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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H6
管理番号 1333298 
審判番号 不服2017-9398
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-28 
確定日 2017-09-26 
意匠に係る物品 デジタルオーディオプレーヤー 
事件の表示 意願2016- 18579「デジタルオーディオプレーヤー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2016年(平成28年)8月31日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「デジタルオーディオプレーヤー」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当する(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)としたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠,すなわち,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2016年 8月10日に受け入れた内国雑誌「特選街」2016年8月3日9号第97頁所載の「デジタルオーディオプレーヤー」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HA28007110号)であって,その形態は,同雑誌に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照。)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
いずれも,「デジタルオーディオプレーヤー」であるから,本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は,一致する。
(2)本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の形態
両意匠の形態を対比する(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)と,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。

(3-1)共通点
基本的構成態様として,
(A)全体は,縦長の扁平直方体形状とし,正面部に矩形状の表示部を設け,右側面部上端寄りに略短円柱形状のつまみ部を1個,頂部がほぼ面一になるよう取り付けている点。

具体的な態様として,
(B)正面部右端が背面側に傾斜している点,
(C)正面部右端上方寄りと背面部左端上方寄り((A)のつまみ部の取り付けられた箇所)をそれぞれ略凹状に切り欠いて,(A)のつまみ部の周側面の一部が,正面側と背面側にそれぞれ露出している点,
(D)左側面部の上端寄りに小円の操作ボタンを縦に3個,等間隔に近接して配置している点。

(3-2)相違点
具体的な態様として,
(ア)正面部の横と縦の長さの比率について,
本願意匠は,横と縦の長さの比率が,約1:1.5であるのに対し,
引用意匠は,横と縦の長さの比率が,約1:1.9である点,
(イ)正面部右端の傾斜面について,
本願意匠は,平坦面であるのに対し,
引用意匠は,さじ面である点,
(ウ)背面部の態様について
本願意匠は,背面部が略扁平四角錐台形状に突出しているのに対し,
引用意匠は,突出していない点,
(エ)正面右下隅部について,
本願意匠は,端部を斜めに欠切しているのに対して,
引用意匠は,欠切はない点,
(オ)正面部右端上方寄りの略凹状の切り欠き部について,
本願意匠は,傾斜面の略中央まで切り欠いているのに対し,
引用意匠は,傾斜面の内側端部まで切り欠いている点,
(カ)右側面部上端寄りのつまみ部について
本願意匠は,(カ-1)頂部を平坦面とし,(カ-2)頂部を暗調子としているのに対し,
引用意匠は,(カ-1)頂部を浅いすり鉢状に陥没させたものとし,(カ-2)頂部を暗調子とはしていない点,

2.類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,形態については,以下のとおりである。

(1)共通点の評価
基本的構成態様としてあげた共通点(A)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであるから,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。また,具体的な態様としてあげた共通点(B)ないし(D)もこの種物品の先行意匠に照らすところ,いずれもありふれた態様であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。

(2)相違点の評価
相違点(ア)の横と縦の長さの比率については,本願意匠は,引用意匠より縦の長さの比率がやや小さいものであるが,この種,携帯型のデジタルオーディオプレーヤーにおいては,この高さの割合の違いは,手にした際の印象の違いとなって表れることから,需要者に異なる印象をもたらし,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
次に,相違点(イ)の正面部右端の傾斜面については,平坦面であるか,さじ面であるかの視覚的相違が需要者の注意をひくものであるのに加え,本願意匠の傾斜面は,相違点(ウ)の背面部左端の傾斜面と相まって上面視,略上下対称形の傾斜面を形成しているのに対し,引用意匠の傾斜面は,正面部のみに形成されたものであって,正面部と背面部で異なる印象を与えており,この意匠的効果は両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
また,相違点(ウ)の背面部の突出部の有無については,この種,掌サイズのデジタルオーディオプレーヤーにおいて背面部は目に付きにくい箇所ではあるが,需要者にとって,手に持って使用する際に,背面部の態様や掌に包んだときの触感は関心事項であり,この相違点は軽視することができないものである。
そして,相違点(エ)の正面右下隅の欠切の有無については,欠切自体がさほど大きいものではなく,また,下端部の比較的目に付きにくい箇所における相違ではあるが,本願意匠は,正面部の傾斜面を斜めに欠切しており,欠切面が略台形状を成し,さらにこれに接する背面側の傾斜面の態様も,欠切部にあわせて間に三角形の傾斜面を挿入した3面からなる角部を形成していることから,欠切面の形状に加え背面部への意匠的効果を考慮するとその相違が両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。
さらに,相違点(オ)の正面部右端上方寄りの略凹状の切り欠き部については,本願意匠は,傾斜面の略中央まで切り欠いているため,つまみ部の周側面の縦の露出が一部分であるのに対し,引用意匠は,傾斜面の内側端部まで切り欠いているため,つまみ部の周側面の縦全体が露出し,見る者に異なる印象を与え,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
さらに加えて,相違点(カ)の右側面部上端寄りのつまみ部について,まず,相違点 (カ-1)の頂部の態様については,全体としてみれば比較的小さい部分における相違ではあるが,つまみ部を右側面部の垂直面にあわせてほぼ面一に取り付けたなかにおいて,頂部を平坦面としたものであるか浅いすり鉢状に陥没させたものであるかの相違は,それぞれのアクセントとなっており,また,手に持って指に触れた感触も大きく異なるものであることから,需要者の注意を引くものといえ,その相違が両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものであること,また,相違点(カー2)の頂部を暗調子としたものであるか否かについても,本願意匠はつまみ部の頂部を暗調子とすることによってワンポイント的な視覚効果があるといえ,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものといえる。

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
別掲
審決日 2017-09-12 
出願番号 意願2016-18579(D2016-18579) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北代 真一 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 江塚 尚弘
内藤 弘樹
登録日 2017-10-06 
登録番号 意匠登録第1589340号(D1589340) 

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