• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) F5
管理番号 1332315 
判定請求番号 判定2017-600004
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 判定 
判定請求日 2017-01-11 
確定日 2017-09-11 
意匠に係る物品 眼鏡用陳列台 
事件の表示 上記当事者間の登録第1566700号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の図面及びその説明により示された「眼鏡用陳列台」の意匠は,登録第1566700号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 判定請求人の請求の趣旨及び理由
1.判定請求の趣旨
イ号意匠及びその説明書に示す意匠は,登録第1566700号意匠及びこれに類似する意匠の権利範囲に属する,との判定を求める。

2.判定請求の理由
(1)判定請求の必要性
本件判定請求人(株式会社ハックベリー)は,本件判定請求に係る登録意匠「眼鏡用陳列台」(甲第1号証,以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。
本件判定被請求人(株式会社コメリ)が現在使用しているイ号意匠の眼鏡陳列用台は,本件登録意匠の意匠権を侵害する可能性があるので,特許庁による判定を求める。本件判定被請求人は従来より店舗において本件判定請求人の本件登録意匠を使用して眼鏡を販売していた。ところが本件判定請求人が把握するところによれば遅くとも平成28年9月27日以降(当社社員が本件判定被請求人の店舗にてイ号を発見),本件判定被請求人はイ号意匠を用いて眼鏡を販売するとともに,本件登録意匠である「眼鏡用陳列台」を店舗より順次排除してイ号と置き換えて眼鏡の販売をしている。
(2)本件登録意匠の手続きの経緯
出願 平成28年5月18日
早期審査請求 平成28年8月22日
登録 平成28年12月2日
(3)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は,意匠に係る物品を「眼鏡用陳列台」とし,その形態の要旨を次のとおりとする。なお,甲第1号証(意匠公報:意匠登録第1566700号),甲第3号証(本件登録意匠の斜視画像)に図面や様態および部位名称を表している。
(ア)本件登録意匠の構成は,眼鏡を開いた状態でディスプレイするために,眼鏡のブリッジ部を引っ掛けるための鈎状の引っ掛け部を有する「ブリッジ掛止板」と眼鏡のつるを引っ掛けるための一対の円形状の穴を有する「背面板」で構成されている。「ブリッジ掛止板」および「背面板」には対応した組み立て用の穴があり,蝶ネジによって「ブリッジ掛止板」が「背面板」に対して垂直に立てて組み立てられるようになっている。「ブリッジ掛止板」は1つの「背面板」に対して3列配置されている。「背面板」は後方に向かって傾斜している。「背面板」の穴に眼鏡のつるを差し入れた際,眼鏡が概ね水平になるように対応した鈎状になったブリッジの引っ掛け部が「ブリッジ掛止板」上に存在する。
眼鏡の収容数は3列×6段の18本掛けである。
眼鏡用陳列台はこのままでも自立できるが,任意形状の「底板」に取り付けられるように「ブリッジ掛止板」の下部に「底板」取り付け用の部位ならびにネジ穴を設けている。
(イ)本件登録意匠を用いた眼鏡のディスプレイの特徴としては,本件登録意匠はすべて透明素材でできており,眼鏡のつるを開いたままディスプレイしているので,眼鏡のつるが開いたまま宙に浮いたようにディスプレイされる。購買者(当審注:眼鏡の購買者であると推認される。)は,眼鏡陳列台にディスプレイされた状態であっても,眼鏡のデザイン全体(つるの内側外側まで)の詳細を把握することができ,眼鏡の選択が行いやすいとともに,眼鏡の選択を楽しむことができる。
(4)イ号意匠の説明
イ号意匠は,意匠に係る物品を「眼鏡用陳列台」とし,その形態の要旨を次のとおりとする(イ号意匠)。
(4-1)イ号意匠の説明について
イ号意匠を示す図1:眼鏡用陳列台の正面図・背面図・平面図
イ号意匠を示す図2:眼鏡用陳列台の底面図・右側面図・左側面図
イ号意匠を示す図3:眼鏡用陳列台の参考斜視図・部位名称を表す参考斜視図
イ号意匠の参考斜視図
上記図面をもとにイ号意匠の特徴について以下のとおり説明する。
(い)イ号意匠は3つの「ブリッジ掛止板」と「背面板」と「底板」で構成されている。
(ろ)イ号意匠はすべて透明な素材で構成されている。
(は)1つの「ブリッジ掛止板」は眼鏡のブリッジをかけられるブリッジ掛止部を6つ備えている。「背面板」にはブリッジ掛止部に対応した穴を有している。イ号意匠には3列6段の合計18本の眼鏡を掛けることができる。
(に)背面板は底板に対し約80度傾斜している。
(ほ)背面板の穴は横長のだ円である。
(4-2)イ号意匠の構成は,眼鏡を開いた状態でディスプレイするために,眼鏡のブリッジ部を引っ掛けるための鈎状の引っ掛け部を有する「ブリッジ掛止板」と眼鏡のつるを引っ掛けるための一対のだ円形状の穴を有する「背面板」および「ブリッジ掛止板」と「背面板」を載せる「底板」で構成されている。「ブリッジ掛止板」およびは「背面板」および「底板」はそれぞれの境界を接着して固定している。「ブリッジ掛止板」は「背面板」に対して垂直に接着されている。「ブリッジ掛止板」は1つの「背面板」に対して3列配置されている。「背面板」は後方に向かって傾斜している。「背面板」の穴に眼鏡のつるを差し入れた際,眼鏡が概ね水平になるように対応した鈎状になったブリッジの引っ掛け部が「ブリッジ掛止板」上に存在する。眼鏡の収容数は3列×6段の18本掛けである。
(4-3)イ号意匠を用いた眼鏡のディスプレイ上の特徴としては,イ号意匠はすべて透明素材でできており,眼鏡のつるを開いたままディスプレイしているので,眼鏡のつるが開いたまま宙に浮いたようにディスプレイされる。購買者は,眼鏡陳列台にディスプレイされた状態であっても,眼鏡のデザイン全体(つるの内側外側まで)の詳細を把握することができ,眼鏡の選択が行いやすいとともに,眼鏡の選択を楽しむことができる。
(5)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
(5-1)本件登録意匠とイ号意匠の共通点
(a)本件登録意匠とイ号意匠(以下,両意匠という。)は,意匠に係る物品が「眼鏡用陳列台」で一致している。
(b)眼鏡を掛ける方法として眼鏡のブリッジを引っ掛ける鈎状の引っ掛け部を有する「ブリッジ掛止板」と眼鏡のつるを引っ掛けるための穴を「背面板」に有している。
(c)眼鏡を「ブリッジ掛止板」と「背面板」に掛けた際,眼鏡のつるは概ね平行になる。
(d)背面板が後方に向かって傾斜している。傾斜角は双方とも約80度である。
(e)眼鏡の収容について3列6段で18本掛けである。
(f)眼鏡収容の段方向と列方向の配置・バランスがほぼ同じである。
(g)「ブリッジ掛止板」と「背面板」とも透明素材でできており,眼鏡のつるが開いたまま宙に浮いたようにディスプレイされる。
(5-2)両意匠の相違点
(h)「ブリッジ掛止板」にある鈎状の引っ掛け部について,イ号意匠に比べて本件登録意匠はやや丸みがある。
(i)「背面板」にある穴について,本件登録意匠は真円であるのに対しイ号意匠は横広のだ円である。
(j)本件登録意匠では「ブリッジ掛止板」と「背面板」の組立てが螺子止めに対して,イ号意匠では「ブリッジ掛止板」と「背面板」の組立てが接着である。また,本件登録意匠の「ブリッジ掛止板」は「背面板」を組み立てる際に垂直を出すためのL字に曲げた部位を背部に有している。また,任意の底板を取り付けられるよう垂直を出すためのL字に曲げた部位を底部に有している。
(k)本件登録意匠では「底板」が記載されていないが,イ号意匠では「底板」が存在する。
(6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由
(6-1)本件登録意匠に関する先行周辺意匠
公知資料 温州市中原五金有限公司 眼鏡陳列台パンフレット
第33/0頁所載 右下画像ModelZY201240
(6-2)本件登録意匠の要部
上記先行周辺意匠をもとに,本件登録意匠の創作の要点について述べればこの種の物品における意匠上の創作の主たる対象は,眼鏡を掛けて保持する部位において「ブリッジ掛止板」および「背面板」で構成されておりかつその構成部材が透明である点であり,また背面板が後方に向かって傾斜している点であることは明らかで,本件登録意匠については,他に全く見られない透明素材の「ブリッジ掛止版」および「背面板」によって構成される眼鏡陳列台という構成態様と,眼鏡を掛けた際に眼鏡全体が浮いているようにディスプレイされるという機能もあいまって,本件登録意匠の全体の基調を表出している。
(6-3)本件登録意匠とイ号意匠との類否考察
そこで,両意匠の共通点及び差異点を比較検討するに,
a)両意匠の共通点は上記(5)の両意匠の共通点(a)ないし(g)に記載のとおり,基本的な構成態様に係るものであり,特に,本件登録意匠の要部である透明素材の「ブリッジ掛止板」「背面板」の配置および眼鏡を掛ける個数および眼鏡を掛けるための「ブリッジ掛止部」「穴」の位置関係および「背面板」の傾斜角がほぼ共通しており,両意匠の類似性に極めて大きな影響を与えるものである。
b)上記(5)の両意匠の差異点(h)については上方が開口した鈎形状の差異であるが丸みをとってやや角ばった形状であるが「ブリッジ掛止板」全体の構造からまた素材が透明であることから類否の判断に与える影響は微弱である。また,差異点(i)について「背面板」の穴が真円であるかだ円であるかは三角や四角と違い円という形状の範躊であるため,類否の判断に与える影響は微弱である。また,差異点(j)について螺子は全体に占める大きさが小さく視覚的に与える影響が微細であり,本意匠には螺子止めするために設けられた「ブリッジ掛止板」のL字部分についても全体に占める大きさならびに透明素材であるということから,類否の判断に与える影響は微弱である。また,差異点(k)については,イ号意匠が本件登録意匠の下部に「底板」を追加したものであり基本的構成様態に対しイ号意匠が透明な「底板」を追加したに過ぎず,類比の判断に与える影響は微弱である。
(7)むすび
したがって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので,請求の趣旨どおりの判定を求める。
(8)証拠方法
甲第1号証 意匠公報(意匠登録第1566700号)
甲第2号証 早期審査に関する事情説明書
甲第3号証 本件登録意匠の斜視画像

3.判定請求人の弁駁
請求人は,判定請求弁駁書を提出し,以下の要旨を主張した。
(1)弁駁の内容
(i)後記,第2の答弁に対する意見
(i-1)後記,第2の2(1)意匠の類否判断の判断主体について,
判定請求書において「購買者」との表現は前記第1の2,(3)(イ)及び前記第1の2,(4)(4-3)に記載しているが,類否判断主体としてのみ購買者を記述しているのではなく,本意匠の特徴を説明するために「購買者」を記載しているので類否の判断主体として購買者を想定しているわけではない。被請求人は取引者のみが類否判断の主体であるかのような書き方をしているが,類否判断の判断主体は取引者のみに限定されるものでなく,需要者(取引者を含む)とされているので,取引者のみを類否判断主体にするのは誤りである。
(i-2)後記,第2の2(2)公知の考案の使用について
眼鏡の陳列方法として,つるを背面板の穴で支持するのではなく棒で支持したり,眼鏡のつるを閉じた状態で陳列する方法など様々な方法があり(甲第4号証参照),眼鏡のブリッジ部を引っ掛けるための鈎状の引っ掛け部を有する「ブリッジ掛止板」と眼鏡のつるを引っ掛けるための一対の円形状の穴を有する「背面板」とを組み合わせた構造は眼鏡を陳列する構造として必須とは言えず,「ブリッジ掛止板」と「背面板」の組み合せが意匠法第5条第3号の「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」ではないと考える。被請求人は公知文献を掲げているが,本件意匠は登録意匠であり,公知文献と非類似であることは明らかである。
(i-3)後記,第2の2(3)ネジの使用の有無について
後記,第2の2(4)底板の有無の有無について
後記,第2の2(5)鈎状の引っ掛け部について
後記,第2の2(3)では,本件意匠のネジが透明な眼鏡陳列台において非常に目立ち,ネジの使用において本件意匠の特徴的部分をイ号意匠では意図的に排除している旨を主張している。また後記,第2の2(4)では本件意匠では底板がなく,イ号意匠では底板があり両意匠では基本構造様態とデザインが大きく異なる旨を主張している。また後記,第2の2(5)では眼鏡のブリッジ部を引っ掛ける鈎状の引っ掛け部が取引者にとって重要な部分との記載がある(但し本件意匠とイ号意匠との差異については論述されていない)。被請求人は個々の差異点の存在を主張するけれども,意匠の審査基準において「意匠は,全体が有機的なつながりを持って結合されたものであるから,各共通点及び差異点を総合的に検討した場合に,それらの共通点及び差異点が意匠全体の美観の類否に対し,どのような影響を与えているかを評価しなければならない。」と記載されている。本件意匠とイ号意匠とは,ネジの有無および底板の有無等の相違点があるが,全体が,3方向に配された薄い板状体によって形成され,ブリッジ掛止板はその前縁にブリッジ掛止部が等間隔で多数設けられ,背面板には,この掛止部を挟んだ左右に同じ間隔でつる差込用の透孔が多数設けられたものとする基本的な構成様態が共通しており,これらの共通点がもたらす美観は上記相違点のそれを凌駕するものと考えられる。
なお参考として,請求人は別の眼鏡用陳列台である意願2016-28619(甲第5号証)が意匠登録第1556625号(甲第6号証)の類似範囲ということで平成29年6月2日発送日の拒絶理由通知書(甲第7号証)を受けた。
拒絶理由通知書による拒絶理由については,「本願意匠と引用意匠とは,主にブリッジ掛止板の数やその下方の底板の有無等の点が相違しますが,全体が,3方向に配された薄い板状体によって形成され,ブリッジ掛止板はその前縁にブリッジ掛止部が等間隔で多数設けられ,背面板には,この掛止部を挟んだ左右に同じ間隔でつる差込用の透孔が多数設けられたものとする基本的な構成様態が共通しており,これらの共通点がもたらす美観は上記相違点のそれを凌駕するものと認められます。」とある。
(i-4)後記,第2の2(6)その他について
後記,第2の2(6)では,陳列棚は,120cmが一般的であるため,眼鏡の横幅から計算すると,通常,3列の配置となるため,3列は本件意匠の特徴的なデザインではないと主張している。しかしながら店舗の陳列棚は120cm幅もあれば90cm幅も180cm幅も存在する。また,眼鏡用陳列台は店舗の陳列棚に載置するだけではなく,店舗によってはレジ横や独立した移動ワゴン上に載置する場合もあり,眼鏡用陳列台を陳列する場所は多様であるのが実態であり,眼鏡用陳列台の形状も多様である。したがって,本件意匠が意匠法第5条第3号の「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」ではないと考える。
(2)証拠方法
甲第4号証 眼鏡陳列台の画像
甲第5号証 意願2016-28619の図面
甲第6号証 意匠登録第1556625号
甲第7号証 拒絶理由通知書

第2 判定被請求人の答弁
被請求人は,答弁書を提出し,以下の要旨を主張した。
1.答弁の趣旨
イ号意匠およびその説明に示す意匠は,意匠登録第1566700号(以下「本件意匠」という)の類似の範囲に属しないとの判定を求める。

2.答弁の理由
(1)意匠の類否判断の判断主体について
眼鏡陳列台の取引者は,眼鏡の使用者ではなく,什器メーカーや小売店などの事業者が対象である。請求人の主張する眼鏡の購買者は本件意匠の取引者には当たらないので,請求人の主張は,意匠の類否判断の判断主体の考え方が間違っている。
(2)公知の考案の使用
本件意匠を構成している眼鏡のブリッジ部を引っ掛けるための鈎状の引っ掛け部を有する「ブリッジ掛止板」と眼鏡のつるを引っ掛けるための一対の円形状の穴を有する「背面板」を組み合わせた構造については,眼鏡を陳列するために機能上必要なものであるため,当該構造は,意匠法上のデザインには該当しない。そのため,前記判定請求の第1の2(6-3)a)の主張は間違っている。
なお,上記「ブリッジ掛止板」と「背面板」を組み合わせた構造については,実公昭39-25670で示されている通り,公知の考案である(乙第1号証)。
(3)ネジの使用の有無
本件意匠は,透明な部材をネジ止めしているものであるため,本件意匠の取引者の立場の視点では,ネジの部分が非常に目立つことになる。透明感を演出するためには,ネジは全く不要である。
透明な眼鏡陳列台においてのネジの有無は,眼鏡陳列台の取引の非常に重要な要素となる。なお,甲第3号証は,ネジ止めをしていない写真であり,本件意匠の特徴的部分を意図的に排除したものである。
(4)底板の有無
本件意匠は,「ブリッジ掛止板」と「背面板」を組み立ててネジ止めする態様であり,イ号意匠は,組み立てをしない一体型の態様である。さらに,本件意匠は底板がないし,イ号意匠は底板がある。そのため,両意匠は,基本構造態様とデザインが大きく異なる。
また,眼鏡陳列台の取引者は,眼鏡を陳列した時の全体の安定感が重要となるため,陳列台の底板の有無が取引の重要な判断根拠となる。イ号意匠の底板が面であることと本件意匠の「ブリッジ掛止板」と「背面板」の下部のL宇状部分のデザインは,全く異なっている。そのため,請求人がイ号意匠の底板について類否の判断の与える影響は微弱であるという主張は,取引者の視点を全く無視したものである。
(5)鈎状の引っ掛け部
眼鏡陳列台の取引者の視点での重要な部分は,眼鏡のブリッジ部を引っ掛ける鈎状の引っ掛け部(以下「引っ掛け部」という)が重要な部分である。眼鏡陳列台取引者は,眼鏡購入者が眼鏡を選ぶ際,取りやすく戻しやすい陳列となっているか,陳列されている眼鏡が滑り落ちないか,という引っ掛け部のデザインを重視する。
(6)その他
陳列棚は,120cmが一般的であるため,眼鏡の横幅から計算すると,通常,3列の配置となるため,3列は本件意匠の特徴的なデザインではないと考える。眼鏡陳列台は陳列棚に展開するため,6段とすることや傾斜をつけることも特徴的なデザインとはいえない。眼鏡陳列台の取引にあたって,これらの点は重要視されない。
(7)弊社取引先の主張
本件意匠とイ号意匠に関して,弊社取引先から,「両意匠共通点に対しての反論」が弊社に提出されている(乙第2号証)。
(8)結論
以上より,イ号意匠は本件意匠の類似の範囲に属しないので,答弁の趣旨通りの判定を求める。

3.証拠方法
乙第1号証 実用新案公報(昭39-25670)
乙第2号証 両意匠共通点に対しての反論(当審注:非当事者作成)

第3 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は,平成28年(2016年)5月18日に意匠登録出願され(意願2016-12088号),平成28年12月2日に登録(登録第1566700号)の設定がなされ,平成29年(2017年)1月10日に意匠公報が発行されたものであって,願書及び願書に添付された図面の記載によれば,意匠に係る物品を「眼鏡用陳列台」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである(判定請求人が提出した甲第1号証(別紙第1)参照)。
すなわちその形態は,
基本的構成態様は
A 全体形状は,眼鏡のつるを支持するための孔部(以下,つる掛け孔部)を設けた背面板と眼鏡のブリッジ部を掛ける凸状部(以下,ブリッジ掛け片)を形成したブリッジ掛止板からなり,各板を組み立ててなる全体が透明なものであって,
具体的構成態様は,
B-1 正面視は,縦横比率約7:12の略横長長方形状で下端を後方に略L字状に屈曲して水平面から約80度で後方に傾けてなる背面板に,
B-2 円形のつる掛け孔部を縦方向1列6個,6列,合計36個設けたものであり,その配置は,左右端近傍に1列ずつ,その間に4列設け,端部から列(つる掛け孔部の孔中心位置)までと列間の間隔(つる掛け孔部の孔中心位置から隣列の孔中心位置)は,幅広,幅狭の間隔を交互に繰り返し,つまり,左端から右端まで横方向に全体を107分して,約4.5:26:10:26:10:26:4.5の間隔で列を配し,列の縦方向のつる掛け孔部(中心位置)配置は上端から1個目までは,余地部を設けてやや広めに,1個目から下端までほぼ等間隔に配し,
B-3 ブリッジ掛止板部は,側面視,略縦長倒台形板状とし,背面板のつる掛け孔部の列の各幅広の間隔部の略横方向中央で,縦方向一個目のつる掛け孔部中央位置から下端までにわたって,3箇所に計3枚設け,背面側と底面側を正面視左方に略L字状に屈曲して細幅片を形成し,底面側細幅片には前方寄りに1つ,背面側細幅片には上方と下方に2つ小孔を設け,前方からその背面側細幅部の2つの小孔部に蝶螺子を背面で止め付け,背面板と組み合わせたものであって,
B-4 側面視のブリッジ掛止板の止め付け側を除く,略縦長倒台形の各辺の態様は,底面側短辺は水平方向に,平面側短辺は背面側に向けて(前方から後方)下方へ斜状に形成され,前方側長辺は背面側に向けて(前方から後方)斜状に形成され,前方側長辺縁部は凹凸を繰り返して略ジグザグ状になり,凸状部にあたるブリッジ掛け片は,その外方辺が下方直線縁部と同一線上にあり,その線上から隅丸角状に凹状部を切り欠いたように略隅丸四角片状に5つ形成され,ブリッジ掛け部は,5つのブリッジ掛け片の上辺部及び下方直線縁部の直上の合計6つに僅かに凹みを設けたごく浅い鉤状に設けられ,ブリッジ掛け片の縦方向長さは凹状部より長いものである。

2.イ号意匠
本件判定請求の対象であるイ号意匠は,判定請求書と同時に提出されたイ号意匠を示す図1ないし3及びイ号意匠の参考斜視図により示されたものであって,意匠に係る物品は「眼鏡用陳列台」であると認められ,その形態を,イ号意匠を示す図に表されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。
すなわちその形態は,
基本的構成態様は
a 全体形状は,つる掛け孔部を設けた背面板とブリッジ掛け部を形成したブリッジ掛止板及び底面板からなり,全体があらかじめ一体に接合して形成された透明なものと認められ,
具体的構成態様は,
b-1 正面視,縦横比率約8.5:12の略横長長方形状の板状体で水平面から約80度で後方に傾けてなる背面板に,
b-2 横長だ円形のつる掛け孔部を縦方向1列6個,6列,合計36個設けたものであり,その配置は,左右端近傍に1列ずつ,その間に4列設け,端部から列(つる掛け孔部の孔中心位置)までと列間の間隔(つる掛け孔部の孔中心位置から隣列の孔中心位置)は,幅広,幅狭の間隔を交互に繰り返し,つまり,左端から右端まで横方向に全体を107分して,約6.5:24:11:24:11:24:6.5の間隔で列を配し,列の縦方向のつる掛け孔部(中心位置)配置は上端から1個目までは,余地部を設けてやや広めに,1個目から下端までほぼ等間隔に配し,
b-3 側面視,略縦長平行四辺形板状のブリッジ掛止板部を背面板のつる掛け孔部の列の各幅広の間隔部の横方向略中央に,縦方向上端から一つ目のつる掛け孔部までの中間位置から下端にわたって3箇所,3枚設け,背面板と接合し,
b-4 背面板とブリッジ掛止板は,縦横比率約3:11の略細長長方板状の底面板と略逆さT字状に接合したものであって,
b-5 側面視のブリッジ掛止板の止め付け側を除く,略縦長平行四辺形の各辺の態様は,底面側短辺は水平方向に,平面側短辺も水平方向に平行状に形成され,接合部にあたる後方側長辺および前方側長辺は背面側に向けて(前方から後方)斜状に形成され,前方側長辺縁部は,凹凸を繰り返して略ジグザグ状になり,凸状部にあたるブリッジ掛け片は,下方直線縁部が凹状部の内方辺と同一線上にあり,その線上から斜め上方に突出したように略三角状に6つ形成され,凹状部は角状で,ブリッジ掛け部は,6つ,ブリッジ掛け片の上辺部に四角状の凹みを設け,前方先端をごく細幅の角状に立てた鉤状に形成され,ブリッジ掛け片の縦方向長さは凹状部より長いものである。

3.本件登録意匠とイ号意の対比
(1)意匠に係る物品
本件登録意匠は「眼鏡用陳列台」であり,イ号意匠も「眼鏡用陳列台」であって,実質的に本件登録意匠とイ号意匠(以下,両意匠という。)の意匠に係る物品は,眼鏡を販売するため陳列する機能,用途について共通するので,両意匠の意匠に係る物品は一致する。
(2)両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として以下の共通点及び相違点が認められる。
(2-1)共通点
基本的構成態様として
(あ)全体形状は,眼鏡のつるを支持するための孔部(以下,つる掛け孔部)を設けた背面板とブリッジ部を掛ける凸状部(以下,ブリッジ掛け片)を形成したブリッジ掛止板からなり,全体が透明なものである点。
具体的構成態様として
(い)正面視略横長長方形状の背面板で,水平面から約80度,後方に傾けたものである点,
(う)背面板に,つる掛け孔部を縦方向1列6個,6列,合計36個設け,その列の配置は,左右端近傍に1列ずつ,その間に4列,幅広,幅狭の間隔を交互に繰り返して配し,縦方向のつる掛け孔部の配置は上端から1個目のまでは余地部を設けてやや広めに,1個目から下端までは,ほぼ等間隔に設けている点,
(え)ブリッジ掛止板は略縦長四角板状で背面板につる掛け孔部の列の各幅広の間隔部の略横方向中央に3箇所,計3枚設けられ,ブリッジ掛止板の前方側長辺縁部は,ブリッジ掛け片と凹状部を繰り返して略ジグザグ状に,ブリッジ掛け部は6つ形成され,ブリッジ掛け片の縦方向長さは凹状部より長いものである点,
(2-2)相違点
基本的構成態様として
(ア)本件登録意匠は,底面板がないものであるのに対し,引用意匠は略横長長方板状の底面板を設けている点
(イ)本件登録意匠は,(蝶螺子で止めつけられる)組み立て式のものであるのに対し,イ号意匠は(あらかじめ接合して)一体に形成されたものである点,
具体的構成態様として,
(ウ)略横長長方板状の背面板について,正面視の縦横比率が本件登録意匠は,7:12の略横長長方形状で下端部が後方に略L字状に屈曲した略L字板状であるのに対し,イ号意匠は正面視の縦横比率が8.5:12の略横長長方板状体であって下端を屈曲したものではない点,
(エ)背面板のつる掛け孔部の形状について,本件登録意匠は円形であるのに対し,イ号意匠は横方向に長いだ円形状である点,
(オ)背面板のつる掛け孔部の列配置が横方向で全体を107分して,本件登録意匠は約4.5:26:10:26:10:26:4.5であるのに対し,イ号意匠は,約6.5:24:11:24:11:24:6.5である点,
(カ)ブリッジ掛止板は,本件登録意匠は上部短辺が前方から後方へ斜状に傾斜し,側面視略倒台形状であって,背面側と底面側で正面視左方に略L字状に屈曲して細幅片を形成し,背面側細幅片には上方と下方に,底面側細幅辺には前方に小孔を設けて,縦方向の,1個目のつる掛け孔部中央位置から下端までにわたって設け,背面側細幅片の上方と下方と背面板後方で蝶螺子によって止めつけているのに対し,イ号意匠の上下辺は平行状で,側面視略平行縦長四辺形板状であって,細幅片は形成しておらず,縦方向の上端から1個目のつる掛け孔部までの中間位置から下端にわたって設け,背面板と板体端部で接合されたものである点,
(キ)ブリッジ掛止板の前方側長辺縁部の態様について,本件登録意匠のブリッジ掛け片は,その外方辺が下方直線縁部と同一線上にあり,その線上から隅丸角状に凹状部を切り欠いたように形成された略隅丸四角片状で,5つ形成され,ブリッジ掛け部はブリッジ掛け片の上辺部及び下方直線縁部の直上に僅かに凹みを設けたごく浅い鉤状に形成されたものであるのに対し,イ号意匠のブリッジ掛け片は,下方直線縁部が凹状部の内方辺と同一線上にあり,その線上から斜め上方に突出したように形成された略三角状で,6つ形成され,凹状部は角状で,ブリッジ掛け部は,ブリッジ掛け片の上辺部に四角状の凹みを設け,前方先端をごく細幅の角状に立てた鉤状に形成された点,
について相違する。

4.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本件登録意匠の出願前に存在する公知意匠を参酌し,需要者の注意を引きやすい部分を考慮した上で,本件登録意匠とイ号意匠が類似するか否かについて,考察する。
まず,共通点(あ)の全体形状については,「眼鏡用陳列台」の意匠の骨格的な構成態様に係るものであるが,つる掛け孔部を設けた背面板とブリッジ掛止板からなるもの,また,眼鏡用陳列台本体全体が透明なものは本件登録意匠の出願前に既によく見られる態様(例えば,参考意匠1:consept-s社から発行された外国カタログ「06.2Hauptkatalog [concept・s]」33頁所載の02と番号を付された眼鏡用陳列用具の意匠,(別紙第3参照)参考意匠2:国際事務局意匠公報掲載の登録番号DM/056141のDisplay units for the presentation of goods and parts of display units の5と番号を付された(商品陳列具)の意匠(別紙第4参照))であって,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
次に,共通点(い)正面視略横長長方形状の背面板で,水平面から約80度で後方に傾けたものである点は,後方に傾けたものは眼鏡用に限らず「商品陳列具」の物品分野でごく普通の態様であり,約80度前後に傾けたものも「眼鏡用陳列台」の物品分野においてよく見受けられる態様であるから(例えば,参考意匠2,参考意匠3:外国カタログ「海▲潤▼▲徳▼」21頁所載の上から3段目,右から2つ目の商品陳列具の意匠(別紙5第参照),参考意匠4:ドイツ意匠公報14巻3413頁所載の卓上商品陳列台(別紙6第参照))であり,本件登録意匠とイ号意匠のみが持つ特徴のある共通点とは認められず,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。そして共通点(う)の,つる掛け孔部を縦方向1列6個,6列,合計36個に設けた点については,眼鏡を陳列する際には,横3列,縦6段,陳列可能なつる掛け孔部の配置態様であって,「眼鏡用陳列台」の物品分野において,様々のつる掛け孔部の横列数,縦段数のものが存在し,その内で,眼鏡を3列に陳列(つる掛け孔部が6列)するもの(例えば,参考意匠5:「HD浩▲達▼ 台州市椒江浩▲達▼眼▲鏡▼展示架製造厂」下段,左から1つ目の商品陳列用具の意匠(別紙7第参照))も,縦に6段陳列するもの(例えば,参考意匠1,参考意匠6:米国特許商標公報所載の登録番号US D605428s眼鏡陳列用具の意匠(別紙8第参照))もよく見受けられる態様であり,この共通点のみをもって,両意匠が類似するとまではいえず,つる掛け孔部の,縦方向配置について,上端から1個目のつる掛け孔部まで余地をもって,やや広めにし,2個目以降の配置を等間隔にすることは,ごく普通に見受けられる配置態様であり(例えば,参考意匠1,参考意匠4),横方向配置について,眼鏡は正面から見て通常,横長であって,つるとつるの間の眼鏡の正面側を配置する箇所が幅広の間隔部分にあたり,幅狭の間隔部分は隣設する眼鏡同士の眼鏡のつる掛け孔部の間隔にあたり,眼鏡の出し入れに邪魔にならない程度の幅で,眼鏡の正面側の幅よりも幅狭であるのが,ごく普通であるから,つる掛け孔部が幅広,幅狭の間隔を交互に繰り返す配置は,この種「眼鏡用陳列台」の物品分野において,つる掛け孔部を配して,横方向に眼鏡を並列配置する態様としては,ごく普通の態様であって(例えば参考意匠5),後に述べる具体的な割合の差異もあり,この点が類否判断に与える影響は小さい。(え)はブリッジ掛止板の概略形状及び配置態様についてであって,「眼鏡用陳列台」の物品分野において,略縦長四角板状のものは例示するまでもなく,ごく普通の態様であり,上記(う)に示したとおり,眼鏡が横3列陳列可能な眼鏡用陳列台としたものは,よく見受けられる上,ブリッジ掛止板を眼鏡用陳列台の眼鏡の正面側を配置する幅広の間隔部の略中央に設け,全体で3枚のブリッジ掛止板を設けたものも見受けられる態様であって(例えば,参考意匠7:意匠登録第1292307号の眼鏡陳列台の意匠(別紙第9参照)),前側縁部がブリッジ掛け部と凹状部を繰り返して略ジグザグ状に形成された態様も,ブリッジ掛け片の縦方向長さは凹状部より長いものである点についても「眼鏡用陳列台」の物品分野において普通の態様であるから(例えば,参考意匠1,参考意匠2),この点も両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
とすると,この種物品においては,これらの共通点は,両意匠にのみ共通する態様とは到底いえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも小さいものであって,そして,上記の共通点を総合しても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
これに対し,相違点(ア)の本件登録意匠は底面板がないものであるのに対し,引用意匠は略横長長方板状の底面板を設けている点は,両意匠の基本的構成態様に係り,物品の下方の態様についての相違ではあるが,十分に需要者が観察できる外観の形状の相違であって類否判断に与える影響は大きい,次に相違点(イ)の本件登録意匠は,(蝶螺子で止めつけられる)組み立て式のものであるのに対し,イ号意匠は一体に形成されたものである点は,取引時においても使用時においても,一体に接合されたものと各部を組み立てて使用するものでは,その構成の相違は一見して外観から判別可能であって,両意匠全体の印象に関わり,類否判断に与える影響は大きいものである。また,相違点(ウ)については背面板の具体的態様についてであり,背面板が下端で後方に略L字状に屈曲した略横長長方板状であるか略横長長方板状であるかについては,下端で後方の態様とはいえ,外観から十分に看取できる態様の相違であって,正面視で,本件登録意匠の方がイ号意匠に比して,横幅に対し,縦の長さ比率がやや短く,より横長の略横長長方板状であるという,正面視の縦横比率差ともあいまって,両意匠の類否判断に与える影響は,大きい。
そして,相違点(エ)は,つる掛け孔部の具体的形状に係るものであって,本件登録意匠は,円形であるのに対し,イ号意匠が横長のだ円形である点は,双方の形態は,共にこの種「眼鏡用陳列台」においては,ごく普通に見受けられる態様であるから,この点は類否判断に与える影響は小さい。
さらに相違点(オ)はつる掛け孔部の列配置について,横方向で本件登録意匠は約4.5:26:10:26:10:26:4.5の配置間隔であるのに対し,イ号意匠は約6.5:24:11:24:11:24:6.5である点は,本件登録意匠の幅広の間隔部と幅狭の間隔部の比は約26:10(2.6:1)であって,イ号意匠は約24:11(2.2:1)であり,イ号意匠のものより,本件登録意匠のほうが幅狭の間隔部が若干狭く幅広の間隔が若干広いものであって,数値としての相違は大きくはないものの,眼鏡を陳列した際の横方向の隣接列との具体的配置間隔に係り,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。続いて,相違点(カ)は,ブリッジ掛止板についての相違であって,本件登録意匠のブリッジ掛止板が側面視で略倒台形状で,背面側と底面側で細幅に略L字状に屈曲した細幅片を形成し,背面側細幅片には上方と下方に底面側細幅辺には前方に小孔を設けて,背面板の縦方向で1個目のつる掛け孔部中央位置から下端までにわたって設け,蝶螺子によって止めつけたものであるのに対し,イ号意匠が側面視で略縦長平行四辺形板状で細幅片がなく,縦方向の上端から1個目のつる掛け孔部までの中間位置から下端にわたって設け背面板に接合された態様は,一見して外観から看取できる構成及び形状の相違点であって,この点が類否判断に与える影響は大きい。
加えて,相違点(キ)はブリッジ掛止板の前方長辺縁部の態様であって,下方直線縁部をブリッジ掛止板の縁部としてみると,本件登録意匠は,ブリッジ掛止板の前方長辺縁部を隅丸角状の凹状に切り欠いて,凸状の略隅丸四角状のブリッジ掛け片を5つ形成し,僅かに凹みを設けたごく浅い鉤状のブリッジ掛け部をブリッジ掛け片上辺および下方直線縁部直上に形成したのに対し,イ号意匠は,ブリッジ掛止板の前方長辺縁部から斜め上方に突出した凸状の略三角状のブリッジ掛け片を6つ形成し,その上辺部に角状の凹みを設け先端をごく細幅の角状に立てて鉤状のブリッジ掛け部を形成したものであって,ブリッジ掛止板の前方長辺縁部に対して,ブリッジ掛け片の設け方及び具体的形状について両意匠の態様は大きく相違し,ブリッジ掛け片は眼鏡用陳列台の最も前方で,使用時にも眼鏡を掛け外す際に注意を払う部分であるから,目に付き易い部分であり,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。
これら相違点が両意匠の類否判断に与える影響を総合すると,相違点(エ)が類否判断に与える影響が小さく,相違点(オ)が一定程度の影響を及ぼすものであったとしても,外観から容易に需要者が観察可能であって,一見して看取できる基本的構成態様の相違である相違点(ア)及び(イ)が一体となって,両意匠の相違点を強く際立たせており(ウ)の背面板の具体的構成態様についての相違もあいまって(ア)及び(イ)を補強し,相違点(カ)及び(キ)も,ブリッジ掛止板の目に付き易い部分の相違であって,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものであるから,これら相違点の両意匠の類否判断に及ぼす影響は,非常に大きく,相違点(ア)ないし(キ)があいまって生じる視覚的効果は,両意匠を意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものである。
なお,請求人は,その判定請求弁駁書において,「なお参考として,請求人は別の眼鏡用陳列台である意願2016-28619(甲第5号証)が意匠登録第1556625号(甲第6号証)の類似範囲ということで平成29年6月2日発送の拒絶理由通知書(甲第7号証)を受けた。」として,審査における「眼鏡用陳列台」の物品分野における類否判断の参考例として甲第5号証ないし甲第7号証を提出したが,上記出願に対する審査における判断が当審の判断を拘束する法的理由はなく,当審における上記の判断を覆す理由とはならない。

5.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については一致するものの,形態については,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点があいまって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断に大きな影響を及ぼしているものであるから,意匠全体として需要者に与える美感が異なるものであって,本件登録意匠とイ号意匠とは類似しないものと認められる。

第6 むすび
以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

よって,結論のとおり判定する。
別掲

判定日 2017-09-01 
出願番号 意願2016-12088(D2016-12088) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (F5)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 鶴田 愛 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2016-12-02 
登録番号 意匠登録第1566700号(D1566700) 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ