ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K1 |
---|---|
管理番号 | 1333296 |
審判番号 | 不服2017-10273 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-07-10 |
確定日 | 2017-09-29 |
意匠に係る物品 | 理美容はさみ |
事件の表示 | 意願2016- 12577「理美容はさみ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)6月13日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「理美容はさみ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし,本願において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を,「参考図を除く各図で,赤色に塗りつぶした以外の部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする箇所である。」としたものであって,具体的には,ねじ部によって回転可能に取り付けられた櫛刃と棒刃からなる理美容はさみの,ねじ部の前方から刃先の先端までの部分における,櫛刃については,等間隔に並んで配設している櫛歯の内,その先端部分にある1番目の櫛歯と櫛刃の峰の部分,及び棒刃については,棒刃の部分全体についてである。(別紙第1参照) 第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであり,原審が拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成17年(2005年)8月15日)に記載された,意匠登録第1247716号(意匠に係る物品,梳きはさみ)の意匠の本願意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に相当する部分(以下,本願部分に相当する引用意匠の部分を「引用部分」という。)としたものであって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「理美容はさみ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「梳きはさみ」であるが,その形態から見て,いずれもヘアカット用の梳きばさみであると認められるから,本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。 2.本願部分と引用部分の対比 (1)部分意匠としての用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分と引用部分(以下「両意匠部分」という。)の用途及び機能は,ねじにより回転可能に取り付けた櫛刃と棒刃により髪を梳きながら切ることができる梳きばさみであって,その位置,大きさ及び範囲は,櫛刃及び棒刃からなる梳きばさみの,ねじ部の前方から刃先の先端までの部分における,櫛刃の先端部分にある1番目の櫛歯と峰の部分,及び棒刃の部分であるから,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。 (2)両意匠部分の具体的形態 両意匠部分の形態を対比すると,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。 なお,対比にあたっては,引用意匠の図面における図の表示と図中の向きを本願意匠の図面に合わせることとし,引用意匠の六面図をそれぞれ右に90°回転させた上で,引用意匠の「正面図」を「正面図」とし,引用意匠の「左側面図」を「平面図」とし,引用意匠の「右側面図」を「底面図」とし,引用意匠の「平面図」を「右側面図」とし,引用意匠の「底面図」を「左側面図」とし,本願意匠及び引用意匠の「背面図」をそれぞれ右に180°回転させて正しい向きの「背面図」とし,その他は,これらに準じて表されているものとする。 まず,共通点として, (A)両意匠部分は,櫛刃及び棒刃からなる理美容はさみの,ねじ部の前方から刃先の先端までの部分における,櫛刃については,先端部分にある1番目の櫛歯と峰の部分(以下「櫛刃意匠部分」という。),及び棒刃については,その棒刃全体の部分(以下「棒刃意匠部分」という。)であって, (B)櫛刃意匠部分は,正面視略直線状でその断面形状が略縦長直角台形状の棒状の峰の先端部分に,正面視略倒立「ノ」の字状の櫛歯(以下「先端櫛歯部」という。)を一体的に1つ形成し,峰の刃元部分を正面視略逆L字状に形成した形態としている点, (C)棒刃意匠部分は,背面視略横長長方形状でその断面形状が略楔状の板状の刃であって,その刃線部分を僅かに膨出した略弧状とし,刃先の峰側角部を隅丸形状とし,刃元の部分を背面視略倒立L字状に形成した形態としている点, が認められる。 他方,相違点として, (ア)櫛刃意匠部分の先端櫛歯部と棒刃意匠部分の刃先先端部の配置態様について,本願部分は,櫛刃が棒刃より長いため,先端櫛歯部の一部分しか棒刃とはかみ合わないような配置態様であるのに対して,引用部分は,棒刃が櫛刃より長く,先端櫛歯部は全て棒刃とかみ合うような配置態様である点, (イ)棒刃意匠部分の刃先先端部の態様について,本願部分は,峰側角部と刃線側角部を隅丸に形成し,刃先先端部を背面視略横U字状に形成しているのに対して,引用部分は,刃線側角部を隅丸に形成せず,刃先先端部を背面視略四半円形状に形成している点, (ウ)先端櫛歯部の態様について,本願部分は,櫛歯部分の形態を略倒立U字状に形成しているのに対して,引用部分は,該部位を略縦長直角台形状に形成し,その傾斜した上端部に略U字状の小切り欠き部を2つ形成している点, が認められる。 3.両意匠部分の形態の評価 まず,共通点(A)の態様については,両意匠部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この共通点(A)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。 また,共通点(B)の櫛刃意匠部分の態様,及び共通点(C)の棒刃意匠部分の態様についても,この種物品分野である理美容はさみの先行意匠に照らすところ,いずれもありふれた態様であるから,これらの形態を意匠上高く評価することはできないものであり,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 そして,これらの共通点(A)から共通点(C)の態様によって生じる視覚的効果が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は,これらを全体としてみても大きいものとはいえず,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 これに対し,相違点(ア)の櫛刃意匠部分の先端櫛歯部と棒刃意匠部分の刃先先端部の配置態様については,引用部分の先端櫛歯部の特殊な形状を見れば明らかなように,従来から知られている梳きばさみは,先端櫛歯部も含めた櫛刃全体と棒刃全体によって髪をカットできるものであるから,先端櫛歯部と棒刃部とがかみ合わないために櫛刃の先端部分では髪をカットできない梳きばさみは,本願部分のみに見られる特徴的な態様であって,この物品を購入し,使用する理容師及び美容師といった需要者が見た場合に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。 また,相違点(イ)の棒刃意匠部分の刃先先端部の態様,及び相違点(ウ)の先端櫛歯部の態様についても,棒刃の刃先先端部を背面視略横U字状に形成し,頭皮を傷つけないような本願部分の態様と,棒刃の刃先先端部の刃線側角部が角張っている引用部分のものとは,これを使用して髪を切る理容師及び美容師といった需要者にすれば,その使用方法も異なり別異なものであるとの印象を与えるものであるから,この相違点(イ)及び相違点(ウ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きいといえる。 そして,これらの相違点(ア)から相違点(ウ)によって生じる視覚的効果はいずれも大きく,それらが相まって生じる別異の印象は,両意匠部分の類否判断を決定付けるほど大きいものである。 4.両意匠の類否判断 上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品については一致し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲についても共通しているが,両意匠部分の形態については,共通点が類否判断に及ぼす影響は両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠部分は類似しないものである。 したがって,本願意匠と引用意匠とは類似しないものと認められる。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2017-09-19 |
出願番号 | 意願2016-12577(D2016-12577) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(K1)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 富永 亘、清野 貴雄、石川 天乃 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 神谷 由紀 |
登録日 | 2017-10-13 |
登録番号 | 意匠登録第1590070号(D1590070) |
代理人 | 大森 勇 |