ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B4 |
---|---|
管理番号 | 1338204 |
審判番号 | 不服2017-12661 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-28 |
確定日 | 2018-02-21 |
意匠に係る物品 | 抱っこ紐用収納袋 |
事件の表示 | 意願2016- 28356「抱っこ紐用収納袋」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)12月27日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「抱っこ紐用収納袋」とし,その形態は,願書の記載及び願書添付の写真に現されたとおりのもので,「赤色で表された部分以外の部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとし,その拒絶の理由として引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の公開実用新案公報(公報発行日:昭和62年(1987年)11月25日)に掲載された,昭和62年実用新案出願公開第185523号(考案の名称「雨除けカバー」)の第1図にあらわされた「収納袋」の意匠の本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 3.本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の対比 本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,引用意匠に類似するものであるか否かについて,以下,検討する。 (1)両意匠の意匠に係る物品 両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「抱っこ紐用収納袋」で,引用意匠は,「収納袋」であるが,両意匠は,いずれも身の回りのものを収納するための収納袋であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (2)本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 両部分は,いずれも「収納袋」の上端部の開閉部分であって,部分意匠としての用途及び機能は共通している。 また,位置,大きさ及び範囲については,開閉部分の伸縮するギャザー部分(以下「ギャザー部分」という。)とした点は共通するが,本願部分は,両側面に貫通する開口部を有し,上端部の開閉部分の左右両端に正面側と背面側の端部を縫い付けた部分があり,正面側中央の内側から背面側中央の外側にかけて帯状の紐部が延伸し,背面側中央にボタン留め部があり,それらのない部分のみとしたものであるのに対して,引用部分は,上端部の開閉部分全体を伸縮するギャザー部分としたものであって,両部分の位置,大きさ及び範囲には,差異が認められる。 (3)両部分の形態 両部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。 なお,両部分を同じ方向から対比するため,引用意匠を本願意匠の向きに揃えたものとして,以下,それぞれ両部分の形態を認定し,対比する。 (3-1)共通点 部分全体を,上端部の開閉部分の伸縮するギャザー部分とし,平面視すると略楕円形状である点,において主に共通する。 (3-2)差異点 (ア)ギャザー部分の縦幅について,本願部分は,縦幅が広いのに対して,引用部分は,縦幅が狭い点, (イ)側面視の態様について,本願部分は,両側面に縫い付けた部分があり,ギャザー部分が側面で一部途切れているのに対して,引用部分は,ギャザー部分が側面まで続いている点, (ウ)平面視の態様について,本願部分は,背面側中央に帯状の紐部が延伸し,背面側中央にボタン留め部があるため,背面側中央に覆い被さる部分があるのに対して,引用部分は,帯状の紐部が存在しないため,上端部全体が視認可能である点, において主な差異が認められる。 4.類否判断 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は,共通している。 (2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 両部分の用途及び機能は共通しているが,両部分の,位置,大きさ及び範囲には,差異が認められる。 (3)両部分の形態 以下,両部分の形態について検討する。 (3-1)共通点 まず,共通点については,部分全体を,上端部の開閉部分を伸縮するギャザー部分とし,平面視すると略楕円形状である態様については,この種の物品分野において,上端部の開閉部分を伸縮するギャザー部分とするものが,本願の出願前から他にも見られる態様といえるもので,特徴のないものといえ,両部分のみに見られる格別新規な特徴とはいえないものであるから,この点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。 共通点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の形態の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 (3-2)差異点 これに対して,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両部分の形態の類否判断を決定付けるものである。 差異点(ア)のギャザー部分の縦幅の差異については,その縦幅の違いによってギャザー部分全体の印象に影響を与えるものといえ,縦幅が広い本願部分と縦幅が狭い引用部分とは,明らかに需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両部分の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 次に,差異点(イ)のギャザー部分が側面で一部途切れているか否かについても,ギャザー部分が一部途切れている本願部分は,正面側と背面側がはっきりと開閉し易い印象を与え,ギャザー部分が側面まである引用部分とは明確に異なる印象を需要者に与えるものであり,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。 そして,差異点(ウ)の背面側中央に覆い被さる部分があるか否かについては,背面側中央に覆い被さる部分がある本願部分は,複雑な印象を与えるもので,帯状の紐部が存在しないシンプルな引用部分とは,明らかに需要者に与える印象を異ならせるものであり,その差異は,両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。 (4)小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途及び機能が共通するものであるが,両部分の位置,大きさ及び範囲に差異が認められ,その差異を無視することはできず,また,両部分の形態における差異点が需要者に与える意匠的効果が共通点のそれを凌駕し,両部分全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2018-01-30 |
出願番号 | 意願2016-28356(D2016-28356) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(B4)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 田村 佳孝 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
斉藤 孝恵 正田 毅 |
登録日 | 2018-03-16 |
登録番号 | 意匠登録第1601539号(D1601539) |
代理人 | 入江 一郎 |