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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 B3
管理番号 1330155 
審判番号 不服2016-19419
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-26 
確定日 2017-06-02 
意匠に係る物品 首飾り 
事件の表示 意願2015- 24597「首飾り」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,平成27年(2015年)11月4日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「首飾り」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたもので,「正面図,背面図,右側面図,左側面図,平面図,底面図における実線であらわした部分が,および参考斜視図において緑色で塗りつぶした部分を除く部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(以下,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。

この種の物品分野において,長い紐状体を2つ折りにして首掛け部を作り,下方に飾り具を付して,飾り具より下側では紐状体が2つに開いた首飾りの意匠は,例えば意匠1乃至意匠3のように本願出願前より公然知られている。
そうすると,この意匠登録出願の意匠は,本願出願前より公然知られたリボン(例えば,意匠4)を2つ折りにして飾り具を付しリボンを2つに開き,リボンの下端は本願出願前より公然知られた剣先状(例えば,意匠5及び意匠6)とし,飾り具の下側ではありふれた手法でリボンを玉結びにし,意匠登録を受けようとする部分としたものに過ぎず,この種の物品分野における通常の知識を有する者であれば容易に創作できたものであると認められる。

意匠1(別紙第2参照)
特許庁意匠課が2001年 8月31日に受け入れた
Museum of Fine Arts, Boston Autumn
第78頁所載
ネックレスの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HD13033900号)

意匠2(別紙第3参照)
特許庁総合情報館が1996年5月14日に受け入れた
国際事務局意匠公報 1996年4月30日 第782頁所載
首飾りの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH09028928号)

意匠3(別紙第4参照)
特許庁特許情報課が2001年5月11日に受け入れた
ドイツ意匠公報 2001年3月24日 第1417頁所載
ネックレスの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH13030964号)

意匠4(別紙第5参照)
特許庁総合情報館が1989年6月29日に受け入れた
外国カタログ「HONGKONG ELECTRONICS VOL1.1988」第105頁所載
リボン地の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HD01020254号)

意匠5(別紙第6参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2011年11月7日に受け入れた
文化出版局発行の雑誌「ミセス」(2011年11月7日,683号)第45頁所載
リボンタイの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HA23007278号)

意匠6(別紙第7参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2014年3月7日に受け入れた
株式会社セブンユニフォーム発行の内国カタログ「SEVEN CATALOG 2014」第252頁所載
左側のワインレッド色のリボンタイの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC26003545号)

3.請求人の主張の要旨
(1)本願意匠の説明
本願意匠は,長尺なリボン状の首飾り紐に挿通されたヘッドと,ヘッドの上部に配置される首掛け部と,ヘッドの直下部で首飾り紐を締結して形成された止め部と,止め部の下部から首飾り紐の両解放端にかけての垂れ飾りとから構成される首飾りの意匠である。
そして,全体として把握すると,本願意匠は,2つ折りにした長尺のリボン状の首飾り紐にヘッドおよび止め部の2つを設けることによって首掛け部が形成されている。
(2)本願意匠と引用意匠との相違点の説明
拒絶査定の備考においては,本願意匠には「2つ折りにした長尺のリボン状の首飾り紐にヘッドおよび止め部の2つを設けること」を認めており,各先行意匠1?6にはそれぞれ1つのヘッドまたは止め部を設けている点を相違点として認めながら,当該相違点は先行意匠1?6により当業者が容易に創作できたものであると認定されている。
しかしながら,引用された各先行意匠1?6のうち,飾り部のある先行意匠1?3においては,飾り部以外に他の飾り部に相当する物品を装着することは示唆されておらず,更に飾り部の下方の索や紐を結ぶことは示唆されておらず,当該先行意匠1?3について飾り部と結びとを組合せることはこれまで全く発想されていないものである。
先行意匠6はリボンの下部を1箇所結んでリボンタイとしているが,当該リボンの結びの上部分にヘッドを取り付けること,特にヘッドの中心孔にリボンを挿通してヘッドをリボンに取り付けることは示唆されていない。すなわち,従来においては,リボンをヘッドの細い中心孔に挿通させることが非常に困難であり,しかも挿通したリボンの先端部分についてそのリボン生地をよれよれにすることなく剣先形状もきれいに保持することは特に困難であるために,2つ折りのリボンにヘッドを取り付けることは長い間実行されないままであった。
このようにリボンにヘッドを取り付けるという発想が全く存在しなかった状態すなわち創作に対する阻害要因が存在する状態において,本創作者は従前の制作困難性を克服するとともに,2つ折りのリボンをヘッドの細い中心孔に挿通させるとともに,挿通したリボンの先端部分についてそのリボン生地をよれよれにすることなく剣先形状もきれいに保持することによって,「2つ折りにした長尺のリボン状の首飾り紐にヘッドおよび止め部の2つを設けること」によって従前には存在しない斬新な本願意匠を創作したものである。
従って,前記拒絶査定における下記の認定,すなわち,『したがって,意見書で2つの飾り部がある点を主張されていますが,止め部については単なる玉結びの結び目であって,本願意匠の主たる飾り部はヘッド1つのみであり,意匠1?意匠3はいずれもヘッド(飾り部)が1つ付されていることから,この点において,本願意匠と意匠1?意匠3は共通しています。 よって,本願意匠は,公知のリボンを2つ折りにして飾り具を1つ付し結び止め,リボンの先端部は公知の剣先状として,意匠登録を受けようとする部分としたものに過ぎず,この種の物品分野における通常の知識を有する者であれば,容易に創作できたものであると認められます。』は,意匠の創作現場における阻害要因を全く無視したものであり失当であると思料する。
従って,先行意匠1?6に基づいて本願意匠に想到することは,当業者であっても困難であると思料する。

4.当審の判断
本願意匠が,当業者であれば,容易にその意匠の創作をすることができたものか否かについて,以下検討する。
(1)本願意匠
本願意匠は,意匠に係る物品を「首飾り」とし,本願部分を長尺で紐状のリボンを二つ折りにして首掛け部(以下,この部分を「首掛け部」という。)とし,下方寄りに玉状の飾り部(以下,この部分を「飾り部」という。)を設けたもののうち,飾り部以外の部分としたもので,その形態は,部分全体を平らな紐状のリボンとし,リボンの長手方向の左右に縁状に加工を施したもので,首掛け部の側面視を輪状に形成し,飾り部の内側に挿通したもので,全体の長さの下方寄り約1/5の位置に飾り部を設け,飾り部の下側に紐状のリボンを結んで留め部を形成し,さらにその下方が開いて2本に分かれて垂れ飾り(以下,この部分を「垂れ飾り」という。)を形成したもので,垂れ飾りの先端を約30度として斜めに切り欠いたものである。
(2)原査定の拒絶の理由の引用意匠
(ア)意匠1
意匠1は,意匠に係る物品を「ネックレス」とし,ビーズ状の小さな円筒状と玉状のものが交互に連続して首掛部を形成し,上端部には更に小さな玉状のものが連続した細い鎖部を設け,首掛部全体を輪状とし,着脱できるような留め金具を上端中央部に設け,下方寄りに略ラグビーボール形状の飾り部を設けたものである。本願部分に相当する引用部分は,輪状の首掛部と飾り部の下側の2本に分かれた垂れ飾りの部分であって,垂れ飾りの下方には2つの略紡錘形の留め部を形成したものである。
(イ)意匠2
意匠2は,意匠に係る物品を「首飾り」とし,長い組紐状の首掛部の正面視を輪状に形成し,上端部中央には着脱できるような留め金具を設け,首掛け部の下方寄りに略樽形状の飾り部を設けたものである。本願部分に相当する引用部分は,輪状の首掛部と飾り部の下側の2本に分かれた垂れ飾りの部分であって,垂れ飾りの下端部には2つの球形の留め部を形成したものである。
(ウ)意匠3
意匠3は,意匠に係る物品を「ネックレス」とし,長い鎖状の首掛け部の正面視を輪状に形成し,上端部中央には着脱できるような留め金具を設け,首掛け部の下方寄りに略円盤形状の飾り部を設けたものである。本願部分に相当する引用部分は,輪状の首掛部と飾り部の下側の2本に分かれた垂れ飾りの部分であって,垂れ飾りの下端部には2つの水滴形状の留め部を形成したものである。
(エ)意匠4
意匠4は,意匠に係る物品を「リボン地」とし,短円筒状の芯の周囲に長尺の平らな紐状のリボンを巻き付けたもので,リボンの長手方向の左右に縁状に加工を施し,リボンの先端部を逆V字状に切り欠いたものである。
(オ)意匠5
意匠5は,意匠に係る物品を「リボンタイ」とし,蝶ネクタイ形状の飾り部に首掛け部となるリボンが左右2本に分かれたもので,リボンの長手方向の左右に縁状に加工を施し,リボンの先端部を約40度として斜めに切り欠いたものである。
(カ)意匠6
意匠6は,意匠に係る物品を「リボンタイ」とし,帯状に折った布をループ状の飾り部の内側に挿通したもので,首掛け部の正面視を輪状に形成し,全体の長さの略中央の位置に結び目状の飾り部を設け,結び目状の飾り部の下方に2本に分かれた帯状の幅が広がった垂れ飾りを形成したもので,垂れ飾りの先端部を約60度として斜めに切り欠いたものである。
(3)創作容易性の判断
まず,この種の首飾りの分野においては,首掛け部を輪状に形成し,飾り部の内側に挿通したもので,全体の長さの下方寄りに飾り部を設け,飾り部の下方が開いて2本に分かれて垂れ飾りを形成したものは,意匠1ないし意匠3に見られるように,本願出願前より既に見られるありふれた態様といえるものである。
また,長尺の平らな紐状のリボンは,意匠4に見られるように本願出願前より既に見られるありふれた態様といえるものであり,リボンの長手方向の左右に縁状に加工を施すことや,ほつれ止めのためにリボンの先端部を斜めに切り欠くことも,意匠4及び意匠5に見られるように,本願出願前より既に見られるありふれた態様といえるものである。
そして,リボンタイなどの飾りに平らな紐状のリボンを用いることも意匠5に見られるように本願出願前より既に見られる態様といえるものである。
さらに,首飾りやリボンタイなどの飾りの先端部を斜めに切り欠くことも意匠5及び意匠6に見られるように,本願出願前より既に見られるありふれた態様といえ,その角度には様々なものが認められるものである。
しかしながら,意匠1ないし意匠3に表されたものは垂れ飾りの下方にはいずれも2つの留め部を形成したもので,いずれも着脱できるような留め金具を上端中央部に設けたものであり,部分全体を平らな紐状のリボンとし,リボンの長手方向の左右に縁状に加工を施したもので,首掛け部の側面視を輪状に形成し,飾り部の内側に挿通した本願部分とは,その具体的な態様が異なるものである。
また,意匠4には,平らな紐状のリボンの長手方向の左右に縁状に加工を施した態様が表されているが,先端部の切り欠きが本願部分とは異なり,意匠5には蝶ネクタイ形状の飾り部に首掛け部となるリボンが左右2本に分かれたもので,リボンの長手方向の左右に縁状に加工を施し,リボンの先端部を約40度として斜めに切り欠いたものが表されているが,リボンの使われている位置が異なり,先端部の角度も本願部分とは異なるものである。意匠6には,垂れ飾りの先端部を約60度として斜めに切り欠いたものが表されているが,いずれも本願部分のリボンの先端部の態様とは異なるものである。
そして,意匠6は,帯状に折った布を結び目状の飾り部の内側に挿通したもので,首掛け部の正面視を輪状に形成し,全体の長さの略中央の位置に結び目状の飾り部を設け,結び目状の飾り部の下方に2本に分かれた帯状が広がった垂れ飾りを形成したもので,本願部分の飾り部の下側に紐状のリボンを結んで留め部を形成したものは,これら意匠1ないし意匠6のいずれにも見当たらない態様といえるものである。
この種の首飾り等の物品分野において,首掛け部を輪状に形成し,飾り部の内側に挿通したもので,全体の長さの下方寄りに飾り部を設け,飾り部の下方が開いて2本に分かれて垂れ飾りを形成したものは,意匠1ないし意匠3に見られるように,本願出願前より既に見られるありふれた態様といえるものであり,また,リボンタイなどの飾りにおいて,平らな紐状のリボンを用いることも意匠5に見られるように本願出願前より既に見られる態様といえるものである。本願部分の飾り部の下側に紐状のリボンを結んで留め部を形成したものは,意匠1ないし意匠6のいずれの意匠にも見当たらず,意匠1ないし意匠3の飾り部に意匠4の縁状に加工を施した平らな紐状のリボンを挿通したとしても,上端部中央の留め金具をはずし,垂れ飾りの下方の2つの留め部をはずし,さらに飾り部の下側に紐状のリボンを結んで留め部を形成しなければ,それらの意匠から,本願部分の態様を直ちに導き出すことはできず,また,意匠5や意匠6のように垂れ飾りの先端部を斜めに切り欠いたとしても,その角度は本願部分のものとは異なり,さらに変更を加えなければ,本願部分の態様を直ちに導き出すことはできない。垂れ飾りの先端部の角度が本願部分と同様のものは,他には見当たらず,本願部分の飾り部の下側に紐状のリボンを結んで留め部を形成した態様は,独自の態様を表す創作がなされているものであり,当業者にとって,本願部分の態様が容易に創出し得るものということはできない。
そうすると,本願部分は,平らな紐状のリボンとし,リボンの長手方向の左右に縁状に加工を施したもので,首掛け部の側面視を逆水滴状の輪状に形成し,飾り部の内側に挿通したもので,全体の長さの下方寄り約1/5の位置に飾り部を設け,飾り部の下側に紐状のリボンを結んで留め部を形成し,さらにその下方が開いて2本に分かれて垂れ飾りを形成したもので,垂れ飾りの先端を約30度として斜めに切り欠いた態様としたものであって,とりわけ,飾り部の下側に紐状のリボンを結んで留め部を形成した態様は,本願部分の独特の態様といえるもので,当業者であれば容易に創作することができたものとはいうことができないものである。
よって,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,意匠1ないし意匠6に見られる,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠ということはできない。

5.むすび
したがって,本願意匠は,原査定の拒絶の理由によっては,意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-05-23 
出願番号 意願2015-24597(D2015-24597) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (B3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山永 滋 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 斉藤 孝恵
正田 毅
登録日 2017-07-07 
登録番号 意匠登録第1582685号(D1582685) 
代理人 中尾 俊輔 
代理人 伊藤 高英 

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