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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1330158 
審判番号 不服2017-2665
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-24 
確定日 2017-06-06 
意匠に係る物品 データ受信機付きプロジェクター 
事件の表示 意願2016- 14182「データ受信機付きプロジェクター」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)7月4日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「データ受信機付きプロジェクター」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「断面図を含む実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

本願に対する原査定の拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の公開特許公報に記載された,公開日が平成25年4月4日の特開2013-61680号(【発明の名称】表示装置)における【図1】,【図4】によって表された表示装置の意匠の本体部分(以下,本願部分に相当する引用意匠の部分を「引用部分」という。)としたものであって,引用意匠及び引用部分の形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,携帯端末から送信した資料や画像を投影できる機能を有する「データ受信機付きプロジェクター」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,公開特許公報における請求項等の記載から,投影画像の投影方向と指示部材の進入方向を検知して,表示されるアイコンを見やすく表示する機能を持つ「プロジェクタ」であるが,いずれも画像を投影するためのプロジェクターであると認められるから,本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,共通するものである。

2.本願部分と引用部分の対比
(1)部分意匠としての用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分と引用部分(以下「両意匠部分」という。)の用途及び機能は,プロジェクター本体の投影部及び上面部を除いた内部機構を覆う筐体としてのものであり,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は,いずれもプロジェクター本体における正面側中央部分に設けられた投影部を除いた側面部の部分及び底面部の部分であるから,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲共通する。

(2)両意匠部分の具体的形態
両意匠部分の形態を対比すると,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。
なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。

まず,共通点として
両意匠部分の全体の態様は,略円形状の本体上面部及び本体側面部正面側中央やや上方寄りの部分に形成された正面視略長方形状の投影部(以下「投影窓部」という。)を除いた略有底円筒形状である点,が認められる。

他方,相違点として,
(ア)本体部の態様について,本願部分は,その外周面下方部分から底面側に向かってなだらかな円弧状の傾斜で僅かに窄まった略有底円筒形状の形態とし,その上面部に僅かな幅の円環状縁部を設け,その底面部の中央部分に略短円柱形状に切り欠いた凹部を一つ形成しているのに対して,引用部分は,外形が略円柱形状の形態とし,その上面部に縁部はなく,その底面部の形態については不明である点,
(イ)本体側面部から除かれる部分である投影窓部の態様について,本願部分は,その縦横比が約3:1の略隅丸縦長長方形状の形態とし,本体の高さの約1/2の縦幅であるのに対して,引用部分は,その縦横比が約1:1.6の略横長長方形状の形態とし,本体の高さの約1/6の縦幅である点,
が認められる。

3.両意匠部分の形態の評価
まず,共通点である両意匠部分全体の態様は,プロジェクター本体部の側面部及び底面部の形態を概略的に捉えたに過ぎないものであるから,この共通性のみをもって両意匠の類否判断を決定することはできない。

これに対し,相違点(ア)の本体部の態様については,専用の置き台と組み合わせた場合も考慮して,本体下方部分をなだらかに窄め,全体的に丸みを帯びたものであるとの印象を与える本願部分の態様と,単なる円柱形状で角部が角張ったものであるとの印象を与える引用部分の態様では,本願部分の底面部に施された略短円筒形状に切り欠いた凹部の有無も含めて看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,相違点(イ)の本体側面部から除かれる部分である投影窓部の態様については,この種プロジェクターの分野において,投影部の形態は注目される部位であるから,本体側面部に本体の約1/2高さを占める略隅丸縦長長方形状の大きな窓部が形成された本願部分の態様と,本体側面部の中央やや上方寄りの部分に略横長長方形状の小窓が形成された引用部分の態様では,看者に別異の印象を与えるものであるから,この相違点(イ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きい。
そして,これらの相違点(ア)及び相違点(イ)によって生じる視覚的効果はいずれも大きく,それらが相まって生じる別異の印象は,両意匠部分の類否判断を決定付けるほど大きいものである。

4.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品については共通し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲についても共通しているが,両意匠部分の形態については,共通点が類否判断に及ぼす影響は両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠部分は類似しないものである。
したがって,本願意匠と引用意匠とは類似しないものと認められる。

第4 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。


別掲
審決日 2017-05-23 
出願番号 意願2016-14182(D2016-14182) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 智加石川 愛恵 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
神谷 由紀
登録日 2017-07-21 
登録番号 意匠登録第1583513号(D1583513) 
代理人 鎌田 健司 
代理人 前田 浩夫 

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