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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B5
管理番号 1334417 
審判番号 不服2017-10313
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-11 
確定日 2017-10-17 
意匠に係る物品 履物用留め具 
事件の表示 意願2016- 4669「履物用留め具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,アルゼンチンへの2015年9月4日の出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成28年(2016年)3月3日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「履物用留め具」とし,その形態は,願書の記載及び願書添付の図面に記載されたとおりのもので,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとし,その拒絶の理由として引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の登録実用新案公報(公報発行日:平成27年(2015年)4月30日)に掲載された,実用新案登録第3197186号(考案の名称,「締結器具およびシステムならびにその方法」)の【図1】ないし【図14】及び関連する記載にあらわされた締結器具の意匠(以下,「引用意匠」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,引用意匠に類似するものであるか否かについて,以下,検討する。
(1)両意匠の意匠に係る物品
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「履物用留め具」で,引用意匠は,「締結器具」であるが,両意匠は,いずれも靴などの履物用の紐の代用品として靴穴に通して用いられるものであり,両端部に留め具を設けた略紐状の締結器具であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
(2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分は,全体を両端部に留め具を設けた略紐状の締結器具としたもので,中間部分の細長い紐状の部分(以下,「紐状部」という。)を除いた両端部の留め具の部分を,意匠登録を受けようとする部分としたものであり,両端部の留め具を嵌合して輪状に繋げて用いるもので,引用部分は本願部分に相当する同様の部分であるから,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。
(3)両部分の形態
両部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
なお,両部分を同じ方向から対比するため,引用意匠を本願意匠の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ両部分の形態を認定し,対比する。
(3-1)共通点
(A)部分全体を,平面視して締結器具の細長い扁平な帯状の紐状部から連続して両端部に設けられた幅広の略水滴状の留め具部分とし,先端に細長い丸棒状のガイド部(以下,「ガイド部」という。)を設け,孔部を有するガイド側係止部(以下,「ガイド側係止部」という。)と,ガイド部を通す貫通孔を有し,凸状の係止部を設けた部分(以下,「凸状係止部」という。)によって構成されている点,
(B)凸状係止部は,紐状部側から側面視略倒J字状に切り欠いた部分に,側面視略きのこ状で平面視略長円形状の上面側に突出する,略きのこ状の係止用凸部(以下,「きのこ状凸部」という。)が設けられ,ガイド部を通す貫通孔が係止部の基台部から立ち上がった紐状部側の壁面から,凸状係止部の底面側に設けられた紐状部側の左右中央寄りのやや大きめの孔部に斜め方向に設けられている点,
(C)ガイド側係止部は,平面視上下中央に丸い孔部を有している点,
(D)ガイド側係止部の孔部と凸状係止部のきのこ状凸部を嵌合させ輪状に繋げた際に,ガイド部が凸状係止部の貫通孔を通って,底面側の孔部から輪状の内側の貫通孔を抜け,ガイド部先端が使用時に内側に隠される点,
において主に共通する。
(3-2)差異点
(ア)ガイド側係止部と凸状係止部の平面視形状について,本願部分は,上下幅が狭く左右幅が長いのに対して,引用部分は,上下幅が広く左右幅が短い点,
(イ)ガイド側係止部のガイド部の態様について,(イ-1)本願部分は,ガイド部が側面視約15度程度下方に傾斜しているのに対して,引用部分は,ガイド部が側面視水平状である点,(イ-2)本願部分は,ガイド部が平面視したガイド側係止部の上下幅より長いのに対して,引用部分は,ガイド部が平面視したガイド側係止部の上下幅より短い点,
(ウ)ガイド側係止部の孔部と孔部周囲の態様について,本願部分は,孔部が横長小判形状で,孔部周囲に孔部より一回り大きい同形状で段差状の凹部を設けているのに対して,引用部分は,孔部がやや大きさのある円形状で孔部周囲に段差がない点,
(エ)凸状係止部のきのこ状凸部の態様について,本願部分は,きのこ状凸部が平面視略横長小判状で,側面視した上面が平坦状であるのに対して,引用部分は,きのこ状凸部が平面視楕円形状で,側面視した上面が膨出した凸円弧状である点,
(オ)凸状係止部の底面部の態様について,(オ-1)本願部分は,きのこ状凸部の底面側に略小判形状の縁取りがあるのに対して,引用部分は,きのこ状凸部の底面側には縁取りがない点,(オ-2)本願部分は,やや大きめの孔部が底面視横長の略隅丸三角形状で上下幅一杯の大きさであるのに対して,引用部分は,底面視横長の略水滴状で,本願部分より小さめである点,(オ-3)本願部分は,側面視した底面の紐状部寄りが略J字状に切り欠かれ,厚みが薄いのに対して,引用部分は,側面視した底面が水平状で,紐状部寄りの上面側が大きく立ち上がり,厚みが厚い点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,共通している。
(2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通している。
(3)両部分の形態
以下,両部分の形態について検討する。
(3-1)共通点
まず,共通点(A)については,部分全体を,平面視して締結器具の細長い扁平な帯状の紐状部から連続して両端部に設けられた幅広の略水滴状の留め具部分とし,先端に細長い丸棒状のガイド部を設け,孔部を有するガイド側係止部と,ガイド部を通す貫通孔を有し,凸状係止部によって構成されている態様については,この種の物品分野において,丸棒状のガイド部を設け,孔部を有するガイド側係止部を有するものが,本願の出願前から他にも見られる態様といえるもので,特徴のないものといえ,ガイド部を通す貫通孔を有し,凸状係止部と孔部を有するガイド側係止部によって構成された留め具を設けたものも既に見られ,両部分のみに見られる格別新規な特徴とはいえないものであるから,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
次に,共通点(B)についても,凸状係止部の紐状部側から側面視略倒J字状に切り欠いた部分に,側面視略きのこ状で平面視略長円形状の上面側に突出する,きのこ状凸部が設けられ,ガイド部を通す貫通孔が係止部の基台部から立ち上がった紐状部側の壁面から,凸状係止部の底面側に設けられた紐状部側の左右中央寄りのやや大きめの孔部に斜め方向に設けられている態様が共通するものではあるが,この種の物品分野においては,ガイド部を通す貫通孔が係止部の基台部に設けられた態様は,既に見られる態様といえるもので,きのこ状凸部の存在は,部分的な特徴といえるもので,両部分全体を共通とするほどの格別目立つ態様とはいえず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
また,共通点(C)について,ガイド側係止部が平面視上下中央に丸い孔部を有している態様が共通するが,部分的な特徴といえるもので,目立つものとはいえず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものにすぎない。
そして,共通点(D)についても,ガイド側係止部の孔部と凸状係止部のきのこ状凸部を嵌合させ輪状に繋げた際に,ガイド部が凸状係止部の貫通孔を通って,底面側の孔部から輪状の内側の貫通孔を抜け,ガイド部先端が使用時に内側に隠される態様が共通するものではあるが,この種の物品分野においては,輪状に繋げた締結器具は,既に多数見られる,ありふれた態様といえるものであるから,目立つものはいえず,また,ガイド部先端が使用時に内側に隠される態様も,既に見られる態様といえるもので,両部分のみに認められる特徴的な態様とはいうことができず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものにすぎない。
共通点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の形態の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の形態の類否判断を決定付けるものである。
(3-2)差異点
差異点(ア)のガイド側係止部と凸状係止部の平面視形状の差異については,ガイド側係止部と凸状係止部の留め具全体の印象に影響を与えるものといえ,本願部分のように上下幅が狭く左右幅が長いものは,他には見られず,上下幅が広く左右幅が短い丸みのある外形状の引用部分とは,明らかに需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)のガイド側係止部のガイド部の態様についても,(イ-1)ガイド部が側面視約15度程度下方に傾斜している本願部分は,装着時にガイド部を貫通孔に挿入し易い印象を与え,水平状の引用部分とは明確に異なる印象を需要者に与えるものであり,両部分の類否判断に影響を与えるものといえ,また,(イ-2)ガイド部が平面視したガイド側係止部の上下幅より長い本願部分は,使用時に扱い易い印象を与え,ガイド部が短い引用部分は,やや扱い難い印象を与えるものであるから,その視覚的印象が明らかに異なるもので,その差異は無視することができず,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
そして,差異点(ウ)のガイド側係止部の孔部と孔部周囲の態様については,孔部が横長小判形状で孔部周囲に孔部より一回り大きい同形状で段差状の凹部を設けている本願部分は,複雑な印象を与えるもので,孔部がやや大きさのある円形状で孔部周囲に段差がないシンプルな引用部分とは,明らかに需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
また,差異点(エ)の凸状係止部のきのこ状凸部の形状については,部分的な細部の形状に係るものであり,共通する態様の中での部分的な差異であるが,きのこ状凸部が平面視略横長小判状で,側面視した上面が平坦状である本願部分の態様は,平板でフラットな印象を与えるもので,きのこ状凸部が平面視楕円形状で,側面視した上面が膨出した凸円弧状である引用部分は,変化に富んだ印象を与えるものといえ,その視覚的印象が異なるもので,その差異が両部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。
さらに,差異点(オ)の凸状係止部の底面部の態様について,いずれも部分的な細部の差異ではあるが,底部は輪状に繋げると表側になる部分であり,(オ-1)きのこ状凸部の底面側に略小判形状の縁取りのある蓋状部分がある本願部分は,装飾的な印象であるのに対して,底面側には縁取りがない引用部分は,すっきりした印象であり,その視覚的印象が異なるもので,(オ-2)やや大きめの孔部が底面視横長の略隅丸三角形状で上下幅一杯の大きさである本願部分と,底面視横長の略水滴状で,本願部分より小さめである引用部分とは,その差異が明確に認識できるものといえ,(オ-3)側面視した底面の紐状部寄りが略J字状に切り欠かれ,厚みが薄い本願部分は,平板でフラットな印象を与えるもので,側面視した底面が水平状で,紐状部寄りの上面側が大きく立ち上がり,厚みが厚い引用部分は,変化に富んだ印象を与えるものといえ,その視覚的印象が異なるもので,いずれも無視することはできず,それらの差異が両部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。

(4)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通するものであるが,両部分の形態における差異点が看者に与える意匠的効果が共通点のそれを凌駕し,両部分全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-10-03 
出願番号 意願2016-4669(D2016-4669) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B5)
最終処分 成立 
前審関与審査官 並木 文子 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 斉藤 孝恵
宮田 莊平
登録日 2017-11-02 
登録番号 意匠登録第1591929号(D1591929) 
代理人 村松 由布子 
代理人 杉村 憲司 
代理人 杉村 光嗣 
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