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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M2
管理番号 1338200 
審判番号 不服2017-12683
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-28 
確定日 2018-02-07 
意匠に係る物品 配管ユニット 
事件の表示 意願2016- 17781「配管ユニット」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成28年(2016年)8月22日の意匠登録出願であって, その意匠は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「配管ユニット」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。図中の一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(以下,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶理由
原査定における拒絶理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶理由で引用した意匠(以下,「引用意匠」といい,「本願意匠」とあわせて「両意匠」という。)は,本願出願前,日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠,すなわち,特許庁発行の意匠公報記載の意匠登録第1092961号の「受け口付き配水管」の意匠の本願部分に相当する部分の意匠(以下,本願部分に相当する引用意匠の部分を「引用部分」といい,「本願部分」とあわせて「両部分」という。)に類似するとしたものである。(別紙第2参照)


第3 当審の判断
1.両意匠の対比
図の対比のため,引用意匠の正面図を左90度回転させたものを本願意匠の「正面図」,以下,「平面図」を「左側面図」,「底面図」を「右側面図」,左90度回転させた「A-A線断面図」を「A-A線断面図」として,図面の平仄を合わせる。
(1)意匠に係る物品
本願意匠に係る物品は,集合住宅等に仮設で用いられる,受け口と挿し口をもつ,給水のための縦配管路の部材であり,引用意匠は,集合住宅等に常設で用いられる,排水用管継手の受け口と挿し口を設けた縦排水管であり,本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は,仮設か常設か,給水か排水かの違いはあるものの,いずれも,受け口と挿し口をもつ,集合住宅に用いられる生活用水のための配管の構成部材であるから,共通する。
(2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
(2-1)用途及び機能
本願部分は,本願意匠に係る物品である配管ユニット(以下「本配管ユニット」という。)に他の配管ユニットの挿し口を挿着する受け口であり,装着された受け口と挿し口にハウジング形の管継手を装着して本配管ユニットと他の配管ユニットが直列状に接続される。
引用部分は,排水用管継手の挿し口が垂直に挿入される排水管の受け口であり,コンクリートスラブの上面に受け口が開口するようコンクリートスラブを貫通させて排水管を施工するものである。
したがって,両部分の用途及び機能は,管継手を装着するか否かの違いはあるものの,いずれも,挿し口に対する受け口であるから,共通する。
(2-2)位置,大きさ及び範囲
本願部分は,長い直管で構成される配管ユニットのうちの受け口を部分とし,引用部分は,短い排水管のうちの本願部分に相当する部分であり,両部分の位置,大きさ及び範囲は,配管の端部であるから,共通する。
(3)両部分の形態
両部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
(3-1)共通点
全体を,略正円直管状とし,正面視で,右端から左に約半分を円管(以下「本管」という。)とし,残余を,本管より大きな径の円管を同心で設けて受け口としたものである。具体的には,正面視で,受け口の態様のうち,中央の部分を円管状とし(以下「中央円管状部」という。),中央円管状部と本管が接続する部分を略円錐台状とし(以下「円錐台状部」という。),中央円管状部の左側から受け口の左端にかけて中央円管状部の径より大きな径のフランジ(以下「フランジ部」という。)を設け,左側面視で,受け口の左端面を肉厚の略円環状としている。
(3-2)差異点
(ア)円錐台状部の態様について,正面視,本願部分が,横に幅狭で傾斜角を約50度としているのに対し,引用部分は,幅広で約10度としている点,
(イ)本管と受け口の径の差について,正面視,本願部分の径の差が引用部分より大きい点,
(ウ)フランジ部の右側面にある幅狭のテーパーの態様について,正面視,本願部分が,幅狭で傾斜角をほぼ90度としているのに対し,引用部分は,幅広で約45度としている点,
(エ)受け口の左端面から受け口の内側にかけての具体的な態様について,左側面視及びA-A線断面視,本願部分が,一層の配管で,略短円柱状に刳り抜いたような態様であるのに対し,引用部分は,外管の内側に薄い内管を設けた二層の受け口としたうえで受け口の内側の奥にさらにリング状の部材を嵌め込んで,略円錐台状に刳り抜いたような態様としている点。

2.類否判断
以上の共通点及び差異点が,両部分の類否判断に与える影響を評価し,総合して,両部分の類否を意匠全体として検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品,部分意匠としての用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通するが,形態については,以下のとおりである。
(1)共通点の評価
共通点として挙げた,全体を,略正円直管状とし,正面視で,右端から左に約半分を本管とし,残余を,受け口とした点については,それだけでは概括的な形状というしかなく,両部分の類否判断を左右するとは言いがたい。
(2)差異点の評価
これに対して,差異点の(ア)ないし(エ)は,両部分の正面視での全体の具体的な形状に関わるものであり,これらがあいまって類否判断に与える影響は大きい。
(ア)の円錐台状部の態様の差異について,正面視,本願部分が,幅狭で傾斜角を約50度としているのに対し,引用部分は,幅広で約10度としていることで,視覚的な印象として,正面視で,本願部分が受け口円錐台状部を横方向にいわば縮めた態様であるのに対して引用部分が横方向にいわば引き延ばした態様の視覚的印象を与えるものであって,このことは,差異点(イ)の本管と受け口の径の差,すなわち,正面視,本願部分の差が引用部分より大きいことで態様を異にすることになるものであり,(イ)も含めたこれら差異点は,受け口の全体の大きな部分を占め、需要者の視覚に影響を与え,結果,両部分の類否判断に影響を与えるものである。
(ウ)のフランジ部の右側面にある幅狭のテーパーの態様の差異については,本願部分の態様が横にごく幅狭で傾斜角をほぼ90度としているのに対し,引用部分は,幅広で約45度として,その角度を約半分としているものであり,テーパーが幅狭であることも加味すれば,この差異点は,需要者の視覚に影響を与えるものであって,両部分の類否判断に影響を与えるものである。
(エ)の受け口の左端面から受け口の内側にかけての具体的な態様の差異については,左側面視及びA-A線断面視において,本願部分が,左端面が一層であって略短円柱状に刳り抜いたような態様であるのに対し,引用部分は,左端面が二層であって受け口の内側の奥にはめ込まれたリング状の部材も観察され,略円錐台状に刳り抜いたような態様としているものであり,この差異点は,左側面視ながら,多少なりとも需要者の視覚に影響を与えるものであって,両部分の類否判断に影響を与えるものである。
(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,共通するが,両部分の形態においては,共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるに至らないものであるのに対して,差異点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,差異点の評価は,共通点の評価を凌駕しているから,両部分は類似せず,よって,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-01-26 
出願番号 意願2016-17781(D2016-17781) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (M2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 外山 雅暁 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 宮田 莊平
江塚 尚弘
登録日 2018-03-02 
登録番号 意匠登録第1600559号(D1600559) 
代理人 谷田 龍一 
代理人 杉本 丈夫 

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