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審決分類 審判 補正却下不服  図面(意匠の説明を含む) 取り消さない G1
管理番号 1332300 
審判番号 補正2016-500004
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2016-10-20 
確定日 2017-08-02 
意匠に係る物品 床用カバー 
事件の表示 意願2015- 27492「床用カバー」において,平成28年 6月23日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願の手続の経緯

1.出願当初の願書及び添付図面
本願は,2015年7月16日のスイス国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)12月9日の意匠登録出願であり,願書の【意匠に係る物品】欄に「床用カバー」と記載され,【意匠に係る物品の説明】欄に,「本物品は,エスカレーター及び動く歩道に使用される床用カバーである。」と記載され,【意匠の説明】欄に,「実線で表した部分が,意匠登録を受けようとする部分である。」と記載されたものであって,願書添付図面として,「前方斜視図」,「正面図」及び「3-3線拡大断面図」が提出されている。

2.平成28年1月14日付けの手続補正
出願人は,平成27年12月11日の手続補正指令(方式)を受けて,平成24年11月14日付けの手続補正書を提出し,願書の【意匠の説明】欄を,「実線で表した部分が,意匠登録を受けようとする部分である。左側面図は右側面図と対称に表れるため省略する。」と変更し,願書添付図面の「前方斜視図」,「正面図」及び「3-3線拡大断面図」を変更し,新たに「背面図」,「右側面図」,「平面図」,「底面図」及び「参考平面図」を追加している(以下「第1の補正」という。)。

3.平成28年2月26日付けの拒絶理由通知
原審より,「この意匠登録出願の,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたものは,物品の一部であって,通常の取引状態において,それのみで独立の製品として取り引きされるものではありませんので,意匠法第2条に定義する意匠を構成せず,意匠法第3条第1項柱書に規定する意匠に該当しないことから,意匠登録を受けることができません。」との拒絶の理由,及び判断理由の詳述として,「この意匠登録出願の願書の記載によると,願書添付図面に記載されたものは,部分意匠として意匠登録を受けようとするものであり,意匠に係る物品を『床用カバー』とするものであるが,願書添付図面に記載されたものは,エスカレーター又は動く歩道(以下「エスカレーター等」という。)の一部であって,通常の取引状態において独立の製品として取り引きされるものとは認められません。」が通知されている。

4.平成28年6月23日付けの手続補正
出願人は,上記3の拒絶理由通知を受けて,平成28年6月23日に意見書とともに手続補正書を提出し,願書の,【部分意匠】欄及び【意匠の説明】欄を削除し,願書添付図面の全図を変更(「前方斜視図」,「正面図」,「背面図」,「右側面図」,「平面図」,「底面図」,及び「参考平面図」をそれぞれ,「参考図1」,「参考図2」,「参考図3」,「参考図4」,「参考図5」,及び「参考図6」に変更し,新たに「正面図」,「背面図」,「右側面図」,「左側面図」,「平面図」,及び「底面図」を追加)している(以下「第2の補正」という。)。

5.平成28年7月19日付けの補正の却下の決定
原審は,(1)願書の【部分意匠】の欄の削除,(2)願書の【意匠の説明】の欄の削除,(3)補正前の,前方斜視図,正面図,背面図,右側面図,平面図,底面図,参考平面図をそれぞれ,参考図1,参考図2,参考図3,参考図4,参考図5,参考図6と変更し,(4)「床用カバー」本体を表す,正面図,背面図,右側面図,左側面図,平面図及び底面図を追加する第2の補正は,エスカレーター等の一部であり,通常の取引状態において独立の製品として取り引きされるものとは認められないものを,「床用カバー」本体の意匠に変更したものと認められ,この補正は,この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて総合的に判断しても導き出すことができず,また,本願意匠の要旨の認定に大きく影響を及ぼすものであることから,願書の記載及び願書に添付した図面の要旨を変更するものと認められるとして,この手続補正書は却下をすべきものとの決定を行っている。

第2 請求人の主張

請求人は,この補正却下の決定を不服として平成28年10月20日に審判請求を行い,要旨以下のように主張している。

出願当初及び第2の補正後にいたるまで,本願はエスカレーター等に用いられる「床用カバー」について保護を受けようとするものである。また,「床用カバー」はエスカレーター等の一部ではなく,エスカレーター等の構成部品として独立に,または,エスカレーター等を構成する部品の一つとして他の部品とともに取引されている。このような取引事情はこの種の物品分野における通常の知識を有する者にとっては周知の事実である。
そうすると,エスカレーター等の物品分野における通常の知識を有する者がその知識に基づいて第2の補正後の意匠の内容を総合的に判断すれば,本願がエスカレーター等を構成する「床用カバー」について意匠による保護を求めようとするものであることは容易に理解し得る。すなわち,エスカレーター等の物品分野における通常の知識に基づいて総合的に判断すれば,第2の補正後の意匠の内容は補正前の意匠の内容から当然に導き出すことができるものであり,意匠の要旨を「同一の範囲を超えて変更するものと認められる」ものではない。
また,エスカレーター等の構成部品としての「床用カバー」について保護を求めようとすることは,出願当初の願書の記載から第2の補正にいたるまで変更はなく,「出願当初不明であった意匠の要旨を明確なものとするものと認められる」ものでもない。
要するに,第2の補正は,特許庁意匠審査基準が明らかにする要旨変更のいずれの類型にも該当するものではなく,願書の記載及び願書に添付した図面の要旨を変更するものではない。
以上より,出願人は第二の補正が補正前の意匠の要旨を変更するものでないことを確信するものである。

第3 当審の判断

1.第1の補正後の意匠と第2の補正後の意匠について
(1)第1の補正後の意匠
第1の補正後の意匠は,部分意匠の意匠登録出願に係るものであって,その願書添付図面には,実線で表された意匠登録を受けようとする部分である床用カバーと,破線で表された意匠登録を受けようとする部分以外の部分である,エスカレーター等における左右一対のデッキの一部,及びこのデッキ部のハンドレールインレット(手すり引き入れ口)部から湾曲しつつ突出した形態のハンドレールの一部とが一体的に表された「前方斜視図」,「正面図」,「背面図」,「右側面図」,「平面図」,「底面図」と「3-3線拡大断面図」が記載されている。
ここで,第1の補正後の意匠に係る物品である「床用カバー」は,カバープレートとも呼ばれるものであって,該部位はエスカレーター等と分離不可能に一体的に形成されるものではなく,別体で構成される部品であると認められる。
また,添付図面における破線で表されたエスカレーター等のデッキ及びハンドレールの部分は,エスカレーター等を概念的・ポンチ絵的に表したものにすぎず,かつ,エスカレーター等の全体のほんの一部の範囲を記載したにすぎないものであるから,第1の補正後の願書添付図面における破線で表した部分は,エスカレーター等について表している図面であるとするのではなく,本来記載されるべきではなかったエスカレーター等を表すことで,床用カバーの形態に加えて,エスカレーター等と床用カバーの位置関係や床用カバーの使用状態を示す図面を誤って一組の図面で表したものであると認められる。
そして,この床用カバーの部分の形態について見ると,全体は,平面視略凸状の板体であって,上面及び下面部分には5つの帯状部分が表れ,その上面部分には,平面視略隅丸正方形状の突起部及び略横長長方形状の突起部の連続する列が互い違いに繰り返して上下に配設され,床用カバーの凸状に突出した上端寄り中央部分には,平面視略横長長方形状の上方に略円形状の部分が合わさった形態の突起部のない平坦面の部分が形成されている。

(2)第2の補正後の意匠
第2の補正後の意匠は,全体の意匠についての意匠登録出願に係るものであり,意匠に係る物品を「床用カバー」とするものであって,その願書添付図面には,実線で表された床用カバーの六面図と,実線で表された床用カバーと破線で表されたエスカレーター等における左右デッキの一部及びハンドレールの一部からなる「参考図1ないし6」,及び「3-3線参考拡大断面図」が記載されているものである。
この一組の六面図では,第1の補正後の願書添付図面において破線で表されていた本来記載されるべきではないエスカレーター等のデッキ及びハンドレールの部分は削除され,床用カバーのみを表した図面に補正されている。
そして,この床用カバーの形態については,全体は,平面視略横凸状の板体であって,その平面及び底面部分には5つの帯状部分が表れ,上面部分には,平面視略隅丸正方形状の突起部及び略横長長方形状の突起部の連続する列が互い違いに繰り返して左右に配設されている。

2.第2の補正による補正が,第1の補正後の願書の記載及び願書添付図面の要旨を変更するか否かについて
本来,願書の記載及び願書に添付した図面は,登録意匠の範囲を定める基となる美的創作として出願された意匠の内容を表しており,その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて,願書の記載及び願書に添付した図面等から直接的に導き出される具体的な意匠の内容を,意匠の要旨という。
そして,第1の補正後の願書の記載又は願書に添付した図面に,誤記や不明瞭な記載などの記載不備を有していたとしても,その記載不備が,願書やその添付図面作成上の誤記や不手際ないし作図上の制約から生ずるものであることが総合的に判断して明らかであり,また,その意匠の属する分野における通常の知識に基づけば,当然に不備のない記載を直接的に導き出すことができるときに,不備のない記載に訂正する補正は,出願当初の願書の記載又は願書に添付した図面等の要旨を変更するものではないとされている。(意匠審査基準82.1.2.2.1)
ここで,第1の補正後の願書に添付した図面における,破線で表されたエスカレーター等のデッキ及びハンドレールの部分の記載は,本来であれば記載されるべきではない部分であるが,パリ条約による優先権の主張を伴う第一国の出願時に添付された図面をそのまま我が国に出願したことにより表されている誤記にあたるものと認められるものであり,また,その意匠の属する分野における通常の知識に基づけば,出願当初からエスカレーター等とは別体である「床用カバー」について出願されたものであることは明らかであるから,不備のない第2の補正後の記載を直接的に導きだすことが当然にできるものである。
したがって,第1の補正後の破線で表されたエスカレーター等のデッキ及びハンドレールの部分の記載を削除する補正は,要旨を変更するものとはならない補正である。
しかしながら,第1の補正後の意匠及び第2の補正後の意匠の形態について見てみると,第1の補正後の意匠における床用カバーの上面部分には,平面視略隅丸正方形状の突起部及び略横長長方形状の突起部の連続する列が互い違いに繰り返して配設され,床用カバーの凸状に突出した上面部上端寄り中央部分には,平面視が横に長い略直角台形状の突起部,横に短い略直角台形状の突起部,及び横に短い略長方形状の突起部によって形成される,平面視略横長長方形状の平坦面の部分とその上方に接して略円形状の平坦面の部分が表れている。そして,第2の補正後の意匠では,当該平坦面の部分には,平面視略隅丸正方形状の突起部及び略横長長方形状の突起部の連続する列が互い違いに繰り返して配設され,当該平坦面の部分のない形態に変更されている。
この当該平坦面の部分は,エスカレーターであれば,建物の何階であるかを表示するための部分,若しくは会社の商標と会社名又は商品名等が付されるという目的を持って創作された部分であると推認でき,一様に互い違いに繰り返し連続する突起部の一部を,略直角台形状の突起部等の様々な形態にわざわざ変更して創作された部分であるから,本願意匠の創作において重要な部分の一つであると認められる。この本願意匠の要旨の一部である平坦面の部分をなくす補正は,その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当然に導き出すことができる同一の範囲を超えて変更するものであると認められるものであり,第2の補正による補正は,第1の補正後の願書の記載及び願書添付図面の要旨を変更するものである。

なお,請求人は,「かかる白抜きの領域は特異な形状をなすものでなく,また,何ら特殊な構造を備えるものでもありませんから,かかる相違は本願意匠においては微細な差異であるといえます。よって,・・・白抜きの領域の有無は,意匠の要旨を実質的に変更するものとはいえません。」と述べているが,当該平坦面の部分は,平面視が,略隅丸正方形状の突起部及び略横長長方形状の突起部に加えて,横に長い略直角台形状の突起部,横に短い略直角台形状の突起部及び横に短い略長方形状の突起部の組み合わせによって形成されており,創作性のある態様といえるのは上記検討のとおりであり,なおかつ,要旨変更については,同一の範囲か否かについて検討するものであるから,該部位が単純な形状や微細な差異であることを理由に要旨変更ではないとする請求人の主張を認めることはできない。

第4 むすび

以上のとおりであって,平成28年6月23日付けの手続補正(第2の補正)は,平成28年1月14日付けの手続補正(第1の補正)による願書の記載又は願書添付図面の要旨を変更するものと認められ,したがって,原審の,平成28年6月23日付けの手続補正書を意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものとした決定は,適正なものである。

よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-03-02 
結審通知日 2017-03-07 
審決日 2017-03-22 
出願番号 意願2015-27492(D2015-27492) 
審決分類 D 1 7・ 1- Z (G1)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 加藤 真珠小松 芳実 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
橘 崇生
登録日 2017-09-15 
登録番号 意匠登録第1587761号(D1587761) 
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所 
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