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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1337118 
審判番号 不服2017-12306
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-18 
確定日 2018-01-10 
意匠に係る物品 錠剤 
事件の表示 意願2015- 20167「錠剤」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成27年(2015年)9月10日の意匠登録出願であって,その意匠(当審注:以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「錠剤」とし,その形状,模様若しくは色彩又はそれらの結合(当審注:以下「形態」という。)を願書及び願書に添付された図面に記載したとおりとしたものである(当審注:別紙第1参照)。

2.原査定における拒絶の理由
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,具体的には,
「この意匠登録出願前,2012年4月,独立行政法人医薬品医療機器総合機構によるインターネットのサイト(アドレス http://www.pmda.go.jp/)の「医療用医薬品の添付文書情報」に掲載された「口腔用剤 ノードマン トローチ0.25mg/NORDMAN デカリニウム塩化物トローチ(承認番号21400AMZ00210000)」(掲載頁のアドレス http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/400813_2399710E1038_2_06)(当審注:別紙第2参照)の【組成・性状】欄の『外形(サイズ)』行において公然知られた錠剤(「表」「裏」「断面」と記載された行下に見られる図形で表された錠剤)の意匠(当審注:以下「引用意匠」といい,「本願意匠」と併せて「両意匠」という。)。

なお,両意匠は,意匠の類否判断に大きな影響を及ぼす,全体の形状を中央に孔を開けた環状体とし,正背左右側面視上下ともに丸味を持った緩やかな盛り上がりを設けた点において強く共通し,断面形状において上下面の一部が中央孔部へ向けて直線状としているか否かにおいて若干の差異がみられたとしても,錠剤の内側の断面形状のごく一部の部分的な改変であり,意匠全体として観察した場合,このことのみをもって前記の共通点を凌駕する程のものとは認められません。」
としたものである。

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,いずれも口腔内溶解(いわゆるトローチ)など,経口飲用する固形の製剤たる「錠剤」であるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。
両意匠の形態については,この種の物品分野,特に口腔内溶解などにて経口飲用する固形の製剤の分野,において,通常は,平面と底面の形状が,需要者の注意を引き易いものであることを踏まえ,観察すると,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
なお,本願意匠の願書に添付された図面の図と引用意匠の図との平仄を合わせるため,以下,引用意匠の「表」を「平面図」,「裏」を「底面図」として対比する。
(1)共通点
(A)本体を肉厚な短円筒形(当審注:以下「本体」という。)とし,さらに,その平面と底面を膨出させた,いわば孔あきドーナツのような形状とした点,
(B)平面視で,本体の外径と孔の内径の比を約3:1とし,正面視(引用意匠では断面視)で,本体に平面と底面の膨出も加えた縦横比を約1:3.5とした点,
において主に共通する。
(2)差異点
(ア)平面と底面を膨出させた点について,正面視(引用意匠では断面視)で,本願意匠は,膨出の程度を,片側(例えば底面側)だけで全高の約10%(すなわち両側(底面側と平面側)で全高の約20%)と浅い膨出とするのに対し,引用意匠は,約20%(すなわち,両側で全高の約40%)とする点,
(イ)平面と底面の膨出の形状について,断面視で,本願意匠は,膨出の頂点の位置を,本体の外の端から孔の端に向けて水平方向で約6分の1の位置の本体の外側寄りとし,外形状について,本体の外の端から該頂点までの約6分の1を略部分円弧とし該頂点から孔の端までの約6分の5を略直線とし,総じて,該形状をあたかも茶杓(ちゃしゃく)の先を真横からみた形状とするのに対し,引用意匠は,別紙第2の「断面」の欄に記載の図のうち,膨出の頂点の位置を,本体の外の端から孔の端に向けて水平方向で約2分の1とし,外形状を略4分の1円弧状とした点,
において主な差異が認められる。

4.類否判断
(1)形態の共通点
そこで検討するに,共通点(A)について,この種の物品分野において,肉厚な短円筒形を本体とし,その平面と底面を膨出させた形状としたものは,本願出願前に既に多数見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないから,共通点(A)は,需要者の注意を引くものではなく,類否判断に及ぼす影響は小さい。
一方,共通点(B)について,長さの比率を,平面視で,本体の外径と孔の内径の比を約3:1とし,正面視(引用意匠では断面視)で,縦横比を約1:3.5とした点は,共通点(A)の形状の錠剤のうち,前者の比率のものも後者の比率のものも,本願出願前に存在し,かつ,この種の物品分野において内服や口腔内溶解などの経口での飲用を難しくする比率には創作できないことから比率がおおよそ似かよる傾向にあること,以上をあわせ考えると,この共通点(B)のみでは需要者の注意を強く引くといえないから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まる。

(2)形態の差異点
これに対して,差異点に係る形態が相俟って生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
まず,差異点(ア)の,平面と底面の膨出の程度の差異について,この種の物品分野において,本願意匠のように両側で全高の約20%とするものは,本願出願前に見られないことから,この差異点(ア)は,需要者の注意を引き,両意匠の類否判断に影響を与える。
差異点(イ)の膨出の形状の差異について,この種の物品分野において,引用意匠のように,頂点の位置を,本体の外の端から孔の端に向けて水平方向で約2分の1とし,外形状を略4分の1円弧状としたものは,本願出願前から数多く見られてありふれた形状である一方,本願意匠のように,まず,頂点の位置を,本体の外の端から孔の端に向けて水平方向で約6分の1の位置の外側寄りとしたものは,本願出願前にまったく見られず,加えて,外形状を,本体の外の端から該頂点までの約6分の1を略部分円弧とし該頂点から孔の端までの約6分の5を略直線とした,あたかも茶杓の先を横からみた形状としたものも,本願出願前にまったく見られない新規なものである。以上のように,差異点における形状が,引用意匠についてはありふれたものである一方で,本願意匠については新規なものであることから,この種の物品の分野において通常は平面と底面の形状に需要者が注意を寄せることも合わせ考えると,この差異点(イ)は,需要者の注意を強く引くものといえ,両意匠の類否判断に強く影響を与えるものである。

(3)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-11-28 
出願番号 意願2015-20167(D2015-20167) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 江塚 尚弘
宮田 莊平
登録日 2018-02-09 
登録番号 意匠登録第1598957号(D1598957) 
代理人 柳 伸子 

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