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審決分類 |
審判 判定 属さない(申立不成立) E1 |
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管理番号 | 1338226 |
判定請求番号 | 判定2017-600033 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2017-08-22 |
確定日 | 2018-02-02 |
意匠に係る物品 | 鈴 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1267870号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 |
結論 | イ号意匠の図面及びその説明により示された「鈴」の意匠は,登録第1267870号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1 本件判定請求人の請求の趣旨及び理由 本件判定請求人(以下「請求人」という。)は,「イ号意匠及びその説明書に示す意匠は,登録第1267870号の意匠及びこれに類似する意匠の範に属する,との判定を求める。」と申し立て,その理由として,要旨以下の通りの主張をし,証拠方法として,甲第1号証及び甲第2号証,添付書類としてイ号意匠及び説明書,本件登録意匠の原簿謄本を提出した。 1.判定請求の必要性 請求人は,本件判定請求に係る登録意匠「鈴」(以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。 請求人によれば,平成29年初夏,判定被請求人(以下「被請求人」という。)に対し,弁理士を通じて本件登録意匠の意匠権侵害を理由にイ号意匠製品の販売を中止するよう求めたが,被請求人側弁理士から,意匠権侵害はない旨の回答があったため,請求人は,特許庁による判定を求めた。 2.本件登録意匠の手続の経緯 出願 平成17年(2005年)1月13日(意願2005-704) 登録 平成18年(2006年)2月24日(登録第1267870号) 3.本件登録意匠の説明 本件登録意匠は,内外を連通するスリット開口の無い,勾玉形を極端に短縮したような外殻体の内部に珠が封入された「鈴」である。 4.イ号意匠の説明 イ号意匠は,内外を連通するスリット開口の無い外殻体に,金属製の発音体が封入された「鈴」である。 5.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明 (1)意匠に係わる物品について 本件登録意匠とイ号意匠は,意匠に係る物品が「鈴」で一致している。 (2)形態について 本件登録意匠とイ号意匠の形態について下記の共通点及び差異点が認められる。 共通点 (ア)通常「鈴」は孔が空いているものが多いが,それが無い点, (イ)正面部の上部が正円である点, (ウ)勾玉を縦に圧縮したような,独特の全体形状である点, (エ)正面視,尾の先端を左にみて尾の内側(左側)のカーブを垂直に切り下ろすように作られた形状である点。 特に(エ)は,本件登録意匠とイ号意匠の特徴を表す大切な部分である。 尾の内側のカーブを垂直に断つような形状とし,この部分以外の外周はなだらかな楕円状にまとめられており,尾が跳ねるような動きが出せないか長い間考えた末にこの形状にたどり着いたものである。 差異点 (あ)本件登録意匠の実施品は,縦の長さが約26mmで横の長さが約16mmである(リング込みの長さ)のに対し,イ号意匠は,縦の長さが約28mmで横の長さが約17mmである点, (い)素材の違い(銀と樹脂)から,本件登録意匠の実施品は,重厚で気品があるのに対し,イ号意匠は,明るく軽やかである点。 6.イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明 本件登録意匠及びイ号意匠は,どちらも孔があいておらず,外形はそっくりである。 7.むすび 以上のとおり,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので,請求の通りの判定を求める。 8.証拠方法 (1)本件登録意匠に関するもの 甲第2号証:平成18年に株式会社文芸社から出版した書籍「空からくう」の表紙の写し及びその第118頁に所載の本件登録意匠の原型の写真の写し,登録第1267870号の意匠公報 添付書類:本件登録意匠の原簿謄本 (2)イ号意匠に関するもの 甲第1号証:イ号意匠に関する説明 添付書類:イ号意匠及び説明書 第2 被請求人の答弁 特許庁より被請求人に対し,平成29年11月20日に判定請求書を送達し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,被請求人からの応答はなかった。 第3 当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠(意匠登録第1267870号)は,願書及び願書に添付された図面の記載によれば,意匠に係る物品を「鈴」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであり,具体的な形態は,以下のとおりである。(別紙第1参照) (1)本件登録意匠の形態 本件登録意匠は,平面視は横長楕円形で,側面視は略逆しずく形状で,正面視は円形の下端部を下方に膨出させその膨出部を左方にやや湾曲させたものであって,所謂「勾玉」形状としたものであり,具体的な形態は,以下の通りである。 ア 全体の比率について,平面視における縦・横の長さ及び正面視における高さの比率を,約1:1.4:1.9とし, イ 側面視の略逆しずく形状の態様は,上端部から全体の高さの約4分の1を半円状とし,左右両辺はやや内側に湾曲しながら垂下して下端部を小さく弧状としたものであって,全体に縦長で細身であり, ウ 膨出部は,正面視,やや内側に湾曲する左辺と弧状をなす右辺が鋭角状に接し,先細りに屈曲した端部を形成したものである。 2.イ号意匠 本件判定請求の対象であるイ号意匠は,判定請求書と同時に提出された甲第1号証及び添付書類「イ号意匠及び説明書」に記載のイ号意匠の写真の写しにより示されたものであって,意匠に係る物品は「鈴」であると認められ,その形態を,イ号意匠の写真の写しにより表されたとおりとしたものであり,具体的な形態は,以下のとおりである。(別紙第2参照) (1)イ号意匠の形態(以下,対比のため,本件登録意匠の図面における正面,平面等の向きを,イ号意匠にもあてはめることとする。) イ号意匠は,平面視は略横長楕円形で,側面視は略逆しずく形状で,正面視は略円形の下端部を下方に膨出させその膨出部を左方にやや湾曲させたものであって,所謂「勾玉」形状としたものとし,平面部中央につり下げ用の円環部を1つ設けたものであり,具体的な形態は,以下の通りである。 ア 全体の比率について,平面視における縦・横の長さ及び正面視における高さの比率を,約1:1.3:1.7とし, イ 側面視の略逆しずく形状の態様は,上端部から全体の高さの約半分近くまで略半円状とし,左右両辺は内側に斜めに湾曲しながら垂下し下端部を大きな弧状としたものであって,全体に丸みが強調されたものであり, ウ 膨出部は,正面視,やや内側に湾曲する左辺と弧状をなす右辺が緩やかに連続し,略半円状の端部を形成したものである。 3.本件登録意匠とイ号意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本件登録意匠及びイ号意匠(以下「両意匠」という。)は,いずれも中空の外身の中に小さな玉を入れ全体を振り動かすことで音を出す「鈴」であって,身につけたり鞄等に取り付けて使用する飾り具であるから,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。 (2)両意匠の形態 両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点がある。 ア 共通点 両意匠は,平面視は略横長楕円形で,側面視は略逆しずく形状で,正面視は略円形の下端部を下方に膨出させその膨出部を左方にやや湾曲させたものであって,所謂「勾玉」形状としたものである点において共通する。 イ 差異点 一方,両意匠には,以下の差異点がある。 (ア)全体の比率について,平面視における縦・横の長さ及び正面視における高さの比率が,本件登録意匠は,約1:1.4:1.9であるのに対し,イ号意匠は,約1:1.3:1.7である点, (イ)側面視の略逆しずく形状の態様について,本件登録意匠は,上端部から全体の高さの約4分の1を半円状とし,左右両辺はやや内側に湾曲しながら垂下して下端部を小さく弧状としたものであるのに対し,イ号意匠は,上端部から全体の高さの約半分近くまで略半円状とし,左右両辺は内側に斜めに湾曲しながら垂下し下端部を大きな弧状としたものである点, (ウ)膨出部の態様について,本件登録意匠は,正面視,やや内側に湾曲する左辺と弧状をなす右辺が鋭角状に接し,先細りに屈曲した端部を形成したものであるのに対し,イ号意匠は,正面視,やや内側に湾曲する左辺と弧状をなす右辺が緩やかに連続し,略半円状の端部を形成したものである点, (エ)円環部の有無について,本件登録意匠は,平面部において何も形成していないのに対し,イ号意匠は,平面部中央につり下げ用の円環部を設けている点。 4.両意匠の類否判断 イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かについて,すなわち,両意匠が類似するか否かについて,検討する。 (1)両意匠の意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は,共に「鈴」であって,一致している。 (2)両意匠の形態 ア 共通点の評価 両意匠の共通点,すなわち,平面視は略横長楕円形で,側面視は略逆しずく形状で,正面視は略円形の下端部を下方に膨出させその膨出部を左方にやや湾曲させたものであって,所謂「勾玉」形状としたものである点は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであるから,両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではなく,類否判断を決定づけるものでもない。 イ 差異点の評価 まず,上記3.(2)イに記載の(ア)平面視における縦・横の長さ及び正面視における高さの比率について,すなわち,本件登録意匠は,約1:1.4:1.9であるのに対し,イ号意匠は,約1:1.3:1.7である点であるが,本件登録意匠は,イ号意匠と比較して,平面視における縦の長さ(厚み)に対する横の長さと高さの比率が大きいことから,全体にやや扁平でスリムな印象を醸し出しているものであるが,イ号意匠は,本件登録意匠より厚みがあり高さの比率も低く,全体にずんぐりとした印象を与えるものであるから,需要者に異なる視覚的印象を与え,この差異点(ア)が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。 次に,同,(イ)の側面視の略逆しずく形状の態様について,すなわち,本件登録意匠は,上端部から全体の高さの約4分の1を半円状とし,左右両辺はやや内側に湾曲しながら垂下して下端部を小さく弧状としたものであるのに対し,イ号意匠は,上端部から全体の高さの約半分近くまで略半円状とし,左右両辺は内側に斜めに湾曲しながら垂下し下端部を大きな弧状としたものである点において相違するものであるが,本件登録意匠は,全体に縦長で細身であるのに対し,イ号意匠は,全体に丸みが強調されたものであるから,需要者に異なる視覚的印象を与え,この差異点(イ)が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。 また,同,(ウ)の膨出部の態様について,すなわち,本件登録意匠は,正面視,やや内側に湾曲する左辺と弧状をなす右辺が鋭角状に接し,先細りに屈曲した端部を形成したものであるのに対し,イ号意匠は,正面視,やや内側に湾曲する左辺と弧状をなす右辺が緩やかに連続し,略半円状の端部を形成したものである点において相違するものであるが,本件登録意匠は,イ号意匠と比較して,本体部から下に細長く膨出し,正面視,左方への湾曲の度合いもさほど大きいものではなく,下端部の屈曲は略ヘアピン状に急角度で折れ曲がったものであって,全体に鋭角的でシャープな印象をもたらしているのに対し,イ号意匠は,太く短く膨出し,下端部の屈曲も大きいものであって,丸みのあるやわらかい印象をもたらしているものであるから,需要者に異なる視覚的印象を与え,この差異点(ウ)が両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいものである。 一方,同,(エ)の円環部の有無については,本件登録意匠の「使用状態を表す参考斜視図」に表されるとおり,本件登録意匠も使用時には平面部に円環部を設けるものであることから,この差異点(エ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。 5.小括 したがって,これらの共通点と差異点を総合して判断すれば,本件登録意匠とイ号意匠とは,意匠に係る物品は一致するが,形態については,共通点が類否判断に与える影響よりも,差異点が類否判断に及ぼす影響の方が総じて大きく,意匠全体として見ると,両意匠は類似するとはいえない。 第4 むすび 以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 よって,結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2018-01-22 |
出願番号 | 意願2005-704(D2005-704) |
審決分類 |
D
1
2・
2-
ZB
(E1)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 斉藤 孝恵 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
内藤 弘樹 江塚 尚弘 |
登録日 | 2006-02-24 |
登録番号 | 意匠登録第1267870号(D1267870) |