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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C1
管理番号 1333290 
審判番号 不服2017-7269
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-20 
確定日 2017-09-21 
意匠に係る物品 バスマット 
事件の表示 意願2016- 5115「バスマット」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成28年(2016年)3月8日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は「バスマット」であり,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」ともいう。)は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものである。(別紙第1参照)
すなわち,本願意匠は,具体的には,(ア)平面視で略隅丸長方形状の板状体とし(イ)平面視,短手方向略中央,板面横幅(長手方向)いっぱいに直線状の細幅側面視逆台形状のごく浅い溝部を設けたものであって,(ウ)その縦横厚み比率は約7:10:0.25としたものであり,(エ)全体の周側面は略鉛直状で(オ)平面視下辺寄り,長手方向中央にごく小さいアルファベット状の浅い凹部を複数,短く連ねて設けたものである。

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における平成28年11月25日付けで通知した拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,「本願意匠の属する物品分野において,下記意匠1として示すように,全体形状を隅丸長方形薄板状とし,表面の長手方向中央に細幅の浅い直線状溝を形成したものが,本願出願前より公然知られています。また,下記意匠2として示すように,表面に溝を一本だけ形成し,その他の表面部分は平坦面状に形成したものが,本願出願前より公然知られています。
そうすると本願の意匠は,下記意匠1の形状を基本とし,下記意匠2のように表面に溝を一本だけ形成したという程度にすぎないことから,当業者であれば容易に創作することができたものといえます。
意匠1
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1377278号の意匠
意匠に係る物品:赤ちゃん用湯上りマット
意匠2
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1377279号の意匠
意匠に係る物品:バスマット 」
としたものである。

第3 請求人の主張の要点
これに対し,請求人は,審判を請求し,本願意匠の創作非容易性についておおむね以下のとおり主張した。
1.本願意匠が登録されるべき理由
本願意匠の創作の主眼は,使用時には風呂場から出てバスマットに載る際に,平面視短手方向中央の直線状の窪みと「soil」の文字の形の溝が特に看者の注意を惹き,実際の縦横比より横長の印象を与えると共に手前側に視線を集めさせ,僅かな窪みと文字の溝が表面に陰影を生み洗練された美感を与える点にあり,それらは特異な表現手法により創作されたものであり,格別に創作性の高い特徴を有するものである。

2.創作非容易性の判断
平面視短手方向中央の直線状の僅かな窪み(横一文字の凹陥部)については,引用意匠1の十文字の隙間(溝)や引用意匠2の縦一文字の隙間(溝)からは容易に創作できたとはいえず,さらに,かなり図案化された「soil」の文字の形の溝(別の凹陥部の群)は,引用意匠1にも引用意匠2にも一切なく,平面視短手方向中央の直線状の僅かな窪み(横一文字の凹陥部)とかなり図案化された「soil」の文字の形の溝(別の凹陥部の群)の組み合わせについては,創作性が高く,容易に創作できたとは到底いえない。
さらに,本願意匠と,引用意匠1及び引用意匠2において,バスマットの基本的形状自体は全体が横長の隅丸長方形という点は,全体が横長の隅丸長方形のバスマットは従来から多数存在し,バスマットの基本的形状のうちかかる点はそれほど斬新なものでなく,ありふれているから小さく評価すべきであると思料し,物品「バスマット」において,最も見えやすい部分は明らかにバスマット平面及び長辺側上方から見た状態であるから,その平面及びかかる方向からの斜視における形状模様の有無は大きなウエイトを持ち,本願意匠における特徴のある部分はバスマット平面並び斜視における凹凸の形状及び模様であり,平面視短手方向中央の直線状の僅かな窪み(横一文字の凹陥部)とかなり図案化された「soil」の文字の形の溝(別の凹陥部の群)の組み合わせであるため,これらを大きく評価するのが当然であると思料する。
以上より,平面視短手方向中央の直線状の僅かな窪みと文字の溝による特有のまとまりは,高い創作性を有する点であり,意匠として最重要なこの組み合わせた点の特徴について評価をしなければならない。そして,これらの創作を示唆する構成は,引用意匠1にも引用意匠2にも表れておらず,引用意匠1の十文字の隙間(溝)部分を引用意匠2の縦一文字の隙間(溝)部分に置換したとしても,本願意匠の平面視短手方向中央の直線状の僅かな窪みと文字の溝の構成,及びこれらによる特有のまとまりも実現できるものではないのであって,引用意匠1及び引用意匠2は,本願意匠の創作の独自性,創作非容易性を否定できるものではない。

3.むすび
以上のとおりであるため,引用意匠1にも引用意匠2にも本願意匠の創作的特徴を示唆する構成は表れておらず,かかる特徴は,引用意匠1と引用意匠2からありふれた範囲内の変形ということはできない。
したがって,意匠法第3条第2項の規定に基づいて拒絶した原査定には,理由がなく,本願には他にその登録の妨げとなる理由が存在せず,本願意匠は登録されるべきである。

第4 当審の判断
請求人の主張を踏まえ,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠が容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。
1 引用意匠
意匠1(別紙第2参照)
意匠に係る物品は「赤ちゃん用湯上りマット」であり,その形態は,全体は略隅丸長方形状の板状体であって,平面視で短手方向略中央及び長手方向略中央,板面の縦横幅いっぱいに直線状の溝部を十文字状設けたものであり,全体の縦横厚み比率は約7:10:0.1であって,仔細に見ると上層,下層の2層からなり下層部は角張った板状で周側面は略鉛直状で,上層部はごく僅かに下層部より小さく,周囲上辺角部を丸みのある形態としており,溝部の態様は厚み方向略半ばの深さの半円状の細幅溝部である。
意匠2(別紙第3参照)
意匠に係る物品は「バスマット」であり,その形態は,全体は略隅丸長方形状の板状体であって,平面視で長手方向略中央,板面の縦幅いっぱいに直線状の細幅溝部を設けたものであり,全体の縦横厚み比率は約7:10:0.2であって,仔細に見ると周側面角部は円弧状に丸みを帯び,厚み方向略中央にごく薄いごく細幅の縁部を形成しており,平面視左上角部は縁部のみ残して小さく略L字状に内方に切り欠かれており,その左上角縁部に環状のループ部を設け,溝部の態様は略厚み方向略半ばの深さの上縁が丸みを帯びた正面視略逆台形状の細幅溝部である。

2 本願意匠の創作容易
意匠が容易に創作することができたか否かの判断は,その意匠の構成態様について,(あ)それらの基礎となる構成や具体的な態様などが当該意匠の出願前に公知又は周知であり,そして,(い)それらの構成要素を,ほとんどそのまま表すか,(う)当該物品分野において周知の創作手法であるところの,単なる組合せ,若しくは,構成要素の全部又は一部の単なる置き換えなどがされたに過ぎないものであるか否か等によって行うことを要するので,この観点を踏まえて検討する。
まず,上記,第2に記載のとおり,原審の引用した意匠1及び意匠2は,本願出願前に特許庁の発行した意匠登録公報に掲載されたものであって(意匠1:意匠登録第1377278号,意匠2:意匠登録第1377279号,共に平成22年1月22日に特許庁の発行した意匠登録公報に掲載),本願の出願が平成28年3月8日であるから,本願意匠の出願前に公知の意匠であったと認められる。
次に,意匠1及び意匠2の形態は,それぞれ上記1のとおりであるが,本願意匠の第1の(ア)の平面視で略隅丸長方形状の板状体とする形態は,「バスマット」の物品分野においてはごく普通に見受けられる形状であって,意匠1及び意匠2にも見受けられる。
そして,第1の(イ)の形態については,平面視,短手方向略中央,板面長手方向いっぱいに直線状の細幅側面視逆台形状のごく浅い溝部を設けた形態であって,意匠1には,板面長手方向いっぱいに直線状の細幅の溝部を設けた形態は認められる。
しかし,意匠1の溝部は,厚み方向略半ばの深さの半円状の細幅溝部であって,側面視逆台形状のごく浅い溝部の形態が表されているとはいえず,意匠2の溝部は,平面視で長手方向略中央,板面の縦幅いっぱいに直線状の溝部を設けたものであるから本願意匠のような横幅いっぱいに溝部を設けた形態は表されていない。
また,第1の(ウ)の形態については,全体の縦横厚み比率についてであって,本願意匠と意匠1及び2について,平面視の縦横比率は約7:10で共通するものの,厚み比率においては,本願意匠は約0.25であり,意匠1は約0.1で意匠2は約0.2であって,意匠1及び意匠2に縦横厚み比率を約7:10:0.25とする形態は表されていない。
さらに,第1の(エ)の形態については,意匠1の周側面は2層からなり下層部は角張った板状で周側面は略鉛直状であるものの,上層部は,上辺角部を丸みのある形態としており,意匠2の周側面はごく薄いごく細幅の縁部のある略円弧状であるから意匠1及び意匠2のいずれにも全体の周側面が略鉛直状である形態は,表されていない。
加えて,第1の(オ)の形態については,意匠1及び意匠2のいずれにも正面視下辺寄り,長手方向中央にごく小さいアルファベット状の浅い凹部を複数,短く連ねて設けた形態は,表されていない。
したがって,本願意匠の形態のうち第1の(イ)ないし(オ)の形態について,意匠1及び意匠2に表されているとはいえないから,意匠1及び意匠2をほとんどそのまま表して本願意匠が創作できたということはできない。

そして,意匠1及び意匠2に基づいて,「バスマット」の物品分野において周知の創作手法から容易に本願意匠が創作できたかについて検討すると,
まず,本願意匠の第1の(ア)の形態は,バスマットとしての全体形状についてであるが,当該形状は,本願出願前に「バスマット」の物品分野においてはごく普通に見受けられるありふれた態様であって(意匠1,意匠2)本願意匠のバスマットの全体形状を平面視で略隅丸長方形状の板状体の形態とした点は創作することが困難であったということはできない。
次に,第1の(ウ)の形態については,全体の縦横厚み比率であって,「バスマット」の物品分野においては,例示するまでもなく種々の構成比率のものがあるところ,本願意匠の平面視の縦横比率は意匠1及び意匠2に同様の比率が見受けられ,本願意匠,意匠1及び意匠2について,いずれも板状体で厚みの薄いものであって,その厚み比率について(それぞれ本願意匠は0.25,意匠1は0.1,意匠2は0.2)僅かに構成比率の変更を行って,創作することが,特段の困難を要したということはできない。
そして,第1の(エ)の形態については,本願意匠のような全体の周側面が略鉛直状である形態は,「バスマット」の物品分野に限らず,広く板状体の形態を有する物品分野において,ごく普通に見受けられるありふれた態様であり,意匠1の下層部にも見受けられ,第1の(オ)の形態についても,「バスマット」の分野において,板状体の下辺寄り,長手方向中央にごく小さい商品名などを表す手法は,よく見られる手法であり,商品名などを浅い凹部のアルファベット状の形態として配することは,各種物品分野で行われている手法であって,この手法によって,浅い凹部としてアルファベット状の形態を短く連ねて,平面視下辺寄り,長手方向中央に配した点に格別の創作があったとまでいうことはできない。
しかしながら,上記第1の(イ)の形態について,平面視,短手方向略中央,板面横幅(長手方向)いっぱいに直線状の細幅側面視逆台形状のごく浅い溝部を設けた態様については,原審で引用した,本願出願前,公然知られた形態である意匠1及び意匠2のいずれにも表されておらず,例え,意匠1の板面横幅(長手方向)いっぱいの溝部の態様を意匠2の溝部の形態に置き換え,全体の厚み及び溝部の深さなどの各部の構成比率の変更を行ったとしても,意匠1に表されたような十文字に溝部の表された「赤ちゃん用湯上りマット」の縦幅いっぱいに設けた溝部をないものとし,横幅いっぱいに設けた溝部のみのものとすることが「バスマット」の物品分野において本願意匠出願前にありふれた手法であったとする証拠はなく,周知の創作手法であったとすることはできない。
そうすると,上記(あ)ないし(う)にあてはめて考えると(あ)については上記のとおり,本願意匠出願前に意匠1及び意匠2は,公然知られた意匠と認められ,(い)については,上記のとおり本願意匠の形態のうち第1の(イ)ないし(オ)の形態について,意匠1及び意匠2に表されているとはいえないから,ほとんどそのまま表したものということはできず,(う)については,各部の構成比率を多少変更して表すことがありふれた手法であるとしても,意匠1に表されたような十文字に溝部の表された「赤ちゃん用湯上りマット」の縦幅いっぱいに設けた溝部をないものとし,横幅いっぱいに設けた溝部のみのものとすることが「バスマット」の物品分野において本願意匠出願前にありふれた手法であったとする証拠はなく,「当該物品分野において周知の創作手法」によって創作することができたということはできない。
したがって,本願意匠は,当業者であれば,容易に創作することができたものということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときに該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-08-29 
出願番号 意願2016-5115(D2016-5115) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C1)
最終処分 成立 
前審関与審査官 竹下 寛 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 正田 毅
渡邉 久美
登録日 2017-10-13 
登録番号 意匠登録第1590116号(D1590116) 
代理人 伊藤 夏香 
代理人 伊藤 夏香 
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