斜視図を作成し,乙第9号証として参考断面図とともに補充する。
(5)本件登録意匠の特徴(a)?(e)が格別新規な特徴あるもの,又は格別創作力を要するということはできないという指摘について
請求人は本件登録意匠の特徴(a)?(e)について,格別新規な特徴あるもの,又は格別創作力を要するということはできないと指摘する(陳述要領書8乃至11頁)。
しかしながら前記(1)及び(2)で述べたように,本件登録意匠の特徴(a)?(e)は,カートリッジの美観や使用性の向上に配慮して独自の創意工夫が凝らされたものであって,甲第1号証意匠1及び2を始めとした従来意匠には認められない新規な態様であり,需要者への訴求力も有していることから,新規かつ創作力のある特徴だといえる。
(6)甲第11号証,甲第12号証(包装用容器の蓋の有無で関連登録された事例)について
請求人は甲第11号証及び甲第12号証を提出し,蓋の有無(蓋は破線で表されている)が部分意匠類否判断に影響を与える可能性は少ないことを示していると主張する(陳述要領書8乃至9頁)。
また請求人は,本件登録意匠の実線部分であるカートリッジ接続部の上面は,格別蓋と接しておらず,本件実線部分については破線部分と実線部分とのかかわりが深い場合といえないから,類否判断において(破線で表した蓋を)重要な要素として考慮される必要はない旨主張している(陳述要領書21頁)。
しかしながら,甲第11号証及び甲第12号証の登録意匠における実線部分は容器本体の中程に位置しており,蓋により遮蔽される部分でもなければ,蓋との間に構造的関連性のある部分でもない。
これに対し,本件登録意匠は,前述のとおり蓋の内側に位置するとともに,本件実線部分の上面において実線で表された開口部に,蓋側の嵌合凸部が差し込まれる構成を有しており,蓋と実線部分との構造的関連性が深いことから,類否判断においては,蓋の有無を軽視することはできないと考える。
このように甲第11号証及び甲第12号証の登録例は,実線部分と蓋との関連性において明確に異なるものであることから,上記登録例における判断基準を,そのまま本件登録意匠に適用することはできないというべきであり,請求人による上記の主張は失当である。
(7)シャワーヘッド側の接続部材の支持機能について
本件実線部分と甲1相当部分1の用途,機能のうち,「シャワーヘッド側の接続部材の支持機能」について,請求人は,甲第6号証の図9,図11を引用しつつ,本件実線部分が有するような支持機能は,シャワーヘッド用カートリッジが普通に有する機能にすぎず,類否判断において重要な要素として考慮される必要はないと主張する(陳述要領書20乃至21頁)。
しかしながら,本件実線部分と甲1相当部分1は,支持機能を有しているか否かという違いによって,カートリッジをシャワーヘッドに取付ける際の嵌合性や,係合状態の安定性に明確な違いが生じているため(前記(2)参照),甲第6号証のような意匠が存在していたとしても需要者に対し強い別異感を与えるものであり,係る相違は類否判断において考慮されるべきである。
さらに,本件実線部分と甲6号証の図9,図11の意匠は,以下に述べるように明確に相違するものである。
i)すなわち,本件実線部分は,細口部の中程にリング状突条部を形成し,その上面に支持機能を持たせたものであるのに対し,甲第6号証の図9及び図11は,細口部の外周部に階段状の段差部を有するものであって,リング状突条部に相当するものは形成されておらず,両意匠は構造的に全く異なるものである。
ii)さらに,本件実線部分のリング状突条部は,リング状突条部から先端までの部分が,こんもりと高くなるような位置に形成されているのに対し,甲第6号証の図9及び図11における段差部は,段差部から先端までの部分が低く偏平になるような位置に形成されている点においても相違する。
答弁書及び,前記(2)で述べたように,本件実線部分は,蓋や,シャワーヘッド側接続部材との嵌合性を高めるため,本件実線部分をできるだけ高く(全長を長く)形成したものである。
これに対し,甲第6号証の図9及び図11の意匠は,全高を高くすることへの配慮が認められないものであって,単に,シャワーヘッド側との係合部になっているに過ぎず,支持の安定性への配慮は認められない。
このように,本件実線部分と,甲第6号証の図9及び図11の意匠は,創作意図及び,意匠の構成態様において根本的に相違するものであり,甲第6号証が存在するからといって,本件実線部分の有する機能が「シャワーヘッド用カートリッジが普通に有する機能にすぎない」ものであるということはできない。
(8)本件登録意匠の関連意匠にはリング状突条部がないという指摘について
請求人は,「リング状突条部」がない意匠が,本件登録意匠の関連意匠(意匠登録第1476957号)として登録されていることから,当該リング状突条部は本件登録意匠の要部ではなく,実線で表された部分であるとしても,評価の低い細部的な箇所といえるので,甲第1号証意匠1及び意匠2との対比において,意匠の類否判断を左右する特徴とはいえないと主張する(陳述要領書11頁)。
しかしながら本件登録意匠と,その関連意匠は,リング状突条部以外の部分が全て共通しており,共通点に係る部分が物品全体の9割以上を占めている。
このため本件登録意匠においてリング状突条部が特徴の一つであっても,本件登録意匠と意匠登録第1476957号との類否判断においては相対的に共通点の方が視覚的に顕著であり支配的要素であると判断されたものと考えられる。
この判断は,あくまでも本件登録意匠と関連意匠の間で行われたものであって,このような関連意匠登録があるからという理由でリング状突条部が評価の低い細部的箇所とみなすのは逸脱した判断であり,妥当性を欠いている。
(9)リング状水平面(リング状突条部の上面部)について
請求人は,本件実線部分と甲1相当部分1は,細幅リング状に広がる水平面がある点では共通しており,細幅リング状水平面の幅の差異については,差異点として挙げるまでもない微差であると主張する(陳述要領書23頁)。
また,本件実線部分と甲1相当部分2も,下方円筒部の下端にリング状水平面を有している点で共通すると主張する(請求書10頁,陳述要領書26頁)。
そこで,リング状水平面(すなわちリング状突条部の上面部)の対比のため,新たに乙第10号証として着色対比図を提出する。同図においてはリング状突条部(リング状水平面)に赤色の着色を施している(下図は乙第10号証に掲載した対比図を掲載したものである)。
まず,本件実線部分においては,リング状突条部の上面部が,シルクハットの鍔のように一定幅で突出しており,一目見て,その存在を認識することができる。
これに対し,甲1相当部分1の該当部は,本件実線部分に比べると,ごく僅かな段差が認められるのみであり,シルクハットの鍔のような印象は全く感じられない。
また,甲1相当部分2は,下方円筒部がカートリッジ本体の上面に直付けされており,「リング状突条部」に相当するものは形成されていない。
甲1相当部分2について,請求人は,カートリッジ本体の上面をリング状水平面と認定しているものと思われるが,本件登録意匠においては,カートリッジ本体は実線部分に含まれていないので,このような認定は適切ではない。
仮に,カートリッジ本体の上面をリング状水平面と認定しても,本件登録意匠と意匠登録を受けようとする部分の「位置」が異なるとともに,リング状突条部の突出幅が本件登録意匠よりも遥かに大きいものであるから,本件登録意匠とは顕著な相違を有するものとなる。
(10)本件登録意匠と甲第1号証意匠1,意匠2の類否(本件登録意匠の新規性)について
請求人は,答弁書で指摘した差異点にI,II及びI’,II’(円筒状部)について,下方円筒部における外形に対する長さの差異は若干の差異にすぎず,顕著な視覚的差異は見られない等の理由から,意匠の類否判断において重要な要素として考慮されるべきではない旨を主張する(陳述要領書22頁及び27頁)。
さらに請求人は,本件登録意匠と甲第1号証意匠1の差異点I?V及び,本件登録意匠と甲第1号証意匠2の差異点I’?V’について,類否判断に与える影響は微弱である,格別別異の印象をもたらすものではない等と主張する(陳述要領書22乃至24頁,同26乃至28頁)。
しかしながら,上記差異点は,前記(2)で述べた意匠全体の外観や,使用感への影響等のみならず,当該部分の外観として捉えた場合においても,需要者に対し異なる視覚的印象を与えるものであり,請求人による上記主張は失当である。
すなわち,対比図(乙第9号証の斜視図(参考斜視図)の上部部分拡大図において,本件実線部分及び,それに相当する部分にピンク色を付したものである)において顕著に表れているように,各差異点が相侯った結果,本件実線部分は全体がシルクハット状に表れ,重心が高く,すらっとしたスタイリッシュな印象を与える。
これに対し,甲第1号証意匠1及び意匠2は,全体がボリュームのある指輪のような略リング状に表れ,重心が低く,安定的でずんぐりとした印象を与える。
このような印象上の差異は,需要者の視覚に強く訴えかけるものであって,請求人が主張するような「外観上の僅かな差異」等とは到底いえないものであり,両意匠の美感を明らかに別異なものとしている。
よって,両意匠の各差異点により,本件登録意匠と甲第1号証意匠1及び意匠2は互いに非類似の意匠であると認定すべきであり,本件登録意匠は新規性を有している。
(11)本件登録意匠の創作非容易性について
1) 本件登録意匠の創作非容易性について,請求人は,以下のように主張している(陳述要領書29頁,文中の符号は被請求人による)
1)-a)本件実線部分の各部分について分析すると,上面の内周側の面取りのないありふれた平坦面状とした点,中央開口部をその内径が外径の1/2弱の大きさとした点,下方円筒部の長さを上縁部の厚みの2倍強とした点は,この種物品分野において格別創作を要するものではないことは明らかである
1)-b)本件実線部分は,上記各部の要素を総合して意匠全体として観察した場合にも,本件登録意匠独自の格別な意匠的効果を有するものとまではいえない程度の細部の変更をしたにすぎない
1)-c)被請求人の主張する物品全体における当該部分の位置の相違及びリング状突条部における相違は取り立ててあげるまでもない微差にすぎない
しかしながら,前記(2)で述べたように,本件実線部分の各部分の態様は,蓋とシャワーヘッドの双方との嵌合性に配慮するという,従来,この種物品分野でみられなかった観点での創意工夫の結果,創作されたものであるから,請求人による上記1)-a)の主張は誤りである(なお,前述のように,本件実線部分における下方円筒部の長さは上縁部の厚みの約3倍であり,これを「2倍強」とする請求人の上記認定も適切ではない)。
また,各部の要素を総合して全体として観察した場合においては,従来の同種物品には無かった美感(カートリッジ全体の美観向上,蓋及びシャワーヘッドとの嵌合性や気密性に配慮した機能美)が奏されており,かつ,本件実線部分の外観としても,甲第1号証意匠1及び意匠2とは全く異なる印象(全体がシルクハット状に表れ,重心が高く,すらっとしたスタイリッシュな印象)を与えるものとなっている。
このように,本件登録意匠は独自の格別な意匠的効果を有するものであるといえるから,請求人による上記1)-b)の主張は失当である。
さらに,「物品全体における当該部分の位置」については,前記(1)及び(2)で述べたように,本件実線部分を蓋の内側に配置したことで,蓋を被せた状態においては意匠全体の外観が化粧ボトルのように表れ,すっきりと洗練されたものになっているのに加え,蓋との係合性にも優れたものとなっている。
さらに,「リング状突条部」の相違も,前記(9)で述べたように,ありふれた差異とはいえないものである。
したがって,請求人による上記1)-c)の主張も本件登録意匠の創作性を適切に評価したものとはいえない。
2)また,請求人は,本件実線部分の蓋との嵌合性について,蓋は,カートリッジ本体がシャワーヘッドに取付けた場合には,取り外されるもので,しかも蓋との嵌合部を実線部分としたものではなく,創作容易性判断において,通常破線部分については,部分意匠の位置等を確定するのに参酌するにとどまるものである旨主張する(陳述要領書29頁)。
しかし,本件実線部分においては,蓋側の嵌合部材を差し込む開口部が実線で表されているから,蓋との嵌合部の一部が実線部分に含まれているといえ,請求人による「蓋との嵌合部を実線部分としたものではなく」という上記認定は誤りである。
また,シャワーヘッド取付け時に蓋が外されるとしても,蓋の有無は,需要者がカートリッジを購入(選択)する際に視覚的に顕著であるとともに,製品の品質保持にも影響を及ぼす要素であるため,この種の意匠の創作において,蓋の有無や,蓋との嵌合性は重視すべきポイントとなる。
この点について,甲第1乃至6号証の各意匠は,当該部分(シャワーヘッドとの接続部)が剥き出しになっており美観に配慮したものとは言い難く,気密性への配慮も特段認められない。
これに対し,本件登録意匠は販売,保管,輸送等におけるカートリッジの美観や気密性確保等に配慮した点において,独自の創作性が発揮されている。
したがって,本件登録意匠の創作非容易性の判断においても,蓋の有無や,蓋との嵌合性が十分考慮されるべきである。
3)また,請求人は,本件実線部分の実線部分をみると,接続部分の限られた部分にすぎず,無数の多様な選択肢があるといっても,開口部の径,下方円筒部の長さの変更はシャワーヘッドとの嵌合によるところの技術的,機能的な要素にもとづくありふれた,かつ,僅かな変更の範囲にすぎず,面取りを設けないことにも格別意匠的効果があるものとはいえず,実線部分全体として観察する場合,いまだ新たな美感を有する意匠ということができるほどの着想,創作力を必要としたとは到底いうことができないと主張する(陳述要領書30頁)。
しかしながら,答弁書及び本陳述要領書において繰り返し述べたように,本件実線部分は,独自の着想にもとづいて創作されたものであって,新たな美感を獲得していることから,請求人が主張するような「単にシャワーヘッドとの嵌合によるところの技術的,機能的な要素のみにもとづくありふれた,僅かな変更等」には該当せず,高い創作性が発揮されたものである。
よって請求人の上記主張には理由がない。
〔3〕結論
以上に述べた理由から,本件登録意匠は,甲第1号証意匠1及び意匠2とは非類似であって新規性を有しており,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するものではない。
また,甲第1号証意匠1及び意匠2に基づいて当業者が容易に創作し得たものではなく,創作非容易性を具備しており,同法第3条第2項の規定に該当するものでもない。
よって,本件登録意匠は同法第48条第1項により無効とすべきであるとする請求人の主張は成り立たない。
〔4〕添付書類
証拠の表示
(1)乙第6号証:答弁書に記載した本件登録意匠の特徴(a)?(e)に関する説明図
(2)乙第7号証:本件登録意匠に関する説明図
(3)乙第8号証:答弁書における認定事項の一覧
(4)乙第9号証:対比図1
(5)乙第10号証:対比図2

《2》平成29年2月21日付け上申書
(1)請求人は,「甲1相当部分2は,下図においてピンク色マーカーで示す部分(ピンク色の矢印の部分まで),すなわち,円筒部及びその根元の本件実線部分に相当する外方へ延びる水平面を含む部分である」と主張するとともに,当該水平面は,「シャワーヘッド側との接続部材の下端が止められる部分,被請求人の主張する支持する部分と推認されるから,請求書で述べた主張に誤りはない」と主張している(口頭審理陳述要領書(2)2乃至3頁)。
しかしながら,甲第1号証(特開2008-93188)の明細書及び図面中には,甲1相当部分2とシャワーヘッドとの係合方法は一切開示されていないことから,当該水平面が「シャワーヘッド側との接続部材の下端が止められる部分」であると直ちに推認することはできない。
また仮に,請求人が主張するように,当該水平面が「シャワーヘッド側との接続部材の下端が止められる部分」であるとしても,請求人が上図中にピンク色マーカーで示した範囲は,水平面の一部を恣意的に抜き出したものであって,本件実線部分中の該当部に対応していない。
すなわち,図1(カートリッジ本体の拡大斜視図の部分拡大図)に示すように,本件実線部分はリング状突条部の上面の全体(端まで)を実線範囲に含むものである(なお当該部分に一点鎖線が表われているのは,リング状突条部の角部がアール(丸い)であるため,意匠図面上,角部に実線(形状線)が表われないためである)。
したがって,もし,甲第1号証意匠2の水平面も「甲1相当部分2」に含むとするなら,本件実線部分に対応する部分は,水平面の全体であり,下記図2(甲1号意匠2の断面図及び,斜視図の部分拡大図)において赤線及び,赤着色部で示した部分を対象範囲と認定するのが妥当である。
このように認定した場合,甲1相当部分2の水平面は,本件実線部分の該当部に比べて,円筒状部からの突出幅が相対的に大きく,外観的に顕著に異なるものである。さらに,当該水平面はカートリッジ本体の上面にあたるため,本件登録意匠の該当部(細口部分の途中にある)とは意匠全体における「位置」も明らかに相違している。
(2)被請求人が提出した口頭陳述要領書14頁他及び乙第10号証に記載した本件登録意匠の図面が,特許庁に提出された図面とは同一の図ではないという指摘について(口頭審理陳述要領書(2)4頁)
口頭審理陳述要領書等には鮮明な図面を掲載するのが望ましいと考え,CAD上で出願図面を拡大したものを提出したところ,CADの特質上,拡大に際し,一点鎖線及び破線のピッチが変わったものである。
破線及び一点鎖線は,その部分が実線範囲ではないこと及び境界部であることを示すためのものであるから,ピッチが変わったとしても,意匠の認定に影響はない。
(3)請求人は,本件実線部分と甲1相当部分1及び2における「下方円筒部の長さの違い」について,「具体的な実施製品においては(中略)約1mm程度の差異でしかない」ため,取り立てて需要者の注意を強く引くものとはいえない軽微な差異であると主張する(口頭審理陳述要領書(2)5頁)。
また,本件実線部分と甲1相当部分1の「開口部の大きさの差異」について,「具体的な実施製品においては約1.5mm程度の差異でしかない」と指摘するとともに,本件実線部分と甲1相当部分2は,「開口径が1/2弱である点で共通する」と主張する(同頁)。
しかしながら,仮に,本件登録意匠が実施製品と同程度の大きさであるとしても,本件実線部分に相当する部分の寸法は,請求人が口頭審理陳述要領書(2)9頁で指摘するように,全長約7mm,円筒部の外径約13mmであり,その中での1mm又は1.5mmの相違は,全体に占める割合が小さいとはいえず,全体のプロポーションに顕著な違いをもたらす。
このような差異は,需要者が肉眼視で十分に知覚できる差異であるとともに,別異感を抱かせるに十分なものである。
さらに本件実線部分は,カートリッジの蓋やシャワーヘッドと嵌合する部分であり,数ミリの違いが機能性を左右する。このため,この種の意匠を創作する際はミリ単位の寸法にも十分な配慮がなされている。
以上より,これらの相違を軽微なものであるとする請求人の主張は妥当性に欠ける。
また,本件登録意匠の開口部の内径は,カートリッジ外径の約43%であるのに対し,甲1相当部分2における同比率は約50%であり,明確に相違している。
したがって,本件実線部分と甲1相当部分2は,「開口径が1/2弱である点で共通する」とする請求人の主張は適切ではない。
さらに,甲1相当部分2の開口部周囲には面取り部が形成されており,需要者からは開口部の一部と認知され得る部分である。この面取り部も含めると,当該部分の外径は,カートリッジ外径の約60%であって,上面の1/2以上に及び,本件実線部分との相違は一層顕著である。
なお下記図3は,乙第9号証に掲載した図面の一部を実施製品と同程度の大きさに表したものであるが,下方円筒部の長さや,開口径の違いは,この大きさであっても視覚的に顕著であり,これらの相違によって本件登録意匠からは「口が窄まった印象や,細長い印象」が感じられるのに対し,甲第1号証意匠1,2からは「大きく口を開いた印象や,短い印象」が感じられる。
本件登録意匠が限られた一部分を対象とした部分意匠であることも
考慮すれば,このような差異は,軽微なものとは到底いえない。
(4)請求人は「需要者は,カートリッジにおけるシャワーヘッドの差し込み部であるシャワーヘッドの接続部に嵌合するための周面部,すなわち嵌合用円筒部外周にこそ着目するが,接続の際に格別確認する必要のない開口部について孔の有無について認識するとしても,その孔の大きさ,面取りの有無については強く注意を引かれるものではない」と主張する(口頭審理陳述要領書(2)6頁)。
しかしながら,需要者が本件登録意匠に係る製品を手に取り,蓋を開けると,まず目につくのは,開口部のある上面である。また,上面は蓋部やシャワーヘッド側の接続部材と嵌合させる部位であるだけでなく,カートリッジに充填された美容剤が溶け出してくる部分でもあるため,開口部(孔)の大きさや面取りの有無は,需要者の注意を引く部分である。
さらに,本件実施製品における本件実線部分に相当する部分は,全長約7mm,円筒部の外径約13mmであって,一度に目に入る大きさであることから,需要者は,円筒部の外周と上面とを,ひとつの纏まりある部分として観察するはずである。
以上より,需要者は,円筒部外周のみならず,上面の開口部(大きさや面取りの有無)にも着目すると考える方が自然である。
(5)請求人は「リング状突条部」について,細幅リング状の水平面があるのみであるから「突条部」との主張は誤りであると主張する(口頭審理陳述要領書(2)7頁)。
しかし,本件登録意匠の図面においては実線及び破線で突条部が表されており,本件実線部分はその突条部の上面を対象範囲とするものであるから,当該部は「リング状突条部」と認定することについて誤りはなし。
(6)請求人は,(c)(本件実線部分の全長),(d)(開口部),(e)(リング状突条部)の差異を総合して実線部分全体として観察する場合,甲1相当部分1,2と格別意匠的効果を有する新規な特徴が見いだせるものではないと主張する(口頭審理陳述要領書(2)7頁)。
しかし,上記(3)及び,平成29年1月24日付口頭審理陳述要領書16乃至17頁において述べたように,実線部分だけを対比しても形態上の明確な差異が認められる。
このような差異により,本件実線部分からは「シルクハット状,重心が高く,すらっとしたスタイリッシュな印象」や「口が窄まった印象や,細長い印象」が感じられるのに対し,甲第1号証意匠1,2からは「ボリュームのある指輪のような略リング状,重心が低く,安定的でずんぐりとした印象」や「大きく口を開いた印象,短い印象」が感じられ,それぞれ全く異なる意匠的効果を有している。
よって,上記(c)乃至(e)は,全体として新規な特徴を有するというべきである。
(7)請求人は,「仮に(本件登録意匠の)実線部分は蓋の内部に位置しているとしても,実線部分はカートリッジ(本体)の流出側端部に位置することには変わらず,実線部分の当該物品全体の形態の中での位置,大きさ,範囲が変わるものではない」と主張する(口頭審理陳述要領書(2)8頁)。
しかし,現に,本件実線部分は蓋の内部に位置しており,蓋を被せた状態において,当該部分が外部に露出しない点において,甲1相当部分1,2とは相違が認められるのであるから,両意匠は実線部分の「位置」が相違すると認定すべきである。
(8)請求人は,本件実線部分と蓋との嵌合部に関し,「当該蓋の内側突起部分及びこれと嵌合するカートリッジ(本体)の開口部内壁は破線部分であり,当該破線部分はあくまで破線によって具体的に示された位置等を参酌するにとどまるものであるから,意匠の新規性,創作非容易性の判断において格別考慮されるべき点ではない」と主張する(口頭審理陳述要領書(2)8頁)。
また,「単に開口部は水等の流出路口となる円形の孔にすぎず,蓋と実線部分との構造的関連性が深いとの(被請求人の)主張は失当である」と主張する(同9頁)。
しかし,本件登録意匠において実線で表された「開口部」は,流出路口となるだけではなく,蓋側の嵌合部材を差し込む「入口」にもなることから蓋との構造的関連性が深いといえ,被請求人の主張に誤りはない。
また,平成29年1月24日付口頭審理陳述要領書18乃至19頁において述べたように,本件実線部分(に相当する部分)が蓋で被覆されているという構成は,甲1相当部分1,2のみならず,甲第1乃至6号証においても認められない新規なものであって,意匠の美観や気密性向上に寄与するものであるから,当該実線部分と蓋との関係性は,意匠の新規性,創作非容易性の判断において考慮すべきである。
(9)請求人は,「本件登録意匠の実線部分である接続部分の態様は,請求書に挙げた意匠(甲第2号証?第7号証)に見られるように,この種物品に係る分野において,その位置も物品の機能に由来する極く普通に見られるものであり,形態についてもこれらの意匠の接続部分の形態と何ら変わらず,取り立てて意匠的な特徴を有するものでも,格別創作力を有するものでもない」と主張する(口頭審理陳述要領書(2)9乃至10頁)。口頭審理陳述要領書(2)10及び11頁図(甲2?7号証)
しかしながら,甲第2号証?甲第7号証の中に,本件登録意匠の特徴(a)?(e)(乙第6号証他参照)を兼ね備えたものは存在していないことから,本件登録意匠は新規性を備えており,その創作も容易であったとはいえない。
また,甲第2号証?第7号証の各意匠は,請求人が審判請求書(4頁他)において,本件実線部分及び甲1相当部分1,2の基本的構成態様 (共通点)であると認定した態様(請求書の記載のまま引用すると『全体が細口の短円筒状(短円筒状部)で,その上縁部付近にOリングを配したもので,上端から下方へ順に,鍔状の上縁部,Oリング,上縁部の軸方向の長さより長い下方円筒部からなり,上面はドーナツ状平坦面状(ドーナツ状平坦面状部)でその内側(中央)が開口する』態様)を概ね備えている。
このような態様について,請求人は,請求書14頁において『両意匠(部分)全体を支配する骨格的態様であり,需要者(取引者を含む。)に視覚的に強い共通感を与えるものである。』と認定しているが,甲第2号証?第7号証を参酌するなら,このような態様は,この種物品に係る分野において広く見られる,ありふれた態様であると認定でき,需要者に対し特段感興を起こさせるものではないというべきである。
本件登録意匠は,美観や機能性(嵌合性,気密性等)を向上させるために,より具体的な構成態様において新たな創作(特徴点(a)?(e))がなされたものであり,需要者が着目するのは,まさにそのような点である。
したがって,本件実線部分は,意匠的な特徴及び創作力を有するものと評価すべきである。
(10)以上述べたように,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号及び,同2項の規定に該当するものではなく,同法第48条第1項1号により無効とすべきであるとする請求人の主張は成り立たない。


第3 当審の判断
当審は,意匠登録第1476774号の意匠(以下,「本件登録意匠」という。)が,本件登録意匠の意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠である甲第1号証意匠1(以下,「引用意匠1」という。)に記載された意匠と類似しない意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものとはいえないと判断する。(無効理由1)
また,本件登録意匠が,本件登録意匠の意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠である甲第1号証意匠2(以下,「引用意匠2」という。)に記載された意匠と類似しない意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものとはいえないと判断する。(無効理由2)
そして,本件登録意匠は,本件登録意匠の意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠である甲第1号証意匠1(引用意匠1)及び甲第1号証意匠2(引用意匠2)の意匠に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものとはいえないので,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものとはいえないと判断する。(無効理由3)
その理由は,以下のとおりである。

1.本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1476774号の意匠)は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,平成24年(2012年)12月26日に意匠登録出願され,平成25年(2013年)7月12日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,意匠に係る物品を「シャワーヘッド用カートリッジ」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりのもので,「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で,それ以外の部分を破線で表している。一点鎖線は,部分意匠として登録を受けようとする部分とそれ以外の部分の境界を表している。」(以下,本件登録意匠において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本件実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)
すなわち,本件登録意匠は,内部に化粧剤等を充填し,シャワーヘッドに装着して使用されるシャワーヘッド用のカートリッジである。
本件登録意匠は,全体を略円筒状とし,全体の高さの約4/5の高さの部分をカートリッジの本体部(以下,「本体部」という。)とし,同径で全体の高さの上約1/5の高さの蓋部(以下,「蓋部」という。)としたものであって,蓋部を装着した状態において蓋部の内側の細い円筒状の突出部を本体部上面中央の開口部に嵌合させるものであり,その蓋部を外した状態において,上面の開口部が通水口であり,外周面がシャワーヘッドの内側の上部にある接続部材に挟み込まれ,シャワーヘッドに装着させる際の接続部となるものであって,本体部の外周の約2/3の径の外周で本体部全体の高さの約1/7の上方に突出し縮径した略円筒状の部分のうち,さらに上方約1/2の高さの上方の開口部付近の部分(以下,「略短円筒状部」という。)であって,その上方約1/2の高さに平面視において外側に突出するリング状の突条部(以下,「リング状突条部」という。)を設け,リング状突条部の上面の一点鎖線で囲まれた部分から本体部の上端部を本件実線部分としたものである。
本件実線部分の形態は,部分全体を,略短円筒状部にリング状突条部を設けたものとし,略短円筒状部の縦の高さと外周の直径の長さの比を約1:1.7とし,上面中央に外周の径の約47%の径の開口部を設けたものであって,正面視において上端寄りに横長細帯状に表れるO状リング(以下,「O状リング」という。)を設け,O状リングは,切断面が略円形状で,本体部の略短円筒状部の上端寄りで,略短円筒状部を正面視した本件実線部分全体の高さの上から約1/7から約1/2の位置に断面視略コ字状の凹状部を本体側に設けて上下に僅かに隙間を設けてO状リングを嵌合させたもので,平面視すると本体部の外周の径よりO状リングが外側に僅かにはみ出して視認できるものである。リング状突条部は,本体部の略短円筒状部の上端寄りに上から約21/46から約25/46の位置に設けた平面視において平坦な円環形状であり,その平面視の外径は略短円筒状部の外径の約1.3倍でO状リングよりさらにはみ出して視認できるものである。リング状突条部の上面を平面視した僅かに内側寄りに一点鎖線を設けたものである。


2.無効理由1について(意匠法第3条第1項第3号)
請求人は,本件登録意匠は,本件意匠登録の出願の日前に日本国内において公然知られ頒布された刊行物である甲第1号証に記載された【図2】に表された引用意匠1(甲第1号証-1)の意匠の本件実線部分に相当する部分(以下,この部分を「引用相当部分1」という。)(別紙第2参照)と類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するものであり,意匠登録を受けることができないものであるので,その意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきであると主張するので,以下,検討する。

引用意匠1(別紙第2参照)
引用意匠1は,本件登録意匠の出願日前である平成20年(2008年)4月24日に発行された特開2008-93188号の公開特許公報に掲載された【発明の名称】を「シャワー用カートリッジ」とし,保湿材などを除放してシャワーから噴出させることができるもので,【図2】に表された意匠であって,【図2】(a)には軸線方向断面図が表され,(b)には軸線直交方向断面図(短手方向)が表されており,(a)のシャワー用カートリッジの端部のキャップ14の部分が引用相当部分1であり,その形態は,同公報の図面及び関連する説明の記載のとおりのものである。
引用意匠1の図は,いずれも断面図であるが,それらの図からすると,全体を細長の略円筒状とし,略円筒状のケースの上下端部に略短円筒状のキャップを取り付けたものであって,蓋部はないものと認められ,使用時にはシャワーヘッドの内側の上部となる,【図2】(a)の図面上では下方になる縮径した略円筒状の部分であって,本体部の外周の約3/5の径の外周で本体部全体の高さの約1/12の下方に突出した縮径した部分のうち,さらに段差状に縮径した下方の約2/3の高さの下部の端部キャップ14の開口部付近の部分を本件実線部分に相当する部分(引用相当部分1)としたものである。
引用相当部分1の形態は,部分全体を,端部のキャップ14(以下,この部分を「キャップ部」という。)の下方の略円筒状部の段差状に縮径した部分から端部の開口部をもつ面までの略短円筒状部とし,略短円筒状部の縦の長さと外周の直径の長さの比を約1:2.6とし,下面に外周の径の約67%の径の開口部を設けたものであって,下端寄りの外周にO状リング15を設け,O状リングは,断面を略円形状とし,キャップ部の下端寄りに引用相当部分1の全体の高さの下から約1/5から約7/20の位置にある断面視略コ字状の凹状部に上下に隙間なくO状リングを嵌合させており,キャップ部の外周の径よりO状リングが外側に僅かにはみ出して視認できるものであり,開口部周囲の縁を切り欠いて傾斜面を設けたものである。

3.本件登録意匠と引用意匠1との対比
(1)意匠に係る物品
本件登録意匠と引用意匠1(以下,「両意匠」という。)意匠に係る物品について,本件登録意匠は,「シャワーヘッド用カートリッジ」であるのに対して,引用意匠1は,「シャワー用カートリッジ」である。
(2)本件実線部分と引用相当部分1(以下,「両部分」という。)の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
(2-1)共通点
蓋部を取った状態における本件実線部分と引用相当部分1は,いずれも使用時にはシャワーヘッドの内側に装着されるカートリッジの本体部上部の縮径した略短円筒状部である点が共通する。
(2-2)差異点
本件実線部分の上面の開口部は,通水口であるが,蓋部の内側の突条部と嵌合させる部分でもあるのに対して,引用相当部分1は,通水口ではあっても蓋部を嵌合させる機能を有さないものである点に差異が認められる。
本件実線部分の略短円筒状部の周側面は,シャワーヘッドの接続部材にはめ込まれ,カートリッジをシャワーヘッド内で固定させる役割のものであるのに対して,引用相当部分1は,そういった機能は不明なものである点に差異が認められる。
本件実線部分は,全体を本体部と蓋部とするもので,蓋部の内側に位置し,保管時及び流通時には露出しないものとしているのに対して,引用相当部分1は,蓋部を有さず,露出しているものである点に差異が認められる。
本件実線部分は,本体部上部の略短円筒状部の上方部分としているのに対して,引用相当部分1は,本体部上部の段差状に縮径したキャップ部の上方の略短円筒状部の部分である点に差異が認められる。
本件実線部分は,本体部上部の略短円筒状部にリング状突条部を設けているのに対して,引用相当部分1は,リング状突条部を有さないものである点に差異が認められる。
(3)形態
以下,本件実線部分と引用相当部分1(以下,「両部分」という。)の形態について対比する。
なお,両部分を同一方向から対比するため,引用相当部分1の上下を逆に向け,本件実線部分と同一方向のものとして,以下,認定し,対比する。
また,両部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
(3-1)形態における共通点
両部分は,
(A)部分全体を略短円筒状とし,上面中央に外周の径より小さい径の開口部を設けている点,
(B)正面視すると上端寄りの外周に切断面が略円形状のO状リングを設け,上面の外周の径よりO状リングが外側に僅かにはみ出して視認できるものである点,
(C)O状リングを取り付ける部分を,略短円筒状部の上端寄りの位置に断面視略コ字状の凹状部としている点,
において主に共通する。
(3-2)形態における差異点
一方,両部分には,
(ア)本件実線部分は,本体部上部の略短円筒状部にリング状突条部を設けたものとし,リング状突条部は,略短円筒状部の上端寄りに上から約21/46から約25/46の位置に設けた平面視において平坦な円環形状であり,その平面視の外径が略短円筒状部の外径の約1.3倍でO状リングよりさらにはみ出して視認できるものであるのに対して,引用部分1は,そういったリング状突条部を有していない点,
(イ)上面開口部の大きさについて,本件実線部分は,外周の径の約47%の径としているのに対して,引用相当部分1は,外周の径の約67%の径としている点,
(ウ)略短円筒状部の上端寄りの断面視略コ字状の凹状部とO状リングの態様について,(ウ-1)本件実線部分は,正面視において本体部の略短円筒状部の上端寄りに本件実線部分全体の高さの約1/7から約1/2の位置にO状リングを嵌合しているのに対して,引用相当部分1は,キャップ部の上端寄りに略短円筒状部の引用相当部分1の全体の高さの約1/5から約7/20の位置にO状リングを嵌合している点,(ウ-2)本件実線部分は,上下に僅かに隙間を設けてO状リングを嵌合しているのに対して,引用相当部分1は,上下に隙間なくO状リングを嵌合している点,
(エ)略短円筒状部の縦の長さと外周の直径の長さの比について,本件実線部分は,約1:1.7であるのに対して,引用相当部分1は,約1:2.6で本件実線部分より太くて短い点,
(オ)上面開口部の態様について,本件実線部分は,開口部の周囲が平坦面であるのに対して,引用相当部分1は,開口部周囲の縁を切り欠いて傾斜面を設けている点,
に主な差異が認められる。

4.本件登録意匠と引用意匠1の類否判断
(1)意匠に係る物品
まず,両意匠の意匠に係る物品については,本件登録意匠は,「シャワーヘッド用カートリッジ」であって,引用意匠1は,「シャワー用カートリッジ」であり,いずれもシャワーヘッドの中に内設して用いられる化粧剤等を内蔵したカートリッジであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通している。
(2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
(2-1)共通点
両部分は,蓋部を取った状態において,いずれも使用時にはシャワーヘッドの内側に装着されるカートリッジの本体部上部の縮径した略短円筒状部である点で,その位置,大きさ及び範囲が共通しているが,シャワーヘッド用のカートリッジに縮径した略短円筒状の部分を設けた態様は多数見受けられ,その位置,大きさ及び範囲の共通点は,両部分の類否判断に与える影響は小さいものといえる。
(2-2)差異点
一方,両部分には,上面の開口部が蓋部の内側の突条部と嵌合する部分であるか否か,略短円筒状部がシャワーヘッドの接続部材にはめ込まれカートリッジを固定させる機能をもつか否かに差異が認められ,本件実線部分が専用の蓋部を嵌合させることやシャワーヘッドの接続部材にはめ込むことを前提としていることから,これらの差異によって,両部分の用途及び機能が大きく異なり,需要者に与える印象を異ならせるものといえ,両部分の類否判断に与える影響が大きい。
また,両部分には,蓋部を設けることを前提とした態様であるか否かに差異が認められ,本件実線部分は,販売や保管のために蓋部をつけてカートリッジ本体部を保護するために機能を持ち,蓋部の内側にある点で引用相当部分1とは位置や範囲が大きく異なり,両部分の類否判断に与える影響が大きい。
そして,両部分には,本体部上部の略短円筒状部の上方部分としているのか,段差状に縮径したキャップ部の上方部分であるのかの差異点が認められるが,部材が異なることによって,両部分の位置や範囲が異なる印象を起こさせるものといえるから,両部分の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
さらに,両部分にはリング状突条部の有無に差異が認められ,本件実線部分はリング状突条部がシャワーヘッドの接続部材に接し,シャワーヘッドの接続部材と密着させる部分となることから目立つものといえ,引用相当部分1とは機能が大きく異なり,また,位置や範囲も異なるものといえ,それは両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲を異なるものとするもので,両部分の類否判断に与える影響が大きい。
そうすると,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲については,共通点が両部分の類否判断に与える影響を考慮しても,それぞれの差異点が,両部分全体として需要者に与える印象を異ならせるもので,両部分の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
(3)形態
以下,両部分の形態の共通点及び差異点について評価し,両意匠の類否について判断する。
(3-1)共通点
共通点(A)については,部分全体を略短円筒状とし,上面中央に外周の径より小さい径の開口部を設けている態様は,両部分に共通する全体の基本構成であるが,この種の物品分野においては,概括的な態様といえるもので,両部分の他にも既に見られるもので,両部分のみに認められる格別の特徴であるとはいえず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
次に,共通点(B)について,正面視において上端寄りの外周に切断面が略円形状のO状リングを設け,上面の外周の径よりO状リングが外側に僅かにはみ出して視認できるものである態様も,この種の物品分野においては,両部分の他にも既に多数見られる,ごく普通に見られるありふれた態様であって,特徴的な態様とはいえず,また,O状リングの位置や大きさにも様々な態様のものがあることから,O状リングを設けたというだけで,直ちに両部分が類似となる程の顕著な特徴であるとはいえず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
また,共通点(C)についても,O状リングを取り付ける部分を,略短円筒状部の上端寄りの位置に断面視略コ字状の凹状部としている態様が共通しているが,この種の物品分野においては,略短円筒状部の上端寄りの位置に断面視略コ字状の凹状部を設けたものは,他にも見られ,さほど特徴のないものといえ,上端寄りの位置に断面視略コ字状の凹状部を設けてO状リングを取り付けたものであるというだけで,直ちに両部分が類似となる程の顕著な特徴であるとはいえず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,これらの共通点が両意匠の類否判断を決定付けるものであるということはできない。
(3-2)差異点
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,まず,差異点(ア)のリング状突条部の態様について,本件実線部分の本体部上部の略短円筒状部にリング状突条部を設けたものとし,リング状突条部は,略短円筒状部の上端寄りに上から約21/46から約25/46の位置に設けた平面視において平坦な円環形状であり,その平面視の外径が略短円筒状部の外径の約1.3倍でO状リングよりさらにはみ出して視認できるものである態様は,正面視からも平面視からもリング状突条部が視認でき,略短円筒状部とリング状突条部が一体的に設けられ,それが部分全体の印象に影響を与えるものであるから,他に見られない特徴的な態様といえ,そのようなリング状突条部のない引用相当部分1とは,その形態においても明確に区別できるもので,その差異は,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)の上面開口部の大きさについて,いずれも部分的な差異ではあるが,需要者は,カートリッジをシャワーヘッドに装着する際に通水口を確認する時や,蓋部を嵌合する際にも確認することから,外周の径の約47%の径としている本件実線部分と,外周の径の約67%の径としている引用相当部分1とでは,両部分を見た場合の需要者に与える印象が明らかに異なり,その差異は,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
また,差異点(ウ)の略短円筒状部の上端寄りの断面視略コ字状の凹状部とO状リングの態様について,まず,(ウ-1)正面視において本体部の略短円筒状部の上端寄りの部分全体の高さの約1/7から約1/2の位置にO状リングを嵌合している本件実線部分の態様は,上端部に寄ったもので,正面視において部分全体の高さの約1/5から約7/20の位置にO状リングを嵌合している引用相当部分1とでは,両部分を正面視した場合の印象が明らかに異なり,その差異は,両部分の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。また,(ウ-2)隙間を設けてO状リングを嵌合しているか否かについても,上下に僅かに隙間を設けてO状リングを嵌合している本件実線部分は,上下に隙間なくO状リングを嵌合している引用相当部分1とは,見る者に異なる印象を与えるもので,両部分の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
そして,差異点(エ)の略短円筒状部の縦の長さと外周の直径の長さの比について,略短円筒状部の縦横比には,様々なものが見受けられ,本件実線部分と同様にやや細長いものも存在するところではあるが,開口部付近まで細い本件実線部分と,略短円筒状部が太くて短い引用相当部分1とでは,差異点(ウ-1)の断面視略コ字状の凹状部の態様における差異と相俟って,視覚的印象が異なり,その差異は,両部分の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
さらに,差異点(オ)の開口部周囲の縁を切り欠いて傾斜面を設けているか否かについても,細部に係るものであり,両部分の態様ともありふれた態様といえるものであるが,本件実線部分の開口部は,蓋をした状態の時には蓋部に嵌合させる部分であり,需要者は,シャワーヘッドへの装着時のほか,蓋部を着脱する際に注意深く見ることから,その違いをはっきり認識できるものであり,シャワーヘッドに装着し,使用する時には通水口にもなる部分であるから,単に傾斜面を設けていないのではなく,蓋部や水流に合わせた大きさとしたものであり,引用相当部分1は,そのような機能を持たないものであって,前記した差異点(イ)の上面開口部の径の大きさの差異と相俟って,需要者に異なった印象を与えるものであり,平坦な面の本件実線部分の態様と,縁を切り欠いて傾斜面を設けたものである引用相当部分1とでは,その視覚的印象が異なるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
(4)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するものであるが,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲に差異が認められ,それらが両部分の類否判断に大きな影響を与え,また,両部分の形態において,差異点が共通点を凌駕し,それらが両部分の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。
したがって,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された引用意匠1の意匠と類似しないものであるから,意匠法第3条1項第3号に規定する意匠には該当せず,その意匠登録は,無効理由1によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

5.無効理由2について(意匠法第3条第1項第3号)
請求人は,本件登録意匠は,本件意匠登録の出願の日前に日本国内において公然知られ頒布された刊行物である甲第1号証に記載された【図1】に表された引用意匠2(甲第1号証-2)の意匠の本件実線部分に相当する部分(以下,この部分を「引用相当部分2」という。)(別紙第2参照)と類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するものであり,意匠登録を受けることができないものであるので,その意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきであると主張するので,以下,検討する。

引用意匠2(別紙第2参照)
引用意匠2は,本件登録意匠の出願日前である平成20年(2008年)4月24日に発行された特開2008-93188号の公開特許公報に掲載された【発明の名称】を「シャワー用カートリッジ」とし,保湿材などを除放してシャワーから噴出させることができるもので,【図1】に表された意匠であって,【図1】(a)には軸線方向断面図が表され,(b)には軸線直交方向断面図(短手方向)が表されており,(a)のシャワー用カートリッジの端部のキャップ4の部分が引用相当部分2であり,その形態は,同公報の図面及び関連する説明の記載のとおりのものである。
引用意匠2の図は,いずれも断面図であるが,それらの図からすると,全体を細長の略円筒状とし,略円筒状のケースの上下端部に略短円筒状のキャップを取り付けたものであって,蓋部はないものと認められ,使用時にはシャワーヘッドの内側の上部となる,【図1】(a)の図面上では下方になる縮径した略円筒状の部分であって,本体部の外周の約7/10の径の外周で本体部全体の高さの約1/23の下方に突出した縮径した部分のうち,さらに段差状に縮径した下方の約2/3の高さの下部の端部キャップ4の開口部付近の部分を本件実線部分に相当する部分(引用相当部分2)としたものである。
引用相当部分2の形態は,部分全体を,端部のキャップ4(以下,この部分を「キャップ部」という。)の下方の略円筒状部の段差状に縮径した部分から端部の開口部をもつ面までの略短円筒状部とし,略短円筒状部の縦の長さと外周の直径の長さの比を約1:2.7とし,下面に外周の径の約50%の径の開口部を設けたものであって,下端寄りの外周にO状リング5を設け,O状リングは,断面を略円形状とし,キャップ部の下端寄りに引用相当部分2の全体の高さの下から約3/10から約2/5の位置にある断面視略コ字状の凹状部に上下に隙間なくO状リングを嵌合させており,キャップ部の外周の径よりO状リングが外側に僅かにはみ出して視認できるものであり,開口部周囲の縁を切り欠いて傾斜面を設けたものである。

6.本件登録意匠と引用意匠2との対比
(1)意匠に係る物品
本件登録意匠と引用意匠2(以下,「両意匠」という。)意匠に係る物品について,本件登録意匠は,「シャワーヘッド用カートリッジ」であるのに対して,引用意匠2は,「シャワー用カートリッジ」である。
(2)本件実線部分と引用相当部分2(以下,「両部分」という。)の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
(2-1)共通点
蓋部を取った状態における本件実線部分と引用相当部分2は,いずれも使用時にはシャワーヘッドの内側に装着されるカートリッジの本体部上部の縮径した略短円筒状部である点が共通する。
(2-2)差異点
本件実線部分の上面の開口部は,通水口であるが,蓋部の内側の突条部と嵌合させる部分でもあるのに対して,引用相当部分2は,通水口ではあっても蓋部を嵌合させる機能を有さないものである点に差異が認められる。
本件実線部分の略短円筒状部の周側面は,シャワーヘッドの接続部材にはめ込まれ,カートリッジをシャワーヘッド内で固定させる役割のものであるのに対して,引用相当部分2は,そういった機能は不明なものである点に差異が認められる。
本件実線部分は,全体を本体部と蓋部とするもので,蓋部の内側に位置し,保管時及び流通時には露出しないものとしているのに対して,引用相当部分2は,蓋部を有さず,露出しているものである点に差異が認められる。
本件実線部分は,本体部上部の略短円筒状部の上方部分としているのに対して,引用相当部分2は,本体部上部の段差状に縮径したキャップ部の上方の略短円筒状部の部分である点に差異が認められる。
本件実線部分は,本体部上部の略短円筒状部にリング状突条部を設けているのに対して,引用相当部分2は,リング状突条部を有さないものである点に差異が認められる。
(3)形態
以下,本件実線部分と引用相当部分2(以下,「両部分」という。)の形態について対比する。
なお,両部分を同一方向から対比するため,引用相当部分2の上下を逆に向け,本件実線部分と同一方向のものとして,以下,認定し,対比する。
また,両部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
(3-1)形態における共通点
両部分は,
(A)部分全体を略短円筒状とし,上面中央に外周の径より小さい径の開口部を設けている点,
(B)正面視すると上端寄りの外周に切断面が略円形状のO状リングを設け,上面の外周の径よりO状リングが外側に僅かにはみ出して視認できるものである点,
(C)O状リングを取り付ける部分を,略短円筒状部の上端寄りの位置に断面視略コ字状の凹状部としている点,
において主に共通する。
(3-2)形態における差異点
一方,両部分には,
(ア)本件実線部分は,本体部上部の略短円筒状部にリング状突条部を設けたものとし,リング状突条部は,略短円筒状部の上端寄りに上から約21/46から約25/46の位置に設けた平面視において平坦な円環形状であり,その平面視の外径が略短円筒状部の外径の約1.3倍でO状リングよりさらにはみ出して視認できるものであるのに対して,引用部分2は,そういったリング状突条部を有していない点,
(イ)上面開口部の大きさについて,本件実線部分は,外周の径の約47%の径としているのに対して,引用相当部分2は,外周の径の約50%の径としている点,
(ウ)略短円筒状部の上端寄りの断面視略コ字状の凹状部とO状リングの態様について,(ウ-1)本件実線部分は,正面視において本体部の略短円筒状部の上端寄りに本件実線部分全体の高さの約1/7から約1/2の位置にO状リングを嵌合しているのに対して,引用相当部分2は,キャップ部の上端寄りに略短円筒状部の引用相当部分2の全体の高さの約3/10から約2/5の位置にO状リングを嵌合している点,(ウ-2)本件実線部分は,上下に僅かに隙間を設けてO状リングを嵌合しているのに対して,引用相当部分2は,上下に隙間なくO状リングを嵌合している点,
(エ)略短円筒状部の縦の長さと外周の直径の長さの比について,本件実線部分は,約1:1.7であるのに対して,引用相当部分2は,約1:2.7で本件実線部分より太くて短い点,
(オ)上面開口部の態様について,本件実線部分は,開口部の周囲が平坦面であるのに対して,引用相当部分2は,開口部周囲の縁を切り欠いて傾斜面を設けている点,
に主な差異が認められる。

7.本件登録意匠と引用意匠2の類否判断
(1)意匠に係る物品
まず,両意匠の意匠に係る物品については,本件登録意匠は,「シャワーヘッド用カートリッジ」であって,引用意匠2は,「シャワー用カートリッジ」であり,いずれもシャワーヘッドの中に内設して用いられる化粧剤等を内蔵したカートリッジであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通している。
(2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
(2-1)共通点
両部分は,蓋部を取った状態において,いずれも使用時にはシャワーヘッドの内側に装着されるカートリッジの本体部上部の縮径した略短円筒状部である点で,その位置,大きさ及び範囲が共通しているが,シャワーヘッド用のカートリッジに縮径した略短円筒状の部分を設けた態様は多数見受けられ,その位置,大きさ及び範囲の共通点は,両部分の類否判断に与える影響は小さいものといえる。
(2-2)差異点
一方,両部分には,上面の開口部が蓋部の内側の突条部と嵌合する部分であるか否か,略短円筒状部がシャワーヘッドの接続部材にはめ込まれカートリッジを固定させる機能をもつか否かに差異が認められ,本件実線部分が専用の蓋部を嵌合させることやシャワーヘッドの接続部材にはめ込むことを前提としていることから,これらの差異によって,両部分の機能が大きく異なり,需要者に与える印象を異ならせるものといえ,両部分の類否判断に与える影響が大きい。
また,両部分には,蓋部を設けることを前提とした態様であるか否かに差異が認められ,本件実線部分は,販売や保管のために蓋部をつけてカートリッジ本体部を保護するための機能を持ち,蓋部の内側にある点で引用相当部分2とは位置や範囲が大きく異なり,両部分の類否判断に与える影響が大きい。
そして,両部分には,本体部上部の略短円筒状部の上方部分としているのか,段差状に縮径したキャップ部の上方部分であるのかの差異点が認められるが,部材が異なることによって,両部分の位置や範囲が異なる印象を起こさせるものといえるから,両部分の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
さらに,両部分にはリング状突条部の有無に差異が認められ,本件実線部分はリング状突条部がシャワーヘッドの接続部材に接し,シャワーヘッドの接続部材と密着させる部分となることから目立つものといえ,引用相当部分2とは機能が大きく異なり,また,位置や範囲も異なるものといえ,それは両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲を異なるものとするもので,両部分の類否判断に与える影響が大きい。
そうすると,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲については,共通点が両部分の類否判断に与える影響を考慮しても,それぞれの差異点が,両部分全体として需要者に与える印象を異ならせるもので,両部分の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
(3)形態
以下,両部分の形態の共通点及び差異点について評価し,両意匠の類否について判断する。
(3-1)共通点
共通点(A)については,部分全体を略短円筒状とし,上面中央に外周の径より小さい径の開口部を設けている態様は,両部分に共通する全体の基本構成であるが,この種の物品分野においては,概括的な態様といえるもので,両部分の他にも既に見られるもので,両部分のみに認められる格別の特徴であるとはいえず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
次に,共通点(B)について,正面視において上端寄りの外周に切断面が略円形状のO状リングを設け,上面の外周の径よりO状リングが外側に僅かにはみ出して視認できるものである態様も,この種の物品分野においては,両部分の他にも既に多数見られる,ごく普通に見られるありふれた態様であって,特徴的な態様とはいえず,また,O状リングの位置や大きさにも様々な態様のものがあることから,O状リングを設けたというだけで,直ちに両部分が類似となる程の顕著な特徴であるとはいえず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
また,共通点(C)についても,O状リングを取り付ける部分を,略短円筒状部の上端寄りの位置に断面視略コ字状の凹状部としている態様が共通しているが,この種の物品分野においては,略短円筒状部の上端寄りの位置に断面視略コ字状の凹状部を設けたものは,他にも見られ,さほど特徴のないものといえ,上端寄りの位置に断面視略コ字状の凹状部を設けてO状リングを取り付けたものであるというだけで,直ちに両部分が類似となる程の顕著な特徴であるとはいえず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,これらの共通点が両意匠の類否判断を決定付けるものであるということはできない。
(3-2)差異点
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,まず,差異点(ア)のリング状突条部の態様について,本件実線部分の本体部上部の略短円筒状部にリング状突条部を設けたものとし,リング状突条部は,略短円筒状部の上端寄りに上から約21/46から約25/46の位置に設けた平面視において平坦な円環形状であり,その平面視の外径が略短円筒状部の外径の約1.3倍でO状リングよりさらにはみ出して視認できるものである態様は,正面視からも平面視からもリング状突条部が視認でき,略短円筒状部とリング状突条部が一体的に設けられ,それが部分全体の印象に影響を与えるものであるから,他に見られない特徴的な態様といえ,そのようなリング状突条部のない引用相当部分2とは,その形態においても明確に区別できるもので,その差異は,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)の上面開口部の大きさについて,いずれも部分的な差異ではあるが,需要者は,カートリッジをシャワーヘッドに装着する際に通水口を確認する時や,蓋部を嵌合する際にも確認することから,外周の径の約47%の径としている本件実線部分と,外周の径の約50%の径としている引用相当部分2とでは,両部分を見た場合の需要者に与える印象が僅かに異なり,その差異は,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
また,差異点(ウ)の略短円筒状部の上端寄りの断面視略コ字状の凹状部とO状リングの態様について,まず,(ウ-1)正面視において本体部の略短円筒状部の上端寄りの部分全体の高さの約1/7から約1/2の位置にO状リングを嵌合している本件実線部分の態様は,上端部に寄ったもので,正面視において部分全体の高さの約3/10から約2/5の位置にO状リングを嵌合している引用相当部分2とでは,両部分を正面視した場合の印象が明らかに異なり,その差異は,両部分の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。また,(ウ-2)隙間を設けてO状リングを嵌合しているか否かについても,上下に僅かに隙間を設けてO状リングを嵌合している本件実線部分は,上下に隙間なくO状リングを嵌合している引用相当部分2とは,見る者に異なる印象を与えるもので,両部分の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
そして,差異点(エ)の略短円筒状部の縦の長さと外周の直径の長さの比について,略短円筒状部の縦横比には,様々なものが見受けられ,本件実線部分と同様にやや細長いものも存在するところではあるが,開口部付近まで細い本件実線部分と,略短円筒状部が太くて短い引用相当部分2とでは,差異点(ウ-1)の断面視略コ字状の凹状部の態様における差異と相俟って,視覚的印象が異なり,その差異は,両部分の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
さらに,差異点(オ)の開口部周囲の縁を切り欠いて傾斜面を設けているか否かについても,細部に係るものであり,両部分の態様ともありふれた態様といえるものであるが,本件実線部分の開口部は,蓋をした状態の時には蓋部に嵌合させる部分であり,需要者は,シャワーヘッドへの装着時のほか,蓋部を着脱する際に注意深く見ることから,その違いをはっきり認識できるものであり,シャワーヘッドに装着し,使用する時には通水口にもなる部分であるから,単に傾斜面を設けていないのではなく,蓋部や水流に合わせた大きさとしたものであり,引用相当部分2は,そのような機能を持たないものであって,前記した差異点(イ)の上面開口部の径の大きさの差異と相俟って,需要者に異なった印象を与えるものであり,平坦な面の本件実線部分の態様と,縁を切り欠いて傾斜面を設けたものである引用相当部分2とでは,その視覚的印象が異なるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
(4)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通するが,両部分の形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両部分の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。
したがって,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された引用意匠2の意匠と類似しないものであるから,意匠法第3条1項第3号に規定する意匠には該当せず,その意匠登録は,無効理由2によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

8.無効理由3について(意匠法第3条第2項)
請求人は,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載され公知となった甲第1号証の引用意匠1(甲第1号証-1)(別紙第2参照)の意匠と引用意匠2(甲第1号証-2)(別紙第2参照)の意匠に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであり,意匠法第3条第2項に該当することにより意匠登録を受けることができないものであるので,本件登録意匠は同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきである旨主張するので,以下,検討する。

(1)引用意匠1(甲第1号証-1)(別紙第2参照)
引用意匠1は,前記2.に述べたとおり,特開2008-93188号の公開特許公報に掲載された【発明の名称】を「シャワー用カートリッジ」とした【図2】に表された意匠である。引用意匠1の形態は,前記2.のとおりであり,また,本件登録意匠と引用意匠1の共通点及び差異点は,前記3.のとおりである。

(2)引用意匠2(甲第1号証-2)(別紙第2参照)
引用意匠2は,前記5.に述べたとおり,特開2008-93188号の公開特許公報に掲載された【発明の名称】を「シャワー用カートリッジ」とした【図1】に表された意匠である。引用意匠2の形態は,前記5.のとおりであり,また,本件登録意匠と引用意匠1の共通点及び差異点は,前記6.のとおりである。

(3)甲第2号証ないし甲第7号証の意匠(別紙第3ないし第8参照)
請求人は,シャワー用カートリッジの物品分野において,O状リングを設けた態様や縮径した略短円筒状の部分を有する態様がありふれた態様であることを主張するために甲第2号証ないし甲第7号証の意匠を提出している。
甲第2号証の意匠を例示意匠1(別紙第3参照),甲第3号証の意匠を例示意匠2(別紙第4参照),甲第4号証の意匠を例示意匠3(別紙第5参照),甲第5号証の意匠を例示意匠4(別紙第6参照),甲第6号証の意匠を例示意匠5(別紙第7参照),甲第7号証の意匠を例示意匠6(別紙第8参照)として,以下,検討する。

(3-1)本件実線部分の略短円筒状部分の長さと例示意匠1ないし例示意匠4(別紙第3ないし別紙第6参照)
請求人は,O状リングから下方の根元部分までの縮径した略短円筒状の部分の長さについて甲第2号証の意匠(例示意匠1),甲第3号証の意匠(例示意匠2),甲第4号証の意匠(例示意匠3),及び甲第5号証の意匠(例示意匠4)を挙げて,その長さについて,O状リングの下方(根元側)の略短円筒状の部分を僅かに長くした程度にすぎないものであり,当業者であれば容易に創作することができたものであると主張している。
(あ)甲第2号証の意匠(例示意匠1)
甲第2号証の例示意匠1は意匠登録第1034981号の意匠であって,意匠に係る物品を「浄水器用入れ替え容器」としたもので,下方側に縮径した略短円筒状の部分を設け,その正面視の略短円筒状部の縦の長さと横幅の比が約1:2.1である。(別紙第3参照)
(い)甲第3号証の意匠(例示意匠2)
甲第3号証の例示意匠2は意匠登録第1054878号の意匠であって,意匠に係る物品を「浄水器とイオン水生成器に使用するフィルターカートリッジ」としたもので,下方側に縮径した略短円筒状の部分を設け,その正面視の略短円筒状部の縦の長さと横幅の比が約1:2.8である。(別紙第4参照)
(う)甲第4号証の意匠(例示意匠3)
甲第4号証の例示意匠3は意匠登録第1182423号の意匠であって,意匠に係る物品を「浄水器用カートリッジ」としたもので,左側に縮径した略短円筒状の部分を設け,正面図を本件実線部分の向きに揃えると,その正面視の上端寄りの略短円筒状部の縦の長さと外周の直径の長さの比が約1:1.8で,その左右がなだらかに凹曲面を描いて傾斜面を形成し,さらにねじ用突条部を設けた短円筒部に連続し,略短円錐台形状の部分と接続して径の太い本体部へと連続しているものである。(別紙第5参照)
(え)甲第5号証の意匠(例示意匠4)
甲第5号証の例示意匠4は意匠登録第1418739号の意匠であって,意匠に係る物品を「浄水器用カートリッジ」としたもので,下方側に縮径した略短円筒状の部分を設け,正面図を本件実線部分の向きに揃えると,その正面視の上端寄りの略短円筒状部の縦の長さと横幅の比が約1:1で開口部寄りが僅かに狭くなり傾斜面があるものである。(別紙第6参照)
(お)本件実線部分の略短円筒状部分の長さと例示意匠1ないし例示意匠4について
本件実線部分の正面視の略短円筒状部の縦の長さと外周の直径の長さの比は約1:1.7である。そうすると,例示意匠1及び例示意匠2は本件実線部分より縦の長さが短いものといえ,また,例示意匠3は,正面図を本件実線部分の向きに揃えると,その略短円筒状部の左右に凹曲面を有しているもので,本件実線部分の態様とは異なる。そして,例示意匠4は,本件実線部分より縦の長さが長いものといえ,開口部寄りが僅かに狭くなり傾斜面があるもので,本件実線部分の態様とは異なる。
例示意匠1ないし例示意匠4はいずれも略短円筒状部の開口部寄りにO状リングを有し,そのO状リングの下方に略短円筒状部分が連続しているものではあるが,いずれも本件実線部分の態様とは異なり,これらの態様がありふれているものであったとしても,本件実線部分の態様が引用意匠1及び引用意匠2に基づいて,単にO状リングの下方の略短円筒状部の部分を僅かに長くした程度にすぎないものとはいうことができず,本件登録意匠の態様を容易に導き出すことはできないものである。

(3-2)本件実線部分の開口部周囲の態様と例示意匠5及び例示意匠6(別紙第7及び別紙第8参照)
請求人は,本件実線部分のように開口部に沿って縁状に切り欠いた傾斜面を設けていいない面取りのない平坦面状とすることはありふれた態様であるとして,甲第6号証の例示意匠5,甲第7号証の例示意匠6を挙げて,また,開口部の大きさについても,シャワーヘッド等の接続側の設計に応じて適宜変更されるもので,格別意匠的効果を有するものではない,として当業者であれば容易に創作することができたものであると主張している。
(あ)甲第6号証の意匠(例示意匠5)
甲第6号証の例示意匠5は特開2005-23583号の【図1】,【図5】及び【図6】に表された意匠であって,発明の名称を浄水カートリッジ位置決め構造とし,【図1】及び【図5】の22に(頭部浄水カートリッジ結合用)結合部として浄水カートリッジの開口部が表されている。その外周の径の約58%の径の開口部としたものである。(別紙第7参照)
(い)甲第7号証の意匠(例示意匠6)
甲第7号証の例示意匠6は意匠登録第1318992号の意匠であって,意匠に係る物品を「ろ過器」としたもので,正面図を本件実線部分の向きに揃えると,上面側に開口部が表されている。その外周の径の約57%の径の開口部としたものである。(別紙第8参照)
(う)本件実線部分の開口部周囲の態様と例示意匠5及び例示意匠6について
確かに開口部の周囲を平坦面とすることは,本件実線部分意外にも多数見受けられ,それが格別特徴的な態様とはいえないものであるが,本件実線部分の開口部は,その外周の径の約47%の径の開口部としたものである。引用意匠1の開口部は,その外周の径の約67%の径であり,引用意匠2の開口部は,その外周の径の約50%の径であり,例示意匠4の開口部は,その外周の径の約58%の径であり,引用意匠2の開口部は,その外周の径の約57%の径であり,様々な径の開口部が存在することは認められるが,いずれも本件実線部分ほどその開口部の外周の径に対する大きさが小さめで,開口部周囲を広めとしたものは他には見当たらず,その開口部の割合の小ささについては,ありふれた態様であるとまではいうことができないものである。

(4)創作容易性について
引用意匠1の引用相当部分1と,引用意匠2の引用相当部分2及び例示意匠1ないし例示意匠6の各態様を組み合わせて本件登録意匠の本件実線部分の態様が容易に創作できたものであるかどうかについて検討してみると,引用相当部分1と引用相当部分2を,単に上面の開口部の周囲を平坦面状とすることは,ありふれた手法により可能といえるものではあるが,本件実線部分と引用相当部分1及び引用相当部分2の略短円筒状の部分は,その長さが異なり,その具体的な態様も異なるもので,本件実線部分と同様に同径のまま略短円筒状の部分を長めとした態様は,例示意匠1ないし例示意匠4のいずれにも見当たらず,また,その開口部の大きさの割合を本件実線部分と同様に小さくしたものは,例示意匠5及び例示意匠6にも見つけることができず,引用相当部分1と引用相当部分2の上面の開口部の周囲を平坦面状としたとしても,前記したとおり,本件実線部分と引用相当部分1,本件実線部分と引用相当部分2とは,それぞれ略短円筒状の部分の態様や開口部の大きさが異なるもので,引用相当部分1と引用相当部分2から本件実線部分の態様を容易に導き出すことはできない。本件実線部分と同一のものとするためには,まず,蓋部を有するもので,蓋部の内側の突条部と嵌合する部分としたものであって,リング状突条部を有したものとし,引用相当部分1の略短円筒状の部分を長めに設けて変更し,引用相当部分2の開口部を平坦面状として,開口部の大きさを本件実線部分と同様の小さいものとして変更してから組み合わせることとなり,いずれも,ありふれた改変の範囲であるとはいうことができないものであるから,本件実線部分は,引用相当部分1の略短円筒状の部分と引用意相当部分2の開口部を単に組み合わせたまでのものとは到底いうことができず,本件実線部分の態様を容易に導き出すことはできないものである。
そうすると,本件実線部分は,蓋部の内側の突条部と嵌合する部分であり,また略短円筒状の部分や開口部の態様により,本件実線部分独自の態様を持つものといえるものであるから,このような本件登録意匠は,引用意匠1と,引用意匠2に基づいて,この種の物品分野における通常の知識を有する者であれば容易に創作することができたものということはできない。

(5)小括
したがって,本件登録意匠は,本件登録意匠に係る物品であるシャワーヘッド用カートリッジの分野における通常の知識を有する者が,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載され公然知られた,引用意匠1(甲第1号証-1)と,引用意匠2(甲第1号証-2)に基づいて容易に創作することができたものとは認められず,意匠法第3条第2項の規定に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものはいえないから,その意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当せず,その登録を無効とすることはできない。


第5 むすび
以上のとおりであって,本件登録意匠は,無効理由1である,意匠法第3条第1項3号に規定する意匠に該当するにもかかわらず,意匠登録を受けたものとはいえず,意匠法第48条第1項第1号の規定によって,その登録を無効とすることはできない。
また,本件登録意匠は,無効理由2である,意匠法第3条第1項3号に規定する意匠に該当するにもかかわらず,意匠登録を受けたものとはいえず,意匠法第48条第1項第1号の規定によって,その登録を無効とすることはできない。
そして,本件登録意匠は,無効理由3である,意匠法第3条第2項の規定に該当するにもかかわらず,意匠登録を受けたものとはいえず,意匠法第48条第1項第1号の規定によって,その登録を無効とすることはできない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲



審理終結日 2017-02-28 
結審通知日 2017-03-03 
審決日 2017-03-29 
出願番号 意願2012-31556(D2012-31556) 
審決分類 D 1 113・ 121- Y (K6)
D 1 113・ 113- Y (K6)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 久木 真子 
特許庁審判長 山田 繁和
特許庁審判官 正田 毅
斉藤 孝恵
登録日 2013-07-12 
登録番号 意匠登録第1476774号(D1476774) 
代理人 川崎 典子 
代理人 山口 健司 
代理人 関口 尚久 
代理人 小林 徳夫 
代理人 恩田 博宣 
代理人 森 有希 
代理人 水野 みな子 
代理人 萩尾 保繁 
代理人 青木 篤 
代理人 恩田 誠 
代理人 鶴田 準一 
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