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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B3 |
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管理番号 | 1338210 |
審判番号 | 不服2017-12097 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-14 |
確定日 | 2018-03-14 |
意匠に係る物品 | コンタクトレンズ |
事件の表示 | 意願2016- 22791「コンタクトレンズ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,平成28年(2016年)10月20日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「コンタクトレンズ」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由および引用意匠 原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は,特許庁が平成24年(2012年)3月2日に発行した意匠公報掲載の意匠登録第1437447号「コンタクトレンズ」の意匠であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照) 3.両意匠の対比 両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,両意匠は,いずれも「コンタクトレンズ」であり,両意匠の意匠に係る物品は一致する。 両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。 (1)共通点 (A)全体を,球面体の一部を平面によって切り取った透光性を有する曲面体とし,正面視中央の曲面体の中心点を囲む無模様の中央円形部(以下「中央円形部」という。)と無模様の曲面体の外周端部(以下「外周端部」という。)を有し,中央円形部寄りである内周部(以下「内周部」という。)と外周端部寄りの外周部(以下「外周部」という。)に模様を配し,外周部を濃黒色とした点, (B)内周部の内側寄りの部位(以下「内周部内側」という。)には,略濃黒色で外周部から中心部に向かって延伸する略棒状の部分(以下「棒状部分」という。)を設けた点, (C)棒状部分は,中央円形部の中心点から,放射状に配置され,太さや長さが一様ではなく,やや曲がっているものも見られる点, (D)内周部の外側の外周部寄りの部位(以下「内周部外側」という。)には,下地として直交する直線により,全体に略格子状の模様(以下「格子模様」という。)が施されている点, において主に共通する。 (2)差異点 (ア)内周部外側の態様について,本願意匠は,格子模様の線の太さや隙間の大きさが不規則に描かれているのに対して,引用意匠は,格子模様の線の太さや隙間がほぼ均一に描かれている点, (イ)外周部の外縁の態様について,本願意匠は,外周部の外縁の輪郭がドット状に表された円形状であるのに対して,引用意匠は,外周端部に沿った外周部の外縁の輪郭がはっきりとした綺麗な円形状である点, (ウ)棒状部分の態様について,本願意匠は,棒状部分が小型円形の集合したドット状であるのに対して,引用意匠は,中身が詰まった棒状である点, (エ)格子模様の色彩について,本願意匠は,格子模様が茶色であるのに対して,引用意匠は,格子模様が灰色である点, (オ)全体の高さと直径の比が,本願意匠は,約1:2.8で高めであるのに対して,引用意匠は,約1:3.6で低めである点, において主な差異が認められる。 4.類否判断 (1)共通点 そこで検討するに,共通点(A)については,全体を,球面体の一部を平面によって切り取った透光性を有する曲面体とし,正面視中央の曲面体の中心点を囲む無模様の中央円形部と無模様の外周端部を有し,内周部と外周部に模様を配し,外周部を濃黒色とした態様は,全体の構成が共通するものではあるが,この種の物品分野においては,両意匠以外にも既に多数見られる,ありふれた態様といえるものであり,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,全体の構成が共通している点のみでは両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。 次に,共通点(B)についても,内周部内側に,略濃黒色で外周部から中心部に向かって延伸する棒状部分を設けた態様が共通しているが,この種の物品分野においては,両意匠以外にも既に見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 また,共通点(C)についても,棒状部分が,正面視中央の全体の中心点から,放射状に配置され,太さや長さが一様でなく,やや曲がっているものも見られる態様が共通しているが,この種の物品分野においては,両意匠以外にも既に見られるもので,両意匠のみに見られる特徴とはいえないものであるから,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 そして,共通点(D)についても,内周部外側に,下地として直交する直線により,全体に格子模様が施されている態様が共通しているが,両意匠と同様に,内周部外側に格子模様が施されている態様は,他にも見られるありふれた態様といえるものであり,両意匠のみに共通する態様とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 そうすると,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。 (2)差異点 これに対して,差異点に係る態様が相まって生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。 すなわち,まず,差異点(ア)の内周部外側の格子模様の線の太さや隙間の大きさについて,本願意匠は,線の太さや隙間の大きさが不規則であるため,不定型な印象を与えるのに対して,引用意匠は,線の太さや隙間の大きさがほぼ均一であるため,直線的な硬い印象を与えるもので,本願意匠の格子模様とは,見た目の印象が明確に異なるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 次に,差異点(イ)の外周部の外縁の態様について,外周部の外縁の輪郭がドット状に表された円形状である本願意匠の態様は,外周部の外縁がぼんやりとした印象を与えるものといえ,外周縁端部に沿った外周部の外縁の輪郭がはっきりした綺麗な円形状である引用意匠は,すっきりした印象を与えるものといえ,本願意匠の態様とは,視覚的な印象を異ならせるものであるから,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 また,差異点(ウ)の棒状部分の態様の差異については,本願意匠は,小型円形の集合したドット状で,隙間が大きく,結果的に自然な眼の状態に近く見えるのに対して,引用意匠は,中身が詰まった棒状で,隙間が小さく,結果的に瞳の中に黒い部分が多くなるものといえ,共通する態様の中での部分的な差異ではあるが,両意匠の使用時の印象が異なるもので,その差異は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 そして,差異点(エ)の色彩の差異については,確かにその差異が認識できるものではあるが,既に多数の色彩を有するコンタクトレンズの分野においては,色彩の差異のみによって,両意匠を別異のものとするほどの大きな差異とはいえないが,その差異は,両意匠の類否判断に僅かに影響を与えるものといえる。 さらに,差異点(オ)の高さの差異については,この種のコンタクトレンズの分野においては,実施される態様として,ある程度のバリエーションが想定されるものであり,その高さの差異が全体の類否判断に与える影響は大きなものとはいえないが,その差異は,両意匠の類否判断に僅かに影響を与えるものといえる。 (3)小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-02-06 |
出願番号 | 意願2016-22791(D2016-22791) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(B3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 智加、鈴木 康平、並木 文子 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
斉藤 孝恵 正田 毅 |
登録日 | 2018-03-30 |
登録番号 | 意匠登録第1602445号(D1602445) |
代理人 | 井出 正威 |