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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1334431 
審判番号 不服2017-9117
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-21 
確定日 2017-10-31 
意匠に係る物品 縫合針 
事件の表示 意願2016- 14768「縫合針」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成28年(2016年)7月11日に出願し,本意匠を同日に出願された意願2016-014767とする関連意匠の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,「縫合針」であり,本願意匠の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,その具体的理由及び引用した意匠は,下記のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠の意匠登録を受けようとする部分と引例の意匠の対応する部分を意匠全体として観察すると,本願意匠は「縫合針」であり,引例の意匠は「手術用縫合針」であって,物品はおおむね共通します。また,意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能,物品全体の中での位置・大きさ・範囲も共通します。
形態については,全体を,正面視弧状に湾曲した棒状体とし,その断面を多角形状とする態様が共通します。
断面形状の具体的な態様について,断面が正八角形状であるか,正六角形状であるか,に差異が見受けられますが,何れも正多角形状であって,上述の共通する態様中で見られる多少の差異に過ぎません。
したがって,意匠全体を観察する場合においては,差異点は共通する態様に包含され,両意匠を別異のものとするには至りませんので,本願意匠は引例の意匠に類似するものと認められます。

特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第488534号
(意匠に係る物品,手術用縫合針)の意匠

なお,主な類否判断の対象となるのは,引例の意匠の,本願意匠が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に対応する部分です。」
(別紙第2参照)(以下,上記の手術用縫合針の意匠を「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」といい,引用意匠のうち,本願意匠部分に相当する部分を「引用意匠部分」という。))

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1.意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,「縫合針」と「手術用縫合針」であって,共に外科手術時の縫合に用いるものであるから,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。

2.用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
本願意匠部分は,「縫合針」の針先部を含む先端部及び糸保持部を備える後端部を除く任意に区画した中央部分であって,針体のほとんどを占める部分であり,引用意匠部分も「手術用縫合針」の針先部を含む先端部及び糸保持部を備える後端部を除く任意に区画した中央部分であって,針体のほとんどを占める部分であり,どちらも,外科手術に際して用いられ,組織の縫合などを行う用途及び機能を有するものである。したがって,本願意匠部分と引用意匠部分(以下,「両意匠部分」という。)の物品全体の中での用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。

3.形態
両意匠部分の形態を対比すると,主として,以下の共通点と相違点が認められる。
(ア)共通点
基本的構成態様
(A)全体形状は,同幅の細い線材が円弧状に湾曲したものである点。
具体的構成態様
(B)断面形状が多角形状である点。
(イ)相違点
具体的構成態様
(a)断面の形状が,本願意匠部分では八角形状であるのに対して,引用意匠部分では,六角形状である点。
(b)本願意匠部分は正面視及び背面視で稜部が外形線と平行してほぼ等間隔に2つ,線状に表れ,平面視及び底面視においても平行してほぼ等間隔に2つ,線状に表れているのに対し,引用意匠部分は,正面視及び背面視で稜部が外径線と平行して中央に1つ線状に表れ,平面視及び底面視においては平行してやや外方寄りに2つ,線状に表れているものである点。
(c)幅(太さ)と長手方向へ湾曲した長さ(湾曲した針体に沿った長さ)の比率は,本願意匠部分は,約1:24であるのに対し,引用意匠部分は,約1:26である点。

第4 本願意匠と引用意匠の類否
以上の「意匠に係る物品」,「用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲」及び「形態の共通点と相違点」が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
1.意匠に係る物品の評価
上記,第3の1.のとおり,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。
同様の意匠に係る物品(本願意匠においては「縫合針」)であるものは,多数見受けられ,意匠に係る物品が共通することにより,両意匠の類否判断に与える影響は,小さいものである。

2.用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲の評価
上記,第3の2.のとおり,両意匠部分は,物品全体の中での用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。
「縫合針」の物品分野において,両意匠と同様の縫合針の先端部及び後端分を除いた針体のほとんどを占める部分,すなわち,針胴体部分として対比可能な,用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲を有する意匠は,本願出願前にごく普通に見受けられるので,両意匠の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲の共通点が,類否判断に与える影響は,小さい。

3.両意匠部分の形態の評価
(1)両意匠部分の形態の共通点の評価
共通点(A)の全体形状については,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の基本的構成態様の共通点にすぎないものであり,縫合針の物品分野において,本願の出願前にごく普通に見受けられる基本的構成態様であるから,この共通点が類否判断に与える影響は小さい。
共通点(B)については,確かに,断面形状が多角形状である点は,両意匠の共通する特徴であるが,後述するように具体的態様の相違点もあり,この共通点が類否判断に与える影響は小さい。
よって,共通点(A)及び共通点(B)の両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は,共に小さく,共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても,両意匠部分の共通点は,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないということができる。
(2)両意匠部分の形態の相違点の評価
これに対して,相違点(a)は,断面(端面)の具体的態様の相違点であって,双方とも大まかには,多角形に分類されるものであるにしても,八角形状のものと,六角形状のものとでは,その形態の相違は,一見して看取できるものであって,この相違点が類否判断に与える影響は大きい,相違点(b)は,周面の具体的態様についての相違点であるが,本願意匠部分は,相違点(a)に記載のとおり断面形状が八角形であるので,正面視,背面視,平面視,底面視に平行する稜部が線状に2つ表れた態様であるのに対し,引用意匠部分は,断面形状が六角形状であるので,正面視及び背面視において中央に稜部が線状に一つ,すなわち2つの面が合わさって成る稜線部が表れ,平面視及び底面視においてはやや外方寄りに平行する稜部が線状に2つ表された態様であり,「縫合針」の物品分野において,周面の態様,特に先端近傍の周面は,「縫合針」の物品分野において,持針器で縫合針を把持する箇所であって,使用時の把持しやすさの観点などから需要者の注意を引き,注目するところであり,稜線部の数や位置の差は,一見して看取できる上に,視覚的に異なる印象を与えるものであるから,この相違点が,類否判断に与える影響は相違点(a)ともあいまって,極めて大きい。
相違点(c)は,幅(太さ)と長手方向へ湾曲した長さにおける態様の相違であって,本願意匠部分は幅に対する長手方向へ湾曲した長さ比率は約1:24であるのに対し,引用意匠部分は,約1:26である点であって,本願意匠部分の方が引用意匠部分に比して,幅に対して長手方向へ湾曲した長さがやや短い態様であるといえるものの,両意匠部分に見られる幅に対する長手方向へ湾曲した長さ比率はこの種「縫合針」の物品分野において,双方ともによく見られる程度のものであるから,相違点(c)が類否判断に与える影響は小さい。

(3)両意匠部分の形態の総合評価
そうすると,共通点(A)及び共通点(B)の両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し,相違点(a)と相違点(b)があいまって類否判断に与える影響は極めて大きく,相違点(c)が両意匠部分の類否判断に与える影響が小さいとしても,それら相違点(a)ないし(c)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると,相違点は,共通点を凌駕して,両意匠部分を別異のものと印象付けるものである。

4.小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通するが,これらの共通点が類否判断に与える影響は小さく,形態においては,共通点が未だ両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠部分を,全体として別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2017-10-17 
出願番号 意願2016-14768(D2016-14768) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 真珠 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
正田 毅
登録日 2017-11-17 
登録番号 意匠登録第1592988号(D1592988) 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 

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