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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D5
管理番号 1332306 
審判番号 不服2017-919
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-23 
確定日 2017-09-05 
意匠に係る物品 取付用洗面器 
事件の表示 意願2016- 2558「取付用洗面器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする平成28年(2016年)2月5日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は,本願の願書の記載によれば「取付用洗面器」であり,本願意匠の形態は,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものである。
特許庁発行(発行日:平成16年(2004年)11月2日)の意匠公報に記載された意匠登録第1221786号(意匠に係る物品,取付用洗面器)の意匠(別紙第2参照)。

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「取付用洗面器」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「取付用洗面器」である。

2 本願意匠と引用意匠の形態
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
(1)共通点
両意匠には,以下の共通点が認められる。
(A)全体の構成についての共通点
全体が,平面視略横長長方形板状のカウンター部の左右方向中央に略曲面状に凹んだボウル部が形成されて,そのボウル部の下部がカウンター部の前端左右よりも前方に張り出したものであり,正面から見るとボウル部は下方に膨出している。
(B)カウンター部の態様についての共通点
カウンター部の後端には背板が上方に直立して設けられ,カウンター部の前端左右には垂れ板が下方に垂下して設けられており,側面から見ると,カウンターの端部が略細長クランク状に表されている。
また,ボウル部の左端寄り及び右端寄りのカウンター部上面が,ボウル部に向かって傾斜している(以下,そのカウンター部上面の傾斜を単に「上面傾斜」という。)。
(C)ボウル部及びその周囲の態様についての共通点
ボウル部は,平面視略横長角丸多角形状であって,縦方向中央の横幅が最も長く,前端の左寄り部分及び右寄り部分が前方に湾曲して突出して,その左右の突出部が左右対称状に表されている。また,ボウル部前端に沿って,カウンター部の前端部も前方に突出しており,その形状は平面視略等幅帯状である。
ボウル部の平面左上には円形の排水孔部が形成されており,正面から見ると,その排水孔部の位置が最下部になるように,ボウル部底面が略弧状に下方に膨出して表されている。側面から見たボウル部の形状は,後端が略垂直状に表れて,排水孔部から前端にいくにつれて漸次高さ幅が小さくなっている。
平面視ボウル部下部のカウンター部前端左右からの前方への張り出しの程度は,ボウル部の最大縦幅の1/5ないし1/4である。
(2)差異点
一方,両意匠には,以下の差異点が認められる。
(a)カウンター部の態様についての差異点
(a-1)構成比
カウンター部の平面視縦横比は,前方への突出部分を除き,本願意匠では約1:3であり,引用意匠では約1:2である。
また,正面から見た背板と垂れ板の縦幅の比率は,本願意匠では約1:2であり,引用意匠では約2:1である。
(a-2)サイドガードの有無
引用意匠のカウンター部上面の左端及び右端には,背板の高さの約1/2の高さのサイドガードが,背板からカウンター部前端まで配されているが,本願意匠にはそのようなサイドガードは無い。
(a-3)面分割線の有無及び傾斜の差異
引用意匠のカウンター部には,ボウル部の左方及び右方に,平面視縦長の面分割線が表されており,正面視上面傾斜は約22度であるが,本願意匠には面分割線は表されておらず。上面傾斜は約10度である。
(a-4)カウンター部左右前端と突出部分との接続の態様
平面から見た本願意匠のカウンター部左側前端部(又は右側前端部)と突出部分との接続の態様はアール状に形成されているが,引用意匠のその接続の態様は屈曲した略「く」字状(開き角度が約117度)に形成されている。
(b)ボウル部の態様についての差異点
(b-1)外周形状
本願意匠のボウル部の外周形状全体は左右対称状であって,左端及び右端が凸弧状に表されて,後端が中央が凹んだ波状に表されており,前端の左寄り部分及び右寄り部分の湾曲が緩やかに表されている。
これに対して,引用意匠のボウル部の外周形状全体は左右非対称であって,左端及び右端の中央部が直線状に表されて,左端及び右端の前端寄りが内側に傾斜して,後端の左上部が後方に弧状に張り出して表されており,前端の左寄り部分及び右寄り部分の湾曲が鋭く表されている。
(b-2)ボウル部前端部の側面視形状及び断面形状
本願意匠のボウル部前端寄り下面の側面視形状は弧状であって,前端が先尖り状に表されており,断面形状におけるボウル部前端部が略杯状に形成されている。
これに対して,引用意匠のボウル部前端寄り下面の側面視形状は直線状であって,前端が肉厚状に表されており(正面図において,その肉厚の下端境界が水平形状線として表されている。),断面形状では前端が上方に垂直に折れ曲がっている。
(b-3)排水孔筒状部の有無
本願意匠のボウル部下部には,排水孔部に連続した排水孔筒状部が下方に突出して設けられており,正面から見たボウル部の高さと当該排水孔筒状部の高さの比は約3:1であるが,引用意匠にはそのような排水孔筒状部は無い。
(c)各部の構成比
平面から見たカウンター部左部の横幅:ボウル部の横幅:カウンター部右部の横幅の比は,本願意匠では約3:8:3であり,引用意匠では約1:2:1である。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
両意匠は,共に取付用洗面器であるから,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

2 取付用洗面器の意匠の類否判断
取付用洗面器は,洗面棚や洗面台などに設置されるものであり,通常の使用状態において需要者が取付用洗面器を観察するに当たっては,その取付用洗面器を主として平面方向又は正面方向から眺めることとなり,カウンター部上面の構成態様,ボウル部の外周形状,ボウル部前端部の形状などについて特に注意を払うことになる。したがって,取付用洗面器の意匠の類否判断においては,これらの形状を特に評価し,かつそれ以外の形状の評価も併せて,各評価を総合して意匠全体として形態を評価する。

3 両意匠の形態の共通点の評価
両意匠の共通点で指摘した,(A)全体の構成についての共通点及び(B)カウンター部の態様についての共通点については,本願の出願前に「取付用洗面器」の物品分野においては普通に見受けられるものであり,例えば,カウンターの端部が側面視略細長クランク状に表されている意匠は本願の出願前に公然知られており(意匠登録第1458220号の意匠。参考意匠1。別紙第3参照。),また,ボウル部の左端寄り及び右端寄りのカウンター部上面がボウル部に向かって傾斜している形状も,水はけをよくするためにボウル部の周囲のカウンター部上面に傾斜部を設けること自体は,本願の出願前にごく普通に見られるありふれた形態である(特許庁意匠課公知資料番号HC23002898の意匠。参考意匠2。別紙第4参照。)。そうすると,需要者はこれらの共通点に特に注目するということはできない。
また,共通点(C)で指摘した,平面視略横長角丸多角形状であるボウル部前端の左寄り部分及び右寄り部分が前方に湾曲して突出して左右対称状に表されている点や,排水孔部の位置が最下部になるようにボウル部底面が略弧状に下方に膨出して,側面から見たボウル部の後端形状が略垂直状に表れて,排水孔部から前端にいくにつれて漸次高さ幅が小さくなっている点は,本願の出願前に公然知られており(例えば,上記参考意匠1。),平面視ボウル部下部のカウンター部前端左右からの前方への張り出しの程度がボウル部の最大縦幅の1/5ないし1/4である点も本願の出願前に公然知られている(例えば,上記参考意匠2。)ので,いずれも需要者が注視する共通点であるとはいい難い。
したがって,共通点(A)ないし(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

4 両意匠の形態の差異点の評価
これに対して,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(a-4)で指摘した,カウンター部左右前端と突出部分との接続の態様についての差異(本願意匠ではアール状に形成され,引用意匠では屈曲した略「く」字状に形成。)は,需要者が一見して気付く差異であって,本願意匠では丸みのあるアール状であり,引用意匠では丸みのない屈曲状であるから,(b-1)で指摘した,ボウル部前端の左寄り部分及び右寄り部分の湾曲が緩やかであるか(本願意匠)屈曲状であるか(引用意匠)の差異とあいまって,需要者に別異の美感を与えることとなる。したがって,差異点(a-4)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,(b-1)で指摘した,ボウル部の外周形状についての差異については,ボウル部の形状がどのようなものであるかは取付用洗面器を使用する需要者にとって最も注目する点の一つであることを踏まえると,左右対称状であって,左端及び右端が凸弧状に表されて後端が波状に表された本願意匠の形状は,左右非対称であって左端及び右端の中央部が直線状に表されて後端の左上部が後方に弧状に張り出している引用意匠の形状と大きく異なっており,需要者はこの差異に注目するというべきである。そして,(b-2)で指摘した,ボウル部前端部の側面視形状及び断面形状の差異,すなわち,断面形状においてボウル部前端部が略杯状であるか(本願意匠)上方に垂直に折れ曲がっているか(引用意匠)の差異も,ボウル部前端が需要者の手などの触れる部位であることも踏まえると,需要者の注意を強く惹く差異であるということができる。したがって,差異点(b-1)及び(b-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,(a-2)で指摘したサイドガードの有無の差異,及び(a-3)で指摘した面分割線の有無及び傾斜の差異については,取付用洗面器の意匠において,サイドガードの有るものと無いものの両方が普通に見受けられ,ボウル部の周囲のカウンター部上面に傾斜部を設けること自体がありふれているとしても,サイドガードの有無が物品の使用方法などに大きな影響を与えること,及び両意匠の傾斜の程度には面分割線の有無も含めて差異があることから,これらの差異が両意匠を観察する需要者が抱く美感に変化を加えているというべきである。したがって,差異点(a-2)及び差異点(a-3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
他方,差異点(a-1)で指摘した,カウンター部の平面視縦横比や背板と垂れ板の縦幅の比率の差異については,取付用洗面器の意匠においては,本願の出願前に,様々な平面視縦横比のカウンター部と様々な背板と垂れ板の縦幅の比率を有する意匠が見受けられるから,需要者がそれらの比率の差異に特に注意を払うとはいい難い。また,差異点(c)で指摘した,カウンター部左部の横幅:ボウル部の横幅:カウンター部右部の横幅の比の差異についても,需要者の住居などにおける洗面所の大きさやレイアウトには様々なものがあって様々な比率のバリエーションがあり得ることを踏まえると,需要者はその比の差異に特に注意を払うとはいい難い。
そして,(b-3)で指摘した排水孔筒状部の有無についての差異はボウル部下部という目立たない部位についての差異であるから,需要者はその差異に特に注意を払うとはいい難い。
そうすると,差異点(a-1),差異点(b-3)及び差異点(c)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

5 総合判断
以上のとおり,両意匠の形態の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいのに対して,両意匠の形態の差異点(a-2)ないし差異点(a-4),差異点(b-1)及び差異点(b-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きく,その余の形態の差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいとしても,形態の共通点を圧して,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。

6 小括
したがって,両意匠の意匠に係る物品は同一であり,両意匠の形態についても,差異点は共通点を圧して両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすので,両意匠を全体として比較した際には両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は引用意匠に類似しない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は原査定の引用意匠に類似することを理由にして,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-08-24 
出願番号 意願2016-2558(D2016-2558) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D5)
最終処分 成立 
前審関与審査官 樫本 光司 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 小林 裕和
渡邉 久美
登録日 2017-09-22 
登録番号 意匠登録第1588248号(D1588248) 
代理人 加藤 和詳 
代理人 中島 淳 
代理人 福田 浩志 
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