ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 G2 |
---|---|
管理番号 | 1338205 |
審判番号 | 不服2017-11297 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-07-28 |
確定日 | 2018-02-20 |
意匠に係る物品 | 塵芥収集車用荷箱 |
事件の表示 | 意願2016- 7015「塵芥収集車用荷箱」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)3月30日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「塵芥収集車用荷箱」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である(但し,赤色の色彩自体は意匠登録を受けようとする部分ではない)。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 本願に対する原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,以下のとおりである。 「この意匠登録出願の意匠は,塵芥収集車用荷箱に係るものであり,ハイマウントストップランプ部分について意匠登録を受けようとする部分としたものですが,その形状はこの意匠の出願前から公然知られた参考意匠1に酷似しており,また,貨物車等に用いる荷室の後端部上方の車両中心位置に補助制動灯を設けることはこの意匠の出願前から広く行われています(例えば,この意匠の出願前に公然知られた参考意匠2)。 そうすると,公然知られたテールランプを,車両用の荷室等の補助制動灯取り付け位置として一般的な箇所に設け,当該部分を,意匠登録を受けようとする部分としたに過ぎない本願意匠は,当業者であれば容易に創作することができたものです。 参考意匠1(当審注,別紙第2参照) DM/083411 2014年10月17日 車両用テールランプ(登録番号DM/083411)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH26510081号) 参考意匠2(当審注,別紙第3参照) 特許庁発行の公開特許公報記載 特開2011-178319 図1に記載されたカメラ付きハイマウントストップランプの意匠 (なお,当該意匠については,文書中に車両後端部上方の車両中心位置に取り付けられることが記載されています)」 第3 請求人の主張 1.本願意匠が登録されるべき理由 (1)意匠登録を受けようとする部分の位置,大きさ及び範囲について 拒絶査定の備考欄において,挙げられた意匠登録第1224091号及び意匠登録第1338352号(以下「公知意匠1及び2」という。)に記載された塵芥収集車用荷箱は,本願と同一物品であり,「荷箱上部の膨出した部分の垂直に立ち上がる部分は当業者において制動灯を設ける一般的な箇所の一つ」ではある。しかし,これらの従来の意匠においては,この垂直に立ち上がる部分は平坦であり,備考欄に書かれているように,仮に「横長のいわゆるハイマウントストップランプは中央に一つ設けることが一般的である」とすれば,この垂直に立ち上がる平坦面に上記参考意匠1の車両用テールランプ等を埋め込むことになる。 しかしながら,本願意匠では,この「荷箱上部の膨出した部分の垂直に立ち上がる部分」は,添付拡大参考図にも示すように,凹部が形成されている。この凹部にハイマウントストップランプが嵌め込まれているので,本願のE-F部分拡大図に示すように,背面視でハイマウントストップランプのほぼ全体が外観に現れる。しかし,A-B部分拡大図に示すように,側面視ではハイマウントストップランプの先端部分だけ見えている。また,C-D部分拡大図に示すように,平面視では,ハイマウントストップランプの先端分しか見えない。ハイマウントストップランプが凹部に嵌め込まれていることは,C-D部分拡大図におけるハイマウントストップランプの長手方向寸法と,E-F部分拡大図におけるハイマウントストップランプの長手方向寸法が異なることからも明らかである。 公知意匠1及び2では,ランプ部は,側面視及び平面視では平坦な垂直部分からほとんど飛び出さず,側面視で見えるのはターンランプの部分のみであると思料する。 このように,本願意匠では,ハイマウントストップランプを「荷箱上部の膨出した部分の垂直に立ち上がる部分」の「凹部に嵌め込む」ようにして,背面視では全体をほぼ露出させてハイマウントストップランプの機能を十分に発揮させると共に,側面視及び平面視では先端のみを露出させてハイマウントストップランプを目立てさせずにしながらも,その存在自体は認識させるようにしている。 つまり,背面視では,ハイマウントストップランプの幅方向の大きさは,上記垂直に立ち上がる部分の幅方向全体とするのではなく控えめの長さとなっているが,全体がほぼ露出して見えることにより,後方からの視認性を十分確保することができる。一方で,側面視では,塵芥投入箱後面の曲線的でスマートな印象の全体形状を維持したまま,ハイマウントストップランプの光により先端のみの露出であっても存在を明確に認識させることができる。 このように,ハイマウントストップランプの設ける位置を「荷箱上部の膨出した部分の垂直に立ち上がる部分」とするだけでなく,その幅方向長さ及び高さを大きすぎず,目立ちすぎない大きさとし,しかも,「垂直に立ち上がる部分」に設けた凹部に嵌め込むようにして,背面視では全体を露出させ,側面視及び平面視では先端のみ露出させるという多くの特筆すべき創作がなされており,たとえ当業者であっても,容易に創作することができたものとはいえないものである。 2.むすび 以上の如く,本願の意匠は,いわれるような意匠法第3条第2項の規定には該当しないものである。 第4 当審の判断 請求人の主張を踏まえ,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について,すなわち,当業者であれば,公然知られた形態に基づいて,容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて,以下検討し,判断する。 1.本願意匠 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,塵芥収集車の車体上部に搭載され,収集した塵芥を内部に収容するための「塵芥収集車用荷箱」である。 (2)本願部分の用途及び機能 本願部分の用途は,後方から視認性の高い高所に配置された補助制動灯であるハイマウントストップランプであって,本願部分の機能は,車輌のブレーキランプと連動して点灯する尾灯である。 (3)本願部分の位置,大きさ及び範囲 本願部分の位置,大きさ及び範囲は,塵芥収集車用荷箱のテールゲート上方にあるルーフカバー後端部の,略横長等脚台形状の一段奥まった段差部の中央部分に配置されたハイマウントストップランプの部分である。 (4)本願部分の形態 本願部分の形態は,右側面視において扁平な略横長六角形状とし,【E-F部分拡大図】によれば,その上下中央部分には直線状の水平な形状線(以下「横線」という。)が1本表れ,その左右端部から全体の1/5弱の位置には直線状の垂直な形状線(以下「縦線」という。)が左右1本ずつ表れているものであって,【A-B部分拡大図】によれば,ハイマウントストップランプの前面部分を横線の部分を山として略逆「く」の字状になるように形成し,【C-D部分拡大図】によれば,平面視を扁平な略横向き五角形状とし,この上下中央部分を山とし,端部に向かってハイマウントストップランプの背面側に僅かに傾斜し,縦線部分で背面側により大きく傾斜しているものである。 2.原査定の拒絶の理由における参考意匠 (1)参考意匠1 参考意匠1は,「車両用テールランプ」の意匠であり,その形態は,前方の発光部とその背面側に配設されたランプ本体部からなるものであって,ランプ部の形態は,図4.1において扁平な略横長六角形状とし,図4.2において略「く」の字状とし,図4.4において上下中央部分から端部に向かって極僅かにランプ本体側に傾斜した板状のものである。 (2)参考意匠2 参考意匠2は,「カメラ付きハイマウントストップランプ」の意匠であり,その形態は,【図1】ないし【図4】によれば,側面視略五角形状のボックス状のプロテクタの内部にハイマウントストップランプと後方視認カメラを上下に配した構成からなるものであって,ハイマウントストップランプの形態は,左右端部に略半円形板体状の取り付け用基台部を設けた略横長直方体形状のものである。 そして,このプロテクタは,荷室タイプのトラックの荷室後部上方部分の車輌中央部分に突出して設置されたものである。 3.本願意匠の創作容易性の判断 本願意匠は,意匠に係る物品を「塵芥収集車用荷箱」とするものであり,この塵芥収集車用荷箱のルーフカバーに配置されたハイマウントストップランプの部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であるところ,この塵芥収集車用荷箱の分野において,車両の後方視が扁平な略横長六角形状で,車両の右側面視が略「く」の字状である,発光部全体が平板状のハイマウントストップランプの形態は,参考意匠1で示したように公然知られた形態であるといえるものである。 また,塵芥収集車用荷箱の後部上方部分の車輌中央部分に,ハイマウントストップランプを配設することも,参考意匠2で示したように特段特徴のない態様であり,該部位にハイマウントストップランプを設けることは,容易に創作することができたものといえる。 しかしながら,ハイマウントストップランプの形態において,平面視を扁平な略横向き五角形状とし,この上下中央部分を山として,端部に向かってハイマウントストップランプの背面側に僅かに傾斜し,縦線部分で背面側により大きく傾斜した右側面視が略「く」の字状である立体的な発光部を持つものは,引用しているいずれの意匠にも見当たらないものであり,この態様は公然知られた形態ではなく,かつ,この立体的に突出したハイマウントストップランプを単に塵芥収集車用荷箱の後部上方部分の車輌中央部分に配するのではなく,車輌側面側からはその先端部分しか視認できないように,ルーフカバー後端部の略横長等脚台形状の一段奥まった段差部の中央部分に配置した態様も公然知られた形態ではないから,本願意匠は,本願意匠独自の独創的な着想により,特徴的な態様を創出したものであると認められるものであって,当業者であれば,公然知られた形態に基づいて,容易に創作することができたものということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから,原審の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2018-02-05 |
出願番号 | 意願2016-7015(D2016-7015) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(G2)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大峰 勝士 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 竹下 寛 |
登録日 | 2018-03-02 |
登録番号 | 意匠登録第1600558号(D1600558) |
代理人 | 特許業務法人前田特許事務所 |