• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C6
管理番号 1332309 
審判番号 不服2017-5051
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-10 
確定日 2017-09-05 
意匠に係る物品 コーヒードリッパー 
事件の表示 意願2016- 11859「コーヒードリッパー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,意願2016-11858号を本意匠とする平成28年(2016年)6月2日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「コーヒードリッパー」とし,形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)を,願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照)


第2 原審の拒絶の理由

原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。

本願意匠の属するコーヒードリッパーの分野においては,袋本体の表裏それぞれに,一対の掛止部材を,その上端の位置が袋本体の上端開口部と略同一となるように設けた態様は,例えば意匠1に見受けられるようにありふれたものである。そうすると,本願意匠は,本願出願前から公然知られた意匠2の形態を袋本体の形態としてほとんどそのまま用いて,その表裏それぞれに,前記ありふれた態様に基づき,やはり本願出願前から公然知られた意匠3の形態の掛止部材を,その上端の位置が袋本体の上端開口部と略同一となるように設けたにすぎないものであって,当業者ならば容易に創作できたといえる。

意匠1 (別紙第2参照)
特開2015-205055 【図1】乃至【図6】に表された簡易型濾過器の意匠

意匠2 (別紙第3参照)
1982年 2月22日に受け入れたタイガー製品カタログ 1982年 1月20日 茶こし等の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HG19934444号)

意匠3 (別紙第4参照)
平成11年特許出願公開第178720号 【図2】に表された掛止部材の意匠


第3 請求人の主張の要旨

茶こし等の分類(意匠分類記号:C6-361)において過去の意匠登録例を参照すると,フィルターに掛止部材が設けられているものは,すべてフィルターの開口部が直線状のものであり,開口部が円弧状のもので掛止部材がその中央部に設けられている登録例は,1例も見つからなかった。 過去の登録例に照らせば,開口部が円弧状のフィルターを使用する際には,ドリッパーにセットするか,他の棒状部材に取り付けることが通常であることが分かる。
このような状況下において,開口部が円弧状のフィルターと,フィルターに掛止部材を貼着した態様のどちらともが,本願意匠の属する分野においてありふれていたとしても,開口部が円弧状のフィルターに掛止部材を貼着するという発想は,新規なものであり,当業者であっても起こり得ない。したがって,審査官は,本願意匠が意匠2と意匠3を意匠1に表されているようにありふれた手法により設けたにすぎないものであると認定するが,それ以前に,そもそも開口部が円弧状のフィルターに掛止部材を貼着するという発想は起こりえず,その発想自体が,創作容易ではない。
意匠2の開口部が円弧状の茶こし(フィルター)に意匠1,意匠3の掛止部材を設けることができたと仮定した場合,意匠2のフィルターに意匠3の掛止部材をありふれた手法で組み合わせたものは,フィルターの中央部に掛止部材が設けられ,カップの縁に掛止部材を引っ掛けて使用することができるものの,円弧状の開口部がフィルターだけであるため,湯を注ぎこむ際に,円弧状の開口縁が内方に倒れるおそれがあり,そのような問題を解決するために,工夫が必要となる。さらに,円弧状のフィルターと掛止部材とを単に組み合わせただけであるため,統一感のない印象を与える。
意匠2のフィルターに意匠1の掛止部材をありふれた手法で組み合わせたものは,掛止部材がフィルターの中央部に設けられ,その角部上方がフィルターの円弧状の開口縁と当接しており,このドリッパーも同様の問題を有し,この問題を解決するために工夫が必要となり,円弧状のフィルターと掛止部材とを単に組み合わせただけであるため,統一感のない印象を与える。
これに対し,本願意匠は,略扇形形状のフィルターに掛止部材を設け,枠部材が,フィルターの円弧状の開口縁の略全体に沿って円弧状に延びている。これにより,使用者が最も注目する,お湯の注ぎ口である開口縁の中央部が,枠部材に沿って設けられているため,使用者に安心感を与える美感を呈すとともに,略扇形形状のフィルターと枠部材とが,統一感のある印象を与える。さらに,本願意匠は,開口縁の上方を確実に開くことができ,それに伴って,枠部材が設けられていない開口縁も開くことができるため,コーヒー粉をこぼさずに容易に入れることができるという利便性を生じさせている。
このように,本願意匠は,通常なされる程度の変形を超えて,独自の美感を生じるように創作したものに該当し,意匠2と意匠1,意匠3のいずれかを組み合わせた意匠とは,全く異なった美感および利便性を生じる。 本願意匠は,意匠2と意匠3を意匠1に表されているようにありふれた手法により設けたにすぎないものではなく,全体として新たな美的効果を生じさせるように枠部の形状と位置を工夫して,統一感のあるものとしたものである。


第4 当審の判断

本願意匠が,当業者であれば,容易にその意匠の創作をすることができたものか否かについて,以下検討する。

1 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は「コーヒードリッパー」であり,開口した袋本体(以下,「袋体」という。)の中にコーヒー粉末を入れ,お湯を注いでコーヒーを抽出するために,袋の裏表に1つずつ貼着された一対の掛止部材(以下,「掛止部材」という。)の切り込みから,掛止片及びアームを引き起こしてコーヒーカップ等の別容器の縁に掛けて用い,抽出後のコーヒー粉末ごと廃棄可能とするものである。
本願意匠の形態は,正面視上端を略円弧状に開口し,下端を水平な直線状に綴じた略扇形の袋体において,その上端中央から横幅の1/3程度の位置に合わせて,略長方形状の掛止部材を貼着したものである。袋体は,平面図から視認できる通り,左右両端に細幅の綴じ代が設けられている。袋体の略扇形の下端の直線部(以下,「底部」という。)の長さを1とすると,全体の高さは底部の約1.45倍であり,上端の円弧状開口部(以下,開口部という)の横幅は,底部の約2倍である。袋体の左右の斜辺を下方向に延長した交差角による略扇形の中心角(以下,「開口角」という。)は約50度である。
掛止部材は,全体形状を略隅丸長方形状とし,その上端は袋体の開口部上端中央の円弧と一致する円弧状であり,直線状の左右両辺と連続して袋体に貼着され,倒コ字状の補強片(以下,「補強片」という。)と,その内側に,袋体からの引き起こし可能な略隅丸逆凸字状の掛止片(以下,「掛止片」という。)を構成している。
掛止片は,下端部中央に扁平な逆台形状のつまみ部を形成している。掛止片の内側には,上辺のない隅丸台形状の切り込みによって掛止片の上方と連続し,袋体から引き起こし可能なアーム部(以下,「アーム部」という。)を構成し,さらにアーム部の内側において,下辺のない縦長隅丸台形状の切り込みによってアーム部の下方と連続し,袋体に貼着された貼着部(以下,「貼着中央部」という。)を構成している。

2 原査定の理由の引用意匠
以下,引用の各意匠の向きを,本願意匠の正面図の向きに揃えたものとして,それぞれ形態を認定する。
(ア)意匠1
意匠1は,考案の名称を「簡易型濾過器」とし,内部にコーヒー粉末を封入した縦長長方形状の袋体の表面裏表に貼着した一対の掛止部材から掛止片等を引き起こし,別容器の縁に掛けて用いるコーヒードリッパーの意匠である。第1図及び第6図に,袋体の封止状態における正面図が表されている。第2図に袋体と掛止部材を分離した正面図が表されている。第3図に,袋体を開封し,袋体側面に畳まれていたまち部分を開き,掛止片等を引き起こした状態の斜視図,及び第5図にそれを別容器に掛けた状態の斜視図が表されている。第4図に,袋体から引き起こした掛止片を別容器の縁に掛けた状態の縦中央断面図が表されている。第6図には,袋体と掛止部材の貼着範囲が表されている。
そして,第1図,及び第3図ないし第6図に表された掛止部材の上端は,袋体の上端と同一で,掛止部材の横幅も袋体の横幅と一致している。
(イ)意匠2
意匠2は,意匠に係る物品を「茶こし等」とし,長方形のパッケージの前に現された,コーヒー抽出用のドリッパーの中に敷くペーパーフィルター(以下,「ペーパーフィルター」という。)の意匠である。ペーパーフィルターの周縁は不鮮明であり,全体形状は上端円弧状で底部直線状の略扇型であることが認められるものの,開口の範囲,綴じ代等,その具体的な態様は不明である。略扇型の底部の長さと1とすると,全体の高さは,底部の約2.3倍,開口部の横幅は底部の約3.3倍である。略扇型の開口角は約70度である。
(ウ)意匠3
意匠3は,考案の名称を「ドリップバッグ」とした第2図に表された,コーヒードリッパーの掛止部材の意匠である。全体は隅丸縦長長方形状で,直線状の上端及び左右両辺が連続した略倒コ字状の補強片と,その内側に,袋体からの引き起こし可能な略隅丸逆凸字状の掛止片を構成している。また,掛止片は,下端部中央に扁平な逆台形状のつまみ部を形成している。さらに,掛止片の内側において,上辺のない隅丸台形状の切り込みによって掛止片の上方と連続し,袋体から引き起こし可能なアーム部,及びアーム部の内側において,下辺のない縦長隅丸台形状の切り込みによってアーム部の下方と連続し,袋体に貼着された貼着中央部を構成したものである。

3 創作非容易性の判断
まず,この種のコーヒードリッパーの物品分野において,コーヒー粉末を封入した略長方形状の袋体に一対の掛止部材を貼着し,掛止部材の上端の位置を袋体の上端と同一にしたものは,意匠1に見られるように,本願出願前より既に見られる態様といえるものである。
そして,一対の掛止部材について,外形を略隅丸長方形状とし,直線状の上端及び左右両辺が連続した略倒コ字状の補強片と,その内側に,略隅丸逆凸字状の掛止片を構成し,掛止片の下端部中央に扁平な逆台形状のつまみ部を形成し,掛止片の内側に,上辺のない隅丸台形状の切り込みによって掛止片の上方と連続し,袋体から引き起こし可能なアーム部,及びアーム部の内側において,下辺のない縦長隅丸台形状の切り込みによってアーム部の下方と連続した貼着中央部を構成したものも,意匠3に見られるように,本願出願前より既に見られる公然知られた態様といえるものである。
しかしながら,意匠2に表されたペーパーフィルターは,使用時に袋体を開いて立体形状にするための,開口の範囲や綴じ代の態様を含む,その具体的な態様が不明確である。仮に,本願意匠の袋体と同様に,開口部の左右両側を細幅の綴じ代とした態様だとしても,意匠2は略扇型の底部の長さと1とすると,高さは底部の約2.3倍,開口部の横幅は約3.3倍,略扇型の開口角は約70度であり,本願意匠の袋体の全体の高さは底部の約1.45倍,開口部の横幅は約2倍であって,略扇型の開口角も約50度と,略扇形の具体的形状が異なっている。よって,本願意匠の使用時に袋体を開いた開口の態様は,別体のコーヒードリッパーに敷いて用いる意匠2のペーパーフィルターの開口の態様とは異なる,独特の形態であるものと認められ,本願意匠の袋体の形態として意匠2の形態がほとんどそのまま表されているとは認められない。
次に,意匠3は,掛止部材の上端を直線状としているのに対し,本願意匠は上端を円弧状としており,本願意匠のように上端を円弧状とした掛止部材の態様は,意匠1ないし意匠3のいずれにも,その他の意匠にも見当たらず,本願意匠の独特の態様といえるものである。
そうすると,本願意匠の形態は,特に袋体及び掛止部材の上端部の態様について,本願意匠の独特の態様といえるものであるから,当業者であれば容易に創作することができたものとはいえない。

よって,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,意匠1ないし意匠3に見られる,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠ということはできない。


第5 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-08-24 
出願番号 意願2016-11859(D2016-11859) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C6)
最終処分 成立 
前審関与審査官 長谷川 翔平竹下 寛 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
神谷 由紀
登録日 2017-09-15 
登録番号 意匠登録第1588025号(D1588025) 
代理人 特許業務法人アイミー国際特許事務所 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ