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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1338191 |
審判番号 | 不服2014-8880 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-05-13 |
確定日 | 2015-02-13 |
意匠に係る物品 | プッシュスイッチ |
事件の表示 | 意願2013- 6691「プッシュスイッチ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1.本願意匠 本願は,平成25年(2013年)3月26日の意匠登録出願であって,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし,意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠を3年間秘密にすることを請求したものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付された図面の記載によれば,意匠に係る物品を「プッシュスイッチ」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する,というものであるところ,その拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が平成19年(2007年)1月12日に受け入れた,内国雑誌「新製品情報2007年1月1日1号」の第50ページに所載されたスイッチの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HA18032269号)であって,その形態は,同ページに掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 第3.本願意匠と引用意匠の対比及び類否の判断 1.本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「プッシュスイッチ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「スイッチ」であるところ,当該スイッチはタッチスイッチ,すなわち手の指等で接触ないし押圧することで接点の切り換えを行うスイッチであって,「プッシュスイッチ」と同様の機能を奏するものであるから,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。 2.本願意匠と引用意匠の形態 両意匠の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 なお,両意匠を同じ方向から対比するため,引用意匠を本願意匠の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ形態を認定し,対比する。 (1)共通点 両意匠は,基本的構成態様として, (A)本体部を,平面視が隅丸の略長方形である略平板状の直方体とし,略長方形の上面のほぼ中心から上方に突出するように,平面視が円形の押圧用突起を設けている点。 (B)本体部を平面視した際に,上記円形の押圧用突起と同心であって,より直径の大きい円形可動接点を看取でき,また,当該円形可動接点の左右両端部付近から,隅丸の略長方形の固定接点が上記本体部の左右方向に張り出していることを看取できる点。 において共通し,また,具体的な態様として, (C)本体部の直方体の左右両側面の前後端寄りに,下方から斜め上方に向けて当該側面から離れるように延びる略長方形板状の端子をそれぞれ,計4つ設けている点。 において共通する。 (2)相違点 具体的構成態様として, (ア)本願意匠では,本体部の上面のほぼ全体が,半透明の絶縁フィルムによって覆われており,当該絶縁フィルムと一体に上記円形の押圧用突起が設けられており,上記絶縁フィルムのうち,上記円形の押圧用突起の周辺の部分は,上方に向けてなだらかに膨出しているのに対して,引用意匠では,本体部の上面のうち,上記円形可動接点及び上記隅丸の略長方形の固定接点を看取できる部分については,半透明の何らかの部材を看取できるものの,当該部材は上記円形の押圧用突起とは別の部材であり,また,当該部材が本体部の上面のほぼ全体を覆っているかどうかや,上記円形の押圧用突起の周辺の部分が上方に向けてなだらかに膨出しているかどうかは不明な点。 (イ)上記円形の押圧用突起が,本願意匠では切頭円錐台形状であるのに対して,引用意匠では円柱形状である点。 (ウ)上記隅丸の略長方形の固定接点の前後方向(正背方向)の長さが,本願意匠では,本体部の前後方向の長さの略1/3程度であるのに対して,引用意匠では,本体部の前後方向の長さの略1/6程度である点。 (エ)本願意匠では,本体部を底面視した際に,本体部の底面の左右両端の正面側及び背面側に,本体部の底面から左右方向にそれぞれ張り出すように延びる略長方形の端子を看取でき,また,底面の略中央にやや大きい円形の線模様,当該やや大きい円形の線模様の左右側,右寄りの背面側及び左寄りの背面側にやや小さい円形の線模様,並びに上記やや大きい円形の線模様の正面側に略「凸」字状の線模様を看取できるのに対して,引用意匠では,本体部を底面視した際の態様が不明な点。 において,両意匠は相違する。 3.類否判断 以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 (1)共通点の評価 基本的構成態様としてあげた共通点(A)は,本体部が略平板状の直方体であり,当該本体部に平面視が円形の押圧用突起を設けているというものであるところ,プッシュスイッチの物品分野においてはよく見られるものであって,格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。 また,共通点(C)は,プッシュスイッチの端子の態様に係るものであるところ,プッシュスイッチだけでなく,スイッチ全般についてよく見られる程度のものといえるから,この点についても,両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいとはいえない。 そして,共通点(B)は,本体部を平面視した際に,円形可動接点や略長方形の固定接点を看取できるというものである。円形可動接点は,この種の物品分野においては他に見られるものであるが,円形可動接点の左右両端部付近から左右方向に略長方形の固定接点が張り出していることで,円形可動接点と略長方形の固定接点とを一体的に看取できるという態様は,両意匠のみに認められる格別の特徴といえる。しかし,当該態様は,引用意匠においては,さほど目立つものではないので,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度しかないといえる。 (2)相違点の評価 プッシュスイッチは,手の指等で接触ないし押圧することで接点の切り換えを行うスイッチであって,当然ながら,スイッチの位置を確認した上で,接触や押圧をするのであるから,需要者は,スイッチの平面視での態様に必然的に注意を払うものといえ,なかでも,押圧用突起は,プッシュスイッチにおいて最も枢要な部分であるから,その態様は,需要者の注意を最も引きつけるところである。 これを前提に,各相違点に係る態様を検討すると,相違点(ア)から(ウ)までは,いずれもスイッチの平面視での態様に関するものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は相当程度高くなることは明らかである。そして,上記(1)で評価したように,本体部を平面視した際に,円形可動接点と略長方形の固定接点とを一体的に看取できるという点は,両意匠のみに認められる格別の特徴といえるところ,そのように円形可動接点と略長方形の固定接点とを看取できることは,本体部の上面が半透明の絶縁フィルムによって覆われており,スイッチの内部構成が透けて見えるためであることを考慮すれば,需要者の注意は,本体部の上面の半透明の絶縁フィルムにも及ぶものといえる。そうすると,当該半透明の絶縁フィルムと一体であって,需要者の注意を最も引きつける押圧用突起についての相違点(ア)及び(イ)に係る態様,すなわち本願意匠の押圧用突起が切頭円錐台形状であって,半透明の絶縁フィルムと一体に形成されているという態様と,引用意匠のそれが円柱状であって,半透明の部材と別部材で形成されているという態様とでは,明らかに別異の美感を起こさせるものであり,両意匠の類否判断に支配的な影響を与えているものというべきである。 また,本体部を平面視した際に,略長方形の固定接点を看取できるという点が両意匠のみに認められる格別の特徴といえるのであるから,当該略長方形の固定接点の具体的態様に係る相違点(ウ),すなわち本願意匠の略長方形の固定接点が比較的大きく,目立つものであるのに対して,引用意匠のそれが比較的小さく,さほど目立つものではないという点は,両意匠の類否判断に非常に大きな影響を及ぼすものといえる。 これに対して,相違点(エ)は,使用時には見ることのできないスイッチの底面視での態様に係るものであるから,両意匠の類否判断に与える影響は,わずかなものといえる。 そして,相違点(ア)から(エ)までに係る態様が相まった視覚的効果を考慮すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。 (3)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するものの,その形態において,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕し,相違点が相まって生じる視覚的印象は,共通点が生じさせている共通感を上回るものであるから,意匠全体として観察した場合,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4.むすび 以上のとおり,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2015-01-30 |
出願番号 | 意願2013-6691(D2013-6691) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 内藤 弘樹 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 刈間 宏信 |
登録日 | 2015-03-13 |
登録番号 | 意匠登録第1521450号(D1521450) |
代理人 | 西浦 ▲嗣▼晴 |
代理人 | 出山 匡 |