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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属さない(申立不成立) K2 |
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管理番号 | 1335204 |
判定請求番号 | 判定2017-600028 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2017-07-25 |
確定日 | 2017-12-18 |
意匠に係る物品 | 釣用ルアー |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1513695号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号意匠の図面及びその説明により示された「釣用ルアー」の意匠は,登録第1513695号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨及び理由の要点 1.請求の趣旨 本件判定請求人(以下「請求人」という。)は, 「イ号意匠及びその説明書に示す意匠は,登録第1513695号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求める。」 と申し立て,その理由として,要旨以下のとおりの主張をした。 2.請求の理由 本件判定請求の理由は,以下のとおりである。 (1)請求の必要性 請求人は,本件判定請求に係る登録第1513695号意匠「釣用ルアー」(以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。 イ号意匠は,請求人が実施予定の意匠の一つである。イ号意匠が本件登録意匠に類似するか否かにより,イ号意匠及びその他請求人の実施予定の意匠について意匠登録出願が必要か否かの判断に影響するため,本件判定請求を行う。 (2)本件登録意匠の説明 本件登録意匠は,意匠に係る物品を「釣用ルアー」とし,その形態の要旨を,次のとおりとする。 本件登録意匠に係る物品は,基本的にルアー本体(以下「ルアーボディ」という。)と,フック(釣り針)を取り付けるための手段であるアイからなり,ルアーボディ側面にアイが設けられている(請求書に添付された意匠登録第1513965号の公報:別紙第1参照)。 (3)イ号意匠の説明 イ号意匠に係る物品は,釣用ルアーであって,その意匠の内容は,ルアーボディの側面と尾部にはフック取り付け用のアイが設けられ,頭部にはライン(釣糸)取り付け用のアイが設けられている(請求書に添付されたイ号意匠及びイ号意匠の説明書:別紙第2参照)。 (4)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明 (4-1)両意匠の共通点 本件登録意匠とイ号意匠とは,意匠に係る物品を「釣用ルアー」とするものであって,同一の物品である。 形態の共通点は次のとおりである。 (ア)ルアーボディ側面にフック取り付け用のアイが設けられている。 (イ)ルアーボディ側面のアイ取り付け位置近傍の表面形状,具体的にはルアーの短手方向(ルアーの背中からお腹方向)の断面外周形状は,弧状のカーブをなしている。 (4-2)両意匠の相違点 形態の相違点としては,以下の点が挙げられる。 (ア)本件登録意匠とイ号意匠とでは,ルアーボディ側面のアイ取り付け位置付近の短手方向の表面形状,すなわち上記弧状のカーブの湾曲度合いが異なっている。より具体的には,本件登録意匠に比べて,イ号意匠の方がカーブの湾曲度合いが緩やかになっている。 (イ)本件登録意匠とイ号意匠とでは,ルアーボディ側面に取り付けられたアイの形状がわずかながら異なっている。すなわち,本件登録意匠の当該アイに比べて,イ号意匠のアイの方が半円形に近い形状をしている。 (ウ)本件登録意匠とイ号意匠とでは,ルアーボディの長手方向(ルアーの頭から尾に至る方向)の湾曲のしかたが異なっている。即ち本件登録意匠は,例えば,意匠公報の平面図もしくは底面図の点線で示すようにルアーボディの頭から尾にかけて緩やかなS字形状をしている。一方,イ号意匠は本件登録意匠に比べてストレートに近い形状をしている。このため,ルアーボディ側面のアイ取り付け位置付近の長手方向の湾曲のしかたは,両意匠で異なっている。 (エ)本件登録意匠とイ号意匠とでは,ルアーボディ側面の長手方向のアイの取り付け位置が若干異なっている。即ち,イ号製品の方が本件登録意匠に比べてルアーボディの中央寄りになっている。 (5)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明 (a)本件登録意匠に関する先行周辺意匠 甲第1号証 意匠登録第1048284号の公報 (別紙第3参照) なお,この甲第1号証は,本件登録意匠の審査の過程における拒絶理由通知の引用意匠である。 (b)本件登録意匠の要部 先行周辺意匠をもとに,本件登録意匠の創作の要点について検討すると,この種物品における意匠上の創作の主たる対象は,ルアーボディ側面に設けられたアイ取り付け位置近傍のルアーボディ形状,具体的には,短手方向(ルアーの背中からお腹方向)の断面形状が弧状のカーブをなしていることである。 (c)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察 本件登録意匠,イ号意匠ともにルアーボディ側面にフック取り付け用のアイが設けられ,当該アイ取り付け位置近傍の短手方向(ルアーの背中からお腹方向)の断面外周形状は,弧状のカーブをなしている。このルアーボディ側面が丸みを帯びた特徴的な形態は需要者に対して「自然な魚」の印象を与えるものであり,その部分にアイが設けられた形態は,先行意匠(甲第1号証)にもない特徴的なものであり,本件登録意匠の類似範囲を決定する主要な要素となり得るものである。 なお,本件登録意匠とイ号意匠とでは短手方向の弧状のカーブ度合いが異なるものの,両意匠共にルアーボディ側面が丸みを帯びているという上記の特徴的な形態を有するものであり,カーブ度合いの相違は美観の共通性に影響を与えるものではない。 また,ルアーにおけるアイはフック等を係止させるもので,その機能から自ずと形態も定まる。このため,アイの形状は意匠の要部とはなり得ず,意匠の類否の判断に与える影響は微弱である。すなわち,アイの形状が半円であろうが台形であろうが三角であろうが,釣用ルアーの美観に及ぼす影響は小さい。 さらに,ルアーボディの長手方向の湾曲のしかたは本件登録意匠とイ号意匠とでは異なるが,上述したようにルアーボディ側面が丸みを帯びているからこそ需要者に対して自然な魚の印象を与えるものであり,この部分にアイを有することが意匠の要部となる。これに対し,ルアーボディの長手方向の湾曲のしかたが異なっているとしても,自然な魚としての印象を阻害するものではなく,意匠の類否の判断に与える影響は極めて微弱である。 また,長手方向のアイの取り付け位置の違いは本件登録意匠が部分意匠であることからも意匠の類否判断においては全く問題とならない。このことはルアー頭部に極端に近い位置にアイが取り付けられている先行意匠(甲第1号証)が本件登録意匠の審査過程で引例として挙げられたことからも明らかである。 (6)むすび したがって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属すると判断されるので,請求の趣旨に記載したとおりの判定を求める。 3.証拠方法 (1)甲第1号証 意匠登録第1048284号の公報 (別紙第3) 第2 当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠(意匠登録第1513695号)は,部分意匠として意匠登録を受けようとして,平成26年(2014年)4月17日に意匠登録出願され,平成26年(2014年)11月14日に意匠権の設定の登録がなされたものであって,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「釣用ルアー」とし,意匠に係る物品の説明を「本物品はルアーフィッシングに使用される釣用ルアーである。ルアーボディの側面にはフック(釣り針)を係着するためのフックアイが配置される。先端部のアイにラインが接続され,ラインを引くことで遊泳させるようになっている。」とし,そして,形態を,願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」(以下,本件登録意匠について部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本件登録意匠部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 すなわち,本件登録意匠部分は,正面視でルアーボディの表面における横長略矩形状の区画(以下「ボディ表面部」という。)及び当該面に設けたフックアイ(以下「フックアイ部」という。)で一体となったものである。 その用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲,加えて形態は,以下のとおりである。 (1)用途及び機能 魚類の釣り針(フック)を可動できる状態で係着するためのものである。 (2)位置,大きさ及び範囲 (2-1)位置 正面視で,釣用ルアーの中央から頭部寄りの位置にある。 (2-2)大きさ及び範囲 正面視で,横方向で(ルアーボディの頭から尾までの)8分の1程度,縦方向で(背から下腹までと)同程度,加えて,平面視,奥行き方向(ルアーボディの厚み)で同程度の高さに突設されている。 (3)形態 ボディ表面部は,正面視で,縦辺と横辺の長さの比を約1:1.7とし,左側面視で右方向に凸弧状に湾曲し,平面視及び底面視で正面方向に横辺をわずかに凹弧状とし,全体としてわずかに略馬鞍形とし, フックアイ部は,底面視で,略放物線状に細い丸線を曲げ,ボディ表面部の稜線に2本足で直立させたもので,高さをボディ表面部の横辺の長さの約半分,横幅をボディ表面部の横辺の長さより若干短くしたものである。 2.イ号意匠 イ号意匠は,請求書に添付されたイ号意匠の写真及び説明に示されたとおりのものである(別紙第2参照)。 イ号意匠の説明書によれば,イ号意匠に係る物品を「釣用ルアー」とし,その形態は,イ号意匠に示された写真,すなわち,「左側面図」,「正面図」,「右側面図」,「背面図」,「正面側からの斜視図」及び「背面側からの斜視図」の6つの写真に現されたとおりのものである。なお,「正面図」の写真には,A-A線指示線,A-A端面図が描かれている。 ここで,イ号意匠において本件登録意匠に相当する部分の意匠を「イ号意匠相当部分」とし,本件登録意匠とあわせて「両意匠部分」といい, イ号意匠相当部分を本件登録意匠部分に対比させるため,イ号意匠相当部分の向きを本件登録意匠部分の向きに合わせ,イ号意匠の左90度回転させた「左側面図」を本件登録意匠の「底面図」,左90度回転させた「正面図」を「正面図」,左90度回転させた「右側面図」を「平面図」,右90度回転させた「背面図」を「背面図」,さらに,イ号意匠の「正面図」の写真にある「A-A線端面図」も該「正面図」と同じく左90度回転させて, 以下,両意匠部分を対比して観察する。 その用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲,加えて形態は,以下のとおりである。 (1)用途及び機能 魚類の釣り針(フック)を可動できる状態で係着するためのものである。 (2)位置,大きさ及び範囲 (2-1)位置 正面視で,釣用ルアーの中央から頭部寄りの位置にある。 (2-2)大きさ及び範囲 正面視で,横方向で(ルアーボディの頭から尾までの)15分の1程度,縦方向で(背から下腹までの)5分の1程度,加えて,平面視,奥行き方向(ルアーボディの厚み)で2分の1程度の高さに突設されている。 (3)形態 ボディ表面部は,正面視で,縦辺と横辺の長さの比を約1:1.7とし,A-A端面図に示されるように右方向に軽く湾曲し,平面視及び底面視で横辺をほぼ直線状とし,全体として浅い略逆樋形状とし, フックアイ部は,底面視で,略逆「U」字状に細い丸線を曲げ,ボディ表面部の稜線に2本足で直立させたもので,フックアイの略下半分はボディの塗料が付着しており,2本足の接地点の間は塗料が盛り上がってつながった状態となっているため,左90度回転させた略「D」字状に看取され,高さをボディ表面部の横辺の長さの約半分,横幅をボディ表面部の横辺の長さより若干短くしたものである。 3.両意匠の対比 3-1.意匠に係る物品 ともに,「釣用ルアー」に係るものであって,一致する。 3-2.両意匠部分 (1)用途及び機能 ともに,魚類の釣り針(フック)を可動できる状態で係着するためのものであって,一致する。 (2)位置,大きさ及び範囲 (2-1)位置 ともに,正面視で,釣用ルアーの中央から頭部寄りの位置にあって,一致する。 (2-2)大きさ及び範囲 両意匠部分の大きさ及び範囲については,本件登録意匠部分もイ号意匠相当部分も以下のとおりである。 <本件登録意匠部分> 正面視で,横方向で(ルアーボディの頭から尾までの)8分の1程度,横方向で(背から下腹までと)同程度であり,加えて, 平面視で,奥行き方向(ルアーボディの厚み)で同程度である。 <イ号意匠相当部分> 正面視で,横方向で15分の1程度,縦方向で5分の1程度であり,加えて, 平面視で,奥行き方向で2分の1程度である。 これらを比較すると,本件登録意匠部分に比べて,イ号意匠相当部分が,小さく且つかなり狭い範囲である,ことが認められる。すなわち,物品全体における大きさと範囲には,差異が認められる。 (3)形態 両意匠部分の形態については,主として以下の共通点と差異点が認められる。 (3-1)共通点 (A)ボディ表面部の基本構成について,正面視で,縦辺と横辺の長さの比を約1:1.7としている点。 (B)ボディ表面部の具体的態様について,左側面視(イ号意匠相当部分についてはA-A端面視)で,右方向に湾曲させている点。 (C)フックアイ部の基本構成について,底面視で,細い丸線を曲げ,その端部を足としてボディ表面部の稜線中央に直立させている点。 (3-2)差異点 (ア)ボディ表面部の側面視した湾曲の具体的態様について,本件登録意匠部分は,大きく湾曲しているのに対し,イ号意匠相当部分は,軽く湾曲している点。 (イ)平面視及び底面視でのボディ表面部の横辺の具体的態様について,本件登録意匠部分は,正面方向に横辺をわずかに凹弧状としているのに対し,イ号意匠相当部分は,横辺をほぼ直線状としている点。 (ウ)ボディ表面部の全体の具体的態様について,本件登録意匠部分は,わずかに略馬鞍形状としているのに対し,イ号意匠相当部分は,浅い略逆樋形状としている点。 (エ)底面視でのフックアイ部の基本構成について,本件登録意匠部分は,略放物線状に細い丸線を曲げたものとするのに対し,イ号意匠相当部分は,略逆「U」字状に細い丸線を曲げ,さらに,フックアイの略下半分はボディの塗料が付着しており,2本足の接地点の間は塗料が盛り上がってつながった状態となっているため,左90度回転させた略「D」字状としている点。 4.類否判断 そこで,イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かについて,本件登録意匠の出願前に存する公知意匠を参酌し,需要者の注意を惹き易い点などを考慮した上で,共通点,差異点等が意匠全体として両意匠の類否判断に与える影響を評価し,検討する。 4-1.意匠に係る物品 ともに,「釣用ルアー」に係るものであって,一致するが,その一致が類否判断を決するものではない。 4-2.両意匠部分 (1)用途及び機能 ともに,魚類の釣り針(フック)を可動できる状態で係着するためのものであって,一致するが,その一致が類否判断に与える影響は小さいものである。 (2)位置,大きさ及び範囲 (2-1)位置 両意匠部分の位置は,正面視で,釣用ルアーの中央から頭部寄りの位置にあることで一致する。フックを釣用ルアーの中央から頭部寄りの位置に設けることは,正面側のみに一つのフックアイ部であれ,正面側及び背面側の両側に各々一つ計二つのフックアイ部であれ,別紙第4の参考意匠1における図1及び図2,別紙第5の参考意匠2における図1?図5及び図10に示すように,本件登録意匠の出願日前に公然知られているものである。これら先行意匠の存在から,フックアイ部の位置,ひいては,本件登録意匠部分の位置に格別の特徴があるとは言い難く,フックアイ部を含む両意匠部分の位置が一致しても,類否判断にただちに影響を与えるものではない。 (2-2)大きさ及び範囲 正面視で,本件登録意匠部分に対してイ号意匠相当部分を比較すると, 横方向で(ルアーボディの頭から尾までの),8分の1程度に対し,15分の1程度, 縦方向で(背から下腹までの),同程度に対し,5分の1程度,そして, 平面視で,本件登録意匠部分に対してイ号意匠相当部分を比較すると, 奥行き方向(ルアーボディの厚み)で,同程度に対し,2分の1程度, であって,総じて,物品全体における大きさと範囲は,イ号意匠相当部分が本件登録意匠部分に比べ,小さく且つかなり狭い範囲である。 すなわち,両意匠部分のフックアイ部同士を重ね合わせて比較すると,破線で描かれた釣用ルアーという物品全体の形態に比して,本件登録意匠部分(例えば,フックアイ部)の大きさ及び範囲に対し,イ号意匠相当部分は,相対的にかなり小さい範囲を占めるに過ぎず,両意匠部分の大きさ及び範囲の差異点は,ありふれた範囲内の差異とはいえず,類否判断に影響を与えるものと認められる。 (3)形態 (3-1)共通点 まず,両意匠部分における形態の共通点が類否判断に与える影響について検討する。 共通点(A)の,ボディ表面部について,正面視で,縦辺と横辺の長さの比を約1:1.7としている点については,類否判断に影響を与えない。 共通点(B)の,ボディ表面部について,左側面視(イ号意匠相当部分についてはA-A端面視)で,右方向に湾曲している点については,参考意匠1における図2で「1 ルアー本体」に設けられている「3 アイ」付近の表面が湾曲した態様であること,参考意匠2における図2で「3 ルアー本体」に設けられている,例えば右側の,「2 固定環」付近の表面が湾曲した態様であること,を踏まえると,共通点における態様が新規であるとはいえず,むしろありふれた態様であるといえ,需要者の注意を惹くほどのものではなく,類否判断に与える影響は小さいものである。 共通点(C)の,フックアイ部について,底面視で,細い丸線を曲げ,その端部を足としてボディ表面部の稜線中央に直立させている点については,略「U」字状の態様や略放物線状の態様などのアイをルアー本体に設けることは,この種物品の分野において,例証するまでもなく,本件登録意匠の出願日前に広く知られていることであり,共通点における態様が新規なものであるとはいえず,共通点(B)と同様に,類否判断に与える影響は小さいものである。 (3-2)差異点 差異点(ア)の,ボディ表面部について,本件登録意匠部分が,左側面視で,右方向に凸弧状に湾曲しているのに対し,イ号意匠相当部分は,A-A端面視で右方向に軽く湾曲している点については,差異の程度がわずかでそれほど目立たないことから,重要者の注意を惹くほどのものではなく,類否判断に与える影響は小さいものである。 しかし,差異点(イ)の,平面視及び底面視でのボディ表面部の横辺の形態の差異について,本件登録意匠部分は,正面方向に横辺をわずかに凹弧状としているのに対し,イ号意匠相当部分が,横辺をほぼ直線状としている点は,差異点(ウ)のボディ表面部の全体の形態の差異,すなわち,本件登録意匠部分が,わずかに略馬鞍形状としているのに対し,イ号意匠相当部分は,略逆樋形状としている点の差異にも関係するものであるが,本件登録意匠部分の形態が,差異点(イ)については,わずかに凹弧状であり,結果として,差異点(ウ)についても,わずかに略馬鞍形状となっており,ボディ表面部の態様が異なるものであることから,需要者の注意を惹くものであり,差異点(イ)及び(ウ)のいずれも,類否判断に与える影響は小さくないものである。 また,差異点(エ)の平面視でのフックアイ部の形態の差異について,まず,略放物線状か略逆「U」字状かについては,差異点が,両意匠部分においても大きな部分を占めるものであって,差異の程度がわずかとは言い難く,次に,イ号意匠相当部分の左90度回転させた略「D」字状とした形態については,作業工程上の偶然であるとしても,フックアイ部の形態としては,すでに,ボディ表面部に該2本足がそのまま設けられて成る略「U」字状ではなく,ボディ表面部に該略「D」字状の形態がさらに載置されたものと看取されるものといえ,小さな部分におけるものとは言い難いものであり,略「D」字状であるか否かの差異も,差異の程度が僅かであるとはいえず,前述の略放物線状か略逆「U」字状かの差異とあいまって,需要者の注意を惹くものであって,類否判断に与える影響は大きいものである。 4-3.まとめ <両意匠部分> 両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲,そして形態,以上の一致点,共通点,差異点を総合する。 (位置,大きさ及び範囲) 両意匠部分の位置が一致し,大きさ及び範囲に差異が認められるが,位置の一致については,本件登録意匠部分の位置に格別の特徴があるとは言い難く,フックアイ部を含む両意匠部分の位置が一致しても,類否判断にただちに影響を与えるものではなく,大きさ及び範囲の差異については,需要者の注意を惹くほどに大きいものであると認められ,類否判断に影響を与えるものであると認められるから,両意匠部分の位置が一致していたとしても,大きさ及び範囲の差異が,類否判断に与える影響が大きいものと認められる。 (形態) 共通点が類否判断に与える影響は小さく,差異点のうち差異点(エ)が類否判断に与える影響は大きい。 以上を勘案すると,両意匠部分の大きさ及び範囲の差異,そして,両意匠部分の形態の差異が,両意匠部分の類否判断に大きな影響を与えるものであって,結果として,両意匠部分は,類似しないものといえる。 <両意匠> このように,本件登録意匠とイ号意匠は,意匠に係る物品が一致するものであるが,両意匠部分は,類似しないものであり,両意匠は,類似しないものというほかない。 第3 むすび 以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない。 よって,結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2017-12-08 |
出願番号 | 意願2014-8494(D2014-8494) |
審決分類 |
D
1
2・
1-
ZB
(K2)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 神谷 由紀 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 宮田 莊平 |
登録日 | 2014-11-14 |
登録番号 | 意匠登録第1513695号(D1513695) |
代理人 | 星野 裕司 |