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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 E2
管理番号 1330165 
審判番号 不服2017-1753
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-06 
確定日 2017-06-30 
意匠に係る物品 吸殻回収装置用シュート 
事件の表示 意願2016- 6528「吸殻回収装置用シュート」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成28年(2016年)3月25日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「吸殻回収装置用シュート」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は意匠法第9条第1項に規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとしたもので,引用された意匠は,意願2015-016136号(意匠登録第1551382号)の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,意匠に係る物品を「煙草の灰及び吸い殻回収装置用接続部材」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品について
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品について,本願意匠は,「吸殻回収装置用シュート」に係るものであり,引用意匠は「煙草の灰及び吸い殻回収装置用接続部材」に係るものであって,いずれもパチンコ台等遊技機の物置用テーブル(以下,「テーブル」という。)の底面側に配設されたスクリュー搬送用のレール管に接続して使用される,テーブル上の灰皿からテーブル内の通孔を介して落下した吸殻をレール管へ滑り落とすためのシュート部(以下,「シュート部」という。)に,レール管の下側の樋状部材(以下,「レール部」という。)を組み合わせた形態の,吸殻回収装置用部材に係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

(2)形態について
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
(2-1)共通点
全体の構成態様について,
(A)略樋状のレール部の正面視中央部分の上端を長方形状に切り欠いた接続口を設け,その接続口に,平面側が開口した略倒直角三角柱状のシュート部を接合して全体を平面視略T字状に構成した点,
各部の構成態様について,
(B)レール部の態様について,上方に開いた略U字型の樋状に形成した点,
(C)シュート部の態様について,正面側からレール部との接続口に向かって下降する長方形状の傾斜面(以下,「斜面部」という。)を有し,その両側に略直角三角形状の側板(以下,「側板部」という。)を立設した略倒直角三角柱状に全体を形成し,斜面部の上辺及びその両側の側板部の上辺に,テーブル取付用の平坦なフランジ部(以下,「フランジ部」という。)を設け,側板部のフランジ部近傍に設けられたレール部との間隙(以下,「間隙部」という。)に,別体のレール管上側部材の嵌合突起を避けるために形成された切り欠き部(以下,「側板切り欠き部」という。)を設けた点,
(D)フランジ部の態様について,斜面部の上辺及びその両側の側板部の上辺から,それぞれ正面側,及び左右両側の3方向に鍔状に形成し,正面側のフランジの幅を左右両側のフランジより小さくした点,
(E)側板切り欠き部の態様について,間隙部に,側板部を側面視略コの字状に切り欠き形成した点,
に共通性が認められる。

(2-2)相違点
(ア)レール部の態様について,本願意匠は,レール部の背面側に平坦面がなく,全体をやや外側に開いた向きの側面視略J字状に形成しているのに対し,引用意匠は,レール部の正面及び背面側の両側に平坦面を有しており,平坦面の高さを同一とし平行な向きに揃え,全体を側面視略U字状に形成している点,
(イ)シュート部の態様について,本願意匠は,斜面部の平面視縦横比を9:10,傾斜を約35度としているのに対し,引用意匠は,斜面部の平面視縦横比を11:9,傾斜を約30度としている点,
(ウ)フランジ部の態様について,本願意匠は,正面側,及び左右両側の3方向に,3つの略隅丸長方形状の平板状に形成しており,正面側のフランジ部の根元に斜面部の上辺から一段上がった細幅の垂直面を形成し,左右両側のフランジ部に2つの小円孔を並設しているのに対し,引用意匠は,正面側,及び左右両側の3方向の辺に沿って連続した,平面視略隅丸コの字状の鍔状に一体に形成している点,
(エ)側板切り欠き部の態様について,本願意匠は,フランジ部の下方向に位置する間隙部,すなわち側板部の垂直方向の辺の上端近傍を略隅丸コの字状に切り欠き,その切り欠きの下側先端をカギ状に突出して切り欠いているのに対し,引用意匠は,フランジ部の水平方向に位置する間隙部,すなわち側板部の水平方向の辺と垂直方向の辺の交わる直角部近傍を,略倒コの字状に切り欠いている点,
(オ)レール部とシュート部との接合部(以下,「接合部」という。)の態様について,本願意匠の接合部は,レール部の接続口の左右両端及び下端から連続形成された3つの略隅丸台形状の接合片でシュート部を覆い,それらをビス止めによって接合し,正面側の接合片の根元をレール部の外周面から一段立ち上げ形成しているのに対し,引用意匠の接合部は,接続口の境界の形状線のみが表れ,レール部とシュート部を略一体に形成している点,
に相違が認められる。

2.本願意匠と引用意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

まず,両意匠はいずれも,パチンコ台等遊技機のテーブル底面に設置した吸殻回収装置に接続して用いられる,レール部とシュート部を組み合わせた部材に係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

次に,形態の共通点について,(A)の,樋状のレール部の正面側にシュート部を接続した態様は,本願意匠の出願前に,遊技台複数台分の比較的長尺の吸殻回収用レールの正面に複数のシュート部を一体に設けたもの(参考意匠1,意匠登録第1491809号,別紙第3参照)が既にみられるほか,レール部正面に灰皿兼シュート部を一つずつ取り付けたもの(参考意匠2,実用新案登録第3112776号,別紙第4参照)もみられるため,この共通点(A)は,周辺意匠を参酌すると,短尺のレール部にシュート部を平面視略T字状に接続したという概略的な共通性にとどまり,両意匠の類否判断に及ぼす影響が格別大きいものとはいえない。
共通点(B)のレール部を平面視開口した略U字型の樋状とする態様は,吸殻回収装置用部材の物品分野において,吸殻等の搬送を行うスクリューを内包するレール部の構成態様としてごくありふれたものであって,この態様の共通性をもって両意匠の類否判断を決定することはできない。
共通点(C)について,シュート部の態様として平面視長方形状の斜面部及び略直角三角形状の側板を設けて全体を略倒直角三角柱状に形成することは,周辺意匠にはほとんどみられない形状であるが,重力によって滑り落とす搬送用部材としては,ごく単純な形状の斜面部と側板部からなるものであり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度のものといえる。
共通点(D)及び共通点(E)については,フランジ部及び側板切り欠き部の態様を概略的に捉えたに過ぎないものであり,これらの態様の共通性をもって両意匠の類否判断を決定することはできない。

これに対して,相違点(ア)のレール部の態様については,本願意匠は,側面視背面側が短く平坦面のない,J字状との視覚的印象を与えるのに対し,引用意匠は側面視左右対称に揃ったU字状との視覚的印象を与える点で異なっており,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものといえる。
相違点(イ)シュート部の態様については,この種の吸殻回収装置の設置施工時や分解清掃等の維持管理時において,レール部及びシュート部を主体とした各部の構成態様には,施工業者や遊技場管理従事者を含む需要者の注意が払われるものと認められるところ,本願意匠は斜面部の滑り方向の長さが短い横長の長方形であり,斜度が比較的大きいのに対し,引用の意匠は,斜面部の滑り方向が長い縦長の長方形であり,斜度がやや小さいことから,両意匠のシュート部の吸殻の滑りやすさに差があるものとの視覚的印象を与えるものと認められ,両意匠の類否判断に少なからぬ影響を及ぼすものといえる。
相違点(ウ)フランジ部の形状については,本願意匠は,3方向へ展開した 印象を与えるのに対し,引用の意匠は,平面視略隅丸コの字状に一体連続となった印象を与える点で異なっており,類否判断に大きな影響を及ぼすものといえる。
相違点(エ)の側板切り欠き部の位置及び形状については,本願意匠は,隅丸かつカギ状に切り欠かれており,別体のレール管上側部材の嵌合突起を避けて,部材同士を係合しやすい印象を与えるのに対し,引用の意匠は,略直角三角形状の側板部の頂部の直角部を単に切り欠いた印象を与える点で異なっており,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものといえる。
相違点(オ)接合部の態様については,本願意匠は,接続口の周囲の3方向に形成された複数の接合片のそれぞれにビス留めがされており,レール部とシュート部とが複雑に接合されたとの印象,またはシュート部が脱着可能との印象を与えるのに対し,引用の意匠は,レール部とシュート部とが一体に形成されていることで,全体にすっきりした印象を与える点で異なっており,設置後の維持管理時においても,接合部は正面側に位置していて比較的観察されやすいことから,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものといえる。

そして,意匠全体として見た場合,相違点(ア)ないし(オ)に係る態様が相まって,本願意匠は,レール部とシュート部の2部材を組み合わせた複雑な視覚的印象を与えるのに対し,引用意匠は,一体に整ったシンプルな視覚的印象を与えるものであり,これらの相違点によって生じる視覚的効果は,上記共通点(A)ないし(E)が相まっても需要者に別異の美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似しないものということができる。

したがって,両意匠は,意匠に係る物品について共通し,形態の基本的な形状に共通点が存在するものの,相違点の総合的な印象が共通点のそれを凌駕しており,意匠全体としては視覚的印象を異にするものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第9条第1項の最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとすることはできないものであり,その理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-06-19 
出願番号 意願2016-6528(D2016-6528) 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (E2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 竹下 寛 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 神谷 由紀
江塚 尚弘
登録日 2017-07-14 
登録番号 意匠登録第1583076号(D1583076) 
代理人 瀧野 文雄 
代理人 瀧野 秀雄 
代理人 鳥野 正司 

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