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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1338206 
審判番号 不服2017-13365
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-08 
確定日 2018-03-06 
意匠に係る物品 テレビジョン受像機 
事件の表示 意願2016- 7746「テレビジョン受像機」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成28年(2016年)4月7日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は「テレビジョン受像機」であり,本願意匠の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって,願書の「意匠の説明」には,以下のとおり記載されている(別紙第1参照)。
「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとの理由であり,具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録出願の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分と,下記意匠の本願の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に対応する部分の意匠を比較すると,両意匠は,画面ほぼ中央に,縦長長方形状の枠体を4つ横並びに配置し,各枠内部にそれぞれ異なる色彩を付した点が共通し,その共通性は非常に顕著です。
一方,矩形枠部周囲の色彩について,本願意匠は黒色であるのに対し,引用意匠は淡い色調であるという点に差異は認められますが,画像の背景を黒色等の明度の低い色調とすることはこの種物品分野においてありふれており,前記共通点に埋没する程度の微弱な差異と認められ,類否判断に及ぼす影響は少ないものと認められます。
したがって,両意匠は類似するものと認められます。

特許庁特許情報課が2006年11月30日に受け入れた
大韓民国意匠商標公報 2006年 9月19日06-46号
画面デザインが表示されたテレビ受像機(登録番号30-0423975)のうち,画面中の4つの縦長矩形状部及びその周辺部の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH18466555号) 」

第3 請求人の主張
請求人は,平成29年(2017年)9月8日付けで審判請求書を提出し,本願意匠が登録されるべき理由についておおむね以下のとおり主張した。

1 本願意匠が登録されるべき理由
(1)両意匠の対比
ア 両意匠の共通点
両意匠は,意匠に係る物品についてはテレビジョン受像機で共通しており,本願意匠で意匠登録を受けようとする部分と引用意匠のそれに対応する部分とについて,以下のような共通点がある。
(a)画面ほぼ中央に,縦長の長方形状部が4つ横並びに配置している点
イ 両意匠の差異点
一方で,両意匠は,その表示内容や形態について,以下のような差異点がある。
(A)本願意匠は,物品の説明欄に記載のように,地上放送番組やオンデマンド配信等のコンテンツを選択して,視聴画面に遷移させるための表示画像であるのに対して,引用意匠は,4つの縦長の長方形状部の内部に左から,化粧品,洗濯機,洋服,ソファー等の画像が表示されていることから,購入したい商品が表示された長方形部を選択して,購入画面に遷移させるための表示画像(所謂ホームショッピング)であると推測される点
(B)4つの横並びに配置された縦長長方形状部の内部の態様について,本願意匠は,左側から順番に,青色,赤色,緑色,黄色の色彩が付されているのに対して,引用意匠は,左側から順番に,橙色,桃色,青色,薄黒色の色彩が付されている点
(C)縦長長方形状部の縁部の態様について,本願意匠は,何れの長方形状部にも周囲を縁取る枠線が形成されていないのに対して,引用意匠は,左側から順番に,灰色,灰色,黄色,灰色の色彩が付された周囲を縁取る枠線が形成されており,黄色の枠線については,下辺が左右上辺よりも5倍程度幅広に形成され,その内部には左右方向に向いた2つの三角形状部と1つの円形状部とが形成されている点
(D)縦長長方形状部の周囲の態様について,本願意匠は,黒色であるのに対して,引用意匠は,淡い橙色や灰色である点
(2)本願意匠と引用意匠との類否
ア 共通点の評価
両意匠が共通する構成態様の「(a)画面ほぼ中央に,縦長の長方形状部が4つ横並びに配置している点」については,複数の大きい縦長長方形状部を並べて,これらのうちの1つを選択する構成は,例えばゲーム機等の表示画像では従来から見られる構成態様であるので,意匠の類否判断の要素としては弱いものであり,意匠の類否は,色彩を含めたより具体的な構成態様の対比により判断されるべきと考える。
イ 差異点の評価
(ア)差異点(A)について
本願意匠は,地上放送番組等の視聴したいコンテンツ画面に遷移させるための視聴選択画面であるのに対して,引用意匠は,ホームショッピングの画像であり,商品を購入するための画面に遷移させるための購入選択画面と推測される。したがって,両意匠は,物品は共通するが,画面の用途機能が異なっている。
(イ)差異点(B)について
本願意匠は,4つの長方形状部の色彩及び配列について,ユーザーが地上デジタルテレビジョン放送運用規定に対応したリモコンで操作することを想定し,長方形状部の色を,左側から順番に,青,赤,緑,黄色として,リモコンのボタンの色と対応させていることが大きな特徴と言える(同規定に対応したリモコンには,左側から順番に,青,赤,緑,黄色の操作ボタンが横並びに配置されている)。これにより,ユーザーは,従来から見られるカーソルキーによる操作に加え,コンテンツが表示された長方形状部を選択する際に,同配列かつ同色のリモコンボタンを押すことで,リモコンのカラーボタンによる直接選択(ワンタッチ操作)が可能となる。一方,引用意匠には,縦長長方形状部の色彩及び配列について,少なくとも地上デジタルテレビジョン放送運用規定に対応したリモコンでワンタッチ操作することを考慮した特段の工夫は見られず,本願意匠とは顕著な差異があると言える。
なお,原審においては,「両意匠ともに,同程度の明度の,青色,赤色,黄色等共通した色彩が施されており,むしろ両意匠の共通感を強める」旨認定されているが,リモコンのボタンと対応するように,原色に比較的近い青,赤,緑,黄色を採用した上で色の配列に考慮した本願意匠と,淡い色彩を採用すると共に色の配列も異なる引用意匠とでは,明らかな差異があるので,審査官の認定は適切では無いと思料する。
(ウ)差異点(C)について
本願意匠は,縦長長方形状部に周囲を縁取る枠線を形成せずに,なるべくシンプルなデザイン(例えば,本願の実施品では,選択された長方形状部を,他の長方形部より大きく表示する構成を採用しています)としているのに対して,引用意匠は,選択された長方形状部と選択されていない長方形状部とで,枠線の色と枠線の下辺の幅とを変化させることにより,選択された長方形状部を強調するデザインである点において,両意匠には差異があると言える。
(エ)差異点(D)について
縦長長方形状部の周囲の態様については,本願意匠のものは従来から知られた態様であり,需要者の注意を強く惹くとは言えないので,類否判断に与える影響は比較的小さいと言っても差し支えないと思料される。
(オ)まとめ
以上述べたように,本願意匠と引用意匠とは,そもそも画面の用途機能が異なっている。さらに,両意匠には,4つの横並びに配置された縦長長方形状部の色彩及び配列の差異,周囲をふちどる枠線の有無の差異がある。テレビジョン受像機のこの種のコンテンツ選択画面においては,需要者がリモコン等で操作することが多いことから,その操作性に関わる上記差異点が相俟った態様は,類否判断において重要視されるべきと考える。

2 むすび
以上のとおり,本願意匠は意匠法第3条第1項第3号に該当するため意匠登録をすることができないものであるとした原査定は妥当性に欠けるものである。

第4 当審の判断
1 本願意匠
当審では,本願意匠について,以下のとおり認定する(別紙第1参照)。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は「テレビジョン受像機」であり,願書の「意匠の説明」には,以下のとおり記載されている。
「正面図に表された画像は,テレビジョン受像機の操作画像であり,付属のリモコン操作によりコンテンツ(例えば地上波放送番組,文字放送,オンデマンド配信など)を選択し視聴画面に遷移させるためのものである。リモコンのカーソルキー操作により,4色の縦長矩形の一つを選択し,決定キーの押下により,各矩形に割振れたコンテンツを視聴できる。また,矩形の色,配列は,地上デジタルテレビジョン放送運用規定により,リモコンに設けられている4色のボタンの色,配列に符合しており,当該4色ボタンによるワンタッチ操作が可能である。」
この願書の記載によれば,本願物品は,操作画像が表示されるテレビジョン受像機であり,地上波放送番組,文字放送,オンデマンド配信などの放送関連コンテンツを選択する用途及び機能を有している。
(2)「正面図」に表された画像
願書及び願書に添付した図面の記載によれば,本願意匠は薄型直方体形状の本体部の下に脚部を設けたものであって,本体部正面のほぼ全面に設けられた画面(物理的画面)には,横長長方形状(縦横比が約9:16)の画像(以下「本願画像」という。)が表示されており,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願画像部分」という。)は,本願画像内の一点鎖線で区画された部分である。
(3)本願画像部分の用途及び機能
本願画像部分の用途は,放送関連コンテンツを視聴するためのものであり,4色の縦長矩形の一つを選択することによって画像が遷移すると推認され,選択された1つの縦長矩形についての放送関連コンテンツ(地上波放送番組,文字放送,オンデマンド配信など)を視聴する本願物品の機能が発揮できる状態になる。
(4)本願画像部分の位置,大きさ及び範囲
本願画像部分の位置は,本願画像の中央やや下寄りであり,本願画像に占める本願画像部分の大きさ及び範囲は,縦方向での余地部の幅:本願画像部分の幅:余地部の幅の比が約3:6:2であり,横方向でのその比が約1:8:1である。
また,本願画像部分を構成する4つの縦長矩形内において,複数の領域が意匠登録を受けようとする部分から除かれており,縦長矩形内の意匠登録を受けようとする部分は,「外周縁寄りの部分」と「複数の領域の間の部分」から成る。(願書添付図面の「各表示領域の説明を示した参考図」によれば,除かれる複数の領域は,上から順に「機能アイコン表示領域」「タイトル等表示領域」「コンテンツ等表示領域」「詳細情報表示領域」である。)
(5)本願画像部分の形態
ア 全体の構成態様
本願画像部分の全体外形は長方形状(縦横比が約5:13)であり,その内部に,4つの同形同大の縦長矩形が水平方向に等間隔に並んで配されている。4つの縦長矩形を囲む外周寄りと,縦長矩形の間は,周辺部となっている。外周寄りを除き,4つの縦長矩形の外周を結ぶ縦横比は,約1:2.8である。
イ 縦長矩形の構成態様
縦長矩形は,縦横比が約3:2であり,角部が小円弧状に表されている。
縦長矩形内において意匠登録を受けようとする部分から除かれる領域(前記(4)の複数の領域)の形状は,上から順に,小さな長方形,横長長方形,正方形,横長長方形である。
ウ 色彩
各縦長矩形の色彩は,左から順に,青色,赤色,緑色,黄色であり,周辺部の色彩は黒色である。

2 引用意匠
当審では,引用意匠について,以下のとおり認定する(別紙第2参照)。
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品(以下「引用物品」という。)は「画面デザインが表示されたテレビ受像機」であり,奥行きのある略横長直方体状のテレビ受像機の正面に,周囲に余地部を残して設けられた画面(物理的画面)が設けられており,その画面には横長長方形状(縦横比が約2:3)の画像(以下「引用画像」という。)が表示されている。原査定における拒絶の理由において本願画像部分に対応する部分とされたのは,引用画像内の4つの縦長矩形の一部,及び縦長矩形の周辺部(以下「引用部分」という。)である。
(2)引用部分の用途及び機能
引用部分の4つの縦長矩形(以下,左から順に「第1矩形」「第2矩形」「第3矩形」「第4矩形」という。)には,各種の商品の画像が表されており,第1矩形には化粧品,第2矩形には洗濯機,第3矩形には衣服,第4矩形にはソファーが表されている。そうすると,それぞれの縦長矩形は,コスメティック用品,家電製品,衣料用品,家具を示しており,例えば,ユーザーが第1矩形を選択すると,コスメティック用品に関係した画像に遷移すると推認される。したがって,引用部分の用途は,コスメティック用品,家電製品,衣料用品,家具という商品を選択するためのものであり,縦長矩形の1つを選択することによって,コスメティック用品,家電製品,衣料用品,家具に関係した画像に遷移する。
(3)引用部分の位置,大きさ及び範囲
引用部分の位置は,引用画像の中央やや下寄りであり,引用画像に占める引用部分の大きさ及び範囲は,縦方向での余地部の幅:引用部分の幅:余地部の幅の比が約3:5:2.5であり,横方向でのその比が約1:8:1である。
また,引用部分を構成する4つの縦長矩形内における本願画像部分に対応する部分は,「本願画像部分における前記1(4)の複数の領域」に相当する領域を除いた部分,すなわち,縦長矩形内の「外周縁寄りの部分」と「『本願画像部分における前記1(4)の複数の領域』に相当する複数の領域の間の部分」である。
(4)引用部分の形態
ア 全体の構成態様
引用部分において,縦長矩形は同形同大であって,水平方向に等間隔に並んで配されている。周辺部は,4つの縦長矩形を囲む外周寄りと,縦長矩形の間である。外周寄りを除き,4つの縦長矩形の外周を結ぶ縦横比は,約1:2.6である。
イ 縦長矩形の構成態様
縦長矩形は,縦横比が約5:3であり,角部がアール状(大円弧状)に表されている。
(ア)枠
各縦長矩形には外周に細幅の枠が形成されており,第3矩形では,下側の枠の幅が大きくなっている(縦長矩形の高さの約1/6.5)。
(イ)模様
各縦長矩形内には,それぞれ異なる模様が表されており,第1矩形では,女性の肖像が右半部のやや下側に表され,複数の化粧品が左下に表されている。また,第2矩形では洗濯機の画像が略下半部に表され,第3矩形では衣服(ジャケットと推認される。)の画像が下部やや右寄りに表され,第4矩形では2人掛けソファーが置かれた室内の画像が中央から下に表されている。
これらの模様は,縦長矩形内における本願画像部分に対応する部分,すなわち,縦長矩形内の「外周縁寄りの部分」と「『本願画像部分における前記1(4)の複数の領域』に相当する複数の領域の間の部分」においても表されている。(例えば,第4矩形では,室内の画像が,本願画像部分の第4矩形内の「外周縁寄りの部分」に対応する部分においても表されている。)
ウ 色彩
上記の枠及び模様の部分を除いた各縦長矩形の色彩は,左から順に,橙色,桃色,青色,灰色であり,周辺部の色彩は象牙色(主に上側左と左側),水色(下側と右側下)及び濃象牙色(上側右)である。
枠の色彩は,第3矩形では黄土色であり,それ以外の矩形では薄灰色である。
模様の色彩は,第1矩形の女性の髪と,第3矩形の衣服が黒色に表され,第2矩形の洗濯機の筐体が桃色に,第4矩形の室内の壁や絵画が灰色に表されている。

3 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は操作画像が表示される「テレビジョン受像機」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「画面デザインが表示されたテレビ受像機」である。したがって,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。
(2)本願画像部分と引用部分の用途及び機能
本願画像部分の用途は放送関連コンテンツを視聴するためのものであり,引用部分の用途はコスメティック用品などの商品を選択するためのものであるから,本願画像部分と引用部分(以下「両部分」という。)の用途は異なっている。
また,本願画像部分の選択によって放送関連コンテンツ(地上波放送番組,文字放送,オンデマンド配信など)を視聴する本願物品の機能が発揮できる状態になるのに対して,引用部分の選択によって放送関連コンテンツを視聴する画像には遷移しないから,この点において両部分の機能も異なっている。
(3)両部分の位置,大きさ及び範囲
両部分の位置は,共に画像全体の中央やや下寄りである点で共通する。
また,横方向での余地部の幅:部分の幅:余地部の幅の比が両部分共に約1:8:1であるから同一であり,縦方向でのその比が本願画像部分では約3:6:2であり,引用部分では約3:5:2.5であるからほぼ同様である。したがって,両部分の位置,大きさ及び範囲は共通する。
(4)両部分の形態
両部分の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
ア 形態の共通点
(A)全体の構成態様
4つの同形同大の縦長矩形が水平方向に等間隔に並んで配されており,4つの縦長矩形を囲む外周寄りと,縦長矩形の間が,周辺部となっている。外周寄りを除き,4つの縦長矩形の外周を結ぶ縦横比が,約1:2.8(本願画像部分)か約1:2.6(引用部分)であり,共に1:2.7程度である。
なお,4つの縦長矩形と周辺部を合わせた本願画像部分の全体外形が縦横比5:13の長方形状であるところ,引用部分においても,4つの縦長矩形に周辺部を加えた全体外形について,縦横比が約5:13である範囲を想定することができる。
イ 形態の差異点
(a)縦長矩形の構成態様
(a-1)縦横比と角部の形状
本願画像部分の縦長矩形は,縦横比が約3:2であり,角部が小円弧状に表されているのに対して,引用部分の縦長矩形は,縦横比が約5:3であり,角部がアール状に表されている。
(a-2)枠と模様の有無
引用部分では,各縦長矩形の外周に細幅の枠が形成されて,第3矩形では下側の枠の幅が大きくなっており,各縦長矩形内には,それぞれ異なる模様が,縦長矩形内における本願画像部分に対応する部分に表されているが,本願画像部分にはそのような枠と模様は無い。
(b)色彩
本願画像部分における各縦長矩形の色彩は,左から順に,青色,赤色,緑色,黄色であり,周辺部の色彩は黒色である。
これに対して,引用部分における各縦長矩形の色彩は,左から順に,橙色,桃色,青色,灰色であり,周辺部の色彩は象牙色(主に上側左と左側),水色(下側と右側下)及び濃象牙色(上側右)である。

4 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品
前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は同一である。
(2)両部分の用途及び機能
前記認定したとおり,両部分の用途は,放送関連コンテンツを視聴するためのものか(本願画像部分),コスメティック用品などの商品を選択するためのものか(引用部分)という点で異なっており,この差異点は両意匠の類否判断に一定の影響を及ぼすということができる。
また,両部分の機能も,放送関連コンテンツを視聴する物品の機能が発揮できる状態になるか(本願画像部分),放送関連コンテンツを視聴する画像に遷移しないか(引用部分)という点で異なっており,この差異点が両意匠の類否判断に一定の影響を及ぼすといわざるを得ない。
(3)両部分の位置,大きさ及び範囲
前記認定したとおり,両部分の位置,大きさ及び範囲は共通する。
両部分の位置が共通することについて,テレビジョン受像機などの画像を利用する物品分野の意匠においては,画像内の要素を囲う区画部を画像全体の中央やや下寄りに配置することは本願の出願前にありふれているから,位置の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
一方,区画部の配置によって生じる余地部との関係,すなわち画像のレイアウト構成は需要者の視覚を通じて美感を起こさせる場合があり得るところ,横方向での余地部の幅:部分の幅:余地部の幅の比が両部分共に約1:8:1であり,縦方向でのその比も両部分でほぼ同様である点については,需要者に一定の視覚的印象を与えているというべきである。したがって,両部分の大きさ及び範囲が共通することは,両意匠の類否判断に一定の影響を及ぼすといえる。
(4)両部分の形態
ア 共通点(A)の評価
4つの同形同大の縦長矩形が水平方向に等間隔に並んで配されて,4つの縦長矩形を囲む外周寄りと縦長矩形の間が周辺部となっている構成態様は,テレビジョン受像機を含む画像を利用する物品分野の意匠においては広く知られたありふれた態様であるから,需要者が特に注意を惹くということはできない。また,4つの縦長矩形の外周を結ぶ縦横比が共に1:2.7程度である共通点も,画像内の要素群が約1:3の縦横比であることはありふれているので,需要者が殊更注意を惹くとはいい難い。
そして,本願画像部分のように4つの縦長矩形と周辺部を合わせた全体外形が縦横比5:13の長方形状である態様も,画像内の要素を囲う区画部の縦横比には様々なものが見受けられ,実際に引用部分においても縦横比が約5:13である範囲を想定することができるから,需要者が特に注目するものとはいい難い。
したがって,共通点(A)は,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすということはできない。
イ 差異点の評価
これに対して,両部分の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,枠と模様の有無についての差異点(a-2)は,需要者が一見して気付く差異であって,特に,引用意匠の第3矩形において下側の枠の幅が大きくなった態様は,需要者がこの第3矩形を現在選択していることを示していると推認できるから,需要者が特に注目する対象であるというべきであり,また,引用部分の各縦長矩形にはそれぞれ異なる模様が表されており,模様そのものにも需要者は注目するというべきであるから,枠や模様が無い本願画像部分に比べて引用部分は,需要者に別異の美感を与えることとなる。したがって,差異点(a-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,(b)で指摘した色彩の差異については,本願画像部分における各縦長矩形の色彩が,左から順に,青色,赤色,緑色,黄色であって,この色彩と配置の順番は「地上デジタルテレビジョン放送運用規定」によって定められたリモコンの4色ボタンに符合しており,需要者に対して,リモコンの4色ボタンのワンタッチ操作を促す(又は誘導する)役割を有しているといえるから,需要者は当然にして各縦長矩形の色彩と順番に着目するというべきである。これに対して,引用部分に施された各縦長矩形の色彩は橙色,桃色,青色及び灰色であるからリモコンの操作を促すものではなく,また,前記2(4)ウで認定したとおり,第2矩形の洗濯機の筐体が桃色であり,第4矩形の室内の壁や絵画が灰色であるから,これらの模様の色が第2矩形の色彩(桃色)と第4矩形の色彩(灰色)を強調しており,引用部分の各縦長矩形の色彩が模様の存在とあいまって,需要者に対して本願画像部分の色彩とは異なる視覚的印象を与えているということができる。したがって,差異点(b)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというほかない。
他方,差異点(a-1)で指摘した縦長矩形の縦横比については,約3:2である本願画像部分の縦長矩形が約5:3である引用部分の縦長矩形に比べて特異であるとはいい難く,縦横比の差異は共に縦長である共通点に包摂される差異であるというべきであり,また,縦長矩形の角部が小円弧状(本願画像部分)かアール状(引用部分)かの差異は,程度の差にすぎず,どちらも角部に丸みがある点ではむしろ共通点であるともいうべきである。したがって,差異点(a-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
ウ 総合判断
以上のとおり,両部分の形態の共通点(A)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいのに対して,両部分の形態の差異点(a-2)及び差異点(b)が両部分の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きく,差異点(a-1)が両部分の類否判断に及ぼす影響が小さいとしても,形態の差異点は,総じて形態の共通点を圧して両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
(5)小括
したがって,両意匠の意匠に係る物品は同一であり,両部分の位置,大きさ及び範囲も共通し,両部分の大きさ及び範囲の共通点が両意匠の類否判断に一定の影響を及ぼすものの,両部分の用途及び機能の差異点は両意匠の類否判断に一定の影響を及ぼし,両部分の形態についても,形態の差異点が総じて形態の共通点を圧して両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすので,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は原査定の引用意匠に類似することを理由にして,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-02-19 
出願番号 意願2016-7746(D2016-7746) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 清水 玲香 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 小林 裕和
渡邉 久美
登録日 2018-03-30 
登録番号 意匠登録第1602600号(D1602600) 
代理人 堅田 裕之 
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