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審決分類 審判    F4
審判    F4
管理番号 1330171 
審判番号 無効2016-880008
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-05-23 
確定日 2017-06-28 
意匠に係る物品 包装用台紙 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1488798号「包装用台紙」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申立及び理由
1 請求の趣旨
請求人は,平成28年(2016年)5月19日付け提出(平成28年(2016年)5月23日特許庁受入)の審判請求において,「登録第1488798号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,その理由として,要旨以下のとおり主張し,証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証及び甲第36号証の書証を提出した。

2 請求の理由
[1-1]本件登録意匠
登録第1488798号(以下,「本件登録意匠」という。当審注:請求書及び口頭審理陳述要領書において,「本件意匠」と「本件登録意匠」の記述が見られるが,これらはいずれも同じことを指すと認められる。)
意匠に係る物品「包装用台紙」(甲第1号証及び甲第2号証参照)

[1-2]手続の経緯
出願 平成25年(2013年)7月19日
登録 平成25年(2013年)12月20日

[1-3]無効審判請求の要点
1.本件登録意匠は,出願前に日本国内において公然知られた意匠(甲第3号証乃至甲第10号証)に類似する意匠であるため,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。(無効事由1ないし無効事由8)

2.本件登録意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が公然知られた意匠である甲第3号証ないし甲第7号証及び甲第10号証に開示された形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたので,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とするべきである。(無効事由9)

[1-4]本件登録意匠について
本件登録意匠は,紙製の包装用台紙の一部分について部分意匠として登録を受けたものである。以下,本件登録意匠について意匠登録を受けようとする部分を「枠部分」という。
1.物品について
本件登録意匠の意匠に係る物品は,「包装用台紙」である。

2.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。

3.枠部分の形態について
(1)基本的構成態様について
(ア)一定の領域を有する枠部分であり,
(イ)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(ウ)目盛部分の近傍に配置された図形と
から構成される。
(2)具体的構成態様について
(エ)縦長の方形の形状を有する枠部分で,
(オ)枠部分の正面視左縁に沿って配置された左縁目盛部分と,枠部分の正面視下縁に沿って配置された下縁目盛部分とから成り,
(カ)目盛部分は,左縁目盛部分の一端と下縁目盛部分の一端が,枠部分の左下の角で接して直角を成し,
(キ)枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印と,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印と,
(ク)縦方向両矢印と横方向両矢印の略中央にそれぞれ設けられた図形とから構成される。

4.枠部分の位置,大きさ,範囲について
枠部分は,物品である「包装用台紙」において,正面視で左下方の領域に位置し,物品全体の約2分の1を占める。

[1-5]意匠法第3条第1項第3号の無効理由について
1.公知意匠ア?クについて
(1)公知意匠アについて
ア.公知意匠アの販売時期
(ア)甲第3号証の1及び甲第3号証の2(以下,「公知意匠ア」という。)は,株式会社サンクレスト(大阪府東大阪市南上小阪12番42号)の商品 液晶保護フィルム「フリーサイズフィルム メールブロック(登録商標)」(型番43SP-MB)である。
(イ)本商品の販売時期について,サンクレスト株式会社に請求人従業員が問い合わせたところ,2016年3月11日付で「本商品の発売は2012年3月である」との回答があった(甲第36号証)。
マーケティングリサーチ企業Gfk(東京都中野区本町2-46-1 中野坂上山ブライトツイン15階)(当審注:「Gfk」を「マーケティングリサーチ企業Gfk」とした。)による調査(甲第11号証)でも,発売日は2012年3月と報告されている。
そして,価格比較サービスを提供するサイト「価格.com(http://kakaku.com/item/K0000376477/)」に,本商品に係る情報及び画像が登録された日は,2012年5月17日であることが明らかになっている(甲第3号証の3)。
(ウ)これらのことから,公知意匠アは本件登録意匠の出願日(平成25年(2013年)7月19日)よりも前に公知になったということができる。

イ.物品について
公知意匠アに係る物品は,「包装用台紙」である

ウ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。

エ.枠部分の形態について
(ア)基本的構成態様について
(a)一定の領域を有する枠部分であり,
(b)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(c)目盛部分の近傍に配置された図形と
から構成される。
(イ)具体的構成態様について
(d)縦長の方形の形状を有する枠部分で,
(e)枠部分の正面視左縁に沿って配置された左縁目盛部分と,枠部分の正面視上縁に沿って配置された上縁目盛部分とから成り,
(f)目盛部分は,左縁目盛部分の上方側一端と上縁目盛部分の左側一端が,枠部分の左上の角で接して直角を成し,
(g)枠部分の上下方向を示す縦方向曲線部と,枠部分の左右方向を示す横方向曲線部と,
(h)縦方向曲線部と横方向曲線部の略中央にそれぞれ設けられた図形とから構成される。

オ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
枠部分は,物品である「包装用台紙」全体の中で,物品全体の略中央に位置し,枠部分の大きさ,範囲は物品全体の約2分の1である。

(2)公知意匠イについて
ア.公知意匠イの販売時期
(ア)甲第4号証の1及び甲第4号証の2(以下,「公知意匠イ」という。)は,株式会社ラスタバナナ(愛知県名古屋市中区三の丸1丁目13-1)の商品 液晶保護フィルム「3.2インチ対応 高光沢タイプ」(型番RBPGK07)である。
(イ)本商品の販売時期について,株式会社ラスタバナナに請求人従業員が問い合わせたところ,2016年3月11日付で「本商品の発売は2011年8月である」との回答があった(甲第36号証)。
また,「価格.com(当審注:甲第4号証の3から,「価格.com(http://kakaku.com/item/K0000301291/)」と認められる。)」のサイトに,本商品に係る情報及び画像が登録された日は2011年10月24日であることが明記されている(甲第4号証の3)。
そして,株式会社ヨドバシカメラ(東京都新宿区北新宿3-20-1)の公式通販サイト「www.yodobashi.com」(当審注:請求書には,以下に「www.yodobashi.com」及び「yodobashi.com」との記載もあるが,当審においては,「株式会社ヨドバシカメラ(東京都新宿区北新宿3-20-1)の公式通販サイト「www.yodobashi.com」であると認め,以下,審決では,「株式会社ヨドバシカメラの公式通販サイト「www.yodobashi.com」とする。)には,本商品の販売開始日が2011年7月27日からであることが明記されている(甲第4号証の4)。
(ウ)これらのことから,本商品に係る意匠は本件登録意匠の出願日(平成25年(2013年)7月19日)よりも前に公知になったということができる。

イ.物品について
公知意匠イに係る物品は,「包装用台紙」である

ウ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。

エ.枠部分の形態について
(ア)基本的構成態様について
(a)一定の領域を有する枠部分であり,
(b)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(c)目盛部分の近傍に配置された図形と
から構成される。
(イ)具体的構成態様について
(d)縦長の方形の形状を有する枠部分で,
(e)枠部分の正面視左縁に沿って配置された左縁目盛部分とから成り,
(g)枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印と,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印と,
(h)縦方向両矢印と横方向両矢印の略中央にそれぞれ設けられた図形とから構成される。

オ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
枠部分は,物品である「包装用台紙」全体の中で,物品全体の略中央に位置し,物品全体の中に占める枠部分の大きさ,範囲は約3分の2である。

(3)公知意匠ウについて
ア.公知意匠ウの販売時期
(ア)甲第5号証の1及び甲第5号証2は,株式会社カシムラ(東京都足立区綾瀬6-9-28)の商品「フリーサイズ液晶保護パッド5.0インチ」(型番BP-288)である。
(イ)本商品の販売時期について,株式会社カシムラに請求人従業員が問い合わせたところ,2016年3月10日付で「本商品の発売は2007年3月20日である」との回答があった(甲第36号証)。
また,マーケティングリサーチ企業Gfkによる調査(甲第11号証)でも,発売日は2012年4月と報告されている。
そして,株式会社ヨドバシカメラの公式通販サイト「www.yodobashi.com」には,本商品の販売開始日が2011年7月18日であることが明記されている(甲第5号証の3)。
更に,「amazon.co.jp」のサイト(当審注:「amazon.co.jp」は,「ECサイト,Webサービスの企業であるAmazon.com,Inc.が運営する通信販売サイト「amazon.co.jp」であると認め,以下,「Amazon.com,Inc.の通信販売サイト「amazon.co.jp」とする。)には,本商品の取り扱い開始日が2008年1月31日であることが明記されている(甲第5号証の4)。
(ウ)これらのことから,本商品に係る意匠は本件登録意匠の出願日(平成25年(2013年)7月19日)よりも前に公知になったということができる。

イ.物品について
公知意匠ウに係る物品は,「包装用台紙」である

ウ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。

エ.枠部分の形態について
(ア)基本的構成態様について
(a)一定の領域を有する枠部分であり,
(b)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(c)目盛部分の近傍に配置された図形と
から構成される。
(イ)具体的構成態様について
(d)縦長の方形の形状を有する枠部分で,
(e)枠部分の正面視上縁に沿って配置された上縁目盛部分と,正面視下縁に沿って配置された下縁目盛部分と,正面視右縁に沿って配置された右縁目盛部分と,正面視左縁に沿って配置された左縁目盛部分とから成り,
(f)目盛部分は,左縁目盛部分の上方側一端と上縁目盛部分の左側一端が,枠部分の左上の角で接して直角を成し,右縁目盛部分の上方側一端と上縁目盛部分の右側一端が,枠部分の右上の角で接して直角を成し,左縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の左側一端が,枠部分の左下の角で接して直角を成し,右縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の右側一端が,枠部分の左上の角で接して直角を成し,
(g)枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印と,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印と,
(h)枠部分内に記載された方眼部分と
から構成される。

オ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
枠部分は,物品である「包装用台紙」全体の中で,物品全体の略中央に位置し,枠部分の大きさ,範囲は物品全体の約2分の1である。

(4)公知意匠エについて
ア.公知意匠エの販売時期
(ア)甲第6号証の1及び甲第6号証の2は,株式会社イノーヴァ グローバル(東京都港区六本木3-7-1-1813)の商品「Wrapsol(登録商標)(型番WP50IULTR-FT)」である。
(イ)本商品の販売時期について,株式会社イノーヴァ グローバル(当審注:請求書では「株式会社カシムラ」とあるが,甲第36号証から「株式会社イノーヴァ グローバル」と認められる。)に問い合わせたところ,2016年3月10日付で「本商品の発売は2013年3月8日である」との回答があった(甲第36号証)。
また,マーケティングリサーチ企業Gfkによる調査(甲第11号証)でも,発売日は2013年4月と報告されている。
そして,株式会社ヨドバシカメラの公式通販サイト「www.yodobashi.com」には,本商品の販売開始日が2013年4月12日であることが明記されている(甲第6号証の3)。
(ウ)これらのことから,本商品に係る意匠は本件登録意匠の出願日(平成25年(2013年)7月19日)よりも前に公知になったということができる。

イ.物品について
公知意匠エに係る物品は,「包装用台紙」である

ウ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。

エ.枠部分の形態について
(ア)基本的構成態様について
(a)一定の領域を有する枠部分であり,
(b)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(c)目盛部分の近傍に配置された図形と
から構成される。
(イ)具体的構成態様について
(d)縦長の方形の形状を有する枠部分で,
(e)枠部分の正面視右側に沿って配置された右縁目盛部分と,枠部分の正面視下縁に沿って配置された下縁目盛部分とから成り,
(f)目盛部分は,右縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の右側一端が,枠部分の正面視右下の領域で接して直角を成す目盛部分と,
(g)枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印と,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印と
から構成される。

オ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
枠部分は,物品である「包装用台紙」全体の中で,物品全体の略中央に位置し,物品全体の中に占める枠部分の大きさ,範囲は約5分の4である。

(5)公知意匠オについて
ア.公知意匠オの販売時期
(ア)甲第7号証の1及び甲第7号証の2は,株式会社ビッグスター(千葉県柏市豊四季945-738)の商品 液晶保護フィルム「キズ修復機能付・液晶保護・バブルフリーフィルム」(型番BF-4.8F)である。
(イ)本商品の販売時期について,株式会社ビッグスターに請求人従業員が問い合わせたところ,2016年3月10日付で「本商品の発売は2013年6月である」との回答があった(甲第36号証)。
また,株式会社ヨドバシカメラの公式通販サイト「www.yodobashi.comのサイトには,本商品の販売開始日が2013年6月27日であることが明記されている(甲第7号証の3)。
(ウ)これらのことから,本商品に係る意匠は本件登録意匠の出願日(平成25年(2013年)7月19日)よりも前に公知になったということができる。

イ.物品について
公知意匠オに係る物品は,「包装用台紙」である。

ウ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。

エ.枠部分の形態について
(ア)基本的構成態様について
(a)一定の領域を有する枠部分であり,
(b)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(c)目盛部分の近傍に配置された図形と
から構成される。
(イ)具体的構成態様について
(d)縦長の方形の形状を有する枠部分で,
(e)枠部分の正面視左側に沿って配置された左縁目盛部分と,枠部分の正面視下縁に沿って配置された下縁目盛部分とから成り,
(f)目盛部分は,左縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の左側一端とは,枠部分の正面視左下の領域で接して直角を成し,
(g)左縁目盛部分と下縁目盛部分の近傍にそれぞれ配置された丸形の図形と
から構成される。

オ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
枠部分は,物品である「包装用台紙」全体の中で,物品全体の略中央に位置し,物品全体の中に占める枠部分の大きさ,範囲は約4分の3である。

(6)公知意匠カについて
ア.公知意匠カの販売時期
(ア)甲第8号証の1及び甲第8号証の2は,モバイルライフ株式会社(神奈川県横浜市神奈川区菅田町672-1)の商品「耐脂性防止 液晶保護フィルムフリーサイズ(型番ACS-FREE)」である。
(イ)本商品は,株式会社ヨドバシカメラの公式通販サイト「www.yodobashi.comには,本商品の販売開始日が2011年7月18日であることが明記されている(甲第8号証の3)。
また,株式会社エディオン(大阪府大阪市北区中之島2丁目3番33号 大阪三井物産ビル)の公式通販サイト「エディオン ネットショップ」には,本商品の発売日が2009年7月10日であることが明記されている(甲第8号証の4)。
(ウ)これらのことから,本商品に係る意匠は本件登録意匠の出願日(平成25年(2013年)7月19日)よりも前に公知になったということができる。

イ.物品について
公知意匠カに係る物品は,「包装用台紙」である。

ウ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。

エ.枠部分の形態について
(ア)基本的構成態様について
(a)一定の領域を有する枠部分であり,
(b)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(c)目盛部分の近傍に配置された図形と
から構成される。
(イ)具体的構成態様について
(d)縦長の方形の形状を有する枠部分で,
(e)枠部分の正面視左縁に沿って配置された左縁目盛部分と,枠部分の正面視上縁に沿って配置された上縁目盛部分とから成り,
(f)目盛部分は,左縁目盛部分の上方側一端と上縁目盛部分の左側一端が,枠部分の左上の角で接して直角を成し,
(g)左縁目盛部分の近傍に,左縁目盛部分と平行に配置されたサイズ別表示線の縦線と,上縁目盛部分の近傍に,上縁目盛部分と平行に配置されたサイズ別表示線の横線とを有する図形と
(h)枠部分内に記載された方眼部分と
から構成される。

オ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
枠部分は,物品である「包装用台紙」全体の中で,物品全体の略中央に位置し,物品全体の中に占める枠部分の大きさ,範囲は約3分の2である。

(7)公知意匠キについて
ア.公知意匠キの販売時期
(ア)甲第9号証の1及び甲第9号証の2は,株式会社ラスタバナナの商品「タッチガードナー フリーサイズ(型番RB9GB01)」である。
(イ)本商品の販売時期について,株式会社ラスタバナナに請求人従業員が問い合わせたところ,2016年3月10日付で「本商品の発売は2013年6月である」との回答があった(甲第36号証)。
また,株式会社ヨドバシカメラの公式通販サイト「www.yodobashi.comには,本商品の販売開始日が2010年3月18日であることが明記されている(甲第9号証の2)。
そして,「価格.com(当審注:甲第9号証の3から,「価格.com(http://kakaku.com/item/K0000301283/)」と認められる。)」には,本商品のサイトへの登録日が2011年10月24日であることが明記されている(甲第9号証の3)。
(ウ)これらのことから,本商品に係る意匠は本件登録意匠の出願日(平成25年(2013年)7月19日)よりも前に公知になったということができる。

イ.物品について
公知意匠キに係る物品は,「包装用台紙」である。

ウ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。

エ.枠部分の形態について
(ア)基本的構成態様について
(a)一定の領域を有する枠部分であり,
(b)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(c)目盛部分の近傍に配置された図形と
から構成される。
(イ)具体的構成態様について
(d)縦長の方形の形状を有する枠部分で,
(e)枠部分の正面視右縁に沿って配置された右縁目盛部分と,枠部分の正面視下縁に沿って配置された下縁目盛部分とから成り,
(f)目盛部分は,右縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の右側一端が,枠部分の右下の角で接して直角を成し,
(g)右縁目盛部分及び下縁目盛部分の近傍に配置された図形と
から構成される。

オ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
枠部分は,物品である「包装用台紙」全体の中で,物品全体の略中央に位置し,物品全体の中に占める枠部分の大きさ,範囲は約10分の9である。

(8)公知意匠クについて
ア.公知意匠クの販売時期
(ア)甲第10号証の1は,株式会社ラスタバナナの商品「ブルーライトカット(型番E002FP32)」である。
(イ)本商品の販売時期について,株式会社ラスタバナナに請求人従業員が問い合わせたところ,2016年3月10日付で「本商品の発売は2013年6月である」との回答があった(甲第36号証)。
また,株式会社ヨドバシカメラの公式通販サイト「www.yodobashi.comには,本商品の販売開始日が2013年6月14日であることが明記されている(甲第10号証の2)。
そして,Amazon.com,Inc.の通信販売サイト「amazon.co.jp(当審注:請求書においては,「アマゾン ジャパン株式会社(東京都目黒区下目黒1丁目8-1 アルコタワーアネックス)の大手販売サイト「amazon.co.jp」」とされていたが,Amazon.com,Inc.の通信販売サイト「amazon.co.jp」と認める。)には,本商品のサイトへの登録日が2013年6月17日であることが明記されている(甲第10号証の3)。
(ウ)これらのことから,本商品に係る意匠は本件登録意匠の出願日(平成25年(2013年)7月19日)よりも前に公知になったということができる。

イ.物品について
公知意匠クに係る物品は,「包装用台紙」である。

ウ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。

エ.枠部分の形態について
(ア)基本的構成態様について
(a)一定の領域を有する枠部分であり,
(b)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(c)目盛部分の近傍に配置された図形と
から構成される。
(イ)具体的構成態様について
(d)縦長の方形の形状を有する枠部分で,
(e)正面視左縁に沿って配置された左縁目盛部分と,
(f)枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印と,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印と,
(g)縦方向両矢印と横方向両矢印の略中央にそれぞれ設けられた図形と
から構成される。

オ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
枠部分は,物品である「包装用台紙」全体の中で,物品全体の略中央に位置し,物品全体の中に占める枠部分の大きさ,範囲は約2分の1である。

2.本件登録意匠と公知意匠ア?クの対比(一致点と相違点の認定)
(1)本件登録意匠と公知意匠アの対比
ア.物品について
本件登録意匠と公知意匠アに係る物品は,ともに「包装用台紙」であって,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

イ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。よって,本件登録意匠と公知意匠アの用途及び機能は同一である。

ウ.本件登録意匠と公知意匠アの形態について
(ア)共通点
(a)基本的構成態様として
(i)一定の領域を有する枠部分であり,
(ii)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(iii)目盛部分の近傍に配置された図形と
を有している点において主に共通する。
(b)具体的構成態様として
(iv)枠部分は,縦長の方形の形状を有する点,
(v)目盛部分は,枠部分の正面視左縁に配置された左縁目盛部分を有する点,
(vi)目盛部分の略中央に丸形の図の図形がそれぞれ設けられた点
において主に共通する。
(イ)相違点
(i)本件登録意匠の目盛部分は枠部分の正面視下縁に沿って配置された下縁目盛部分を有するが,公知意匠アは枠部分の正面視上縁に沿って配置された上縁目盛部分を有する点,
(ii)本件登録意匠は左縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の左側一端とが枠部分の左下の角で接して直角を成すが,公知意匠アは左縁目盛部分の上方側一端と上縁目盛部分の左側一端とが枠部分の左上の角で接して直角を成す点,
(iii)本件登録意匠の図形は,枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印を有するが,公知意匠アの図形部分は,枠部分の上下方向を示す縦方向曲線部,枠部分の左右方向を示す横方向曲線部を有する点
において主に相違する。

エ.位置,大きさ,範囲について
(ア)共通点
(a)枠部分の大きさ,範囲は,物品全体の約2分の1を占める点において共通する。
(イ)相違点
(a)枠部分の位置は,本件登録意匠においては物品全体の左端かつ下端に配置されているが,公知意匠アにおいては物品全体の左端かつ上下方向の途中に配置されている点
において相違する。

(2)本件登録意匠と公知意匠イの対比
ア.物品について
本件登録意匠と公知意匠イに係る物品は,ともに「包装用台紙」であって,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

イ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。よって,本件登録意匠と公知意匠イの用途及び機能は同一である。

ウ.本件登録意匠と公知意匠イの形態について
(ア)共通点
(a)基本的構成態様として
(i)一定の領域を有する枠部分であり,
(ii)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(iii)目盛部分の近傍に配置された図形とを有している点
において主に共通する。
(b)具体的構成態様として
(iv)枠部分は,縦長の方形の形状を有する点,
(v)目盛部分は,枠部分の正面視左縁に配置された左縁目盛部分を有する点,
(vi)枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印が設けられている点,
(vii)縦方向両矢印と横方向両矢印の略中央にそれぞれ図形が設けられている点,
において主に共通する。
(イ)相違点
(i)本件登録意匠の目盛部分は枠部分の正面視下縁に沿って配置された下縁目盛部分を有するが,公知意匠イは下縁目盛部分を有さない点,
(ii)本件登録意匠は左縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の左側一端とが枠部分の左下の角で接して直角を成すが,公知意匠イは左縁目盛部分のみを有するので直角を成さない点,
(iii)本件登録意匠の横方向両矢印は正面視下縁目盛部分に沿って配置されているが,公知意匠イの横方向矢印は枠部分の正面視略中央に配置されている点
(iv)本件登録意匠は縦方向両矢印と横方向両矢印の略中央にそれぞれ設けられた丸形の図形から成るが,公知意匠イは方形の図形から成る点
において主に相違する。

エ.位置,大きさ,範囲について
(a)本件登録意匠の物品全体の中に占める枠部分の大きさ,範囲は約2分の1であるが,公知意匠イの物品全体の中に占める枠部分の範囲は約3分の2である点,
(b)物品全体の中に占める枠部分の位置は,本件登録意匠においては物品全体の左端かつ下端に配置されているが,公知意匠イにおいては物品全体の略中央に配置されている点,
において相違する。

(3)本件登録意匠と公知意匠ウの対比
ア.物品について
本件登録意匠と公知意匠ウに係る物品は,ともに「包装用台紙」であって,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

イ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。よって,本件登録意匠と公知意匠ウの用途及び機能は同一である。

ウ.本件登録意匠と公知意匠ウの形態について
(ア)共通点
(a)基本的構成態様として
(i)一定の領域を有する枠部分であり,
(ii)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(iii)目盛部分の近傍に配置された図形と
を有している点において主に共通する。
(b)具体的構成態様として
(iv)枠部分は,縦長の方形の形状を有する点,
(v)目盛部分に,枠部分の正面視左縁に配置された左縁目盛部分と,枠部分の正面視下縁に沿って配置された下縁目盛部分とを有する点,
(vi)左縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の左側一端とは,枠部分の左下の角で接して直角をなす点
(vii)枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印と,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印を有する点,
において主に共通する。
(イ)相違点
(i)本件登録意匠は縦方向両矢印と横方向両矢印の略中央に丸形の図形が設けられているが,公知意匠ウには図形が設けられていない点
(ii)公知意匠ウの枠部分内には方眼が設けられているが,本件登録意匠には設けられていない点
において主に相違する。

エ.位置,大きさ,範囲について
(ア)共通点
(a)枠部分の大きさ,範囲は,物品全体の約2分の1を占める点において共通する。
(イ)相違点
(a)物品全体の中に占める枠部分の位置は,本件登録意匠においては物品全体の左端かつ下端に配置されているが,公知意匠ウにおいては物品全体の略中央に配置されている点,
において相違する。

(4)本件登録意匠と公知意匠エの対比
ア.物品について
本件登録意匠と公知意匠エに係る物品は,ともに「包装用台紙」であって,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

イ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。よって,本件登録意匠と公知意匠エの用途及び機能は同一である。

ウ.本件登録意匠と公知意匠エの形態について
(ア)共通点
(a)基本的構成態様として
(i)一定の領域を有する枠部分であり,
(ii)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(iii)目盛部分の近傍に配置された図形と
を有している点において主に共通する。
(b)具体的構成態様として
(iv)枠部分は,縦長の方形の形状を有する点,
(v)目盛部分は,枠部分の正面視下縁に配置された下縁目盛部分を有する点,
(vi)枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印を有する点
において主に共通する。
(イ)相違点
(i)本件登録意匠の目盛部分は枠部分の正面視左側に配置された左縁目盛部分を有するが,公知意匠エは左縁目盛部分を有さず,枠部分の正面視右側に配置された右縁目盛部分を有する点,
(ii)本件登録意匠は左縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の左側一端とが枠部分の左下の角で接して直角を成すが,公知意匠エは右縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の右側一端とが枠部分の右下の領域で接して直角を成す点,
(iii)本件登録意匠には,丸形の図形が縦方向両矢印と横方向両矢印の略中央にそれぞれ設けられているが,公知意匠エには設けられていない点
において主に相違する。

エ.位置,大きさ,範囲について
(a)本件登録意匠の物品全体の中に占める枠部分の範囲は約2分の1であるが,公知意匠エの物品全体の中に占める枠部分の範囲は約5分の4である点,
(b)物品全体の中に占める枠部分の位置は,本件登録意匠においては物品全体の左端かつ下端に配置されているが,公知意匠エにおいては物品全体の略中央に配置されている点,
において相違する。

(5)本件登録意匠と公知意匠オの対比
ア.物品について
本件登録意匠と公知意匠オに係る物品は,ともに「包装用台紙」であって,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

イ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。よって,本件登録意匠と公知意匠オの用途及び機能は同一である。

ウ.本件登録意匠と公知意匠オの形態について
(ア)共通点
(a)基本的構成態様として
(i)一定の領域を有する枠部分であり,
(ii)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(iii)目盛部分の近傍に配置された図形と
を有している点において主に共通する。
(b)具体的構成態様として
(iv)枠部分は,縦長の方形の形状を有する点,
(v)目盛部分は,枠部分の正面視左側に配置された左縁目盛部分と枠部分の正面視下側に配置された下縁目盛部分とから成る点,
(vi)左縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の左側一端とは,枠部分の左下の角で接して直角をなす点
(vii)左縁目盛部分と下縁目盛部分の略中央にそれぞれ丸形の図形が設けられている点,
において主に共通する。
(イ)相違点
(i)本件登録意匠は,枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印を有するが,公知意匠オは縦方向両矢印及び横方向両矢印を有さない点,
において相違する。

エ.位置,大きさ,範囲について
(a)本件登録意匠の物品全体の中に占める枠部分の大きさ,範囲は約2分の1であるが,公知意匠オの物品全体の中に占める枠部分の大きさ,範囲は約4分の3である点,
(b)物品全体の中に占める枠部分の位置は,本件登録意匠においては物品全体の左端かつ下端に配置されているが,公知意匠オにおいては物品全体の略中央に配置されている点,
において相違する。

(6)本件登録意匠と公知意匠カの対比
ア.物品について
本件登録意匠と公知意匠カに係る物品は,ともに「包装用台紙」であって,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

イ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。よって,本件登録意匠と公知意匠カの用途及び機能は同一である。

ウ.本件登録意匠と公知意匠カの形態について
(ア)共通点
(a)基本的構成態様として
(i)一定の領域を有する枠部分であり,
(ii)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(iii)目盛部分の近傍に配置された図形と
を有している点において主に共通する。
(b)具体的構成態様として
(iv)枠部分は,縦長の方形の形状を有する点,
(v)目盛部分は,枠部分の正面視左側に配置された左縁目盛部分を有する点,
において主に共通する。
(イ)相違点
(i)本件登録意匠の目盛部分は枠部分の正面視下縁に配置された下縁目盛部分を有するが,公知意匠カは枠部分の正面視上縁に配置された上縁目盛部分を有する点,
(ii)本件登録意匠は左縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の左側一端とが枠部分の左下の角で接して直角を成すが,公知意匠カは左縁目盛部分の上方側一端と上縁目盛部分の左側一端とが枠部分の左上の角で接して直角を成す点,
(iii)本件登録意匠は,枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印を有する。しかし,公知意匠カは左縁目盛部分と平行に配置されたサイズ別表示線のうち上下方向を示す線と,上縁目盛部分と平行に配置されたサイズ別表示線のうち左右方向を表す線を有する点,
(iv)本件登録意匠は縦方向両矢印と横方向両矢印の略中央にそれぞれ丸形の図形を有するが,公知意匠カには設けられていない点,
(v)公知意匠カの枠部分内には方眼が設けられているが,本件登録意匠の枠部分内には方眼は設けられていない点
において主に相違する。

エ.位置,大きさ,範囲について
(a)物品全体の中に占める枠部分の位置は,本件登録意匠においては物品全体の左端かつ下端に配置されているが,公知意匠カにおいては物品全体の上下方向の途中から下端にかけて配置されている点,
(b)本件登録意匠の物品全体の中に占める枠部分の範囲は約2分の1であるが,公知意匠カにおいては約4分の3である点,
において相違する。

(7)本件登録意匠と公知意匠キの対比
ア.物品について
本件登録意匠と公知意匠キに係る物品は,ともに「包装用台紙」であって,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

イ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。よって,本件登録意匠と公知意匠キの用途及び機能は同一である。

ウ.本件登録意匠と公知意匠キの形態について
(ア)共通点
(a)基本的構成態様として
(i)一定の領域を有する枠部分であり,
(ii)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(iii)目盛部分の近傍に配置された図形と
を有している点において主に共通する。
(b)具体的構成態様として
(iv)枠部分は,縦長の方形の形状を有する点,
(v)目盛部分は,枠部分の正面視下縁に配置された下縁目盛部分を有する点,
において主に共通する。
(イ)相違点
(i)本件登録意匠の目盛部分は枠部分の正面視左縁に配置された左縁目盛部分を有するが,公知意匠キは枠部分の正面視右縁に配置された右縁目盛部分を有する点,
(ii)本件登録意匠は左縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の左側一端とが枠部分の左下の角で接して直角を成すが,公知意匠キは右縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の右側一端とが枠部分の左上の角で接して直角を成す点,
(iii)本件登録意匠は,縦方向両矢印,横方向両矢印及び図形を有する。しかし,公知意匠キには,縦方向両矢印,横方向両矢印及び丸形の図形は設けられておらず,他の形状を有する多種類の図からなる点,
において主に相違する。

エ.位置,大きさ,範囲について
(a)物品全体の中に占める枠部分の位置は,本件登録意匠においては物品全体の左端かつ下端に配置されているが,公知意匠キにおいては物品の正面視略中央を占める点,
(b)物品全体の中に占める枠部分の範囲は,本件登録意匠においては約2分の1であるが,公知意匠キにおいては物品の正面視約10分の9を占める点,
において相違する。

(8)本件登録意匠と公知意匠クの対比
ア.物品について
本件登録意匠と公知意匠クに係る物品は,ともに「包装用台紙」であって,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

イ.枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。よって,本件登録意匠と公知意匠クの用途及び機能は同一である。

ウ.本件登録意匠と公知意匠クの形態について
(ア)共通点
(a)基本的構成態様として
(i)一定の領域を有する枠部分であり,
(ii)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(iii)目盛部分の近傍に配置された図形と
を有している点において主に共通する。
(b)具体的構成態様として
(iv)枠部分は,縦長の方形の形状を有する点,
(v)目盛部分は,枠部分の正面視左側に配置された左縁目盛部分を有する点,
(vi)枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印を有する点,
(vii)縦方向両矢印と横方向両矢印の略中央にそれぞれ丸形の図形が設けられている点,
において主に共通する。
(イ)相違点
(i)本件登録意匠の目盛部分は枠部分の正面視下縁に配置された下縁目盛部分を有するが,公知意匠クは下縁目盛部分を有さない点,
(ii)本件登録意匠は左縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の左側一端とが枠部分の左下の角で接して直角を成すが,公知意匠クは左縁目盛部分のみ設けられているので,直角を成さない点,
において主に相違する。

エ.位置,大きさ,範囲について
(ア)共通点
(a)物品全体の中に占める枠部分の範囲が約2分の1である点において共通する。
(イ)相違点
(a)物品全体の中に占める枠部分の位置は,本件登録意匠においては物品全体の左端かつ下端に配置されているが,公知意匠クにおいては物品の略中央に配置されている点
において相違する。

3.本件登録意匠と公知意匠ア?クの類否判断
まず,本件登録意匠と公知意匠ア?クの要部について検討すると,これらの意匠に係る物品である包装用台紙は,主に携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを,購入時に視覚的に把握するために使用するものと判断できる。
したがって,需要者は,本件登録意匠に係る物品を主に正面方向からみることになり,本件登録意匠,および公知意匠ア?クにおいては,正面方向からみた意匠の基本的構成態様,および具体的構成態様が最も需要者が注意を引く要部であると言える。
(1)本件登録意匠と公知意匠アの類否判断
ア.形態についての類否判断
(ア)形態の共通点の評価
(a)基本的構成態様として
本件登録意匠と公知意匠アは,基本的構成態様(i)?(iii)の共通点を有することにより,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるという,共通した形態的効果を奏する。
このため,これらの基本的構成態様の共通点(i)?(iii)が需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(b)具体的構成態様として
共通点(iv)?(vi)について,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握する際に,需要者が最も注意深く観察する部分であり,需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(イ)形態の相違点の評価
相違点(i)?(iii)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,この相違点(i)?(iii)が需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(i)?(iii)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

イ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
(ア)位置,大きさ,範囲の共通点の評価
共通点(a)については,需要者が携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握する際に注目する部分であり,両意匠の類否判断に際しての需要者に与える視覚的は強く,両意匠の類否判断にある程度の大きな影響を及ぼすものと認められる。
(イ)位置,大きさ,範囲の相違点の評価
相違点(a)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(a)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

(2)本件登録意匠と公知意匠イの類否判断
ア.形態についての類否判断
(ア)形態の共通点の評価
(a)基本的構成態様として
本件登録意匠と公知意匠イは,基本的構成態様(i)?(iii)の共通点を有することにより,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるという,共通した形態的効果を奏する。
このため,これらの基本的構成態様の共通点(i)?(iii)が需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(b)具体的構成態様として
共通点(iv)?(vii)について,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握する際に,需要者が最も注意深く観察する部分であり,需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(イ)形態の相違点の評価
相違点(i)?(iv)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,この相違点(i)?(iv)が需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(i)?(iv)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

イ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
相違点(a)(b)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(a)(b)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

(3)本件登録意匠と公知意匠ウの類否判断
ア.形態についての類否判断
(ア)形態の共通点の評価
(a)基本的構成態様として
本件登録意匠と公知意匠ウは,基本的構成態様(i)?(iii)の共通点を有することにより,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるという,共通した形態的効果を奏する。
このため,これらの基本的構成態様の共通点(i)?(iii)が需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(b)具体的構成態様として
共通点(iv)?(vii)について,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握する際に,需要者が最も注意深く観察する部分であり,需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(イ)形態の相違点の評価
相違点(i)(ii)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,この相違点(i)(ii)が需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(i)(ii)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

イ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
(ア)位置,大きさ,範囲の共通点の評価
共通点(a)については,需要者が携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握する際に注目する部分であり,両意匠の類否判断に際しての需要者に与える視覚的は強く,両意匠の類否判断にある程度の大きな影響を及ぼすものと認められる。
(イ)位置,大きさ,範囲の相違点の評価
相違点(a)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(a)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

(4)本件登録意匠と公知意匠エの類否判断
ア.形態についての類否判断
(ア)形態の共通点の評価
(a)基本的構成態様として
本件登録意匠と公知意匠エは,基本的構成態様(i)?(iii)の共通点を有することにより,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるという,共通した形態的効果を奏する。
このため,これらの基本的構成態様の共通点(i)?(iii)が需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(b)具体的構成態様として
共通点(iv)?(vii)について,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握する際に,需要者が最も注意深く観察する部分であり,需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(イ)形態の相違点の評価
相違点(i)?(iii)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,この相違点(i)?(iii)が需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(i)?(iii)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

イ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
相違点(a)(b)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(a)(b)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

(5)本件登録意匠と公知意匠オの類否判断
ア.形態についての類否判断
(ア)形態の共通点の評価
(a)基本的構成態様として
本件登録意匠と公知意匠オは,基本的構成態様(i)?(iii)の共通点を有することにより,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるという,共通した形態的効果を奏する。
このため,これらの基本的構成態様の共通点(i)?(iii)が需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(b)具体的構成態様として
共通点(iv)?(vii)について,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握する際に,需要者が最も注意深く観察する部分であり,需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(イ)形態の相違点の評価
相違点(i)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,この相違点(i)が需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(i)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

イ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
相違点(a)(b)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(a)(b)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

(6)本件登録意匠と公知意匠カの類否判断
ア.形態についての類否判断
(ア)形態の共通点の評価
(a)基本的構成態様として
本件登録意匠と公知意匠カは,基本的構成態様(i)?(iii)の共通点を有することにより,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるという,共通した形態的効果を奏する。
このため,これらの基本的構成態様の共通点(i)?(iii)が需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(b)具体的構成態様として
共通点(iv)(v)について,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握する際に,需要者が最も注意深く観察する部分であり,需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(イ)形態の相違点の評価
相違点(i)?(v)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,この相違点(i)?(v)が需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(i)?(v)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

イ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
相違点(a)(b)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(a)(b)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

(7)本件登録意匠と公知意匠キの類否判断
ア.形態についての類否判断
(ア)形態の共通点の評価
(a)基本的構成態様として
本件登録意匠と公知意匠キは,基本的構成態様(i)?(iii)の共通点を有することにより,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるという,共通した形態的効果を奏する。
このため,これらの基本的構成態様の共通点(i)?(iii)が需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(b)具体的構成態様として
共通点(iv)(v)について,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握する際に,需要者が最も注意深く観察する部分であり,需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(イ)形態の相違点の評価
相違点(i)?(iii)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,この相違点(i)?(iii)が需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(i)?(iii)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

イ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
相違点(a)(b)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(a)(b)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

(8)本件登録意匠と公知意匠クの類否判断
ア.形態についての類否判断
(ア)形態の共通点の評価
(a)基本的構成態様として
本件登録意匠と公知意匠クは,基本的構成態様(i)?(iii)の共通点を有することにより,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるという,共通した形態的効果を奏する。
このため,これらの基本的構成態様の共通点(i)?(iii)が需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(b)具体的構成態様として
共通点(iv)?(vii)について,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握する際に,需要者が最も注意深く観察する部分であり,需要者に与える視覚的印象は強く,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(イ)形態の相違点の評価
相違点(i)(ii)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,この相違点(i)(ii)が需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(i)(ii)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

イ.枠部分の位置,大きさ,範囲について
(ア)位置,大きさ,範囲の共通点の評価
共通点(a)については,需要者が携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握する際に注目する部分であり,両意匠の類否判断に際しての需要者に与える視覚的は強く,両意匠の類否判断にある程度の大きな影響を及ぼすものと認められる。
(イ)位置,大きさ,範囲の相違点の評価
相違点(a)については,携帯端末の液晶画面を保護する保護フィルムの大きさを視覚的に把握するという機能を害しない限度において容易に変更可能な範囲に過ぎず,需要者に与える視覚的影響は限定的なものである。
よって,相違点(a)が両意匠の類否判断に与える影響は軽微なものといえる。

4.小括
以上のとおり,本件登録意匠と公知意匠ア?クは,両意匠に係る物品,枠部分の用途,機能,形態,位置,大きさ,範囲において共通点が複数存在し,全体として共通点が相違点を凌駕するので,本件登録意匠は,公知意匠ア?クに類似する。

[1-6]意匠法第3条第2項の無効理由について
1.はじめに
仮に意匠法第3条第1項第3号の無効理由(同48条第1項第1号)に該当しなかったとしても,以下の理由により本件登録意匠は同第3条第2項(同48条第1項第1号)の無効理由に該当する。

2.本件登録意匠の各構成について
以下,本件登録意匠の構成態様ごとに検討する。
(1)基本的構成態様について
ア.一定の領域を有する枠部分を設けたことについて
包装用台紙に一定の領域を有する枠部分を設けた態様は,本件登録意匠の出願前に公然知られたものとなっていた公知意匠ア乃至クの包装用台紙に現されていたものである。
また,本件登録意匠の出願前に公然知られたものとなっていた昭63-154470号公開公報(甲第12号証 請求項3及び図1),特許第5032769号公報(甲第13号証 請求項2及び図1,図2),特開2001-315756号(甲第17号証 請求項11及び図1),特開2008-1372号(甲第18号証 段落番号【0021】及び図4),特許第5004570号公報(甲第19号証 請求項2及び図1乃至4),公開実用新案公報 昭60-154273号(甲第20号証 実用新案登録請求の範囲及び図1),特開平8-17414号公報(甲第21号証 請求項1及び図1,図3,図4),公開実用新案公報 平2-45947号(甲第22号証 第4頁第1乃至第7行目及び図1,図2),意匠登録第523577号公報(甲第23号証),意匠登録第523577号の類似1公報(甲第24号証),意匠登録第683913号公報(甲第25号証),意匠登録第683913号の類似1公報(甲第26号証),意匠登録第946599号公報(甲第27号証),意匠登録第1093176号公報(甲第28号証),意匠登録第1093177号公報(甲第29号証),意匠登録第1162485号公報(甲第30号証),意匠登録第1163057号公報(甲第31号証),意匠登録第1272815号公報(甲第32号証),意匠登録第1272816号公報(甲第33号証),意匠登録第1389853号公報(甲第34号証),意匠登録第1244165号公報(甲第35号証)に記載されていたものである。

イ.枠部分に沿って配置された目盛部分について
包装用台紙に枠部分の近傍に目盛部分を設けた態様は,本件登録意匠の出願前に公然知られたものとなっていた公知意匠ア乃至クの包装用台紙に表されていたものである。
また,本件登録意匠の出願前に公然知られたものとなっていた実用新案公開公報昭63-154470号公開公報(甲第12号証 請求項3及び図1),特許第5032769号公報(甲第13号証 請求項2及び図1,図2),特開平7-251862号公開公報(甲第14号証 請求項3,段落番号【0018】【0019】及び図9,図10),昭63-126268号実用新案公開公報(甲第15号証 請求項1及び図1),実用新案公報平5-42064号(甲第16号証 請求項1及び図2),特許公報 特開2001-315756号(甲第17号証 請求項11及び図1),公開特許公報 特開2008-1372号(甲第18号証 段落番号【0021】及び図4),特許第5004570号公報(甲第19号証 請求項2及び図1乃至4),公開実用新案公報 昭60-154273号(甲第20号証 実用新案登録請求の範囲及び図1),公開実用新案公報 平2-45947号(甲第22号証 第4頁第1乃至第7行目及び図1,図2),意匠登録第523577号公報(甲第23号証),意匠登録第523577号の類似1公報(甲第24号証),意匠登録第683913号公報(甲第25号証),意匠登録第683913号の類似1公報(甲第26号証),意匠登録第1162485号公報(甲第30号証),意匠登録第1163057号公報(甲第31号証),意匠登録第1389853号公報(甲第34号証),意匠登録第1244165号公報(甲第35号証)に記載されていたものである。

ウ.目盛部分の近傍に配置された図形について
目盛部分の近傍に図形を配置した態様は,本件登録意匠の出願前に公然知られたものとなっていた公知意匠ア乃至クの包装用台紙に表されていたものである。
また,本件登録意匠の出願前に公然知られたものとなっていた実用新案公開公報昭63-154470号公開公報(甲第12号証 請求項3及び図1),特許第5032769号公報(甲第13号証 請求項2及び図1,図2),特開平7-251862号公開公報(甲第14号証 請求項3,段落番号【0018】【0019】及び図9,図10),実用新案公報平5-42064号(甲第16号証 請求項1及び図2),特許公報 特開2001-315756号(甲第17号証 請求項11及び図1),特許第5004570号公報(甲第19号証 請求項2及び図1乃至4),公開実用新案公報 昭60-154273号(甲第20号証 実用新案登録請求の範囲及び図1),公開実用新案公報 平2-45947号(甲第22号証 第4頁第1乃至第7行目及び図1,図2),意匠登録第683913号公報(甲第25号証),意匠登録第683913号の類似1公報(甲第26号証),意匠登録第1162485号公報(甲第30号証),意匠登録第1163057号公報(甲第31号証),意匠登録第1244165号公報(甲第35号証)に記載されていたものである。

(2)具体的構成態様について
ア.縦長の方形の形状を有する枠部分について
包装用台紙に縦長の方形の形状を有する枠部分を設けた態様は,本件登録意匠の出願前に公然知られたものとなっていた公知意匠ア乃至クの包装用台紙に現されていたものである。
また,本件登録意匠の出願前に公然知られたものとなっていた昭63-154470号公開公報(甲第12号証 請求項3及び図1),公開特許公報 特開2001-315756号(甲第17号証 請求項11及び図1)公開特許公報 特開2008-1372号(甲第18号証 段落番号【0021】及び図4),特許第5004570号公報(甲第19号証 請求項2及び図1乃至4),公開実用新案公報 昭60-154273号(甲第20号証 実用新案登録請求の範囲及び図1),特開平8-17414号公報(甲第21号証 請求項1及び図1,図3,図4),公開実用新案公報 平2-45947号(甲第22号証 第4頁第1乃至第7行目及び図1,図2),意匠登録第523577号公報(甲第23号証),意匠登録第523577号の類似1公報(甲第24号証),意匠登録第683913号公報(甲第25号証),意匠登録第683913号の類似1公報(甲第26号証),意匠登録第1093176号公報(甲第28号証),意匠登録第1093177号公報(甲第29号証),意匠登録第1162485号公報(甲第30号証),意匠登録第1163057号公報(甲第31号証),意匠登録第1389853号公報(甲第34号証),意匠登録第1244165号公報(甲第35号証)に記載されていたものである。

イ.枠部分の正面視左縁に沿って配置された左縁目盛部分と,枠部分の正面視下縁に沿って配置された下縁目盛部分とを設けたことについて
目盛部分に枠部分の正面視左縁に沿って配置された左縁目盛部分と,枠部分の正面視下縁に沿って配置された下縁目盛部分とを設けた態様は,本件登録意匠の出願前に公然知られたものとなっていた公知意匠ウ,オの包装用台紙に表されていたものである。

ウ.左縁目盛部分の一端と下縁目盛部分の一端が,枠部分の左下の角で接して直角を成す目盛部分を設けたことについて
左縁目盛部分の一端と下縁目盛部分の一端が,枠部分の左下の角で接して直角を成す目盛部分を設けた態様は,本件登録意匠の出願前に公然知られたものとなっていた公知意匠ウ,オの包装用台紙に表されていたものである。

エ.枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印と,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印について
縦方向両矢印及び横方向両矢印が設けられた態様については,本件登録意匠の出願前に公然知られたものとなっていた公知意匠イ,ウ,クの包装用台紙に表されていたものである。

オ.縦方向両矢印と横方向両矢印の略中央にそれぞれ設けられた図形について
縦方向両矢印と横方向両矢印の略中央にそれぞれ図形が設けられた態様については,本件登録意匠の出願前に公然知られたものとなっていた公知意匠イ,クの包装用台紙に表されていたものである。

3.創作非容易性について
本件登録意匠の各構成要素は,上記公知文献に開示されているので,本件登録意匠はこれらの形態を組み合わせることで容易に創作できたものである。

4.小括
以上により,包装用台紙である公知意匠ア乃至ク及び甲第12号証乃至甲第35号証に基づいて,当該物品分野において周知の創作手法によって容易に本件登録意匠の創作をすることができる。

[1-7]結び
以上のとおり,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第1号及び意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるので,本件登録意匠は意匠法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきものである。

[2]証拠方法
甲第1号証 意匠登録第1488798号の意匠登録原簿写し
甲第2号証 意匠登録第1488798号公報
甲第3号証 サンクレスト株式会社 商品「メールブロック」に関する資料の写し
甲第4号証 株式会社ラスタバナナ 商品「3.2インチ対応 高光沢タイプ」に関する資料の写し
甲第5号証 株式会社カシムラ 商品「フリーサイズ液晶保護パッド5.0インチ」に関する資料の写し
甲第6号証 株式会社イノーヴァ 商品「Wrapsol」に関する資料の写し
甲第7号証 株式会社ビッグスター 商品「キズ修復機能付・液晶保護・バブルフリーフィルム」に関する資料の写し
甲第8号証 モバイルライフ株式会社 商品「耐脂性防止 液晶保護フィルムフリーサイズ」に関する資料の写し
甲第9号証 株式会社ラスタバナナ 商品「タッチガードナー フリーサイズ」に関する資料の写し
甲第10号証 株式会社ラスタバナナ 商品「ブルーライトカット」に関する資料の写し
甲第11号証 Gfk調査
甲第12号証 公開実用新案昭63-154470号公報
甲第13号証 特許第5032769号公報
甲第14号証 特開平7-251862号公報
甲第15号証 公開実用新案昭63-126268号公報
甲第16号証 実用新案平5-42064号公報
甲第17号証 特開2001-315756号公報
甲第18号証 特開2008-1372号公報
甲第19号証 特許第5004570号公報
甲第20号証 公開実用新案昭60-154273号公報
甲第21号証 特開平8-17414号公報
甲第22号証 公開実用新案 平2-45947号公報
甲第23号証 意匠登録第523577号公報
甲第24号証 意匠登録第523577号公報の類似1公報
甲第25号証 意匠登録第683913号公報
甲第26号証 意匠登録第683913号公報の類似1公報
甲第27号証 意匠登録第946599号公報
甲第28号証 意匠登録第1093176号公報
甲第29号証 意匠登録第1093177号公報
甲第30号証 意匠登録第1162485号公報
甲第31号証 意匠登録第1163057号公報
甲第32号証 意匠登録第1272815号公報
甲第33号証 意匠登録第1272816号公報
甲第34号証 意匠登録第1389853号公報
甲第35号証 意匠登録第1244165号公報
甲第36号証 各販売開始時期についての各者回答

第2 被請求人の答弁及び理由
特許庁より,被請求人に審判請求書を送付し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,請求人の申立及び理由に対して,被請求人からの応答はなかった。

第3 口頭審理
本件審判について,当審は,平成29年(2017年)2月24日に口頭審理を行った。

1.請求人
1-1 口頭審理陳述要領書
請求人は,平成29年2月10日付け(特許庁受け付け平成29年2月13日)の口頭審理陳述要領書のとおり主張し,証拠方法として甲第3号証ないし甲第11号証及び甲第36号証を提出した。

A.陳述の要領
[1]審理事項について
審理事項通知書において,「無効理由2(意匠法第3条第2項・創作非容易性)の申立てにおいて,本件登録意匠は甲第3号証の意匠ないし甲第10号証及び甲第12号証ないし甲第35号証の意匠に基づいて容易に創作できたものであるとの主張」について,本件登録意匠と各証拠の意匠との関係を整理するよう指示があった。
内容を精査したところ,公知意匠ア(甲第3号証),オ(甲第7号証)において開示された形態及び今回新たに提出する参考意匠ケ?ワ,あ?せに開示された形態の寄せ集めにより本件登録意匠が創作容易である旨を述べる。

[2]本件登録意匠の特徴
本件登録意匠は,紙製の包装用台紙の一部分について部分意匠として登録を受けたものである。以下,本件登録意匠について意匠登録を受けようとする部分を「枠部分」という。

[2-1]物品について
本件登録意匠に係る物品は,「包装用台紙」である。

[2-2]枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。

[2-3]枠部分の形態について
(1)基本的構成態様について
(ア)一定の領域を有する枠部分であり,
(イ)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(ウ)目盛部分の近傍に配置された図形と
から構成される。
(2)具体的構成態様について
(エ)縦長の方形の形状を有する枠部分で,
(オ)枠部分の正面視左縁に沿って配置された左縁目盛部分と,枠部分の正面視下縁に沿って配置された下縁目盛部分とから成り,
(カ)目盛部分は左縁目盛部分の一端と下縁目盛部分の一端が,枠部分の左下の角で接して直角を成し,
(キ)枠部分の上下方向を示す縦方向両矢印と,枠部分の左右方向を示す横方向両矢印と,
(ク)縦方向両矢印と横方向両矢印の略中央にそれぞれ設けられた図形とから構成される。

[2-4]枠部分の位置,大きさ,範囲について
枠部分は,物品である「包装用台紙」において,正面視で左下方の領域に位置し,物品全体の約2分の1を占める。

[3]公知意匠ア(甲第3号証)の特徴
[3-1]物品について
公知意匠アに係る物品は,「包装用台紙」である。

[3-2]枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。

[3-3]枠部分の形態について
(1)基本的構成態様について
(ア)一定の領域を有する枠部分であり,
(イ)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(ウ)目盛部分の近傍に配置された図形と
から構成される。
(2)具体的構成態様について
(エ)縦長の方形の形状を有する枠部分で,
(オ)枠部分の正面視左縁に沿って配置された左縁目盛部分と,枠部分の正面視上縁に沿って配置された上縁目盛部分とから成り,
(カ)目盛部分は,左縁目盛部分の上方側一端と上縁目盛部分の左側一端が,枠部分の左上の角で接して直角を成し,
(キ)枠部分の上下方向を示す縦方向曲線部と,枠部分の左右方向を示す横方向曲線部と,
(ク)縦方向両曲線部と横方向曲線部の略中央にそれぞれ設けられた図形とから構成される。

[3-4]枠部分の位置,大きさ,範囲について
枠部分は,物品である「包装用台紙」全体の中で,物品全体の略中央に位置し,枠部分の大きさ,範囲は物品全体の約2分の1である。

[4]公知意匠オ(甲第7号証)の特徴
[4-1]物品について
公知意匠オに係る物品は,「包装用台紙」である。

[4-2]枠部分の用途,機能について
需要者が保護フィルムの購入時に,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握できるようにしたものである。

[4-3]枠部分の形態について
(1)基本的構成態様について
(ア)一定の領域を有する枠部分であり,
(イ)枠部分に沿って配置された目盛部分と,
(ウ)目盛部分の近傍に配置された図形と
から構成される。
(2)具体的構成態様について
(エ)縦長の方形の形状を有する枠部分で,
(オ)枠部分の正面視左側に沿って配置された左縁目盛部分と,枠部分の正面視下縁に沿って配置された下縁目盛部分とから成り,
(カ)目盛部分は,左縁目盛部分の下方側一端と下縁目盛部分の左側一端とは,枠部分の正面視左下の領域で接して直角を成し,
(キ)左縁目盛部分と下縁目盛部分の近傍にそれぞれ配置された丸形の図形とから構成される。

[4-4]枠部分の位置,大きさ,範囲について
枠部分は,物品である「包装用台紙」全体の中で,物品全体の略中央に位置し,物品全体の中に占める枠部分の大きさ,範囲は約4分の3である。

[5]本件登録意匠の創作容易
(1)本件登録意匠は,公知意匠ア,オで開示された形態及び今回新たに提出する参考意匠ケ?ワ,あ?せに開示された形態を,以下のように寄せ集めることで容易に創作することができる。
(ア)本件登録意匠の物品分野において,縦長の方形の形状を有する枠部分の形態,及び目盛部分の略中央に配置され,内部に長さが表示された円形の図形の形態は,公知意匠アに開示されているように,本件登録意匠の出願時において既に公知となっている形態といえるものである。
(イ)また,本件登録意匠の物品分野において,枠部分に沿って配置された目盛部分の形態,目盛部分の近傍に配置され,内部に長さが表示された円形の図名の形態,枠部分の正面視左縁に沿って配置された左縁目盛部分の形態,枠部分の正面視下縁に沿って配置された下縁目盛部分の形態,左縁目盛部分の一端と下縁目盛部分の一端が,枠部分の左下の角で接して直角を成す形態は,公知意匠オにみられるように,本件登録意匠の出願時において既に公知となっている形態といえる。
(ウ)一方,左縁目盛部分,および下縁目盛部分の長さを示す直線状の両矢印の形態については,公知意匠ア及び公知意匠オには開示されていない。しかしながら,両矢印の形態は,例えば公知意匠イ,ウ,及び今回新たに提出する参考意匠ケ?ワ,あ?せに開示されたように,本件登録意匠の物品分野は勿論のこと,他の物品分野においても慣用され,用い尽くされた形態である。さらに,目盛に沿って設けられた両矢印を配置する形態については,参考意匠ケ?ホに開示されていることから,格別の創作力を要したものと認められない。
(2)このように,本件登録意匠については,「公知意匠ア,オで開示された公知の形態」,慣用され,用い尽くされた「両矢印の形態」を寄せ集めることで容易に創作することができたものといえる。

[6]まとめ
このように,本件登録意匠は,公知意匠ア(甲第3号証),オ(甲第7号証)において開示された形態及び慣用され,用い尽くされた形態に基づいて容易に創作できた意匠であるので,意匠法第3条第2項に該当し,同法第48条第1項第1号の無効理由を有する。

B.証拠方法
甲第11?60号証(参考意匠ケ?ワ,あ?せ)
包装用台紙の物品分野において,両矢印の形態が開示された参考意匠
甲項第61号証
甲第11?60号証(参考意匠ケ?ワ,あ?せ)が公知となった日

2.被請求人
2-2 口頭審理陳述要領書
特許庁より,被請求人に,期間を指定して口頭審理陳述要領書の提出を求めたが,被請求人からの応答はなかった。

3.口頭審理調書
(1)請求人
1)請求人は,被請求人の本日提出した代理人受任届の事件番号の訂正について認めた。
2)請求の趣旨及び理由は,審判請求書及び平成29年2月10日付け口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述。
3)請求人の提出した甲第8号証,甲第9号証及び甲第12号証ないし甲第35号証については,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48号第1項第1号により無効とすべきとする無効事由の証拠としては取り下げる。
4)請求人の提出した平成29年2月10日付け口頭審理陳述要領書に添付された甲第11号証から甲第46号証を「参考意匠ケ」から「参考意匠ワ」,甲第47号証から甲第60号証を「参考意匠あ」から「参考意匠せ」とし,甲第61号証を「参考資料1」にそれぞれ訂正する。
(2)被請求人
1)被請求人は代理人受任届の事件番号を訂正した。
2)請求人の提出した甲第8号証,甲第9号証及び甲第12号証ないし甲第35号証については,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により無効とすべきとする無効事由の証拠の取下げを認める。
3)請求人の提出した平成29年2月10日付け口頭審理陳述要領書に添付された甲第11号証から甲第46号証を「参考意匠ケ」から「参考意匠ワ」,甲第47号証から甲第60号証を「参考意匠あ」から「参考意匠せ」とし,甲第61号証を「参考資料1」にそれぞれ訂正することを認める。
4)参考資料1の「参考意匠ヨ」の取扱い開始日を「2012年頃」,「参考意匠え」の取扱い開始日を「2009/3/13」から「2006/12/1」にそれぞれ訂正することを認める。
5)請求人の提出した甲第1号証ないし甲第11号証及び甲第36号証の成立を認める。
(3)審判長
1)合議体は被請求人が提出した委任状について,住所記載の相違と捨て印がない点を含め,委任状を認めた。
2)請求人の提出した平成29年2月10日付け口頭審理陳述要領書に添付された「参考意匠ケ」から「参考意匠ワ」,「参考意匠あ」から「参考意匠せ」及び「参考資料1」は,口頭審理陳述要領書の説明のための参考として扱う。
3)甲第1号証ないし甲第11号証及び甲第36号証について取り調べた。
4)本件の審理を,以後書面審理とする。

第4 当審の判断
当審は,意匠登録第1488798号の意匠(以下,「本件登録意匠」という。)が,本件登録意匠の意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠である甲第3号証(無効理由1),甲第4号証(無効理由2),甲第5号証(無効理由3),甲第6号証(無効理由4),甲第7号証(無効理由5),甲第8号証(無効理由6),甲第9号証(無効理由7),甲第10号証(無効理由8)のそれぞれに記載された意匠と類似しない意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものとはいえないと判断する。
当審は,本件登録意匠が,本件登録意匠の意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠である甲第3号証ないし甲第7号証の意匠及び甲第10号証の意匠に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものとはいえないので,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当するにもかかわらず,意匠登録を受けたものとはいえないと判断する。(無効理由9)
その理由は,以下のとおりである。

1.本件登録意匠
本件登録意匠は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成25年(2013年)7月19日に意匠登録出願され,平成25年(2013年)12月20日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,その意匠は,意匠に係る物品を「包装用台紙」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものであって,「実線であらわした部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。端面図を含めて意匠登録を受けようとする部分を特定している。」としたものである(以下,本件登録意匠において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本件登録意匠部分」という。)。(別紙第1参照)

(1)本件登録意匠の意匠に係る物品
本件登録意匠は,販売時に使用される「包装用台紙」である。

(2)本件登録意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本件登録意匠部分は,販売時の使用時における包装用台紙としての用途及び長さを計測し,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能を有するものと認められ,略縦長長方形の包装用台紙の表面の縦の約半分より下側の左辺及び底辺寄りの略縦長長方形の枠のその左辺と底辺に目盛を配した部分である。

(3)本件登録意匠部分の形態
1)基本的構成態様
本件登録意匠部分は,全体を,色彩を施さない明暗調子のみで表し,縦横の比を約100:57とする縦長長方形の枠線で囲み,その枠の左辺及び底辺の外側に目盛を設けたものであり,略縦長長方形の枠の左辺内側に中央付近に円形図形を配した縦に長い双方向矢印の線図形を設け,枠の底辺内側に中央付近に円形図形を配した横に長い双方向矢印の線図形を設けた態様のものである。

2)具体的構成態様
(A)本件登録意匠部分の略縦長長方形の枠の左辺側の目盛は,縦の長さを測ることができるように等間隔に100の目盛があって,10目盛おきに目盛線をやや太くして枠の内側に突出させ,上から5目盛,15目盛,25目盛,35目盛,45目盛,55目盛,65目盛,75目盛,85目盛,95目盛を10目盛おきの目盛より短く枠の内側に突出させたものとしている。
(B)また,略縦長長方形の枠の底辺側の目盛は,横の長さを測ることができるように等間隔に57の目盛があって,10目盛おきに目盛線をやや太くして枠の内側に突出させ,左から5目盛,15目盛,25目盛,35目盛,45目盛,55目盛を10目盛おきの目盛より短く枠の内側に突出させたものとし,包装用台紙の左下隅において,左辺側下端の目盛線と底辺側左端の目盛線を枠の外で直角を成すようにしたものとしている。
(C)そして,目盛の長さを表すための図形を中央にもつ双方向矢印の線図形を左辺と底辺の目盛に隣接させて,その長さいっぱいに設け,いずれの双方向矢印の線図形もシャフトを枠よりも太い線とし,シャフトの中央に円形図形を配し,始点と終点のアローヘッドを三角形状としたものであり,左下で交差させている。

2.無効理由1について(意匠法第3条第1項第3号)
請求人は,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証の1及び甲第3号証の2に記載された意匠と類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当し,意匠登録を受けることができないものであるので,その意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきであると主張するので,以下,検討する。

(1)甲第3号証の1及び甲第3号証の2(以下,「公知意匠ア」という。)の意匠(別紙第2参照)
公知意匠ア(「本件登録意匠」とあわせて「両意匠」という。)は,甲第3号証の1及び甲第3号証の2に現された意匠であり,甲第3号証の1及び甲第3号証の2は,甲第36号証の販売会社の回答から,平成24年(2012年)3月に株式会社サンクレストが販売開始し,甲第11号証のマーケティングリサーチ企業Gfkの調査報告によると,平成24年(2012年)3月発売とし,少なくとも,甲第3号証の3の価格比較サービスを提供するインターネットサイトの「価格.com(http://kakaku.com/item/K0000376477/)」の登録日の記載から,平成24年(2012年)5月17日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったもので,本件登録意匠の出願日である平成25年(2013年)7月19日前に公然知られたものとなったと認められる。

1)公知意匠アの意匠に係る物品
公知意匠アの意匠に係る物品は,スマートフォンなどに用いる液晶保護フィルムを販売するための「包装用台紙」である。

2)本件登録意匠部分と対比する対象の公知意匠アの部分(以下,「公知意匠ア部分」といい,「本件登録意匠部分」とあわせて「両意匠部分」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
公知意匠ア部分は,販売時の使用時における包装用台紙としての用途及び長さを計測し,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能を有するものと認められ,略縦長長方形の包装用台紙の表面の上から縦約18/50から約45/50の左辺と接した位置にある白い略縦長長方形に,その左辺と上辺に目盛を配した部分である。

3)公知意匠ア部分の形態
(A)基本的構成態様
公知意匠ア部分は,全体を,縦横の比を約100:57とする白い略縦長長方形とし,その略縦長長方形の左辺の内側及び上辺の外側に目盛を設けたものであり,略縦長長方形の左辺の目盛の右側及び略縦長長方形の上辺の内側に,中央に円形図形をもつ略弧状の青い線図形を設けたものである。

(B)具体的構成態様
(a)公知意匠ア部分の略縦長長方形の左辺の内側の目盛は,縦の長さを測ることができるように黒い目盛線で構成され,等間隔に100の目盛があって,10目盛おきに線をやや太くし,5目盛おきの目盛を他の目盛よりも長くして略縦長長方形の内側に突出させたものとしている。
(b)また,略縦長長方形の上辺の外側の目盛は,横の長さを測ることができるように白い目盛線で構成され,等間隔に57の目盛があって,10目盛おきに線をやや太くし,5目盛おきの目盛を他の目盛よりも長くして略縦長長方形の外側に突出させたものとしている。
(c)略縦長長方形の左辺内側と上辺内側には,目盛の長さを表すための円形図形を中央に配した略弧状の線図形をそれぞれの目盛に隣接させて,その長さいっぱいに設け,左上で交差させたものとしている。

(d)さらに,白い略縦長長方形の中には,縦中央上の右寄りに黄色い円形に矢印を配した図形と底辺の上に2つの青い矢印とスマートフォンの図をもつ隅丸略横長長方形の図形を配している。

(2)本件登録意匠と公知意匠アとの対比
1)意匠に係る物品
両意匠は,いずれも「包装用台紙」であり,意匠に係る物品が,一致する。

2)両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分の包装用台紙としての用途及び縦横の長さを計測し,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能や大きさ及び範囲は共通し,その位置も本願意匠部分は包装用台紙の表面の縦の約半分より下側の左辺及び底辺寄りであって,公知意匠ア部分は上から縦約18/50から約45/50の左辺と接した位置であるから,包装用台紙の略左辺及び底辺寄りであって共通する。
3)両意匠部分の形態
(A)共通点
両意匠部分は,縦横の比を約100:57とする略縦長長方形とし,その略縦長長方形の2辺に目盛とその長さいっぱいに中央に円形図形をもつ線図形を設けている点が共通する。

(B)相違点
両意匠部分は,具体的構成態様として,
(a)本件登録意匠部分の略縦長長方形は枠線があるのに対し,公知意匠ア部分の略縦長長方形には,枠線がない点,
(b)本件登録意匠部分の目盛は略縦長長方形の枠の左辺及び底辺の外側に設けられているのに対し,公知意匠ア部分の略縦長長方形の左辺の目盛は,略縦長長方形の内側に設けられ,上辺の目盛は外側に設けられている点。
(c)本件登録意匠部分の目盛の構成は,長さの異なる3種類の線で構成されているのに対し,公知意匠ア部分の目盛は,長さの異なる2種類の線で構成され,略縦長長方形の枠の左辺と上辺の目盛線の色が異なる点,
(d)本件登録意匠部分の目盛は,包装用台紙の左下隅において,左辺側の目盛と底辺側の目盛が,枠の外で接しているのに対し,公知意匠ア部分の目盛は,左上隅において,上辺側の目盛と左辺側の目盛が枠の内と外で接している点,
(e)本件登録意匠部分の目盛の長さを表す暗調子の線図形は,2本の長い双方向矢印であって,略縦長長方形の枠の左辺側と底辺側に配し,左下において交差させているのに対し,公知意匠ア部分の目盛の長さを表す青い線図形は,2本の長い略弧状であって,略縦長長方形の左辺側と上辺側に配し,左上で交差させている点,
(f)本件登録意匠部分の略縦長長方形の中の図形は,2本の線図形のみがあるのに対し,公知意匠ア部分の略縦長長方形の中の図形は,2本の線図形に加えて,黄色い円形に矢印を配した図形と2つの青い矢印とスマートフォンの図をもつ隅丸略横長長方形の図形がある点,
において相違する。

(3)本件登録意匠と公知意匠アの類否判断について
1)両意匠の意匠に係る物品及び両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両意匠の意匠に係る物品が一致し,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通するが,この種の物品分野において,包装用台紙に目盛を設けて,測る機能を持たせ,線図形などを用いて縦横の長さを表示し,大きさを視覚的に容易に把握させるため販売対象のシート等に合わせた大きさと範囲にすること,また,包装用台紙の略左辺及び底辺寄りの位置とすることも普通に見られるものであって,両意匠部分の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。

2)両意匠部分の形態の評価
(A)共通点の評価
両意匠部分は,略縦長長方形の縦横の比やそれぞれ2つずつ目盛とその長さいっぱいに線図形を設けている点が共通するが,略縦長長方形の縦横の比や2辺に目盛や線図形を設けた形態は,この種の物品分野において普通に見られるものであって,概念的な共通点にすぎず,両意匠部分の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。

(B)相違点の評価

両意匠部分の略縦長長方形に枠線があるか否かの相違点(a)については,この種の包装用台紙の分野において,いずれも本件登録意匠の出願前からありふれたものであるが,枠線であるか白と黒の色分けで境界としているかは見た目の印象が異なることから,意匠部分の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものである。
相違点(b)の両意匠部分の目盛の配置の相違は,需要者は,長さを測る際にも,対象物をどこに当てるかに着目することから,これらの相違点は見る者に与える印象を異ならせるものであって,両意匠部分の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
次に,目盛の態様の相違点(c)については,いずれの目盛の態様も,この種の包装用台紙の分野において,本願出願前からありふれたものではあるが,本件登録意匠部分の目盛が枠の外側にあることも相俟って,見る者に異なる印象を与え,両意匠部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
目盛の接点の態様の相違点(d)については,包装用台紙を利用して長さを測る際に,目盛の接点が上であるか下であるかによって,需要者の視点が変わり,見た目も異なることから,需要者に与える印象が異なり,両意匠部分の類否判断に与える影響は大きい。
目盛の長さを表す線図形の態様の相違点(e)は,略縦長長方形の枠の左辺側と底辺側に配した直線的な双方向矢印としたものか左辺側と上辺側に配した略弧状の線としたものかの相違であって,直線的な双方向矢印か略弧状の線としたものかの形態の相違のみならず,上辺側か底辺側かの配置の違い及び色の違いも相俟って,見た目が大きく異なり,需要者にとって意匠を別異なものとの印象を与えるものであって,両意匠部分の類否判断に与える影響は大きい。
また,略縦長長方形の中に線図形以外の図形があるか否かの相違点(f)については,この種の包装用台紙の分野において,公知意匠ア部分に設けられた図形はありふれたものであり,図形を設けるか否かも極めて普通に行われているところであるが,図形があるものとないものでは,見る者に異なる印象を与え,両意匠部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。

(4)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品及び両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通するが,両意匠部分の形態において,相違点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。
したがって,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第3号証に記載された意匠と類似しないものであるから,意匠法第3条1項第3号に規定された意匠には該当せず,その意匠登録は,無効理由1によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

3.無効理由2について(意匠法第3条第1項第3号)
請求人は,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証の1及び甲第4号証の2に記載された意匠と類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当し,意匠登録を受けることができないものであるので,その意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきであると主張するので,以下,検討する。

(1)甲第4号証の1及び甲第4号証の2(以下,「公知意匠イ」という。)の意匠(別紙第3参照)
公知意匠イ(「本件登録意匠」とあわせて「両意匠2」という。)は,甲第4号証の1及び甲第4号証の2に現された意匠であり,甲第4号証の1及び甲第4号証の2は,甲第36号証の販売会社の回答から,平成23年(2011年)8月に株式会社ラスタバナナが販売開始し,甲第4号証の4の株式会社ヨドバシカメラの公式通販サイト「www.yodobashi.com」における販売開始日の記載から,平成23年(2011年)7月27日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであり,少なくとも,甲第4号証の3の価格比較サービスを提供するインターネットサイトの「価格.com(当審注:甲第4号証の3から,「価格.com(http://kakaku.com/item/K0000301291/)」と認められる。)」の登録日の記載から,平成23年(2011年)10月24日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったもので,本件登録意匠の出願日である平成25年(2013年)7月19日前に公然知られたものとなったと認められる。

1)公知意匠イの意匠に係る物品
公知意匠イの意匠に係る物品は,携帯電話機などに用いるディスプレイ保護シールを販売するための「包装用台紙」である。

2)本件登録意匠部分と対比する対象の公知意匠イの部分(以下,「公知意匠イ部分」といい,「本件登録意匠部分」とあわせて「両意匠部分2」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
公知意匠イ部分は,販売時に使用される包装用台紙としての用途及び長さを計測し,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能を有するものと認められ,略縦長長方形の包装用台紙の表面の左側にある目盛を辺とし,その対辺と目盛の上端と下端とを結んで構成される略縦長長方形の部分である。

3)公知意匠イ部分の形態
(A)基本的構成態様
公知意匠イ部分は,全体を,縦横の比を約9:5とする略縦長長方形に左辺に目盛を設け,その略縦長長方形に描かれた携帯電話機の図形のディスプレイを枠で囲み,その枠の右辺外側と上辺外側に,中央に隅丸略長方形の図形をもつ横に長い双方向矢印の線図形を設けたものである。

(B)具体的構成態様
(a)公知意匠イ部分の略縦長長方形の左辺の目盛は,ほとんどを黒い目盛線で構成したものであって,40目盛と73目盛の線を赤くし,等間隔に100の目盛があって,10目盛おきに黒い枠の内側に突出させて数字を配し,上から15目盛,25目盛,35目盛,45目盛,55目盛,65目盛,75目盛,85目盛,95目盛を10目盛おきの目盛より短く左辺の内側に突出させたものとしている。
(b)また,略縦長長方形の右辺側と上辺側であって,携帯電話機の図形のディスプレイの枠に沿った位置に双方向矢印の線図形をそれぞれ配し,それらの双方向矢印の線図形は,赤い線図形であって,いずれもシャフトを携帯電話機の図形のディスプレイの枠とほぼ同じ長さと太さの線とし,シャフトの中央に隅丸略長方形の図形を配し,始点と終点のアローヘッドを三角形状としたものである。
(c)さらに,携帯電話機の図形のディスプレイの枠の中には,縦中央に黄色い隅丸略横長長方形を配し,その下に白い枠の隅丸略横長長方形を配している。

(2)本件登録意匠と公知意匠イとの対比
1)意匠に係る物品
両意匠2は,いずれも「包装用台紙」であり,意匠に係る物品が,一致する。

2)両意匠部分2の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分2の販売時に使用される包装用台紙としての用途及び長さを計測し,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能や大きさ及び範囲は共通する。
しかし,本件登録意匠部分は包装用台紙の縦の約半分より下の左辺及び底辺寄りにあるが,公知意匠イ部分の略縦長長方形は包装用台紙の略中央に配置されているからその位置は相違する。

3)両意匠部分2の形態
(A)共通点
両意匠部分2は,略縦長長方形とし,その略縦長長方形の左辺に目盛を配し,中央に図形をもつ双方向矢印の線図形を2本設けている点が共通する。

(B)相違点
両意匠部分2は,基本的構成態様として,公知意匠イ部分は,略縦長長方形の底辺側に目盛がない点において相違する。
また,具体的構成態様として,
(a)本件登録意匠部分の略縦長長方形の枠の左辺側の目盛は,10目盛おきに太さが異なる線としているのに対し,公知意匠イ部分の略縦長長方形の左辺側の目盛は,全て同じ太さの線で構成されている点,
(b)本件登録意匠部分の目盛は,包装用台紙の左下隅において,左辺側の目盛と底辺側の目盛が枠の外で接するL字状としているのに対し,公知意匠イ部分の目盛は,略縦長長方形の左辺側にしかない点,
(c)本件登録意匠部分の2本の線図形は,略縦長長方形の枠の左辺側と底辺側に配したシャフトの中央に円形図形をもつ双方向矢印の暗調子の線図形であり左下で交差させているのに対し,公知意匠イ部分の線図形は,略縦長長方形の右辺側と上辺側に位置する,携帯電話機の図形のディスプレイの枠に沿った長さの直線的な双方向矢印としたシャフトの中央に隅丸略長方形の図形をもつ赤い双方向矢印の線図形であって,それぞれの線図形は,略縦長長方形の左辺と上辺長さより短く,交差させていないこと,
において相違する。
(d)本件登録意匠部分の略縦長長方形の枠の中には,2本の線図形のみがあるのに対し,公知意匠イ部分の略縦長長方形の中には,2本の線図形に加えて,携帯電話機の図形とそのディスプレイの枠の中に黄色い隅丸略横長長方形の図形とその下に白い枠の隅丸略横長長方形の図形がある点,
において相違する。

(3)本件登録意匠と公知意匠イの類否判断について
1)両意匠2の意匠に係る物品及び両意匠部分2の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両意匠2の意匠に係る物品が一致し,両意匠部分2の用途,大きさ及び範囲は共通するが,この種の物品分野において,包装用台紙に目盛を設けて,測る機能を持たせ,線図形などを用いて縦横の長さを表示し,大きさを視覚的に容易に把握させるため,販売対象のシート等に合わせた大きさと範囲にすることは,普通に見られるものであって,両意匠部分2の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。
一方,位置の違いは,いずれの位置も共に包装用台紙の分野においてごく普通にみられるものであり,包装用台紙を利用して物の長さを測る際にも,需要者は枠と目盛に着目するとはいえ,この相違点が類否判断に与える影響は大きいとはいえないものである。

2)両意匠部分2の形態の評価
(A)共通点の評価
両意匠部分2は,略縦長長方形とし,その縦長長方形の左辺に目盛を設け,中央に図形をもつ双方向矢印の線図形を2本設けている点が共通するが,略縦長長方形に1つの目盛と線図形を2本設けた形態は,この種の物品分野において普通に見られるものであって,概念的な共通点にすぎず,両意匠部分2の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。

(B)相違点の評価
略縦長長方形の底辺側の目盛の有無は,基本的構成態様の相違点であり,対象物の長さを測る際に,需要者に異なる印象を与えるものであるから,軽視することができず,両意匠部分2の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
次に,目盛の太さの相違点(a)については,いずれの目盛の態様も,この種の包装用台紙の分野において,本願出願前からありふれたものではあるが,長さを測る際に,一定間隔で太い線があることによって,長さを認識しやすくしていることから,見る者に異なる印象を与え,両意匠部分2の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
また,目盛の態様の相違点(b)については,縦横の長さを測れるものと縦の長さしか測れないものとでは,需要者に与える印象が異なり,両意匠部分2の類否判断に与える影響は大きい。
両意匠部分2の双方向矢印の線図形の態様の相違点(c)は,この種の物品分野において,双方向矢印の線図形の形態は,いずれも普通に見られるものであるがシャフトの中央の図形が円形であるか略隅丸長方形であるかの具体的な図形の形状の違いは,長さの違いや配置の違い及び色の違いも相俟って,需要者に異なる印象を与えるものであるから,両意匠部分2の類否判断に与える影響は大きいものである。
さらに,略縦長長方形の中に線図形以外の図形があるか否かの相違点(d)については,この種の包装用台紙の分野において,公知意匠イ部分に設けられた図形はありふれたものであり,図形を設けるか否かも極めて普通に行われているところであるが,図形があるものとないものでは,見る者に異なる印象を与え,両意匠部分2の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。

(4)小括
以上のとおり,両意匠2は,意匠に係る物品及び両意匠部分2の用途及び機能,並びに大きさ及び範囲は共通し,両意匠部分2の位置の相違は大きくないものの,その形態において,相違点が共通点を凌駕し,それが両意匠2の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠2は類似しないものと認められる。
したがって,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第4号証に記載された意匠と類似しないものであるから,意匠法第3条1項第3号に規定された意匠には該当せず,その意匠登録は,無効理由1によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

4.無効理由3について(意匠法第3条第1項第3号)
請求人は,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5号証の1及び甲第5号証の2に記載された意匠と類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当し,意匠登録を受けることができないものであるので,その意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきであると主張するので,以下,検討する。

(1)甲第5号証の1及び甲第5号証の2(以下,「公知意匠ウ」という。)の意匠(別紙第4参照)
公知意匠ウ(「本件登録意匠」とあわせて「両意匠3」という。)は,甲第5号証の1及び甲第5号証の2に現された意匠であり,甲第5号証の1及び甲第5号証の2は,甲第36号証の販売会社の回答から,平成19年(2007年)3月20日に株式会社カシムラが販売開始し,甲第11号証のマーケティングリサーチ企業Gfkの調査報告によると,平成24年(2012年)4月発売とし,甲第5号証の4のAmazon.com,Inc.の通信販売サイト「amazon.co.jp」における取り扱い開始日の記載から,平成20年(2008年)1月31日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであり,少なくとも,甲第5号証の3の株式会社ヨドバシカメラの公式通販サイト「www.yodobashi.com」における販売開始日の記載から,平成23年(2011年)7月18日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったもので,本件登録意匠の出願日である平成25年(2013年)7月19日前に公然知られたものとなったと認められる。

1)公知意匠ウの意匠に係る物品
公知意匠ウの意匠に係る物品は,携帯電話機などに用いる液晶保護パッドを販売するための「包装用台紙」である。

2)本件登録意匠部分と対比する対象の公知意匠ウの部分(以下,「公知意匠ウ部分」といい,「本件登録意匠部分」とあわせて「両意匠部分3」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
公知意匠ウ部分は,販売時に使用される包装用台紙としての用途及び縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能を有するものと認められ,略縦長長方形の包装用台紙の表面の上から縦約15/50から約36/50の位置に,横は約2/3の幅で包装用台紙の中央に位置する略縦長長方形を,線路記号のような太く黒い線を白い長方形で白抜きした線で囲んだ部分である。

3)公知意匠ウ部分の形態
(A)基本的構成態様
公知意匠ウ部分は,全体を,縦横の比を約5:3とする線路記号のような太く黒い線を白い長方形で白抜きした線で囲われた略縦長長方形の枠とし,その内部を青い線で方眼状としたものであり,略縦長長方形の左辺側は4つの隅丸略正方形の図形が重ねられて一部が隠れているものである。また,略縦長長方形の枠の右辺内側と上辺内側に長いシャフトをもつ双方向矢印の線図形を設けたものである。

(B)具体的構成態様
(a)公知意匠ウ部分の縦長長方形の枠の内部を,等間隔に縦35本,横に21本の青い線を設けて方眼状の模様とし,縦線を左から5本毎,横線を上から5本毎に太い線としたものである。
(b)また,略縦長長方形の枠の右辺内側と上辺内側に枠の長さいっぱいに線図形を設け,いずれもシャフトを細い線とし,始点と終点のアローヘッドを三角形状とした赤い双方向矢印の線図形である。
(c)さらに,略縦長長方形の内側には,底辺に接して青い円形図形が配され,左辺の線は4つの隅丸略正方形の図形によって隠れている。

(2)本件登録意匠と公知意匠ウとの対比
1)意匠に係る物品
両意匠3は,いずれも「包装用台紙」であり,意匠に係る物品が,一致する。

2)両意匠部分3の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分3の大きさ及び範囲や包装用台紙としての用途及び縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能は共通する。
しかし,(ア)本件登録意匠部分は包装用台紙の縦の約半分より下の左辺及び底辺寄りにあるが,公知意匠ウ部分の略縦長長方形は包装用台紙の縦横略中央に配置されていること,(イ)本件登録意匠部分には縦と横に目盛があって長さを測ることができるが,公知意匠ウ部分に目盛はなく方眼とシートサイズの尺度が一致していないことから長さを測ることはできないこと,が相違し,両意匠部分3の機能と位置は相違する。

3)両意匠部分3の形態
(A)共通点
両意匠部分3は,略縦長長方形の枠とし,枠の長さいっぱいに双方向矢印の線図形を2本設けている点が共通する。

(B)相違点
基本的構成態様として,本件登録意匠部分には,略縦長長方形の枠の左辺側と底辺側に目盛があるが,公知意匠ウ部分には,目盛がない点において相違し,また,本件登録意匠部分の略縦長長方形の枠は,実線であるのに対し,公知意匠ウ部分の略縦長長方形の枠は,線路記号のような太く黒い線を白い長方形で白抜きした線であり,一部が隅丸略正方形の図形によって隠れていることが相違する。
また,具体的構成態様として,
(a)本件登録意匠部分の略縦長長方形の枠内に,模様はないが,公知意匠ウ部分の略縦長長方形は内部を,青い方眼状の模様を付していること,
(b)本件登録意匠部分の略縦長長方形の枠の左辺側と底辺側にある暗調子の双方向矢印の線図形は,やや太い線のシャフトであってシャフトの中央に円形図形があるのに対して,公知意匠ウ部分の赤い双方向矢印の線図形は,右辺側と上辺側にある細い線のシャフトであり,シャフト中央には何ら図形はないものであること,
(c)本件登録意匠部分の略縦長長方形の中の図形は,2本の線図形のみがあるのに対し,公知意匠ウ部分の略縦長長方形の中には,2本の線図形に加えて,底辺上に青い円形図形と左辺枠線上に4つの隅丸略正方形の図形がある点,
において相違する。

(3)本件登録意匠と公知意匠ウの類否判断について
1)両意匠3の意匠に係る物品及び両意匠部分3の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両意匠3の意匠に係る物品が一致し,両意匠部分3の包装用台紙としての用途及び縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能,大きさ及び範囲は共通するが,この種の物品分野において,包装用台紙に方眼を施し,線図形などを用いて縦横の長さを表示し,大きさを視覚的に容易に把握させるため,包装用台紙を販売対象のシート等に合わせた大きさと範囲にすることは,普通に見られるものであって,両意匠部分3の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。
一方,位置の違いは,いずれの位置も共に包装用台紙の分野においてごく普通にみられるものであり,この相違点が類否判断に与える影響は大きいとはいえないものであるが,目盛の機能の相違点(イ)は,包装用台紙を利用して物の長さを測る際にも,長さを測る対象物をどの位置に当てるのかの違いとなって表れ,目盛の機能の有無と尺度の相違は,相俟って見る者に与える印象を異ならせるものであって,類否判断に大きな影響を与えるものといえる。

2)両意匠部分3の形態の評価
(A)共通点の評価
両意匠部分3は,略縦長長方形の枠とし,双方向矢印の線図形を2本設けている点が共通するが,略縦長長方形の枠の長さいっぱいに線図形を2本設けた形態は,この種の物品分野において普通に見られるものであって,概念的な共通点にすぎず,両意匠部分3の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。

(B)相違点の評価
両意匠部分3の略縦長長方形の枠の左辺側と底辺側に目盛があるか否かや,略縦長長方形の枠線の基本的構成態様の相違は,明らかに見た目が異なり,両意匠3を別異の意匠とする印象を需要者にもたらす十分な相違であって,両意匠部分3の類否判断を決定づけるものである。
また,略縦長長方形の枠内の模様の有無の相違点(a)についても,明らかに見た目が異なることから,需要者に異なる印象を与え,両意匠部分3の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
そして,双方向矢印の線図形の配置と態様の相違点(b)は,公知意匠ウ部分の双方向矢印が,略縦長長方形の右辺側,上辺側にそれぞれあることによって,略縦長長方形の左辺側及び底辺側に双方向矢印の線図形がある本願意匠部分とは,大きく異なり,さらに,シャフトの中央に図形があるものとないものとでは,明らかに見た目が異なることから,需要者に異なる印象を与え,両意匠部分3の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
さらに,略縦長長方形の中に線図形以外の図形があるか否かの相違点(c)については,この種の包装用台紙の分野において,公知意匠ウ部分に設けられた図形はありふれたものであり,図形を設けるか否かも極めて普通に行われているところであるが,図形があるものとないものでは,見る者に異なる印象を与え,両意匠部分3の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。

(4)小括
以上のとおり,両意匠3は,意匠に係る物品及び両意匠部分3の用途,大きさ及び範囲は共通し,両意匠部分3の位置の相違は類否判断に及ぼす影響は大きくないものの,その機能及び形態において,相違点が共通点を凌駕し,それが両意匠3の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠3は類似しないものと認められる。
したがって,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第5号証に記載された意匠と類似しないものであるから,意匠法第3条1項第3号に規定された意匠には該当せず,その意匠登録は,無効理由1によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

5.無効理由4について(意匠法第3条第1項第3号)
請求人は,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第6号証の1及び甲第6号証の2に記載された意匠と類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当し,意匠登録を受けることができないものであるので,その意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきであると主張するので,以下,検討する。

(1)甲第6号証の1及び甲第6号証の2(以下,「公知意匠エ」という。)の意匠(別紙第5参照)
公知意匠エ(「本件登録意匠」とあわせて「両意匠4」という。)は,甲第6号証の1及び甲第6号証の2に現された意匠であり,甲第6号証の1及び甲第6号証の2は,甲第36号証の販売会社の回答から,平成25年(2013年)3月8日に株式会社イノーヴァグローバル(当審注:請求書においては,「株式会社カシムラ」としていたが,証拠方法の説明及び甲第36号証から,「株式会社イノーヴァグローバル」であると認める。)が販売開始し,甲第11号証のマーケティングリサーチ企業Gfkの調査報告によると発売を,平成25年(2013年)4月とし,少なくとも,甲第6号証の3の株式会社ヨドバシカメラ(東京都新宿区北新宿3-20-1)の公式通販サイト「www.yodobashi.com」における販売開始日の記載から,平成25年(2013年)4月12日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったもので,本件登録意匠の出願日である平成25年(2013年)7月19日前に公然知られたものとなったと認められる。

1)公知意匠エの意匠に係る物品
公知意匠エの意匠に係る物品は,スマートフォンなどに用いる防御フィルムを販売するための「包装用箱」である。

2)本件登録意匠部分と対比する対象の公知意匠エの部分(以下,「公知意匠エ部分」といい,「本件登録意匠部分」とあわせて「両意匠部分4」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
公知意匠エ部分は,販売時に使用される箱であり,長さを計測し,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能を有するものと認められ,略縦直方体状の厚みの薄い箱の正面の部分であることから,包装用台紙の表面と直接対比が可能なものではないが,仮に箱の正面の目盛を施された部分の対比を行った場合,公知意匠エ部分は,箱の正面の上から縦約15/17から最底辺に全幅に位置する白い略縦長長方形の部分である。

3)公知意匠エ部分の形態
(A)基本的構成態様
公知意匠エ部分は,全体を,縦横の比を約5:3とする箱の正面の白い略縦長長方形の部分とし,略縦長長方形の部分の右辺と底辺に目盛を設け,白い略縦長長方形の部分の中央やや下に右に傾けたスマートフォンの図形を配し,そのスマートフォンの図形の液晶部分の右側と底辺側に双方向矢印の線図形を設けたものである。

(B)具体的構成態様
(a)公知意匠エ部分は,上下をやや暗調子とした白い縦長長方形である。
(b)公知意匠エ部分の略縦長長方形の右辺内側の目盛は,ほとんどを黒い目盛線で構成したものであって,115目盛を他の目盛線より太く赤くし,等間隔に156の目盛があって,下から10目盛おきに線を内側に突出させて数字を付し,5目盛,15目盛,25目盛,35目盛,45目盛,55目盛,65目盛,75目盛,85目盛,95目盛,105目盛,115目盛,125目盛,135目盛,145目盛,155目盛を10目盛おきの目盛より短く内側に突出させたものとしている。また,下から115目盛を他の目盛の線より太くし,115mmの文字を付けている。
(c)また,略縦長長方形の底辺内側の目盛は,ほとんどを黒い目盛線で構成したものであって,64目盛を他の目盛線より太く赤くし,等間隔に90の目盛があって,右から10目盛おきに線を内側に突出させて数字を付し,5目盛,15目盛,25目盛,35目盛,45目盛,55目盛,65目盛,75目盛,85目盛を10目盛おきの目盛より短く内側に突出させたものとし,右下隅において,右辺の目盛と交差させている。
(d)そして,略縦長長方形の中央やや下に設けられたスマートフォンの図形の液晶部分の右側と底辺側にその長さいっぱいにいずれも略縦長長方形の縦横それぞれの長さより短く,細長いシャフトの始点と終点のアローヘッドを楔形状とした赤い双方向矢印の線図形を設け,右下で交差させている。
(e)また,いずれの双方向矢印の線図形も,引き出し線をつけたものとしている。
(f)さらに,白い略縦長長方形の中央上に,傾けた大きな黄色いエクスクラメーションマークの図形と草の冠をもつ略円形の図形,底辺側左に黄色い枠の略正方形の図形と底辺側右に小さな米国の国旗の図形を配したものである。

(2)本件登録意匠と公知意匠エとの対比
1)意匠に係る物品
本件登録意匠は「包装用台紙」であって,公知意匠エは「包装用箱」であることから,意匠に係る物品は類似しない。

2)両意匠部分4の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本件登録意匠部分の用途は,包装用台紙であるから,主に販売時に販売対象物を配置するものであるのに対し,公知意匠エ部分は包装用箱であって,主に販売時に販売対象物を収納するものである。両意匠部分4は,長さを測り,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させることができるという機能において共通するが,本件登録意匠部分は包装用台紙の表面の縦の約半分より下の左辺及び底辺寄りに位置し,実線で表された範囲のものであって,公知意匠エは,当該包装用箱の正面上方の黄色い帯状部分以外の部分であるから,両意匠部分4の用途,並びに位置,大きさ及び範囲は異なるものである。

3)両意匠部分4の形態
(A)共通点
両意匠部分4は,略縦長長方形とし,その略縦長長方形の2辺に目盛を設け,2本の双方向矢印の線図形を配している点が共通する。

(B)相違点
両意匠部分4は,具体的構成態様として,
(a)本件登録意匠部分の略縦長長方形は枠線があるのに対し,公知意匠エ部分の略縦長長方形は,枠線がない点,
(b)本件登録意匠部分の目盛は,10目盛おきに太さが異なる線としているのに対し,公知意匠エ部分の目盛は,全て同じ太さの線であり,10目盛おきに数字が設けられた態様である点,
(c)本件登録意匠部分の目盛は,包装用台紙の左下隅において,左辺側の目盛と底辺側の目盛が,枠の外で接しているのに対し,公知意匠エ部分の目盛は,縦長長方形の図形の右下隅の内側で目盛の線が交差している点,
(d)本件登録意匠部分の目盛の長さを表す2本の線図形は,左辺及び底辺の目盛の長さいっぱいの中央に円形図形をもつ,やや太い線のシャフトに,アローヘッドを三角形状とする暗調子の双方向矢印の線図形であって,枠に沿って左下で交差させているのに対して,公知意匠エ部分の線図形は,スマートフォンの図形の液晶部分の右側と底辺側の長さいっぱいの細い線のシャフトに,アローヘッドを鏃形状とする赤い双方向矢印のみからなる線図形であって,右下で交差させているものであり,シャフト中央に何ら図形はないが引き出し線が設けられていること,
(e)本件登録意匠部分の略縦長長方形の中の図形は,2本の線図形のみがあるのに対し,公知意匠エ部分の略縦長長方形の中の図形は,2本の線図形に加えて,エクスクラメーションマークの図形,草の冠をもつ略円形の図形,隅丸略正方形の図形及び米国の国旗の図形がある点,
において相違する。

(3)本件登録意匠と公知意匠エの類否判断について
1)両意匠4の意匠に係る物品及び両意匠部分4の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価
公知意匠エの意匠に係る物品は,包装用箱であることから,本件登録意匠とは異なるものであり,包装用台紙のように販売対象物を貼り付けるものではなく,販売対象物を入れるものであることから用途が相違し,両意匠部分4は長さを測ることができ,線図形などを用いて縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能は共通するものの,公知意匠エ部分は,略縦直方体状の箱の正面部分であることから,本件登録意匠部分と位置,大きさ及び範囲も異なり,両意匠4は類似しないものと認められ,この相違点は,両意匠部分4の類否判断に与える影響が大きいものである。

2)両意匠部分4の形態の評価
(A)共通点の評価
両意匠部分4は,略縦長長方形とし,その略縦長長方形の2辺に目盛を設け,2本の双方向矢印の線図形を配している点が共通するが,略縦長長方形の2辺に目盛と線図形を設けた形態は,この種の物品分野において普通に見られるものであって,概念的な共通点にすぎず,両意匠部分4の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。

(B)相違点の評価
両意匠部分4の略縦長長方形に枠線があるか否かの相違点(a)については,この種の包装用台紙の分野において,いずれも本件登録意匠の出願前からありふれたものであるが,長さを測る際,枠線によって対象物をどこに当てるかを分かりやすくし,枠線があるか枠線のないものかは見た目の印象が異なるから,両意匠部分4の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものである。
次に,目盛の態様の相違点(b)については,いずれの目盛の態様も,この種の包装用台紙の分野において,本願出願前からありふれたものではあるが,長さを測る際に,一定間隔で太い線があることによって,長さを認識しやすいことから,見る者に異なる印象を与え,両意匠部分4の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
また,目盛の接点の態様の相違点(c)については,包装用台紙を利用して長さを測る際に,目盛の接点が右であるか左であるか,略縦長長方形の内側にあるか外側にあるかによって,需要者の視点が変わり,見た目も異なることから,需要者に与える印象が異なり,両意匠部分4の類否判断に与える影響は大きい。
双方向矢印の線図形の態様の相違点(c)については,シャフトの太さや長さ,アローヘッドの違いに加え,左下で交差させたものか右下で交差させたものか,引き出し線があるかないかは,明らかに見た目が異なることから,需要者に異なる印象を与え,両意匠部分4の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
さらに,略縦長長方形の中に線図形以外の図形があるか否かの相違点(e)については,この種の包装用台紙の分野において,公知意匠エ部分に設けられた図形はいずれもありふれたものであり,図形を設けるか否かも極めて普通に行われているところであるが,図形があるものとないものでは,見る者に異なる印象を与え,両意匠部分4の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。

(4)小括
以上のとおり,両意匠4は,意匠に係る物品が異なり,両意匠部分4の機能は共通するが,両意匠部分4の用途,並びに位置,大きさ及び範囲が相違することから共通点を凌駕し,両意匠4は類似しないものと認められる。
なお,上記のように,両意匠部分4の形態の評価をするまでもなく両意匠4は類似しないが,仮に,両意匠4の意匠に係る物品及び両意匠部分4の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価が類似するものであった場合においても,両意匠部分4の形態は,相違点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠4は類似しないものと認められる。
したがって,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第6号証に記載された意匠と類似しないものであるから,意匠法第3条1項第3号に規定された意匠には該当せず,その意匠登録は,無効理由1によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

6.無効理由5について(意匠法第3条第1項第3号)
請求人は,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第7号証の1及び甲第7号証の2に記載された意匠と類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当し,意匠登録を受けることができないものであるので,その意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきであると主張するので,以下,検討する。

(1)甲第7号証の1及び甲第7号証の2(以下,「公知意匠オ」という。)の意匠(別紙第6参照)
公知意匠オ(「本件登録意匠」とあわせて「両意匠5」という。)は,甲第7号証の1及び甲第7号証の2に現された意匠であり,甲第7号証の1及び甲第7号証の2は,甲第36号証の販売会社の回答から,平成25年(2013年)6月に株式会社ビッグスターが販売開始し,少なくとも,甲第7号証の3の株式会社ヨドバシカメラ(東京都新宿区北新宿3-20-1)の公式通販サイト「www.yodobashi.com」における販売開始日の記載から,平成25年(2013年)6月27日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったもので,本件登録意匠の出願日である平成25年(2013年)7月19日前に公然知られたものとなったと認められる。

1)公知意匠オの意匠に係る物品
公知意匠オの意匠に係る物品は,スマートフォンなどに用いる液晶画面保護フィルムを販売するための「包装用台紙」である。

2)本件登録意匠部分と対比する対象の公知意匠オの部分(以下,「公知意匠オ部分」といい,「本件登録意匠部分」とあわせて「両意匠部分5」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
公知意匠オ部分は,販売時に使用される包装用台紙としての用途及び長さを計測し,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能を有するものと認められ,包装用台紙の表面の左辺及び底辺にある目盛を辺とし,そのそれぞれの目盛と縦横同じ長さの対辺で囲む左辺及び底辺寄りの略縦長長方形の部分である。

3)公知意匠オ部分の形態
(A)基本的構成態様
公知意匠オ部分は,全体を,縦横の比を約7:4とする左辺内側と底辺内側に黒い帯状部分に目盛を設けた略縦長長方形の部分であり,その左辺の目盛の右やや下と底辺の目盛の上中央付近に円形図形を設けたものである。

(B)具体的構成態様
(a)公知意匠オ部分の略縦長長方形の左辺内側の目盛は,黒い帯状部分の上に白い目盛線で構成され,等間隔に108の目盛があって,0から2目盛までは目盛線はなく,下から10目盛おきに線を内側に突出させて50目盛と100目盛に数字を付し,5目盛,15目盛,25目盛,35目盛,45目盛,55目盛,65目盛,75目盛,85目盛,95目盛,105目盛を10目盛おきの目盛より短く内側に突出させたものとしている。
(b)また,略縦長長方形の底辺内側の目盛は,黒い帯状部分の上に白い目盛線で構成され,等間隔に62の目盛があって,0から2目盛までは目盛線はなく,左から10目盛おきに線を内側に突出させて50目盛に数字を付し,5目盛,15目盛,25目盛,35目盛,45目盛,55目盛を10目盛おきの目盛より短く内側に突出させたものとし,左下隅において,左辺の目盛と1/4円を描くように目盛線を接したものとしている。
(c)そして,略縦長長方形の左辺側と底辺内側のそれぞれに同径の黒い円形図形を配し,略縦長長方形の上辺側にスマートフォンの図形と底辺側に青い略正方形の図形を横に3つ並べている。

(2)本件登録意匠と公知意匠オとの対比
1)意匠に係る物品
両意匠5は,いずれも「包装用台紙」であり,意匠に係る物品が,一致する。

2)両意匠部分5の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分5の包装用台紙としての用途及び縦横の長さを測ることができ,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能,大きさ及び範囲は共通し,その位置も両意匠部分5は共に左辺及び底辺寄りであるから共通する。

3)両意匠部分5の形態
(A)共通点
両意匠部分5は,略縦長長方形とし,その略縦長長方形の2辺に目盛と図形を配している点が共通する。

(B)相違点
両意匠部分5は,具体的構成態様として,
(a)本件登録意匠部分は,略縦長長方形の枠線があるのに対し,公知意匠オ部分の略縦長長方形には,枠線がない点,
(b)本件登録意匠部分の目盛は,10目盛おきに太さが異なる目盛線を設けているのに対し,公知意匠オ部分の目盛は,全て同じ太さの線であって,0及び50と100の数字が付されており,黒い帯状の上に白い目盛線が設けられている点,
(c)本件登録意匠部分の目盛は,包装用台紙の左下隅において,左辺側の目盛と底辺側の目盛がそれぞれ0目盛の基点をもち,1目盛線があるのに対し,公知意匠オ部分の目盛は,左下隅において,左辺と底辺の2目盛線で1/4円を描いているため,0から2目盛までは目盛線がないため1目盛線がなく,0目盛に相当する基点を1つにしている点,
(d)本件登録意匠部分の略縦長長方形の枠の左辺側と底辺側には,中央に円形図形をもつ双方向矢印の線図形が設けられているのに対して,公知意匠オ部分は,円形図形はあるものの,双方向矢印の線図形ではない点,
(e)本件登録意匠部分の略縦長長方形の中の図形は,2本の線図形のみがあるのに対し,公知意匠オ部分の略縦長長方形の中の図形は,2つの円形図形に加えて,略縦長長方形の上辺側にスマートフォンの図形と底辺側に3つの青い略正方形の図形がある点,
において相違する。

(3)本件登録意匠と公知意匠オの類否判断について
1)両意匠5の意匠に係る物品及び両意匠部分5の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両意匠5の意匠に係る物品が一致し,両意匠部分5の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通するが,この種の物品分野において,包装用台紙に目盛を設けて,測る機能を持たせ,図形などを用いて縦横の長さを表示し,大きさを視覚的に容易に把握させるため,販売対象のシート等に合わせた大きさと範囲とし,左辺及び底辺寄りの位置とすることは,普通に見られるものであって,両意匠部分5の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。

2)両意匠部分5の形態の評価
(A)共通点の評価
両意匠部分5は,略縦長長方形とし,その略縦長長方形の2辺に目盛と図形を配している点において共通するが,略縦長長方形の2辺に目盛と図形を設けた形態は,この種の物品分野において普通に見られるものであって,概念的な共通点にすぎず,両意匠部分5の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。

(B)相違点の評価
両意匠部分5の略縦長長方形に枠線があるか否かの相違点(a)については,この種の包装用台紙の分野において,いずれも本件登録意匠の出願前からありふれたものであるが,長さを測る際,枠線のあることで対象物をどこに当てるかを分かりやすくなり,枠線があるか枠線のないものかは見た目の印象が異なるから,両意匠部分5の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものである。
次に,目盛の態様の相違点(b)については,黒い帯状の上に目盛を配したものと,目盛の下に色がないものとでは,見た目の印象が大きく異なり,目盛の長さが異なることと相俟って,需要者に異なる印象を与え,両意匠部分5の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
また,目盛の接点の態様の相違点(c)については,包装用台紙を利用して長さを測る際に,縦と横の目盛の基点をもつものと,基点を1つにしているものとでは,1目盛線の有無も相俟って,見た目が異なり,需要者にとって意匠を別異なものとの印象を与え,両意匠部分5の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
そして,双方向矢印の線図形の有無の相違点(d)については,単に円形図形を配したものと,中央に図形を設けた双方向矢印の線図形によって,長さを表しているものとでは,見た目が大きく異なり,需要者にとって意匠を別異なものとの印象を与えるものであって,両意匠部分5の類否判断に与える影響は大きい。
さらに,略縦長長方形の中に線図形以外の図形があるか否かの相違点(e)については,この種の包装用台紙の分野において,公知意匠オ部分に設けられた図形はいずれもありふれたものであり,図形を設けるか否かも極めて普通に行われているところであるが,図形があるものとないものでは,見る者に異なる印象を与え,両意匠部分5の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。

(4)小括
以上のとおり,両意匠5は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分5の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通するが,両意匠部分5の形態において,相違点が共通点を凌駕し,それが両意匠5の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠5は類似しないものと認められる。
したがって,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第7号証に記載された意匠と類似しないものであるから,意匠法第3条1項第3号に規定された意匠には該当せず,その意匠登録は,無効理由1によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

7.無効理由6について(意匠法第3条第1項第3号)
請求人は,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第8号証の1及び甲第8号証の2に記載された意匠と類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当し,意匠登録を受けることができないものであるので,その意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきであると主張するので,以下,検討する。

(1)甲第8号証の1及び甲第8号証の2(以下,「公知意匠カ」という。)の意匠(別紙第7参照)
公知意匠カ(「本件登録意匠」とあわせて「両意匠6」という。)は,甲第8号証の1及び甲第8号証の2に現された意匠であり,甲第8号証の1及び甲第8号証の2は,甲第8号証の4の株式会社エディオンの公式通販サイト「エディオン ネットショップ」の記載において,平成21年(2009年)7月10日を発売日としていることや,少なくとも,甲第8号証の3の株式会社ヨドバシカメラ(東京都新宿区北新宿3-20-1)の公式通販サイト「www.yodobashi.com」における販売開始日の記載から,平成23年(2011年)7月18日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったもので,本件登録意匠の出願日である平成25年(2013年)7月19日前に公然知られたものとなったと認められる。

1)公知意匠カの意匠に係る物品
公知意匠カの意匠に係る物品は,携帯電話機などに用いる液晶保護フィルムを販売するための「包装用台紙」である。

2)本件登録意匠部分と対比する対象の公知意匠カの部分(以下,「公知意匠カ部分」といい,「本件登録意匠部分」とあわせて「両意匠部分6」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
公知意匠カ部分は,販売時に使用される包装用台紙としての用途及び長さを計測し,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能を有するものと認められ,略縦長長方形の包装用台紙の表面の上から縦約1/3から下までの横中央にある方眼模様の縦長長方形及びその外周の目盛数字の部分である。

3)公知意匠カ部分の形態
(A)基本的構成態様
公知意匠カ部分は,全体を,縦横の比を約7:4の白い略縦長長方形の部分とし,略縦長長方形の内側全面を方眼状としたものであり,略縦長長方形の左辺外側と上辺外側に数字を設けたものである。

(B)具体的構成態様
(a)公知意匠カ部分の略縦長長方形は,内側全面に黒い方眼線を付したものであって枠はなく,その方眼線は上から5目盛おきに横の線を他の線より太くし,左から5目盛おきに縦の線を他の線より太くしたものである。
(b)公知意匠カ部分の略縦長長方形の右辺側に,横の目盛で40,44,53,58,59,62,64の縦の線にサイズを示す配色をし,略縦長長方形の下辺側に,縦の目盛で63,73,78,87,93,97,102,105,107,116の横の線にサイズを示す配色をし,縦横のサイズ(長さ)を表示したものである。
(c)公知意匠カ部分の略縦長長方形の左辺外側には,上から等間隔に116の目盛があって,10目盛おきに数字を付し,略縦長長方形の上辺外側には,左から10目盛置きに数字を付したものとしている。
(d)そして,略縦長長方形状の左辺側上に2段3列に並べた携帯電話機,ゲーム機,音楽プレーヤー,スマートフォン,デジタルカメラの図を配した6つの赤と紫色の円形図形と図形略縦長長方形の左辺の目盛の50から60目盛付近の右側に黄色の略横長略楕円形の図形を設けたものである。

(2)本件登録意匠と公知意匠カとの対比
1)意匠に係る物品
両意匠6は,いずれも「包装用台紙」であり,意匠に係る物品が,一致する。

2)両意匠部分6の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分6の包装用台紙としての用途及び縦横の長さを測り,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能や大きさ及び範囲は共通する。
しかし,本件登録意匠部分は包装用台紙の縦の約半分より下の左辺及び底辺寄りにあるが,公知意匠カ部分の略縦長長方形は包装用台紙の上から縦約1/3から下までの横中央に配置されていることから,両意匠部分6の位置は相違する。

3)両意匠部分6の形態
(A)共通点
両意匠部分6は,略縦長長方形としている点が共通する。

(B)相違点
基本的構成態様として,本件登録意匠部分には,略縦長長方形の枠の左辺側と底辺側に目盛と略縦長長方形の内側には2本の双方向矢印の線図形があるが,公知意匠カ部分には,目盛も双方向矢印の線図形がない点において相違する。
また,両意匠部分6は,具体的構成態様として,
(a)本件登録意匠部分は,略縦長長方形の枠線があるのに対し,公知意匠カ部分の略縦長長方形には,枠線がない点
(b)本件登録意匠部分の略縦長長方形の枠内に,模様はないが,公知意匠カ部分の略縦長長方形は内部を,黒い方眼状の模様を付していること,
(c)本件登録意匠部分の目盛は,10目盛おきに太さが異なる線としているのに対し,公知意匠カ部分の方眼状の略縦長長方形には,縦に上から10目盛おきに10から110までの数字,横に左から10目盛置きに10から60までの数字を配置している点,
(d)本件登録意匠部分の略縦長長方形の枠の左辺側と底辺側には,中央に円形図形をもつ双方向矢印の線図形が設けられているのに対して,公知意匠カ部分は略縦長長方形の左側縦中央に楕円形の図形はあるものの,双方向矢印の線図形ではない点,
(e)本件登録意匠部分の略縦長長方形の中の図形は,2本の線図形のみがあるのに対し,公知意匠カ部分の略縦長長方形の中の図形は,左辺側上に2段3列にデジタル機器の図を配した6つの円形図形とその下に略横長略楕円形の図形がある点,
において相違する。

(3)本件登録意匠と公知意匠カの類否判断について
1)両意匠6の意匠に係る物品及び両意匠部分6の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両意匠6の意匠に係る物品が一致し,両意匠部分6の用途及び機能,並びに大きさ及び範囲は共通するが,この種の物品分野において,包装用台紙に方眼を施し,測る機能を持たせ,縦横の長さを表示し,大きさを視覚的に容易に把握させるため,販売対象のシート等に合わせた大きさと範囲にすることは,普通に見られるものであって,両意匠部分6の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。
一方,略縦長長方形の位置の違いは,いずれも包装用台紙の分野においては普通に見られるものであり,包装用台紙を利用して物の長さを測る際にも,需要者は枠と目盛に着目するとはいえ,この相違点が類否判断に与える影響は大きいとはいえないものである。

2)両意匠部分6の形態の評価
(A)共通点の評価
両意匠部分6は,略縦長長方形としている点が共通するが,略縦長長方形の態様は,この種の物品分野において普通に見られるものであって,概念的な共通点にすぎず,両意匠部分6の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。

(B)相違点の評価
両意匠部分6の略縦長長方形の枠の左辺側と底辺側に目盛があるか否かや,略縦長長方形の中に線図形があるか否かの基本的構成態様の相違は,明らかに見た目が異なり,両意匠6を別異の意匠とする印象を需要者にもたらす十分な相違であって,両意匠部分6の類否判断を決定づけるものである。
また,両意匠部分6の具体的構成態様について,略縦長長方形に枠線があるか否かの相違点(a)については,この種の包装用台紙の分野において,いずれも本件登録意匠の出願前からありふれたものであるが,長さを測る際,枠線によって対象物をどこに当てるかを分かりやすくしていることから,需要者が着目し,両意匠部分6の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものである。
次に,略縦長長方形の枠内の模様の有無の相違点(b)については,明らかに見た目が異なることから,需要者に異なる印象を与え,両意匠部分6の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
目盛の有無及び数字の有無の相違点(c)及び双方向矢印の線図形の有無の相違点(d)については,見た目の印象が大きく異なり,需要者に異なる印象を与え,両意匠部分6の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
さらに,略縦長長方形の中に線図形以外の図形があるか否かの相違点(e)については,この種の包装用台紙の分野において,公知意匠カ部分に設けられた図形はありふれたものであり,図形を設けるか否かも極めて普通に行われているところであるが,図形があるものとないものでは,見る者に異なる印象を与え,両意匠部分6の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。

(4)小括
以上のとおり,両意匠6は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分6の用途及び機能,並びに大きさ及び範囲は共通し,両意匠部分6の位置の相違は大きくないものの,その形態において,相違点が共通点を凌駕し,それが両意匠6の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠6は類似しないものと認められる。
したがって,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第8号証に記載された意匠と類似しないものであるから,意匠法第3条1項第3号に規定された意匠には該当せず,その意匠登録は,無効理由1によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

8.無効理由7について(意匠法第3条第1項第3号)
請求人は,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第9号証の1及び甲第9号証の2に記載された意匠と類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当し,意匠登録を受けることができないものであるので,その意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきであると主張するので,以下,検討する。

(1)甲第9号証の1及び甲第9号証の2(以下,「公知意匠キ」という。)の意匠(別紙第8参照)
公知意匠キ(「本件登録意匠」とあわせて「両意匠7」という。)は,甲第9号証の1及び甲第9号証の2に現された意匠であり,甲第9号証の1及び甲第9号証の2は,甲第36号証の販売会社の回答から,平成25年(2013年)6月に株式会社ラスタバナナが販売開始し,甲第9号証の2の株式会社ヨドバシカメラ(東京都新宿区北新宿3-20-1)の公式通販サイト「www.yodobashi.com」における販売開始日の記載において,平成22年(2010年)3月18日を販売開始日としていることや,少なくとも,甲第9号証の3の価格比較サービスを提供するインターネットサイトの「(当審注:甲第9号証の3から,「価格.com(http://kakaku.com/item/K0000301283/)」と認められる。)」の登録日の記載から,平成23年(2011年)10月24日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったもので,本件登録意匠の出願日である平成25年(2013年)7月19日前に公然知られたものとなったと認められる。

1)公知意匠キの意匠に係る物品
公知意匠キの意匠に係る物品は,携帯電話機などに用いるディスプレイ保護シールを販売するための「包装用台紙」である。

2)本件登録意匠部分と対比する対象の公知意匠キの部分(以下,「公知意匠キ部分」といい,「本件登録意匠部分」とあわせて「両意匠部分7」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
公知意匠キ部分は,販売時に使用される包装用台紙としての用途及び長さを計測し,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能を有するものと認められ,略縦長長方形の包装用台紙の表面であって,縦横にある目盛を辺とし,その縦横の目盛と同じ長さの対辺で囲む略縦長長方形の部分である。

3)公知意匠キ部分の形態
(A)基本的構成態様
公知意匠キ部分は,全体を,縦横の比を約19:10とする白い略縦長長方形に,その略縦長長方形の右辺と底辺に目盛を設け,多数の略長方形,略三角形及び略円形の図形を配したものである。

(B)具体的構成態様
(a)公知意匠キ部分の略縦長長方形の右辺内側の目盛は,黒い目盛で構成され,上から等間隔に150の目盛があって,10目盛おきに線を内側に突出させて数字を付し,5目盛,15目盛,25目盛,35目盛,45目盛,55目盛,65目盛,75目盛,85目盛,95目盛,105目盛,115目盛,125目盛,135目盛,145目盛を10目盛おきの目盛より短く内側に突出させたものとしている。
(b)また,略縦長長方形の底辺内側の目盛は,黒い目盛で構成され,左から等間隔に80の目盛があって,10目盛おきに線を内側に突出させて数字を付し,5目盛,15目盛,25目盛,35目盛,45目盛,55目盛,65目盛,75目盛を10目盛おきの目盛より短く内側に突出させたものとし,右下隅において,右辺と底辺に目盛を設けず,わずかに目盛を離している。

(2)本件登録意匠と公知意匠キとの対比
1)意匠に係る物品
両意匠7は,いずれも「包装用台紙」であり,意匠に係る物品が,一致する。

2)両意匠部分7の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分7の包装用台紙としての用途及び長さを測り,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させることができる機能や大きさ及び範囲は共通する。
しかし,本件登録意匠部分は包装用台紙の縦の約半分より下の左辺及び底辺寄りにあるが,公知意匠キ部分の略縦長長方形は包装用台紙の上から縦約1/10から下までの横幅全幅に配置されていることから,両意匠部分7の位置は相違する。

3)両意匠部分7の形態
(A)共通点
両意匠部分7は,略縦長長方形とし,その略縦長長方形の2辺に目盛を設けている点が共通する。

(B)相違点
両意匠部分7の基本的構成態様として,本件登録意匠部分は,略縦長長方形の枠線で囲ったものであって,枠に沿って,双方向矢印の線図形を設けたものであるのに対し,公知意匠キ部分は,枠線がなく,多数の図形を全面に配し,双方向矢印の線図形は設けていない点において相違する。
また,具体的構成態様として,
(a)本件登録意匠部分の目盛は,10目盛おきに太さが異なる線としているのに対し,公知意匠キ部分の目盛は,全て同じ太さの線であり,10目盛おきに数字が設けられた態様である点,
(b)本件登録意匠部分の底辺側の目盛は,包装用台紙の左下隅において,左辺側の目盛と底辺の目盛が,枠の外で接しているのに対し,公知意匠キ部分の目盛は,略縦長長方形の右下隅の内側で目盛の線を離している点,
において相違する。

(3)本件登録意匠と公知意匠キの類否判断について
1)両意匠7の意匠に係る物品及び両意匠部分7の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両意匠7の意匠に係る物品が一致し,両意匠部分7の用途及び機能,並びに大きさ及び範囲は共通するが,この種の物品分野において,包装用台紙に目盛を設けて,測る機能及び縦横の長さを表示する機能を持たせ,大きさを視覚的に容易に把握させるため,販売対象のシート等に合わせた大きさと範囲にすることは,普通に見られるものであって,両意匠部分7の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。
一方,両意匠部分7の位置の相違点については,需要者は,長さを測る際には,対象物をどの位置に当てるかに着目するとはいえ,いずれの位置のものも包装用台紙の分野においては普通に見られるものであり,この相違点が類否判断に与える影響は大きいとはいえないものである。

2)両意匠部分7の形態の評価
(A)共通点の評価
両意匠部分7は,略縦長長方形とし,その略縦長長方形の2辺に目盛を設けている点が共通するが,略縦長長方形の2辺に目盛を設けた形態は,この種の物品分野において普通に見られるものであって,概念的な共通点にすぎず,両意匠部分7の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。

(B)相違点の評価
両意匠部分7の略縦長長方形の枠線の有無,双方向矢印の線図形の有無,多数の図形を全面に設けているか否かの基本的構成態様の相違は,明らかに見た目が異なり,両意匠7を別異の意匠とする印象を需要者にもたらす十分な相違であって,両意匠部分7の類否判断を決定づけるものである。
また,両意匠部分7の具体的構成態様について,目盛の線の態様及び数字の有無の相違点(a)については,見た目の印象が大きく異なり,需要者に異なる印象を与え,両意匠部分7の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
次に,目盛の接点の態様の相違点(b)については,基点部の目盛線が接しているものと目盛線が離れているものとでは,見た目が大きく異なり,需要者に意匠を別異なものとの印象を与えるものであって,両意匠部分7の類否判断に与える影響は大きい。

(4)小括
以上のとおり,両意匠7は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分7の用途及び機能,並びに大きさ及び範囲は共通し,両意匠部分7の位置の相違は大きくないものの,その形態において,相違点が共通点を凌駕し,それが両意匠7の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠7は類似しないものと認められる。
したがって,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第9号証に記載された意匠と類似しないものであるから,意匠法第3条1項第3号に規定された意匠には該当せず,その意匠登録は,無効理由1によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

9.無効理由8について(意匠法第3条第1項第3号)
請求人は,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第10号証の1に記載された意匠と類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当し,意匠登録を受けることができないものであるので,その意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきであると主張するので,以下,検討する。

(1)甲第10号証の1(以下,「公知意匠ク」という。)の意匠(別紙第9参照)
公知意匠ク(「本件登録意匠」とあわせて「両意匠8」という。)は,甲第10号証の1に現された意匠であり,甲第10号証の1は,甲第36号証の販売会社の回答から,平成25年(2013年)6月に株式会社ラスタバナナが販売開始し,甲第10号証の2の株式会社ヨドバシカメラの公式通販サイト「www.yodobashi.com」における販売開始日の記載において,平成25年(2013年)6月14日を販売開始日としていることや,少なくとも,甲第10号証の3のAmazon.com,Inc.の通信販売サイト「amazon.co.jp」における取り扱い開始日の記載から,平成25年(2013年)6月17日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったもので,本件登録意匠の出願日である平成25年(2013年)7月19日前に公然知られたものとなったと認められる。

1)公知意匠クの意匠に係る物品
公知意匠クの意匠に係る物品は,携帯電話機などに用いる液晶保護フィルムを販売するための「包装用台紙」である。

2)本件登録意匠部分と対比する対象の公知意匠クの部分(以下,「公知意匠ク部分」といい,「本件登録意匠部分」とあわせて「両意匠部分8」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
公知意匠ク部分は,販売時に使用される包装用台紙としての用途及び長さを計測し,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させる機能を有するものと認められ,略縦長長方形の包装用台紙の表面であって,包装用台紙の縦中央やや下にある白い略縦長長方形の部分である。

3)公知意匠ク部分の形態
(A)基本的構成態様
公知意匠ク部分は,全体を,縦横の比を約5:4とする白い略縦長長方形であって,左辺に左辺より短い長さの目盛を設け,白い略縦長長方形の中,やや左寄りに携帯電話機の図形のディスプレイ部分に黒い枠を設けて,その枠の右辺と上辺に,中央に略長円形状の図形をもつ双方向矢印の線図形を配したものである。

(B)具体的構成態様
(a)公知意匠ク部分の略縦長長方形の左辺内側の目盛は,ほとんどを黒い目盛線で構成したものであって,43目盛と74目盛の線を赤くし,下から等間隔に80の目盛があって,5目盛おきに線を内側に突出させ,10目盛おきに数字を付したものである。
(b)また,略縦長長方形のやや左寄りに携帯電話機のディスプレイ部分の図形を設け,その携帯電話機のディスプレイ部分の図形の液晶部分の右辺と上辺に縦に長く中央に縦長略楕円形の図形をもつ双方向矢印の線図形と横に長く中央に横長略楕円形の図形をもつ双方向矢印の線図形をその辺の長さいっぱいに配し,いずれのシャフトも細い線とし,始点と終点のアローヘッドを三角形状としたものであって,それぞれの線図形は,略縦長長方形の縦と横の長さよりも短いものである。
(c)そして,略縦長長方形状の右辺側中央に赤い略縦長長方形の図形を設けたものである。

(2)本件登録意匠と公知意匠クとの対比
1)意匠に係る物品
両意匠8は,いずれも「包装用台紙」であり,意匠に係る物品が,一致する。

2)両意匠部分8の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分8の販売時に使用される包装用台紙としての用途及び長さを測り,縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させることができる機能や大きさ及び範囲は共通する。
しかし,本件登録意匠部分は包装用台紙の縦の約半分より下の左辺及び底辺寄りにあるが,公知意匠ク部分の白い略縦長長方形は包装用台紙の中央やや下に配置されているから,両意匠部分8の位置は相違する。

3)両意匠部分8の形態
(A)共通点
両意匠部分8は,略縦長長方形とし,その略縦長長方形の左辺に目盛を設け,2つの双方向矢印の線図形を配している点が共通する。

(B)相違点
両意匠部分8は,基本的構成態様として,公知意匠ク部分は,白い略縦長長方形の底辺側に目盛がない点において相違する。
また,具体的構成態様として,
(a)本件登録意匠部分の略縦長長方形は枠線があるのに対し,公知意匠ク部分の略縦長長方形には,枠線がない点,
(b)本件登録意匠部分の目盛は,左辺及び底辺に配され,長さの異なる3種類の線で構成され,10目盛おきに太さが異なる線としているのに対し,公知意匠ク部分の目盛は,左辺のみに配され,長さの異なる2種類の線で構成され,全て同じ太さの線であり,10目盛おきに数字が設けられた態様である点,
(c)本件登録意匠部分の略縦長長方形の枠の左辺側と底辺側にある双方向矢印の線図形は,略縦長長方形の枠の左辺と底辺と同じ長さで,中央に円形図形をもつものであって,左下で交差させたものであるのに対し,公知意匠ク部分の双方向矢印の線図形は,縦向きの双方向矢印及び横向きの双方向矢印の線図形のいずれも,略縦長長方形の縦及び横の長さよりかなり短く,中央に略楕円形の図形をもつものであって,交差させていないこと,
(d)本件登録意匠部分の略縦長長方形の中には,2本の線図形のみがあるのに対し,公知意匠ク部分の略縦長長方形の中には,携帯電話機の図形と赤い略縦長長方形の図形がある点,
において相違する。

(3)本件登録意匠と公知意匠クの類否判断について
1)両意匠8の意匠に係る物品及び両意匠部分8の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両意匠8の意匠に係る物品が一致し,両意匠部分8の用途及び機能,並びに大きさ及び範囲は共通するが,この種の物品分野において,包装用台紙に目盛を設けて,測る機能を持たせ,線図形などを用いて縦横の長さを表示し,保護フィルムの大きさを視覚的に容易に把握させるため,販売対象のシート等に合わせた大きさと範囲にすることは,普通に見られるものであって,両意匠部分8の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。
一方,両意匠部分8の位置の相違点については,まず,略縦長長方形の位置の違いの相違点は,包装用台紙を利用して物の長さを測る際に,需要者は,長さを測る際,対象物をどこに当てるかに着目するとはいえ,いずれの位置のものも包装用台紙の分野においては普通に見られるものであり,この相違点が類否判断に与える影響は大きいとはいえないものである。

2)両意匠部分8の形態の評価
(A)共通点の評価
両意匠部分8は,略縦長長方形とし,その略縦長長方形の左辺に目盛を設け,2つの双方向矢印の線図形を配している点が共通するが,略縦長長方形に1つの目盛と線図形を2本設けた形態は,この種の物品分野において普通に見られるものであって,概念的な共通点にすぎず,両意匠部分8の類否判断を決定づけるまでには至らないものである。

(B)相違点の評価
略縦長長方形の底辺側の目盛の有無は,基本的構成態様の相違点であり,対象物の長さを測る際に,需要者に異なる印象を与えものであるから,軽視することができず,両意匠部分8の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
次に,両意匠部分8の具体的構成態様について,略縦長長方形に枠線があるか否かの相違点(a)については,この種の包装用台紙の分野において,いずれも本件登録意匠の出願前からありふれたものであるが,長さを測る際,枠線によって対象物をどこに当てるかを分かりやすくしていることから,両意匠部分8の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものである。
また,目盛の線の態様及び数字の有無の相違点(b)については,見た目の印象が大きく異なり,需要者に異なる印象を与え,両意匠部分8の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
双方向矢印の線図形の態様の相違点(c)についても,本件登録意匠部分の双方向矢印の線図形が,略縦長長方形の左辺及び底辺に沿ってあり,いずれも目盛の長さと同じであることから,関係性を強く印象づけるが,公知意匠ク部分の双方向矢印の線図形は,縦の目盛と離れた右辺側,略縦長長方形の底辺と離れた上辺側にあり,いずれも略縦長長方形の枠の長さと関係がなく,枠内に設けられた携帯電話機のディスプレイ部分の図形の縦横の長さを表すものであることから,需要者に与える印象が異なり,両意匠部分8の類否判断に与える影響は大きい。
さらに,略縦長長方形の中に線図形以外の図形があるか否かの相違点(d)については,この種の包装用台紙の分野において,公知意匠ク部分に設けられた図形はありふれたものであり,図形を設けるか否かも極めて普通に行われているところであるが,図形があるものとないものでは,見る者に異なる印象を与え,両意匠部分8の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。


(4)小括
以上のとおり,両意匠8は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分8の用途及び機能,並びに大きさ及び範囲は共通し,両意匠部分8の位置の相違は大きくないものの,その形態において,相違点が共通点を凌駕し,それが両意匠8の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠8は類似しないものと認められる。
したがって,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第10号証に記載された意匠と類似しないものであるから,意匠法第3条1項第3号に規定された意匠には該当せず,その意匠登録は,無効理由1によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

10.無効理由9について(意匠法第3条第2項)
請求人は,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載され公知となった甲第3号証ないし甲第7号証の意匠及び甲第10号証の意匠に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであり,意匠法第3条第2項の規定に該当し,意匠登録を受けることができないものであるので,その意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきであると主張するので,以下,検討する。

(1)甲第3号証の意匠(「公知意匠ア」)(別紙第2参照)
公知意匠アは,前記2.(1)に述べたとおりであり,また,本件登録意匠と公知意匠アの共通点及び相違点は,前記2.(2)のとおりである。

(2)甲第4号証の意匠(「公知意匠イ」)(別紙第3参照)
公知意匠イは,前記3.(1)に述べたとおりであり,また,本件登録意匠と公知意匠イの共通点及び相違点は,前記3.(2)のとおりである。

(3)甲第5号証の意匠(「公知意匠ウ」)(別紙第4参照)
公知意匠ウは,前記4.(1)に述べたとおりであり,また,本件登録意匠と公知意匠ウの共通点及び相違点は,前記4.(2)のとおりである。

(4)甲第6号証の意匠(「公知意匠エ」)(別紙第5参照)
公知意匠エは,前記5.(1)に述べたとおりであり,また,本件登録意匠と公知意匠エの共通点及び相違点は,前記5.(2)のとおりである。

(5)甲第7号証の意匠(「公知意匠オ」)(別紙第6参照)
公知意匠オは,前記6.(1)に述べたとおりであり,また,本件登録意匠と公知意匠オの共通点及び相違点は,前記6.(2)のとおりである。

(6)甲第10号証の意匠(「公知意匠ク」)(別紙第9参照)
公知意匠クは,前記9.(1)に述べたとおりであり,また,本件登録意匠と公知意匠クの共通点及び相違点は,前記9.(2)のとおりである。

(7)創作非容易性の判断
まず,本件登録意匠部分の機能,並びに位置,大きさ及び範囲について検討すると,本件登録意匠部分は包装用台紙の縦の約半分より下の左辺及び底辺寄りにあり,略縦長長方形の枠の左辺と底辺に目盛を設け,左辺と底辺に沿って双方向矢印の線図形を配したものであるが,その略縦長長方形の枠,目盛及び双方向矢印の線図形によって製品の大きさや縦横比率,及び縦横の長さを表示する機能を有するものであることについては,包装用台紙の分野においてはごく普通の機能であって,略縦長長方形の枠を包装用台紙の縦の約半分より下の左辺及び底辺寄りの位置としたことも,よく見られるものであって,その大きさ及び範囲についても格段の創意を要したとはいえない。
しかしながら,本件登録意匠部分の形態は,縦長長方形の枠線を設け,その左辺及び底辺の外側に目盛を付し,略縦長長方形の枠の左辺内側に,中央付近に円形図形を配した縦に長い双方向矢印の線図形と,枠の底辺内側に中央付近に円形図形を配した横に長い双方向矢印の線図形を設け,左下で交差したものとしており,公知意匠アないし公知意匠オ及び公知意匠クのいずれにも,本件登録意匠部分のような略縦長長方形の枠の左辺外側と底辺外側に2つの目盛を設け,2つの目盛と同じ長さの2つの中央に円形図形をもつ双方向矢印の線図形を設けて,左下で交差したものはない。
また,本件登録意匠部分は略縦長長方形の枠の左辺と底辺の外側に目盛を配置していることにより,長さを測る際には,本件登録意匠部分の略縦長長方形の枠に対象物をあてて,縦横の目盛を同時に見ながら長さを測ることができるのに対し,公知意匠アないし公知意匠オ及び公知意匠クのいずれも,略縦長長方形に測る対象物をあてた場合,目盛若しくは方眼が隠れて,同じように測ることはできないから,本件登録意匠部分の略縦長長方形と目盛の組み合わせ態様は,公知意匠アないし公知意匠オ及び公知意匠クのいずれとも,大きく異なるものである。
次に,各部の具体的な形態についてみたとしても,目盛の形態については,本件登録意匠部分の目盛は,暗調子の細く短い目盛線,細くやや長い目盛線とやや太く長い目盛線で,2種類の太さで3種類の長さの目盛線で構成されているのに対し,公知意匠アの目盛は,2種類の長さの目盛線から構成されていること,公知意匠イ及び公知意匠エは,目盛の線が同じ太さであること,公知意匠ウは,目盛ではなく方眼線であること,公知意匠オは,黒い帯状の部分に白く目盛が設けられていること,公知意匠クは,2種類の長さの目盛線であり,いずれも本件登録意匠部分の目盛とは異なる形態である。
そして,これらの目盛の形態は,包装用台紙の用途や機能,大きさに合わせて様々に創作されるものであるから,公知意匠アないし公知意匠オ及び公知意匠クの形態に包装用台紙の分野における通常の知識に基づいて創作を加えたとしても,本件登録意匠部分の形態とすることは,容易に着想できたものとはいえない。
さらには,本件登録意匠部分は,中央に円形図形をもつ縦に長い双方向矢印の線図形及び横に長い双方向矢印の線図形であって左下で交差したものとしているが,公知意匠アは,略円弧状の線図形であり左上で交差していること,公知意匠イ及び公知意匠クは,双方向矢印の線図形の長さが略縦長長方形の縦横の長さより短く,シャフト中央の図形が異なり,2つの双方向矢印の線図形は交差していないこと,公知意匠ウ及び公知意匠エは,双方向矢印の線図形の中央に図形がなく,交差位置も相違すること,公知意匠オは,双方向矢印の線図形がないことから,いずれも本件登録意匠部分の中央に円形図形をもつ双方向矢印の線図形であって左下で交差したものとは異なる形態である。
そして,包装用台紙の用途や機能,大きさに合わせて様々に創作されるこれらの公知意匠アないし公知意匠オ及び公知意匠クの形態に,包装用台紙の分野における通常の知識に基づいて創作を加えたとしても,本件登録意匠部分の形態とすることは,容易に着想できたものとはいえない。

そうすると,本件登録意匠部分は,当業者であれば容易に着想できたということはできないものであるから,意匠全体として,本件登録意匠は,容易に創作することができたということはできない。

(8)小括
したがって,本件登録意匠は,本件登録意匠に係る物品である包装用台紙の分野における通常の知識を有する者が,本件登録意匠出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された公然知られた,公知意匠アないし公知意匠オ及び公知意匠ク(甲第3号証ないし甲第7号証及び甲第10号証)に基づいて容易に創作することができたものとは認められず,意匠法第3条第2項の規定には該当しないから,その意匠登録は,無効理由9によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

第5 むすび
以上のとおりであって,本件登録意匠は,無効理由1ないし無効理由8である,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するにもかかわらず,意匠登録を受けたものとはいえず,意匠法第48条第1項第1号の規定によって,その登録を無効とすることはできない。
また,本件登録意匠は,無効理由9である,意匠法第3条第2項の規定に該当するにもかかわらず,意匠登録を受けたものとはいえず,意匠法第48条第1項第1号の規定によって,その登録を無効とすることはできない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2017-03-01 
結審通知日 2017-03-03 
審決日 2017-05-19 
出願番号 意願2013-16457(D2013-16457) 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (F4)
D 1 113・ 121- Y (F4)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 並木 文子中村 純典 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 江塚 尚弘
渡邉 久美
登録日 2013-12-20 
登録番号 意匠登録第1488798号(D1488798) 
代理人 有吉 修一朗 
代理人 筒井 宣圭 
代理人 渡辺 靖志 
代理人 森田 靖之 
代理人 藤本 昇 
代理人 遠藤 聡子 
代理人 梶原 圭太 
代理人 野村 慎一 

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