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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B1
管理番号 1336213 
審判番号 不服2017-11101
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-26 
確定日 2017-12-08 
意匠に係る物品 タイツ 
事件の表示 意願2016- 5081「タイツ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)3月7日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「タイツ」とし,その形態は,願書の記載及び願書添付の図面に記載されたとおりのもので,「六面図及び拡大図において赤色に着色された部分を除く部分,並びに,端面図において実線であらわした部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。前記赤色で着色された部分と部分意匠として意匠登録を受けようとする部分との境界線部分は形状線を表すものではなく,単に境界線を表したものである。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとし,その拒絶の理由として引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報に記載された意匠登録第1298545号(意匠に係る物品,パンティストッキング)の意匠の本願意匠に相当する部分(以下,「引用部分」という。)の意匠であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,引用意匠に類似するものであるか否かについて,以下,検討する。
(1)両意匠の意匠に係る物品
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「タイツ」で,引用意匠は,「パンティストッキング」であるが,両意匠は,いずれもパンティ部(以下,「パンティ部」という。)を有するつま先までの長靴下であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
(2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分は,全体を,パンティ部を有し,つま先から腰までを覆う態様としたもので,履き口端部からパンティ部の約1/9までの部分を,意匠登録を受けようとする部分としたものであり,引用部分は本願部分に相当する同様の部分であるから,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。
(3)両部分の形態
両部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
(3-1)共通点
(A)部分全体を,正面視して履き口を左端に置いた場合に,左端側に伸縮するゴム状のウエスト部(以下,「ウエスト部」という。)を設け,上下中央に水平方向に縫合線を設けている点,
(B)ウエスト部は,パンティ部の水平方向の縫合線の長さの平面視約1/10の長さである点,
において主に共通する。
(3-2)差異点
(ア)ウエスト部の生地の厚みについて,本願部分は,「C-C拡大端面図」によれば,パンティ部の生地より薄いのに対して,引用部分は,厚みに明確な差異が見られない点,
(イ)全体の長さに対するウエスト部の左右の長さの比が,本願部分は,約1:40.7であるのに対して,引用部分は,約1:45.7である点,
(ウ)ウエスト部の生地について,本願部分は,垂直方向に糸目が表れ全体が目の詰まった生地であるのに対して,引用部分は,水平方向に繊維が横縞状に表れ,全体が緩い目の生地である点,
(エ)ウエスト部のすぐ右にある部分について,本願部分は,ウエスト部の右がすぐにパンティ部となっているのに対して,引用部分は,ウエスト部とパンティ部との間に帯状のカール防止部がある点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,共通している。
(2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通している。
(3)両部分の形態
以下,両部分の形態について検討する。
(3-1)共通点
まず,共通点(A)については,部分全体を,正面視して履き口を左端に置いた場合に,左端側に伸縮するゴム状のウエスト部を設け,上下中央に水平方向に縫合線を設けている様については,この種の物品分野において,本願の出願前から他にも見られる態様といえるもので,特徴のないものといえ,両部分のみに見られる特徴とはいえないものであるから,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
次に,共通点(B)についても,ウエスト部がパンティ部の水平方向の縫合線の長さの平面視約1/10の長さである態様は,既に見られる態様といえるもので,ありふれた部分的な特徴といえるもので,両部分全体を共通とするほどの格別目立つ態様とはいえず,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものにすぎない。
共通点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の形態の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
(3-2)差異点
これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の形態の類否判断を決定付けるものである。
差異点(ア)のウエスト部の生地の厚みの差異については,ウエスト部はゴム状であるため,丈夫なものとするために,通常は,ある程度厚みがあるのが普通であって,本願部分のようにウエスト部の生地が薄いものは,他には見られず,ウエスト部に隣接する生地の厚みとの関係を考慮すれば,引用部分のウエスト部とは,明らかに需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両部分の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
次に,差異点(イ)の全体の長さに対するウエスト部の左右の長さの比についても,全体に対しての割合が大きめである本願部分は,ウエスト部が長めで丈夫な印象を与え,全体に対しての割合が小さめである引用部分は,やや華奢な印象を与えるものであるから,その視覚的印象が異なるもので,その差異を無視することができず,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
そして,差異点(ウ)のウエスト部の生地については,細部の差異といえるものではあるが,表面全体に表れるものであり,本願部分は,目の詰まった印象を与えるのに対して,引用部分は,繊維が横縞状に表れており,明らかに需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両部分の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
また,差異点(エ)の帯状のカール防止部の有無については,ウエスト部のすぐ右にある部分が,平板でフラットな印象の本願部分に対して,ウエスト部のすぐ右にある部分に帯状のカール防止部がある引用部分は,複雑な印象であって,その視覚的印象が異なり,その差異が両部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。

(4)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通するものであるが,両部分の形態における差異点が看者に与える意匠的効果が共通点のそれを凌駕し,両部分全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-11-28 
出願番号 意願2016-5081(D2016-5081) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 斉藤 孝恵
宮田 莊平
登録日 2018-01-05 
登録番号 意匠登録第1595872号(D1595872) 
代理人 野村 慎一 
代理人 藤本 昇 

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