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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 B1
管理番号 1339232 
審判番号 不服2017-15758
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-25 
確定日 2018-03-20 
意匠に係る物品 使い捨ておむつ 
事件の表示 意願2016- 23674「使い捨ておむつ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)10月31日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「使い捨ておむつ」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたもので,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである。(以下,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。

この種物品分野に限らず,破断対象物の端部には,破断線を設けないことで,不用意な破断を防止することは,例えば,意匠2のように,本願出願前に極一般的に行われている手法である。
そうしてみると,本願意匠は,本願出願前に公然と知られた意匠1におけるおむつ上の破断線を,意匠2のように,端部には設けないようにしたものに過ぎず,当業者であれば,容易に創作することができたものである。

意匠1(別紙第2参照)
特許庁発行の特開2016-030200号の公開特許公報記載の「使い捨ておむつ」の本願意匠に相当する部分の意匠
(特に,図2参照。)

意匠2(別紙第3参照)
特許庁発行の実用新案登録第3096526号の登録実用新案公報記載
(特に,【0033】,【0034】,図2参照。)

3.請求人の主張の要旨
(1)本願意匠の構成態様(特徴点)について
本願意匠(甲1)に係る物品は低体重児に適した「使い捨てオムツ」であり,本願部分意匠は,「背面側からの斜視図」や「a-a’.b-b’部分拡大図」等のように,本物品の背面側の両脇において上端部からレッグギャザーの波形状にカットされた箇所の背面側の最も上端寄りの凹凸域に至るまで連続した切り取り線(以下,「破断線」ともいう)が一対に設けられている部分の部分意匠である。本物品を乳幼児が着用した際に当該切り取り線に沿って本物品を破ることで,容易に本物品を乳幼児から外すことができ,本願部分意匠は以下の特徴(ア)及び(イ)の二つを有している。
(特徴点ア)「平坦な状態の縮小正面図」等に示されているように,当該切り取り線が不用意に破れないようにするために,その下端が,サイドフラップの根本域ではなく,レッグギャザーの波形にカットされた箇所の背面側の凹凸域(波形状域)にある点(甲4),
(特徴点イ)「a-a’.b-b’部分拡大図」に表されているように,切り取り線の孔がレッグギャザーの凹凸の自由端に重複していない無孔域を設けることで自由端側がすっきりとした外観とされており,当該切り取り線が不用意に破れることを防いでおり,またこの形態がオムツの細かな繊維素材の不要な毛羽立ちを防止することができ赤ちゃんの繊維による不測の皮膚の損傷を防いでいる。そして,これらの機能はオムツの破断によるオムツの履き直しを防ぎ,免疫力に乏しい低体重児の皮膚の損傷を防いでいる。
(2)原査定が妥当でない点
(1)原査定判断Aについて
拒絶査定における「原査定判断A」では,本願意匠の「特徴点ア」につき「両意匠における,切り取り線の下端の位置の差は,両意匠を注視して気づく程度の差に過ぎず,その差は,この種物品分野における当業者の改変の範疇に収まる程度のもの」に過ぎないと判断し,このような切り取り線の下端の位置に関しての本願意匠の態様は意匠の創作として高く評価できるものではないと認定している。
しかしながら,当該原査定の判断は到底納得できるものではない。以下,その理由を述べる。
まず,引用意匠1は,本願意匠に係るオムツと同様に,うつぶせ姿勢の着用対象者(低体重児)から取り外し可能な展開型使い捨ておむつに係るものであり,例えば,引用意匠1の図面(「図6?8」,「図9」や「図10」等)には種々の切り取り線(実施例)の記載があることからわかるように,そもそも,引用意匠1は本件でいう「切り取り線」自体に大きな重点をおいた意匠であることからして,当業者(使い捨てオムツの製造業者)にしてみれば,切り取り線の下端の位置がどこにあるのかということは,当然に重視する点であって,本願意匠の切り取り線がサイドフラップの根本域にないこと(本願意匠の特徴点ア)は,引用意匠1とは異なる斬新かつ顕著な差として認識されるので,殊更に「注視」しなくても,明らかに目を引くレベルのものであるから,原審の「両意匠を注視して気づく程度の差に過ぎず」との判断は全く妥当ではない。
また,本願意匠と引用意匠1に係る使い捨てオムツはいずれも3000グラム以下の低体重児で出産される低体重児向けのものであるところ,かかる低体重児は,免疫力や体力は極めて弱く,出生後も母体内にいたときの胎児屈折姿勢(甲2の図1と図5)で大半の時間を過ごし,当該姿勢においてその脚は,M時型に開脚しつつ,両膝が腹部に付くくらい引き付けられた状態となっている(基本的にうつぶせの状態で過ごす)。そして,低体重児は,通常の赤ちゃんとは比べられないほど不利な健康状態にあることから,低体重児用のオムツについては一般のオムツとは異なる特別な配慮がなされているという特徴がある。
ここで,本願意匠と引用意匠1のオムツの切り取り線は,オムツを外す際の低体重児の負担を極力回避するため,当該記切り取り線に沿ってオムツを破ることで迅速かつ容易にその取り外しができるようにしたものであるが,低体重児に対する極めて細やかな視点から低体重児用オムツを開発する当業者からすれば,引用意匠1と本願意匠の切り取り線の下端の位置の違いは,大きな差として当然気が付くものであるといえる。むしろ,本願意匠の「特徴点ア」をこれまでにない斬新な意匠として高く評価されるべきものであり,ましてや原審にいう「改変の範疇に留まる程度」のものではない新しい創作である。
(2)原査定判断Bについて
次に,原査定判断Bでは,(i)「意匠の創作の容易,非容易は技術的な困難性により判断されるものではなく」,また,(ii)「引用意匠1及び引用意匠2共に破断線を有する態様であることを考慮すると,当業者がアイデアとして両意匠の組み合わせを想起することは当然考え得る事項であり,先の拒絶理由で通知した引用意匠1におけるオムツ上の破断線を引用意匠2のように,端部には設けないようにすると当業者が想起すること自体には困難性があるとは認められない」と判断している。しかしながら,当該原査定の判断についても到底納得できるものではない。
本願意匠に係る形態(本願意匠の特徴点イ)を形作ることが極めて技術的に困難であるかについて改めて触れると,一般的に,使い捨てオムツの素材は極めて柔らかく優しい肌触りの素材(不織布を主材料とした柔軟なシート)から作られており,また,大量生産ができる製造ラインで生産されている。その製造過程は,まず,巨大なロール状の不織布シートを回転させ,連続シートとして送り,そのシートにまず破断線の打ち込む工程を行い,その後,オムツの形状にカットする工程を行うという2つの工程でなされるのが通常である。このように2工程に分けるのは,当該「切り取り線の打ち込み」及び「カット」を同時に行うと,刃の圧力(線圧)が低下し,安定して切断(カット)できないという問題があるからである。
一方,このように2つの工程に分けると,本願意匠のように極めて細かな孔の配列である切り取り線が打ち込まれた不織布をオムツの形状にカットする際に,皺や波打ちによりオムツの端部と破断線の孔が常に重ならないようにすることは不可能である。つまり,破断線(孔)がなくなった極めて細かな箇所を狙って刃を当て,瞬時にカットすることは,極めて高度な技術を必要とする。
そこで,出願人は,上記の「破断線(切り取り線)の打ち込み」の工程と「カット」の工程とを同時に行っても,上記圧力低下の問題が生じない最適な刃と線圧(刃を押し込む圧力)を考えだし,その方法により本願意匠の破断線(切り取り線)と端部が重ならないように仕上げている。本願部分意匠の特徴的な形状を実現するには,当業者が通常知り得る技術では到底実現できない斬新なものであって,平均的な知識の当業者によって容易に創作することができるものではない。
また,部分意匠についての意匠法3条2項の審査基準では,「意匠登録を受けようとする部分」の用途及び機能を考慮し,当該部分を当該物品全体の形態の中において,その位置,その大きさ,その範囲とすることが,当業者にとってありふれた手法であるか否かを判断することにより行う」(意匠法審査基準71.4.3)と記載されているところ,引用意匠2の当該実用新案登録公報中「0034」を見ると,「粘着ロール製造時においては,ミシン目状の破断線は10を入れた粘着テープ4を高速で巻き取るが,粘着テープ4の側端に無孔域Eを形成すれば,この部分の引っ張り強度が増し,破断しにくくなり,粘着テープ4を高速で巻き取ることができる」とあるので,引用意匠2の当該「無孔域E」は製造時の高速での巻き取り時のために設けられたものであるのに対し,引用意匠1や本願意匠については,そもそも,使い捨てオムツの製造時においてこれを高速で巻き取るという工程がないので,巻き取り工程における引用意匠2のような無孔域部分の用途や機能は不要であることからして,引用意匠1と2のアイデアを組み合わせること自体あり得ないし,そもそも,本願意匠の特徴点イ(無孔域)は,低体重児の健康上のリスク回避という引用意匠2とは全く異なる新しい発想による用途と機能のために使い捨てオムツ上のその位置に設けられたものであるから,これが当業者にとってありふれた手法によるものだとすることもできない。
加えて,原査定では,審査基準にいう当業者にとってありふれた手法によって本願意匠が創作されたという事実も何ら示されていないし(審査基準23.7),当然ながら使い捨てオムツ(本願意匠,引用意匠1)及び掃除用粘着ロール(引用意匠2)の間には密接な関連性もなく,本願意匠と引用意匠は当業者にとってありふれた手法による寄せ集めや商慣行上の転用等の関係にもない。
(3)小括
本願意匠の特徴点ア及びイは,上記のように如何に低体重児の健康上のリスクを回避するかという観点から新しく創作されたものであって,引用意匠1及び2のいずれにも開示されていない新たな観点から設けられた意匠であって,公然知られた意匠に基づき当業者が容易に創作できるものではなく,原査定の上記各判断には到底容認できない。

4.当審の判断
本願意匠が,当業者であれば,容易にその意匠の創作をすることができたものか否かについて,以下検討する。
(1)本願意匠(別紙第1参照)
本願意匠は,意匠に係る物品を「使い捨ておむつ」とし,本願部分を背面側の両脇から開口部であるレッグギャザーの上端寄りまでの,略J字状と略逆J字状の一対に設けられた一点鎖線で囲まれた略帯状の表裏の部分とし,その形態は,部分全体を略J字状と略逆J字状の破断線で表された左右対称のミシン目を有する部分としたもので,レッグギャザーの端部は波状のフリル部の円弧状の端部から繋がる略逆ヘの字状の細い端部縁部分を含み,ミシン目は,略細長長方形状の孔部が密に連続し,上端部もレッグギャザーの端部も余地部を僅かに残したものである。
(2)原査定の拒絶の理由の引用意匠
(ア)意匠1(別紙第2参照)
意匠1は,発明の名称を「展開型使い捨ておむつ」とし,図2は,使い捨ておむつの展開状態の概略平面図である。本願部分に相当する引用部分は,背面側の両脇から開口部であるレッグギャザーの上端寄りまでの,略J字状と略逆J字状の一対に設けられた表裏の部分とし,その形態は,背面側の上端部とレッグギャザーのある開口部の端部までの部分において,部分全体を略J字状と略逆J字状の破断線で表された左右対称のミシン目を有する部分としたもので,レッグギャザーの端部は波状のフリル部の上方寄り端部を含み,ミシン目は,略細長長円形状の孔部が粗く連続し,長さが不揃いで,上端部とレッグギャザーの端部にも孔部が設けられたものである。
(イ)意匠2(別紙第3参照)
意匠2は,考案の名称を「粘着ロール清掃具」とし,粘着ロール清掃具の剥離紙にミシン目状の破断線を形成したもので,端部との間に孔が存在しない無孔域を設け,破断線をジグザグ状のミシン目あるいは円弧状のミシン目で形成したものである。
(3)創作容易性の判断
まず,この種の使い捨ておむつの物品分野においては,背面側の上端部とレッグギャザーのある開口部の端部までの部分において,部分全体を略J字状と略逆J字状の破断線で表された左右対称のミシン目を有する部分としたものは,意匠1に見られるように,本願出願前より既に見られる公然知られた態様といえるものである。
また,ミシン目状の破断線において端部との間に孔が存在しない無孔域を設けた態様も意匠2に見られるように,本願出願前より既に見られる公然知られた態様といえるものである。
しかしながら,意匠1には,ミシン目が,略細長長円形状の孔部が粗く連続し,長さが不揃いで,本願部分とは異なる点が見受けられ,また,意匠1のミシン目には,上端部とレッグギャザーの端部にも孔部が設けられたもので,本願部分のミシン目とは異なり,次に,意匠2は,粘着ロール清掃具の剥離紙にミシン目状の破断線を形成したもので,端部との間に孔が存在しない無孔域を設け,破断線をジグザグ状のミシン目あるいは円弧状のミシン目で形成したもので,本願意匠とは物品分野が異なり,また,ミシン目の態様も,破断線をジグザグ状のミシン目あるいは円弧状のミシン目で形成したものであるから,本願部分のミシン目とは異なるものであるから,本願部分のような略細長長方形状の孔部が密に連続し,上端部もレッグギャザーの端部も余地部を僅かに残した態様のミシン目は,意匠1と意匠2のいずれにも表されておらず,それらの意匠から,本願部分の態様を容易に導きだすことができない。
そして,意匠1の態様に基づいて,ありふれた手法に基づいて意匠2のミシン目のように端部の無孔域を設けたとしても,略細長長方形状の孔部とし,長さを揃え,疎密を合わせるといった,さらに様々な変更を加えなければ,それらの意匠から,本願部分の態様を直ちに導き出すことはできず,本願部分の態様は,他には見当たらず,独自の態様を表す創作がなされているものといえ,当業者にとって,本願部分の態様が容易に創出し得るものということはできない。
そうすると,本願部分は,部分全体を略J字状と略逆J字状の破断線で表された左右対称のミシン目を有する態様としたものであって,とりわけ,略細長長方形状の孔部が密に連続し,上端部もレッグギャザーの端部も余地部を僅かに残した態様は,本願部分の独特の態様といえるもので,当業者であれば容易に創作することができたものということができないものである。
よって,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,意匠1と意匠2に見られる,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠ということはできない。

5.むすび
したがって,本願意匠は,原査定の拒絶の理由によっては,意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-03-06 
出願番号 意願2016-23674(D2016-23674) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (B1)
最終処分 成立 
前審関与審査官 田村 佳孝 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
斉藤 孝恵
登録日 2018-04-20 
登録番号 意匠登録第1604502号(D1604502) 
代理人 一色国際特許業務法人 
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