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審決分類 審判    E0
管理番号 1337123 
審判番号 無効2017-880002
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-03-27 
確定日 2018-01-22 
意匠に係る物品 ペット用ベッド 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1555361号「ペット用ベッド」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 意匠登録第1555361号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件意匠登録第1555361号の意匠(以下「本件登録意匠」という。)は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとして,平成28年(2016年)2月16日に意匠登録出願(意願2016-3241)されたものであって,審査を経て同年7月1日に意匠権の設定の登録がなされ,同年8月1日に意匠公報が発行され,その後,当審において,概要,以下の手続を経たものである。

・本件審判請求 平成29年3月27日
・審尋回答書提出(請求人) 平成29年7月24日
・無効理由通知 平成29年9月28日


第2 無効理由
1.無効理由
請求人は,無効理由として,「本件登録意匠は,本件意匠の出願前に,その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるので,その意匠登録は,意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきである。」と主張している。


第3 請求人の主張の概要
1.本件登録意匠の要旨
本件登録意匠は,意匠登録第1555361号公報(甲第1号証)に記載の通り,意匠にかかる物品を「ペット用ベッド」とし,その形態は,基本的構成態様が,布の様な柔らかい素材をほぼ一定の径を有する筒状に形成したものである。
そして,各部の具体的態様は,外筒面と内筒面を異なる色及び質感の素材で構成しており,内筒面を粗く起毛しており,筒の軸長方向に等間隔に2箇所の絞り部を形成したものである。

2.本件意匠の出願前に公知であった形態及びその証拠の説明
甲第2号証は,本件意匠の出願前である平成27年11月19日にインターネット上に公開されたブログ記事である。この記事中,2枚目,3枚目,5枚目の写真には,商品名「あったかロールクッション」の形態として,布の様な柔らかい素材をほぼ一定の径を有する筒状に形成したロール型クッションにおいて,外筒面と内筒面を異なる色及び質感の素材で構成しており,内筒面を粗く起毛しており,筒の軸長方向に等間隔に2箇所の絞り部を形成し,外筒面に水玉模様を付した形態が示されている。
甲第3号証は,本件意匠の出願前である平成27年11月22日にインターネット上に公開された記事である。この記事中,1?8枚目,10?13枚目の写真には,商品名「ロールクッション」の形態として,布の様な柔らかい素材をほぼ一定の径を有する筒状に形成したロール型クッションにおいて,外筒面と内筒面を異なる色及び質感の素材で構成しており,内筒面を粗く起毛しており,筒の軸長方向に等間隔に2箇所の絞り部を形成し,外筒面に水玉模様を付した形態が示されている。
甲第4号証は,本件意匠の出願前である平成27年12月10日にインターネット上に公開されたブログ記事である。この記事中,1枚目,4?13枚目の写真には,商品名「ロールクッション」の形態として,布の様な柔らかい素材をほぼ一定の径を有する筒状に形成したロール型クッションにおいて,外筒面と内筒面を異なる色及び質感の素材で構成しており,内筒面を粗く起毛しており,筒の軸長方向に等間隔に2箇所の絞り部を形成し,外筒面に水玉模様を付した形態が示されている。
甲第5号証は,平成29年1月9日にインターネット上に公開された記事であるが,記事中で引用されている2?5枚目の写真は,引用元の情報によれば平成27年11月21日?29日の間にWEBサービス「Twitter」上に公開されたものである。これらの写真には,布の様な柔らかい素材をほぼ一定の径を有する筒状に形成したロール型クッションにおいて,外筒面と内筒面を異なる色及び質感の素材で構成しており,内筒面を粗く起毛しており,筒の軸長方向に等間隔に2箇所の絞り部を形成し,外筒面に水玉模様を付した形態が示されている。
甲第6号証は,本件意匠の出願前である平成27年12月13日にインターネット上に公開された記事である。この記事中,7?10枚目の写真には,布の様な柔らかい素材をほぼ一定の径を有する筒状に形成したロール型クッションにおいて,外筒面と内筒面を異なる色及び質感の素材で構成しており,内筒面を粗く起毛しており,筒の軸長方向に等間隔に2箇所の絞り部を形成し,外筒面に水玉模様を付した形態が示されている。
甲第6号証の1及び甲第6号証の2は,それぞれ,上記甲第6号証のWEBサイト記事における7枚目及び9枚目の写真の引用元としてリンクされているWEB上の写真共有サービス「Instagram」の公開ページである。それぞれ,本件証拠作成日(平成29年2月22日)の63週前,64週前が発行日と示されており,この表示部分にマウスオーバーすると,それぞれ,平成27年11月26日付平成27年12月9日イ寸の表示がなされる(甲第6号証の3,甲第6号証の4)。
甲第7号証は,本件意匠の出願前である平成27年12月16日にインターネット上に公開されたブログ記事である。この記事中,1?7枚目の写真には,布の様な柔らかい素材をほぼ一定の径を有する筒状に形成したロール型クッションにおいて,外筒面と内筒面を異なる色及び質感の素材で構成しており,内筒面を粗く起毛しており,筒の軸長方向に等間隔に2箇所の絞り部を形成し,外筒面に水玉模様を付した形態が示されている。
甲第7号証の1及び甲第7号証の2は,それぞれ,上記甲第7号証のWEBサイト記事における1枚目及び5枚目の写真の引用元としてリンクされているWEB上の写真共有サービス「Instagram」の公開ページである。それぞれ,本件証拠作成日(平成29年2月22日)の62週前,64週前が発行日と示されており,この表示部分にマウスオーバーすると,それぞれ,平成27年12月15日付平成27年11月25日付の表示がなされる(甲第7号証の3,甲第7号証の4)。
甲第2号証?甲第7号証の4までの各証拠に表れているロール型クッションは,その写真及び記事の記載全体から,全て同一シリーズの商品(ピンク色地に白の水玉模様,薄茶色地に白の水玉模様,濃茶色地に白の水玉模様の3種類の異なる色模様があるがそれ以外はほぼ形態同一)であり,株式会社しまむら(埼玉県さいたま市北区宮原町2-19-4)が経営する衣料品小売店「ファッションセンターしまむら」などにおいて,平成27年11月から12月頃に小売販売されていたものであることが認められる。これらの商品について,以下,便宜上色模様の違いを捨象して「公知形態1」と呼ぶ。
甲第8号証は,本件意匠の出願前である平成26年12月20日にインターネット上に公開されたブログ記事である。この記事中,3?10枚目の写真には,商品名「あったかロールクッション」の形態として,布の様な柔らかい素材をほぼ一定の径を有する筒状に形成したロール型クッションにおいて,外筒面と内筒面を異なる色及び質感の素材で構成しており,内筒面を粗く起毛しており,筒の軸長方向の中央付近に1箇所の絞り部を形成した形態が示されている。この商品について,以下,「公知形態2」と呼ぶ。

3.本件登録意匠と公知形態1との対比
意匠にかかる物品については,本件登録意匠が「ペット用ベッド」であるのに対して,公知形態1は「(人間用の)クッション」であり,物品としては非類似である。
形態については,以下の共通点と差異点が認められる。


A[共通点]
・布の様な柔らかい素材をほぼ一定の径を有する筒状に形成している点
・外筒面と内筒面を異なる色及び質感の素材で構成している点
・内筒面を粗く起毛している点
・筒の軸長方向に等間隔に2箇所の絞り部を形成している点
B[差異点]
・本件登録意匠は外筒面に模様を有しないのに対して,公知形態1は外筒面にピンク色地,薄茶色地ないし濃茶色地に白の水玉模様を有している点。

4.本件登録意匠と公知形態2との対比
意匠にかかる物品については,本件登録意匠が「ペット用ベッド」であるのに対して,公知形態1は「(人間用の)クッション」であり,物品としては非類似である。
形態については,以下の共通点と差異点が認められる。
A[共通点]
・布の様な柔らかい素材をほぼ一定の径を有する筒状に形成している点
・外筒面と内筒面を異なる色及び質感の素材で構成している点
・内筒面を粗く起毛している点
B[差異点]
・本件登録意匠は外筒面に模様を有しないのに対して,公知形態2は外筒面にピンク色地,薄茶色地ないし濃茶色地に白の水玉模様を有している点。
・本件登録意匠は筒の軸長方向に等間隔に2箇所の絞り部を形成しているのに対して,筒の軸長方向の中央付近に1箇所の絞り部を形成している点

5.創作容易
上記の通り,色模様の違いを除けば本件登録意匠とほぼ同一形態である近い公知形態1が,本件意匠の出願前である平成27年11月頃から公知となっている。また,色模様の違いを除けば本件登録意匠に近い形態である近い公知形態2が,本件意匠の出願前である平成26年12月頃から公知となっている。
そして,公知形態1及び公知形態2は,「(人間用の)クッション」として公知になっているものの,これらの公知資料(甲第2号証?甲第8号証)には,人間用のクッションとして購入したものが家庭のペット(主に犬)にとって居心地がよいものであり,ペット用ベッドとしての用途に転用されていることが記載されている。また,そのような転用がインターネット上で話題となり,これらの商品をペット用ベッドとして買い求める者が続出し,商品がすぐ品切れになるといった状況が見受けられる。
本件登録意匠である「ペット用ベッド」に関わる当業者が,このような公知資料に接したとすれば,人間用のクッションの公知形態を転用してペット用ベッドとすることにつき明確な示唆を得られるため,これに基づき本件登録意匠を創作することは極めて容易であったものと考えられる。とりわけ,本件登録意匠が色模様の違いを除けば公知形態1とほぼ同一形態であることからしても,その創作性の程度は低いものと評価できる。

6.むすび
よって,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,その意匠登録は,意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきである。

7.証拠方法
(1)甲第1号証 意匠登録第1555361号公報
(2)甲第2号証 WEBサイト「amebaブログ“サンマー”」の「しまほいロールクッション♪」のページ;平成27年11月19日付(http://ameblo.jp/trump-044540/entry-12097262181.html)
(3)甲第3号証 WEBサイト「Spotlight」の「人間用ながらペットに絶大な人気を博している「しまむらホイホイ」まとめ」のページ;平成27年11月22日付(http://spotlight-media.jp/article216658100248390588)
(4)甲第4号証 WEBサイト「MAMILOG」の「犬をダメにするクッション「しまむらホイホイ」をうちの犬たちにも与えてみた。」のページ;平成27年12月10日付(http://mamikaito.com/shimamurahoihoi/)
(5)甲第5号証 WEBサイト「NAVERまとめ」の「犬をダメにするクッション「しまむらホイホイ」がすごい!!」のページ(http://matome,naver.jp/odai/2144895158124642401)
(6)甲第6号証 WEBサイト「gooいまトピ」の「売り切れ続出!犬や猫をダメにする「しまむらホイホイ」とは?」のページ;平成27年12月13日付(http://ima.goo.ne/column/article/3864.html)
(7)甲第6号証の1 甲第6号証のWEBサイトに写真引用元としてリンクされている,WEB上の写真共有サービス「Instagram」の公開ページ;平成27年11月26日付(http://www.instagram.com/p/-iFv67tL61/)
(8)甲第6号証の2 甲第6号証のWEBサイトに写真引用元としてリンクされている,WEB上の写真共有サービス「Instagram」の公開ページ;平成27年12月9日付(http://www.instagram.com/p/_DZbJKh0Yc/)
(9)甲第6号証の3 甲第6号証の1に示すページのスクリーンショット
(10)甲第6号証の4 甲第6号証の2に示すページのスクリーンショット
(11)甲第7号証 WEBサイト「Seesaaブログ“勝手にレビューダイアリー”」
の「しまむらロールクッション」のページ;平成27年12月16日付(http://katteni-review-dairy.seesaa.net/article/431264818.html)
(12)甲第7号証の1 甲第6号証のWEBサイトに写真引用元としてリンクされている,WEB上の写真共有サービス「Instagram」の公開ページ;平成27年12月15日付(http://www.instagram.com/p/_Rs9yqms76/)
(13)甲第7号証の2 甲第6号証のWEBサイトに写真引用元としてリンクされている,WEB上の写真共有サービス「Instagram」の公開ページ;平成27年11月25日付(http://www.instagram.com/p/-gtKcpghtj/)
(14)甲第7号証の3 甲第7号証の1に示すページのスクリーンショット
(15)甲第7号証の4 甲第7号証の2に示すページのスクリーンショット
(16)甲第8号証 WEBサイト「FC2ブログ“真央亭日乗”」の「乗り遅れた☆しまむらホイホイ☆」のページ;平成26年12月20日付(http://417mao.blog.fc2.com/blog-entry-800.html)


第4 被請求人の答弁及び理由
特許庁より,被請求人に審判請求書を送付し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,請求人の申立及び理由に対して,被請求人からの応答はなかった。


第5 審尋及び請求人の回答書
1.当審の審尋
(1)甲第2号証ないし甲第7号証のブログ記事やインターネットサイトの記事について,本件登録意匠の出願前である平成27年11月や平成27年12月に既に公知となっていたとされる株式会社しまむらの「着られてぬくぬくロールクッション」の意匠を現した写真がいつ,公然知られたものであるのか,例えば,商品番号124-9847の商品や商品番号124-9852の商品が,本件登録意匠の出願前に既に公開されているという第三者の証明や,インターネットアーカイブなどに掲載されているなどの客観的な補足事実などがあれば,その事実を主張されたい。
(2)甲第8号証のブログ記事について,本件登録意匠の出願前である平成26年12月20日に既に公知となっていたとされる株式会社しまむらの「あったかロールクッション」の意匠を現した写真がいつ,公然知られたものであるのか,例えば,商品番号124-8220の商品が,本件登録意匠の出願前に他にも公開されているという間接事実や,本件登録意匠の出願前に既に公開されているという第三者の証明や,インターネットアーカイブなどに掲載されているなどの客観的な補足事実などがあれば,その事実を主張されたい。

2.請求人の回答書
(1)審尋の(1)について回答する。
甲第9号証は,甲第3号証に示す『WEBサイト「spotlight」の「人間用ながらペットに絶大な人気を博している「しまむらホイホイ」まとめ」のページ;平成27年11月22日付』のインターネットアーカイブ記事である。
甲第9号証の2によれば,この記事が平成27年11月25日保存のものであることが分かる。
甲第9号証と甲第3号証において,大半の文字情報及び画像が一致することから,甲第3号証に示すWEBサイト(一部差し替わった画像を除く)が平成27年11月25日の時点で公開済みであったことが確認される。
甲第10号証は,甲第4号証に示す『WEBサイト「MAMILOG」の「犬をダメにするクッション「しまむらホイホイ」をうちの犬たちにも与えてみた。」のページ;平成27年12月10日付』のインターネットアーカイブ記事である。
甲第10号証の2によれば,この記事が平成27年12月15日保存のものであることが分かる。
甲第10号証においては,甲第4号証に示される画像が欠落しているが,文字情報が一致すること,文字情報の間に画像が貼付されていた形跡があることが確認される。
甲第11号証は,甲第5号証に示す『WEBサイト「NAVERまとめ」の「犬をダメにするクッション「しまむらホイホイ」がすごい!!」のページ』のインターネットアーカイブ記事である。
甲第11号証の2によれば,この記事が平成27年12月1日保存のものであることが分かる。
甲第11号証においては,甲第5号証に示される画像が欠落しているが,文字情報が一致すること,一部の画像について引用元のTwitterサイトへのリンク情報が一致することが確認される。
甲第12号証は,甲第6号証に示す『WEBサイト「gooいまトピ」の「売り切れ続出!犬や猫をダメにする「しまむらホイホイ」とは?」のページ;平成27年12月13日付』のインターネットアーカイブ記事である。
甲第12号証の2によれば,この記事が平成27年12月15日保存のものであることが分かる。
甲第10号証においては,甲第6号証に示される画像が欠落しているが,文字情報が一致すること,文字情報の間に画像が貼付されていた形跡があることが確認される。

3.証拠方法
(1)甲第9号証 甲第3号証に示す『WEBサイト「spotlight」の「人間用ながらペットに絶大な人気を博している「しまむらホイホイ」まとめ」のページ;平成27年11月22日付』のインターネットアーカイブ記事(平成27年11月25日保存)
(2)甲第9号証の2 甲第9号証に示す記事へのリンク画面
(3)甲第10号証 甲第4号証に示す「WEBサイト『MAMILOG』」の「犬をダメにするクッション『しまむらホイホイ』をうちの犬たちにも与えてみた。」の「ページ;平成27年12月10日付」のインターネットアーカイブ記事(平成27年12月15日保存)
(4)甲第10号証の2 甲第10号証に示す記事へのリンク画面
(5)甲第11号証 甲第6号証に示す「WEBサイト『NAVERまとめ』」の「犬をダメにするクッション『しまむらホイホイ』がすごい!!のページ」のインターネットアーカイブ記事(平成27年12月1日保存)
(6)甲第11号証の2 甲第11号証に示す記事へのリンク画面
(7)甲第12号証 甲第6号証に示す「WEBサイト『gooいまトピ』の『売り切れ続出!犬や猫をダメにする『しまむらホイホイ』とは?」の「ページ;平成27年12月13日付」のインターネットアーカイブ記事(平成27年12月15日保存)
(8)甲第12号証の2 甲第12号証に示す記事へのリンク画面

第6 当審の無効理由通知
当審は,請求人が回答書を提出しなかった審尋の(2)についても審理し,その審理の結果を,被請求人に対して,「本件登録意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当する。」として,平成29年(2017年)9月25日付けで無効理由として通知し,意見を求めた。
被請求人に通知した無効理由は具体的には以下のとおりである。

本件登録意匠は,意匠に係る物品を「ペット用ベッド」としたもので,その形態は,全体を柔らかい素材による略筒状とし,平面視の縦横比を約3:2とし,正背面を略横長楕円形状とし,平面視した長さを約3等分する位置にギャザーのよった縫い目を施し,側面視して段状に3つの膨出部(以下,「膨出部」という。)を形成したもので,左側面に水平方向に縫い目を施して,全体をトンネル状とすることで,ペットが中に入ることができるものである。正背面から見える内側の素材は明度が高く起毛したもので,外側の素材は,滑らかで暗色の無地のものである。(別紙第1参照)
まず,(A)この種のペット用ベッドの分野において,人間用のクッションをペット用のベッドなどに用いることは,例えば,意匠1(別紙第2及び別紙第3参照)に見られるように,本件登録意匠の出願前より既に広く知られたありふれた手法といえるものである。
次に,(B)この種のペット用ベッドやクッションなどの分野において,全体を略筒状とし,平面視の縦横比を約3:2とし,正背面を略横長楕円形状とし,平面視した長さを約3等分する位置にギャザーのよった縫い目を施し,側面視して段状に3つの膨出部を形成したもので,全体をトンネル状とすることで,ペットが中に入ることができるものも,例えば,意匠1(別紙第2及び別紙第3参照)及び意匠1参考意匠(別紙第4参照)に見られるように,本件登録意匠の出願前より既に広く知られた態様といえるものである。
また,(C)この種のペット用ベッドやクッションなどの分野において,正背面から見える内側の素材は起毛したもので,外側の素材は滑らかで無地としたものも,例えば,意匠2(別紙第5参照)に見られるように,本件登録意匠の出願前より既に公然知られた態様といえるものである。
そうすると,本件登録意匠の態様は,意匠1に見られるようにありふれた手法により,人間用のクッションをペット用のベッドに用いたもので,意匠1及び意匠1参考意匠に見られるように全体を略筒状とし,平面視の縦横比を約3:2とし,正背面を略横長楕円形状とし,平面視した長さを約3等分する位置にギャザーのよった縫い目を施し,側面視して段状に3つの膨出部を形成したもので,全体をトンネル状とすることで,ペットが中に入ることができる広く知られた態様といえるもので,意匠2に見られるような,正背面から見える内側の素材は起毛したもので,外側の素材は滑らかで無地とした公然知られた態様とし,単に内側の素材の明度を高くして外側の素材の明度を低くしたまでであるから,本件登録意匠の態様は,当業者の特段の創意を要した意匠と認めることができないので,本件登録意匠は,当業者であれば,容易に創作をすることができた意匠と認められる。

意匠1(別紙第2及び別紙第3参照)
インターネットアーカイブ Wayback Machineで記録,提供されている情報によれば,平成27年(2015年)11月25日に公開されていた,「WEBサイト『spotlight』の『人間用ながらペットに絶大な人気を博している』『しまむらホイホイ』まとめ」のページ;(甲第3号証:別紙第2参照,及び甲第9号証の2:別紙第3参照)に掲載された「ロールクッション」(商品番号124-9847,商品番号124-9852の「ロールクッション」)の意匠
http://archive.org/web/http://spotlight-media.jp/article216658100248390588

意匠1参考意匠(別紙第4参照)
甲第3号証(別紙第2参照)の第1頁の「しまむらロールクッション」を表した「着られてぬくぬくロールクッション」拡大図

意匠2(別紙第5参照)
インターネットアーカイブ Wayback Machineで記録,提供されている情報によれば,平成27年(2015年)12月1日に公開されていた,「犬猫が恐ろしいほど吸い込まれてくる・・・しまむらホイホイ,驚異の吸引力」「ガールズチャンネル」の2015年11月29日の記事
https://web.archive.org/web/20151201033047/http://girlschannel.net/topics/556056
に表された「ロールクッション」の意匠

特許庁より,被請求人に無効理由通知書を送付し,期間を指定して意見書の提出を求めたが,被請求人からの応答はなかった。


第7 当審の判断
以下,本件登録意匠が意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当するか否かについて,判断する。
1.本件登録意匠(別紙第1参照)
本件登録意匠(意匠登録第1555361号の意匠)は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとして,平成28年(2016年)2月16日に意匠登録出願され,平成28年7月1日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,意匠に係る物品を「ペット用ベッド」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)は,願書の記載及び願書に添付された図面代用写真に現されたとおりのものである。
本件登録意匠は,柔らかい素材を筒状に形成して構成され,ペットが,その内部に入ることができ,上に乗って休むことができるようになっている「ペット用ベッド」であって,その形態については,以下のとおりである。
すなわち,全体を柔らかい素材による略筒状とし,平面視の縦横比を約3:2とし,正背面を略横長楕円形状とし,平面視した長さを水平方向に約3等分する位置にギャザーのよった縫い目を施し,側面視して段状に3つの膨出部(以下,「膨出部」という。)を形成したもので,全体をトンネル状とすることで,ペットが中に入ることができるものである。正背面から見える内側の素材は明度が高く起毛したもので,外側の素材は,滑らかで暗色の無地のものである。

2.当審の無効理由で引用した意匠
意匠1については,請求人からの審尋回答書によって甲第3号証の意匠が本件登録意匠の出願前よりインターネットに公開されていた日付けが甲第9号証及び甲第9号証の2によって示されたものであるが,意匠2については,インターネットアーカイブ Wayback Machineなどで記録,提供されている情報が提出されていなっかった。そのため,当審で無効理由通知を通知し,インターネットに公開されていた日付けを明確にしたものとして,意匠2を引用した。
(1)意匠1(別紙第2及び別紙第3参照)
意匠1は,インターネットアーカイブ Wayback Machineで記録,提供されている情報によれば,平成27年(2015年)11月25日に公開されていた,「WEBサイト『spotlight』の『人間用ながらペットに絶大な人気を博している』『しまむらホイホイ』まとめ」のページ(甲第3号証:別紙第2参照,甲第9号証及び甲第9号証の2:別紙第3参照)に掲載された「ロールクッション」(商品番号124-9847,商品番号124-9852の「ロールクッション」)の意匠である。
請求人の提出した甲第9号証によれば,その第2頁にピンクの水玉の品番が124-9847である旨が記載されている。また,甲第3号証の第5頁に濃いブラウンの品番が124-9852である旨が記載されている。甲第9号証には,その第4頁から第5頁に濃いブラウンのものが掲載されている。甲第9号証の2によって,甲第3号証及び甲第9号証に示された画像がインターネットアーカイブ Wayback Machineで記録,提供され,平成27年(2015年)11月25日に公開されていることが認められる。
意匠1参考意匠(別紙第4参照)には,甲第3号証(別紙第2参照)の第1頁の「しまむらロールクッション」を表した「着られてぬくぬくロールクッション」の拡大図が表されており,「しまむらHPより,11/18?11/23までのチラシに掲載。」と記載されている。内側がボア素材であることも掲載されている。
甲第3号証及び甲第9号証には,「『しまむらホイホイ』まとめ」として,犬や猫などのペットが略筒状の中に入ったり,上に乗ったりする様子が掲載されている。
意匠1は,意匠に係る物品を「ロールクッション」としたもので,その形態は,全体を柔らかい素材による略筒状とし,平面視の縦横比を約3:2とし,正背面を略横長楕円形状とし,平面視した長さを水平方向に約3等分する位置にギャザーのよった縫い目を施し,側面視して段状に3つの膨出部(以下,「膨出部」という。)を形成したもので,全体をトンネル状とすることで,人が略筒状の中に入るようにして着ることができるものである。外側から見える内側の素材は無地で起毛したもので,外側の素材は,滑らかで白い水玉模様が配されたものである。その色彩は,ピンク,ベージュ,及び濃いブラウンである。
(2)意匠2(別紙第5参照)
意匠2は,インターネットアーカイブ Wayback Machineで記録,提供されている情報によれば,平成27年(2015年)12月1日に公開されていた,「犬猫が恐ろしいほど吸い込まれてくる・・・しまむらホイホイ,驚異の吸引力」「ガールズチャンネル」の2015年11月29日の記事に掲載されたものである。
意匠2は,意匠に係る物品を「ロールクッション」としたもので,その形態は,全体を柔らかい素材による略筒状とし,平面視の縦横比を約1:1とし,正背面を略横長楕円形状とし,平面視した長さを水平方向に約2等分する位置にギャザーのよった縫い目を施し,側面視して段状に2つの膨出部を形成したもので,全体をトンネル状とすることで,犬が略筒状の中に入ることができるものである。その色彩は,ピンク,ベージュ,及び濃いブラウンである。外側から見える内側の素材は無地で起毛したもので,外側の素材は,滑らかなものである。その色彩は,ピンク,ベージュ,及び濃いブラウンである。

3.本件登録意匠の創作容易性の判断
まず,(A)この種のペット用ベッドの分野において,人間用のクッションをペット用のベッドなどに用いることは,例えば,意匠1に見られるように,本件登録意匠の出願前より既に広く行われているありふれた手法といえるものである。
次に,(B)この種のペット用ベッドやクッションなどの分野において,全体を略筒状とし,平面視の縦横比を約3:2とし,正背面を略横長楕円形状とし,平面視した長さを約3等分する位置にギャザーのよった縫い目を施し,側面視して段状に3つの膨出部を形成したもので,全体をトンネル状とすることで,ペットが中に入ることができるものも,例えば,意匠1及び意匠1参考意匠に見られるように,本件登録意匠の出願前より既に広く知られた態様といえるものである。
また,(C)この種のペット用ベッドやクッションなどの分野において,正背面から見える内側の素材は起毛したもので,外側の素材は滑らかで無地としたものも,例えば,意匠2に見られるように,本件登録意匠の出願前より既に公然知られた態様といえるものである。
そして,(D)この種のペット用ベッドの分野において,正背面から見える内側の素材の明度を高くして外側の素材の明度を低くしたものも,本件登録意匠の出願前より,既に公然知られた態様(例えば,参考意匠 特許庁意匠課公知資料番号HJ27016816号のねこ用ベッドの意匠:別紙第6参照)といえるものである。
そうすると,本件登録意匠の態様は,意匠1に見られるようにありふれた手法により,人間用のクッションをペット用のベッドに用いたもので,意匠1及び意匠1参考意匠に見られるように全体を略筒状とし,平面視の縦横比を約3:2とし,正背面を略横長楕円形状とし,平面視した長さを約3等分する位置にギャザーのよった縫い目を施し,側面視して段状に3つの膨出部を形成したもので,全体をトンネル状とすることで,ペットが中に入ることができる広く知られた態様といえるもので,意匠2に見られるような,正背面から見える内側の素材は起毛したもので,外側の素材は滑らかで無地とした公然知られた態様とし,単に既に知られた内側の素材の明度を高くして外側の素材の明度を低くしたまでのもの(参考意匠:別紙第6参照)であるから,本件登録意匠の態様は,当業者の特段の創意を要した意匠と認めることができないので,本件登録意匠は,当業者であれば,容易に創作をすることができた意匠と認められる。
本件登録意匠の出願前より,この種のペット用ベッドの分野においては,その内側の素材をペットにとって心地よい起毛した素材を用いることは,本件登録意匠の出願前より,公然知られた態様といえるものであり,意匠の創作としては,当業者が想到するのに格別の困難性を要するとはいえない。また,本件登録意匠の出願前より,様々なカラーバリエーションが見られる物品分野であるから,正背面から見える内側の素材を起毛したものとし,外側の素材は滑らかで無地とした公然知られた態様とし,内側の素材の明度を高くしたものも,既に公然知られた態様といえるものであるから,その態様を導き出すことに特段の創作を要するものでもない。したがって,本件登録意匠は,意匠1及び意匠2に基づいて,当業者が容易に創作することのできた意匠であるから,意匠法第3条第2項に該当し,意匠登録を受けることができないものである。

(4)小括
以上のとおりであるから,本件登録意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,意匠1及び意匠2に見られるような日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠であり,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものである。


第8 むすび
以上のとおりであって,本件登録意匠は,当業者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠であり,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるにもかかわらず意匠登録を受けたものであるから,本件意匠登録は,同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
別掲



審理終結日 2017-11-27 
結審通知日 2017-11-29 
審決日 2017-12-13 
出願番号 意願2016-3241(D2016-3241) 
審決分類 D 1 113・ 121- Z (E0)
最終処分 成立 
前審関与審査官 桐野 あい 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 正田 毅
斉藤 孝恵
登録日 2016-07-01 
登録番号 意匠登録第1555361号(D1555361) 
代理人 特許業務法人プロテック 
代理人 狹武 哲詩 
代理人 小林 生央 
代理人 長谷川 好道 
代理人 杉山 浩康 
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