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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 C5 |
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管理番号 | 1333301 |
審判番号 | 不服2017-1423 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-01 |
確定日 | 2017-10-10 |
意匠に係る物品 | 飲食に用いる容器 |
事件の表示 | 意願2016-7191「飲食に用いる容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成28年(2016年)3月31日の意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「飲食に用いる容器」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第2 当審の拒絶の理由 当審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,願書の「意匠に係る物品の説明」の欄の記載によれば,本願意匠に係る物品は,飲食用の容器であって,使用者が容器の上方開口に口をつけた際にも容器内部の液体がこぼれ難くなるように,上方開口縁に外方に突出したフランジを設けているもので,飲用グラス等として使用されるものである。 そして,その具体的な形態は,(A)上方が開口した,有底の回転体形状であって,詳細には,(B)開口部には外側に突出したフランジ部を設けたもので,そのフランジの端部は,半円形状に形成しているものである。(C)このフランジと本体周面が交わる入隅を断面形状で円弧状として,(D)該フランジ部の直下には,僅かな長さの略鉛直方向の首部が設けてあり,(E)首部のすぐ下から,全高の約3分の2の長さの斜め直線状の周面を設けているもので,(F)それより下の,残りの約3分の1を,円弧状の周面とし,(G)底面は,僅かな幅の接地面を介して,上方に膨出した凹部を設けているものである。 しかしながら,コップやグラスといわれる飲食に用いる容器や,飲料品・食料品を製造・保管・運搬・販売するための包装用容器の分野における,購入者がその容器をそのまま飲食に用いる容器において, (1)上方が開口した,有底の回転体形状であって,詳細には,断面形状で,開口部から全高の約3分の2の斜め直線状の周面とし,それより下の,残りの約3分の1を,円弧状の周面としたものは,本願の出願前に公知の態様(例えば,意匠1)と認められ, (2-1)開口部に,外側に突出したフランジ部を設けることは,カップ状の包装用容器など,この種物品分野においては,証拠を出すまでもない広く知られた態様と認められ, (2-2)そのフランジの端部を断面形状で半円形状に形成しているものは,本願の出願前に公知の態様(例えば,意匠2)と認められ, (3)フランジと本体周面が交わる入隅を断面形状で円弧状としたものは,本願の出願前に公知の態様(例えば,意匠3)と認められ, (4)底面を,接地面を介して,上方に膨出した凹部としているものは,本願の出願前に公知の態様(例えば,意匠4ないし6)と認められる。 そうすると,(ア)上方が開口した,有底の回転体形状であって,(イ)開口部には外側に突出したフランジ部を設けたもので,そのフランジの端部は,半円形状に形成し,(ウ)このフランジと本体周面(直下の首部)が交わる入隅を断面形状で円弧状として,(エ)そのすぐ下から,斜め直線状の周面を,全高の約3分の2の位置まで設けているもので,(オ)それより下の,残りの約3分の1を,円弧状の周面とし,(カ)底面を,僅かな幅の接地面を介して,上方に膨出した凹部を設けただけの本願意匠の形態は,本願の出願前に,この種物品分野において証拠を出すまでもない程広く知られた態様,及び公知の態様を手本として,各部位のこれら知られた形態を寄せ集めてできた形態といえるから,この種物品分野の当業者であれば,容易に創作することができたものと認められる。 なお,開口部に設けたフランジ部の直下に形成した,僅かな長さの略鉛直方向の首部の態様は,本願出願前に公知として認められないが,この鉛直方向の周面は,極僅かなものであり,極僅かな鉛直周面を設けた造形に,意匠の創作としての特段の困難性は認められず,容易に創作することができたものと認められる。 意匠1(別紙第2参照) 国際事務局意匠公報2012年 9月21日 グラス(登録番号DM/079028)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH24506482号) なお,請求人は,審判請求書において,この意匠は,WIPOの公報によると,「Glass(sanitary equipment)」との記載から,「ガラス製の水栓,シャワー室,浴槽,浴槽・シンクへの給水・排水,便器等の衛生設備」であるとの見解を述べているが,当合議体では,「グラス(衛生設備)」と訳せる表記と,その公報に表された形状から,洗面所等で用いるグラス(コップ)と認定している。 そして,水など飲料を飲むために用いる飲用グラスは,歯磨き時の口をゆすぐためのグラスとして洗面所で用いることが可能であり,また反対に,洗面所で用いるグラスを,飲用グラスとして用いることも可能であることから,引用した意匠1の「グラス」は,本願意匠に係る物品と共通するものと考えている。 意匠2(別紙第3参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1037892号の意匠 意匠3(別紙第4参照) 特許庁発行の公開特許公報記載 特開2008-179380 図1及び図2に示された「樹脂製飲食品用カップ」の意匠 意匠4(別紙第5参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1165864号の意匠 意匠5(別紙第6参照) 特許庁発行の登録実用新案公報記載 実用新案登録第3086906号 図1?図3に示された「容器」の意匠 意匠6(別紙第7参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1521039号の意匠,としたものである。 第3 当審の判断 以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,請求人が提出の意見書及び手続補正書の内容を参酌して,検討し判断する。 1.本願意匠の形態 本願意匠は,意匠に係る物品を「飲食に用いる容器」としたもので,具体的には,願書の「意匠に係る物品の説明」の欄の記載によれば,飲食用の容器であって,この容器の上方開口縁には,外方突出したフランジを設けたものである。 本願意匠は,容器内部に飲み物や食べ物を入れた際に,フランジの突出長さによって,被せたキャップ等の蓋が上方開口縁から外れがたく出来ると同時に,接着シール等の蓋を接着させるための平坦部分を十分な広さで確保できており,キャップ又は接着シールと,蓋の種類を限定することなく密封包装を可能としているものである。 そして,その形態は,(A)上方が開口した,有底の回転体形状であって,詳細には,(B)開口部には外側に突出したフランジ部を設けたもので,そのフランジの端部は,半円形状に形成しているものである。(C)このフランジと本体周面が交わる入隅を断面形状で円弧状として,(D)該フランジ部の直下には,僅かな長さの略鉛直方向の首部が設けてあり,(E)首部のすぐ下から,全高の約3分の2の長さの斜め直線状の周面を設けているもので,(F)それより下の,残りの約3分の1を,円弧状の周面とし,(G)底面は,僅かな幅の接地面を介して,上方に膨出した凹部を設けているものである。 そして,本願意匠の要部と認められる上方開口部の,より詳細な形態は,(H)フランジ部の肉厚を30とすると,その端部の半円形状の半径は15であり,フランジ部下面と首部外周面との入隅の半径は8で,フランジ部上面と首部内周面との出隅の半径は8であり,首部の肉厚は20であり,斜め直線状の周面の肉厚は18としており,(I)首部内周面下端に本の僅かの段差を設けて,肉厚20の首部と肉厚18の周面の接続部分としたものである。 2.本願意匠の創作の容易性について この種物品分野において,(1)上方が開口した,有底の回転体形状とすること,(2)開口部には外側に突出したフランジ部を設け,そのフランジの端部を半円形状に形成すること,(3)このフランジと本体周面が交わる入隅を断面形状で円弧状とすること,(4)全高の約3分の2の長さの斜め直線状の周面を設けること,(5)それより下の,残りの約3分の1を,円弧状の周面とすること,(6)底面は,僅かな幅の接地面を介して,上方に膨出した凹部を設けることは,本願出願前より公知の形態であるから,これらの形態に基づく創作内容については,当業者が容易に創作することができたものと認められる。 しかし,(7)キャップ又は接着シールと,蓋の種類を限定することなく密封包装が可能となるように,フランジ形状(突出量・端部形状・肉厚)を定めるという創作内容は,本願意匠の出願前に公然知られたものとは認められないものである。 また,(8)上方開口部の内周面の形態につき,水平面であるフランジ部上面と,略鉛直面である首部内周面との出隅を円弧状(半径8)として,略倒立角丸L字状とした上で,首部内周面下端に本の僅かの段差を設け,斜め直線状の周面につないだ形態は,本願意匠の出願前に公然知られたものとは認められないものである。 3.結び したがって,本願意匠は,当審で示した例示意匠を基にしては,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,当審の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-09-27 |
出願番号 | 意願2016-7191(D2016-7191) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(C5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 油科 壮一、内藤 弘樹 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 正田 毅 |
登録日 | 2017-10-20 |
登録番号 | 意匠登録第1590489号(D1590489) |
代理人 | 堀家 和博 |
代理人 | 千葉 茂雄 |