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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) K3
管理番号 1333306 
判定請求番号 判定2017-600013
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 判定 
判定請求日 2017-02-23 
確定日 2017-09-25 
意匠に係る物品 子牛用の保温ジャケット 
事件の表示 上記当事者間の登録第1551367号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 甲第2号証によって示されたイ号意匠は,登録第1551367号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 手続の経緯
平成27年 9月 2日 意匠登録出願(意願2015-21013号)
平成28年 5月13日 意匠権の設定の登録(登録第1551367号)
平成29年 2月23日 本件判定請求(本件判定請求人)
平成29年 5月 1日 答弁書提出(本件判定被請求人)
平成29年 7月12日 弁駁書提出(本件判定請求人)

第2 請求の趣旨及び理由
1.請求の趣旨
本件判定請求人(以下「請求人」という。)は,イ号意匠(甲第2号証)に示す意匠(物品)は,登録第1551367号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求め,要旨,以下のとおり主張した。

2.請求の理由
(1)判定請求の必要性
請求人は,本件判定請求に係る登録意匠「子牛用の保温ジャケット」(以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者であり,本件登録意匠に係る商品として,「佐藤さんのカーフジャケット」(甲第1号証)を販売している。
本件判定被請求人(以下「被請求人」という。)が現在販売しているイ号意匠の子牛防寒ジャケット-DX2は,本件登録意匠の意匠権を侵害するものであるので,請求人は,平成28年12月22日付けで,その旨の警告書を被請求人に送付したが,被請求人は,「イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない」旨主張するので,特許庁による判定を求める。

(2)本件登録意匠の手続の経緯
出願 平成27年09月02日
登録 平成28年05月13日

(3)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は,主として子牛の身体に装着し,保温するために使用するものである。背中全体を保温する背当てと腹部を保温する腹当てとから成り,腹当てはベルトによって背中から吊り下げられるもので,ベルトの長さを調節することで子牛の成長に合わせることができる。
背当ての,背中の頂部に装着した前後方向のベルトは,子牛を移動する際に把持するための取っ手と,腹当ての位置決めを兼ねている。

(4)イ号意匠の説明
イ号意匠は,子牛用防寒ジャケットであり,その目的・用途は,本件登録意匠と同様である。

(5)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
イ号意匠は,本件登録意匠から,腹当てを除いただけであり,背当ての形状が酷似しており,「ベルト製取っ手」の位置や形状も酷似している。

(6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
背当ての展開形状が共通しており,また,最も特徴的な背中頂部に装着した前後方向のベルトは,その位置・幅・形状が酷似している。

(7)むすび
したがって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので,請求の趣旨どおりの判定を求める。

3.証拠方法
甲第1号証:請求人(ライフテースト株式会社)のホームページに掲載
http://lifetaste.co.jp/calf/index.html
甲第2号証:通販サイト「農材ドットコム」のホームページに記載
http://www.nouzai.com/towasan/calfjacket-dx.html

第3 被請求人の答弁
1.答弁の趣旨
イ号意匠は,登録第1551367号意匠及びこれに類似する範囲に属さない,との判定を求める。

2.答弁の理由
請求人が「第2 請求の趣旨及び理由」の「2.請求の理由」の「(5)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明」において,背当ての形状が酷似している旨主張するが,その形状は,2012年8月には通販サイトの農材ドットコムで紹介され公知になっている。
本件登録意匠は,2016年5月に登録になっているが,上記理由より背当ては要部ではなく,背当てと腹当てがセットであることが要部であると考える。
イ号意匠には,腹当てが無い。
以上より,イ号意匠は,本件登録意匠とは非類似と思われる。

3.証拠方法
乙第1号証:子牛防寒ジャケット-DXのラベルの写し
乙第2号証:ソーシャルブックサービス「はてなブックマーク」に掲載
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.nouzai.com/unitikatechnos/calfjacket-dx.html

第4 請求人の弁駁
1.腹部を保温する部分の要否について
(1)本件登録意匠に係る物品(以下「本件物品」という。)とイ号意匠に係る物品(以下「イ号物品」という。)は,どちらも子牛の保温・防寒等の目的で使用される物品であるから,同一の物品である。

(2)本件物品は,背当てと,腹当てに別れており,セットでの使用に限定しておらず,使用者が,用途・目的に応じて,腹当てを使用するか否か任意に選択できるとの特徴・機能を有しており,極めて利便性の高い物品となっている。

(3)背当てに対する腹当ての位置は,調整用のベルトによって任意の位置に保持でき,背当てと腹当ての位置関係は,一切固定されているわけではない。また,Aの子牛に背当てだけを装着し,別のBの子牛には,腹当てだけを装着するなどの使用方法も可能であるから,本件登録意匠との類似性を判断する際,セットでの議論は全く意味がない。

(4)使用状態において,需要者の視線は,子牛の背中を斜め上から見下ろすことになる。したがって,本件登録意匠の腹当ては,使用時に目につく部分ではなく,また,使用の要否を問わないのであるから,本件登録意匠全体の構成において,要部ではない。

2.本件登録意匠の要部について
(1)通常使用時における需要者の視点では,甲第1号証の写真のとおり,子牛の背中及び側面が,「最も目につく部分」となる。この事実は,甲第2号証の写真で明らかなとおり,イ号物品も同様である。

(2)「背中の頂部に装着した前後方向のベルト」は,請求人のオリジナルデザインである。

(3)本件物品において,最も目につく部分に装着された,前後方向のベルト(以下「取っ手」という。)は,本件登録意匠の構成において極めて重要な部分であり,独自の意匠性と同時に,子牛を動かすための取っ手の機能を有しており,意匠の構成上,必要不可欠な部分である。また,上記の取っ手の寸法・形状・構成は,周知意匠や公知意匠には存在せず,新規性が高く,さらに,物品の性質・目的・用途・使用態様から,本件登録意匠の「要部」と認められる。

(4)イ号物品は,甲第2号証1ページの写真に,「ベルト製取っ手が付いて,牛の確保や移動に便利です」と明記されているとおり,被請求人自身が,取っ手が要部であることを十分に認識し,商品の重要な特徴として一般消費者に説明している。

3.被請求人の答弁について
(1)乙第1号証の物品(子牛防寒ジャケット-DX)は,要部となる取っ手が存在しないので,本件判定請求の類似性を判断する上で,全く参考にならない。

(2)本件登録意匠の【表面図】と,甲第2号証2ページのイ号物品の写真を比較した場合,背当ての形状は,ベルトの形態を含め,明らかに酷似している。

(3)被請求人は,「背当てと腹当てがセットであることが要部である」と主張しているが,前述のとおり本件登録意匠の「意匠に係る物品の説明」の欄に「背中全体を保温する部分と腹部を保温する部分とに別れており?」と記載しており,セットで使用する等の記載は無いので,被請求人の主張には全く根拠が無い。
また,背当てと腹当てはそれぞれ個別に使用できる物品であるから,被請求人の主張は明らかに失当で,理由が無い。

(4)本件物品は,本件登録意匠の【表面図】の状態で人目につくことは無い。大きな布地であるから,販売時は畳まれており,使用時は子牛に装着した状態となる。したがって類似性を判断する場合は,子牛に装着した状態で,最も人の目につく状態,すなわち,本件物品を装着した子牛を斜め上から見下ろした視点で判断しなければならない。

(5)甲第2号証に明記され,被請求人自身がその特徴を強調・宣伝している「背中のベルト」について,答弁書では,説明や言及が一切無い。この事実は,被請求人が,本件登録意匠の模倣を認めている証拠と考えられる。

4.要部の類似性と,意匠権侵害行為について
(1)本件物品の取っ手と,イ号物品の取っ手は,その形態・取付け位置・長さ・幅など,全てにおいて酷似しており,偶然の産物とは到底考えられない。すなわち,イ号物品は,本件登録意匠を模倣して作られており,要部が明らかに類似している。

(2)本件登録意匠の取っ手は,ベルトの両端と,中間部2か所が背当てに縫い付けられており,その結果,3つの取っ手が縦に並んだ独自の形態となっている。この形態により,デザイン性や利便性等が強調され,甲第1号証のとおり,請求人が販売する「オリジナルの高機能商品」として,広く消費者に認知されている。

(3)イ号物品の取っ手も,両端部と中間部2か所が縫い付けられ,3つの取っ手が縦に並んだ形態となっており,酷似どころか,「悪質なデッドコピー」と言える。背当ての展開形状は,用途・目的が同じである以上,たまたま偶然,似てしまう可能性はあるが,取っ手の形態・寸法が酷似する事は,絶対に有り得ない。

(4)本件登録意匠の要部となる背中の取っ手が,デッドコピーされているため,消費者は,請求人が販売する本件物品と,イ号物品の区別をする事が不可能となっている。この事実は,不正競争防止法にも抵触する,極めて悪質な行為と言える。

以上のとおり,イ号物品が本件登録意匠に係る権利を侵害している事は明白であるから,判定請求書に記載した「請求の趣旨」どおりの判定を求める。

第5 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は,その願書及び願書に添付した図面(図面代用写真)によれば,意匠に係る物品を「子牛用の保温ジャケット」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現れたとおりのものである(別紙第1参照)。
すなわち,本件登録意匠は,背中全体を保温する部分(以下「背当て」という。)と腹部を保温する部分(以下「腹当て」という。)とから成る,布状のものである。
背当ての基本的構成態様は,左右の臀部(でんぶ)に当たる部分を僅かに緩く膨出させたもので,表面図においては,全体が略B字状になっており,その首部分は,緩やかに大きく弓なり状にへこませたものである。
背当ての具体的態様は,裏面をボア加工をしたもので,表面を黒色,裏面を象牙色とし,全周に黄色の縁を設けたものであって,子牛の背中の頂部に来る,背当ての中央に,縁と同色の,前後方向のベルトを設け,このベルトの前端と後端及び途中2か所を背当てに縫い付けて,3つの取っ手としたものである。
そのほか,臀部の左右には,斜め45度に放射状に,黒色のベルトを設け,前方には,黒色の太くて短いベルトを設けている。
腹当ての基本的構成態様は,全体が長方形であって,前後に黒色の長いベルトを2本設けている。
腹当ての具体的態様は,表面を黒色,裏面を象牙色とし,裏面側は黒色で縁取ってあり,その縦横の長さ比を約2:1とした長方形である。

2.イ号意匠
イ号意匠は,甲第2号証で示されたものであって,商品名を「子牛防寒ジャケット-DX2」と称する「子牛用の保温ジャケット」である(別紙第2参照)。
すなわち,イ号意匠は,布状の背当てのみのものであり,その基本的構成態様は,左右の臀部に当たる部分を本の僅かに緩く膨出させたもので,広げた状態においては,全体が略B字状になっており,その首部分は,緩やかに大きく弓なり状にへこませたものである。
背当ての具体的態様は,裏面をキルト地としたもので,表裏ともに象牙色とし,全周に黒色の縁を設けたものであって,背当ての中央に,縁と同色の,前後方向のベルトを設け,このベルトの前端と後端及び途中2か所を背当てに縫い付けて,3つの取っ手としたものである。
そのほか,臀部の左右には,斜め45度に放射状に,黒色のベルトを設け,前方には,黒色の短いベルトを設けている。

3.本件登録意匠とイ号意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本件登録意匠とイ号意匠(以下「両意匠」という。)を対比すると,意匠に係る物品については,共に「子牛用の保温ジャケット」である。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については,主として以下の共通点と相違点が認められる。
ア.共通点
背当てについては,(ア)基本的構成態様において,左右の臀部に当たる部分を僅かに緩く膨出させたもので,広げた状態においては,全体が略B字状になっており,その首部分は,緩やかに大きく弓なり状にへこませた点,具体的態様は,(イ)背当ての全周に,縁を設けたものであって,(ウ)背当ての中央に,縁と同色の,前後方向のベルトを設け,このベルトの前端と後端及び途中2か所を背当てに縫い付けて,3つの取っ手とした点,(エ)臀部の左右には,斜め45度に放射状に,黒色のベルトを設けた点,(オ)前方には,黒色の太くて短いベルトを設けた点,(カ)裏面の色彩を,象牙色としている点,が共通している。

イ.相違点
(a)意匠の構成につき,本件登録意匠は,背当てと腹当てから成るのに対して,イ号意匠は,背当てのみである点。
(b)背当ての臀部の形状につき,本件登録意匠は,僅かに膨出しているのに対して,イ号意匠は,本の僅か膨出している点(イ号意匠の方が,膨出度合いが小さい点。)。
(c)背当ての裏面の生地につき,本件登録意匠は,ボア加工をしたものであるのに対して,イ号意匠は,キルト地である点。
(d)背当ての色彩につき,本件登録意匠は,表面を黒色,縁を黄色としているのに対して,イ号意匠は,表面を象牙色,縁を黒色としている点。

4.類否判断
イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かについて,すなわち,両意匠が類似するか否かについて,検討する。
(1)両意匠の意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,共に「子牛用の保温ジャケット」であって,一致している。

(2)両意匠の形態
ア.共通点の評価
共通点(ア)については,この物品分野においてはありふれた形態であって,両意匠のみの特徴とはいえないものの,広げた状態で,裾がすぼまった略D字状のものや,首部分をへこませた態様が異なるものもある,というこの物品分野の状況を考慮すると,両意匠の類否判断において一定程度の影響を与えている。
共通点(イ)については,布状のこの種物品においては,全周に縁を設けることは常とう手段であって,両意匠のみの特徴とはいえないものの,本体部と色違いの縁を設けているという点で,両意匠の類否判断において一定程度の影響を与えている。
共通点(ウ)については,子牛を移動させるための取っ手という機能を持つものであり,意匠的にも特徴的であり,また,使用状態においては目につきやすい位置での共通点であって,なおかつ,本件登録意匠の出願前には見当たらない形態で,本件登録意匠の独創性が高いと認められる形態であるということができ,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,とても大きい。
共通点(エ)及び同(オ)については,この種物品分野においてありふれた態様であり,両意匠のみの特徴とはいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
共通点(カ)については,この種意匠,子牛用の保温ジャケットの形態を創作するに当たって,使用目的や使用状態を勘案して形状を決定することが主で,自由選択できる色彩の決定は二次的なものと認められるから,共通点(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

イ.相違点の評価
相違点(a)は,意匠を構成する部分品の数が異なるという点であるが,本件登録意匠は,背中全体を保温するだけでなく,腹部も保温することが可能なものであるのに対して,イ号意匠は,背中を保温することだけが可能なものであるから,構成品の数の相違だけでなく,その使用目的や使用方法も一部異なることとなり,その差異は歴然であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きい。
相違点(b)については,本の僅かな相違と認められ,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
相違点(c)については,生地の選択は,この種物品分野の意匠の創作に当たっては,自由選択という面があると考えられ,ボア加工のものとキルト地の相違は,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
相違点(d)については,共通点(カ)と同様,この種意匠を創作するに当たって,使用目的や使用状態を勘案して形状を決定することが主で,自由選択できる色彩の決定は二次的なものと認められるから,相違点(d)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

ウ.類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品は一致するものの,両意匠の相違点が相まって生じる視覚的効果は,両意匠の共通点のそれを凌駕するものであって,需要者に異なる美感を起こさせるものである。
したがって,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと認められる。

5.結び
以上のとおりであるから,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2017-09-15 
出願番号 意願2015-21013(D2015-21013) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (K3)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 刈間 宏信
橘 崇生
登録日 2016-05-13 
登録番号 意匠登録第1551367号(D1551367) 
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