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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 J7 |
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管理番号 | 1330161 |
審判番号 | 不服2017-2043 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-13 |
確定日 | 2017-06-13 |
意匠に係る物品 | マイクロニードルシート |
事件の表示 | 意願2015-4731「マイクロニードルシート」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成27年(2015年)3月4日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品が「マイクロニードルシート」であって,形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものである。 具体的には,本願に係るマイクロニードルシートなどの医療・美容用貼付剤の分野において,保護シートや剥離シートの外縁形状を基材の形に合わせて形成することは,本願出願前よりごく普通に行われているのでありふれた手法(意匠3,意匠4)といえるところ,本願意匠は,本願出願前に公然知られた形状と認められる丸味を帯びた略三日月形状のマイクロニードルシートの意匠(意匠1,意匠2)の片面に,公然知られたマイクロニードルの配列態様で(意匠5,意匠6)粘着剤シート外縁の一回り内側までマイクロニードルを設けるというありふれた手法(意匠5)を用いたうえで,ごく普通のありふれた手法により基材部と同一の大きさかつ同形の保護シートで被覆したに過ぎないので,容易に創作できたものと認められる,というものである。 また,原査定における拒絶の理由で引用した意匠は,以下のとおりである。 意匠1(別紙第2参照) 2015年2月2日にインターネットにアップロードされた「Yahoo!BEAUTY」のタイトル「シワ・たるみに効くって噂!エステ級の「刺すヒアルロン酸」アイマスクシート使ってみた♪」 掲載ページのアドレス http://beauty.yahoo.co.jp/beauty/articles/89867 意匠2(別紙第3参照) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2015年3月3日に受け入れた,クロワッサン2015年2月25日5号 第131ページ所載のマイクロニードルシートの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HA27001019号) 意匠3(別紙第4参照) 特許庁普及支援課が2015年1月8日に受け入れた,大韓民国意匠商標公報2015年1月8日15-01号 医療用バンド(登録番号30-0778857)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH27400155号) 意匠4(別紙第5参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1434959号の意匠 意匠5(別紙第6参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1453611号の意匠 意匠6(別紙第7参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1480743号の意匠 第4 当審の判断 本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠が容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。 1.本願意匠の形態 本願意匠は,マイクロニードルが形成された粘着剤シートと,保護シートで構成され,粘着剤シートと保護シートの形態について,主に以下の点を認めることができる。 (形態A)粘着剤シートは保護シートの背面に重なり,両シートは,正面視左右対称な略曲玉状の同形同大である点。 (形態B)粘着剤シートの正面には,周囲に一定幅の余地部を残して,略円錐台状の微小な突起(マイクロニードル)を格子状に多数有する薬剤層又は化粧剤層が設けられている点。 (形態C)保護シートの背面の全面には,粘着剤シートの突起と同形同大の微小な凹部が格子状に設けられている点。 (形態D)保護シートの厚みは,粘着剤シートの厚みの略3倍である点。 2.引用意匠の形態 引用意匠の形態を認定するにあたり,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。 (1)意匠1 (形態A1)粘着剤シートは正面視左右対称な略曲玉状である点。 (形態B1)粘着剤シートの正面には,周囲に余地部を残して,微小な突起を有するヒアルロン酸層が設けられている点。 (形態E1)粘着剤シートとヒアルロン酸層は半透明であり,粘着剤シートの全面に格子状に不透明部が設けられている点。 (2)意匠2 (形態A2)マイクロニードルシートが,正面視左右対称な略曲玉状である点。 (形態E2)マイクロニードルシートが,半透明である点。 (3)意匠3 (形態A3)粘着剤シートは剥離シートの背面に重なり,両シートは正面視略そら豆状の同形同大である点。 (形態D3)剥離シートの厚みは,粘着剤シートの厚みの略1/2である点。 (形態E3)粘着剤シートと剥離シートの間に,両シートと相似形で小さい中間層が設けられている点。 (4)意匠4 (形態A4)正面から,粘着剤保護層,粘着剤層及び基材の順で重なり,各シートは正面視同形同大である点。 (形態D4)粘着剤保護層,粘着剤層及び基材の厚みは,略等しい点。 (5)意匠5 (形態A5)医療用貼付剤が,正面視円形のシート状である点。 (形態B5)シートの正面には,周囲に余地部を残して,ごく小さな略四角錐状の突起が格子状に多数設けられている点。 (6)意匠6 (形態A6)粘着剤シートが,正面視略曲玉状である点。 (形態B6)粘着剤シートの正面には,周囲に余地部を残して,微小な突起を格子状に多数有する薬剤層又は化粧剤層が設けられている点。 3.本願意匠の創作容易性 (1)創作容易性の判断手法 本願意匠が当業者にとって容易に創作することができたか否かの判断は, (観点1)本願意匠の基礎となる形態が本願の出願日前に公知又は周知であり, (観点2)その公知又は周知の形態をほとんどそのままか,あるいは,本願意匠の意匠に係る物品を含む物品分野においてよく見られるところの多少の改変を加えた程度で, (観点3)本願意匠の意匠に係る物品を含む物品分野において周知の創作手法により,公知又は周知の形態の全部又は一部について単なる置換えなどがされ,あるいは,こうして置換えなどがされた結果に,通常思い付く程度の調整を加える等の変更がされたにすぎないものであるか, の観点から行うことが必要であり,以下,これらの観点から,本願意匠の創作容易性を検討する。 (2)本願意匠の創作容易性の検討 本願意匠の形態のうち,(形態A)に係る粘着剤シートが略曲玉状である点及び(形態B)に係る粘着剤シートの正面に,周囲に余地部を残して微小な突起を有する薬剤層又は化粧剤層を設ける点は,意匠1の(形態A1)及び(形態B1)並びに意匠6の(形態A6)及び(形態B6)に示すように周知である。 また,意匠6の(形態B6)から,粘着剤シートの微小な突起を格子状に配置する形態は,本願意匠の意匠に係る物品を含む物品分野においてよく見られる形態といえる。 しかし,本願意匠の形態のうち,(形態C)に係る保護シートの背面の全面に,粘着剤シートの突起と同形同大の微小な凹部が格子状に設けられている点及び(形態D)に係る保護シートの厚みが粘着剤シートの厚みの略3倍である点は,引用されたいずれの意匠にも示されておらず,これらの形態について,本願意匠の意匠に係る物品を含む物品分野において周知の創作手法により,周知の形態の全部又は一部について単なる置換えなどがされ,あるいは,こうして置換えなどがされた結果に,通常思い付く程度の調整を加える等の変更がされたにすぎないものということはできない。 本願意匠の上記の(形態C)及び(形態D)に係る点は,薬剤や化粧剤を微小な突起に成形するための成形型を,そのまま保護シートとして利用するという着想に基づくものであるところ,そのように,成形型が保護シートとなっている形態は,参考意匠(特許庁発行の公開特許公報記載 特開2010-94414号の図3及び段落[0034]に記載された意匠 別紙第8参照)に示すように公知ではあるものの,参考意匠には,保護シートの背面全体に凹部を設けることまでは示されていない。また,保護シートの背面全体に凹部を設けることが,本願意匠の意匠に係る物品を含む物品分野においてよく見られるところの多少の改変ということはできない。 したがって,本願意匠は,当業者であれば,容易に創作することができたものということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであり,その拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-05-30 |
出願番号 | 意願2015-4731(D2015-4731) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(J7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 前畑 さおり |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 刈間 宏信 |
登録日 | 2017-07-21 |
登録番号 | 意匠登録第1583690号(D1583690) |