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審決分類 審判    J7
管理番号 1339240 
審判番号 無効2017-880003
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-04-04 
確定日 2018-04-09 
意匠に係る物品 トレーニング機器 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1565074号「トレーニング機器」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
登録第1565074号の意匠(以下「本件意匠」という。)は,平成28年(2016年)2月5日に意願2016-2431号として出願され,同年11月11日に設定登録され,同年12月12日に意匠公報が発行された。
そして,平成29年(2017年)4月4日に,株式会社MTG(以下「請求人」という。)により,本件意匠の登録を無効とする旨の本件無効審判の請求がされ,当審は,期間を指定し,株式会社わがんせ(以下「被請求人」という。)に対して答弁を求めたが,被請求人は指定した期間までに答弁書を提出しなかった。
さらに,当審は,平成29年7月12日付けで,別件訴訟の有無等について審尋したところ,被請求人は同年7月26日に,請求人は同年8月7日に,それぞれ回答書を提出し,当審は,同年8月25日付けで,本件無効審判を書面審理とする旨を通知した。

第2 請求人の申立て及び理由の要点並びに証拠方法
請求人は,「登録第1565074号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申立て,その理由として,本件意匠は,登録第1536247号意匠と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号の規定により,無効とすべきであると主張した。

また,請求人は,証拠方法として,以下の書証を提出した。
甲第1号証 :意匠登録第1536247号公報
甲第2号証 :「甲第1号証とその関連意匠」と題する図面
甲第3号証の1 :意匠登録第1135259号公報
甲第3号証の2 :甲第1号証において「参考文献」として記載された,
Beauty Viking
エステティック総合カタログ 保存版,
第102ページの写し,
(特許庁意匠課公知資料番号HC25009889)
甲第3号証の3 :甲第1号証において「参考文献」として記載された,
株式会社ディノスのホームページの写し
(特許庁意匠課公知資料番号HJ25031013)
甲第3号証の4 :甲第1号証において「参考文献」として記載された,
株式会社ディノスのホームページの写し
(特許庁意匠課公知資料番号HJ25031014)
甲第4号証 :意匠登録第1545928号公報
甲第5号証 :意匠登録第1554933号公報
(以下では,各甲号証を「甲1」などと記載する。)

第3 被請求人の答弁
被請求人は,当審で指定した期間までに答弁をしなかった。

第4 請求人の主張の概要
1.本件意匠の要旨
本件意匠は,物品名を「トレーニング機器」とし,その形態は次のとおりである。
【基本的構成態様】
(態様1)6枚のパッド片からなるパッド部と,円形の電池部とを有し,
(態様2)6枚のパッド片は,2列3段組みとして,電池部を中心に,左右対称に略横長矩形状に配置され,
(態様3)電極部は,各パッド片の裏面に配置され,その一部が電池部に連接されているトレーニング機器。
【具体的構成態様】
(態様4)電池部は,パッド部の中央に配置され,
(態様5)中段のパッド片は,電池部を挟んで略水平に配置され,上段及び下段のパッド片も水平に配置され上下左右ともに対称をなしている。
(態様6)1段目と2段目及び2段目と3段目のパッド片の隙間は,等間隔である。
(態様7)パッド部の上辺及び下辺の輪郭は水平であり,中央部において円弧状の切り込みを有しており,左辺及び右辺の輪郭は垂直である。
(態様8)6枚の各パッド片表面には,周縁に縁取り線が施されている。
(態様9)電池部は,先端を含む全体がパッド部から突出しており,その周側下方に+と-が表示されている。電池部は,パッド部から着脱可能に取り付けられている。
(態様10)電池部とパッド片の間に小穴は穿設されていない。
(態様11)電極部の隅丸長方形状内には,横1列,縦9段に小穴が形成されており,小穴の大きさは,中央3段を大,その外側の1段を中,その外側の2段を小として,各横列の小穴は隣り合う縦列の小穴と千鳥状をなすように配置されている。
(態様12)電極部に形成された小穴の形状は,円形である。
(態様13)パッド部裏面中央には,円形の幾何図形が形成されている。

2.引用意匠の要旨
引用意匠は,物品名を「トレーニング機器」とし,6件の関連意匠(甲2)の本意匠として登録されたものであり,その形態は次のとおりである。
【基本的構成態様】
(形態1’)6枚のパッド片からなるパッド部と,円形の電池部とを有し,
(形態2’)6枚のパッド片は,2列3段組みとして,電池部を中心に,左右対称に略横長矩形状に配置され,
(形態3’)電極部は,各パッド片の裏面に配置され,その一部が電池部に連接されているトレーニング機器。
【具体的構成態様】
(形態4’)電池部は,パッド部の中央に配置されている。
(形態5’)中段のパッド片は,電池部を挟んで略水平に配置され,上段のパッド片は,左右端がやや上方に傾斜して配置され,下段のパッド片は,両端をやや先細りとして水平に配置されている。
(形態6’)1段目と2段目及び2段目と3段目のパッド片の隙間は,先細りとなっている。
(形態7’)パッド部の上辺及び下辺の輪郭は,中央に向かってやや下方に傾斜し,中央部において先細りの切り込みを有しており,左辺及び右辺の輪郭はやや外方に湾曲している。
(形態8’)6枚の各パッド片の表面には,隅丸5角形を構成する3本の溝とその外側にパッド片の周縁に沿って線模様が施されている。
(形態9’)電池部は,先端がパッド部から突出しており,表面上下に+と-が表示されている。
(形態10’)電池部とパッド片の間に4個の小穴が穿設されている。
(形態11’)電極部の隅丸長方形状内には,横1列,縦9段に小穴が形成されており,小穴の大きさは,中央3段を大,その外側の1段を中,その外の2段を小として,各横列の小穴は隣り合う縦列の小穴と千鳥状をなすように配置されている。
(形態12’)電極部に形成された小穴の形状は,6角形である。
(形態13’)パッド部裏面中央には円形の電池部が配置され,その中央に蓋開閉用のコイン掛けが,周縁には細溝が凹設されている。

3.本件意匠と引用意匠との対比
(1)本件意匠と引用意匠の意匠に係る物品の対比
本件意匠に係る物品は「トレーニング機器」であり,引用意匠に係る物品も「トレーニング機器」であり,両者は物品において共通する。

(2)本件意匠と引用意匠の形態の共通点及び差異点
【共通点】
共通点A 本件意匠と引用意匠は基本的構成態様において共通する。
共通点B 具体的構成態様において,電池部が,パッド部の中央に配置されている点において共通する。
共通点C パッド部裏面の電極部の隅丸長方形状内には,横1列,縦9段に小穴が形成されており,小穴の大きさは,中央3段を大,その外側の1段を中,その外の2段を小として,各横列の小穴は隣り合う縦列の小穴と千鳥状をなすように配置されている点において共通する。

【差異点】
差異点ア 本件意匠は,中段のパッド片が,電池部を挟んで略水平に配置され,上段及び下段のパッド片も水平に配置されて上下左右ともに対称をなしているのに対して,引用意匠は,中段のパッド片が,電池部を挟んで略水平に配置され,上段のパッド片は,左右端がやや上方に傾斜して配置され,下段のパッド片は,両端をやや先細りとして水平に配置されて上下は非対称となっている具体的構成態様において差異を有する。
差異点イ 本件意匠の1段目と2段目及び2段目と3段目のパッド片の隙間は,等間隔であるのに対して,引用意匠は先細りとなっている具体的構成態様において差異を有する。
差異点ウ 本件意匠のパッド部の上辺及び下辺の輪郭は水平であり,中央部において円弧状の切り込みを有しており,左辺及び右辺の輪郭は垂直であるのに対して,引用意匠は,パッド部の上辺及び下辺の輪郭は,中央に向かってやや下方に傾斜し,中央部において先細りの切り込みを有しており,左辺及び右辺の輪郭はやや外方に湾曲している具体的構成態様において差異を有する。
差異点エ 本件意匠の6枚の各パッド片表面には,周縁に縁取り線が施されているのに対して,引用意匠は,6枚の各パッド片の表面には,隅丸5角形を構成する3本の溝とその外側にパッド片の周縁に沿って線模様が施されている具体的構成態様において差異を有する。
差異点オ 本件意匠の電池部は,先端を含む全体がパッド部から突出し,その周側下方に十とーが表示されており,電池部は,パッド部から着脱可能に取り付けられているのに対して,引用意匠の電池部は,先端がパッド部から突出し,表面上下に十とーが表示されており,両者は突出の具体的構成態様において差異を有する。また,電池部の着脱の可否においても差異を有する。
差異点カ 本件意匠は,電池部とパッド片の間に小穴は穿設されていないのに対して,引用意匠は,電池部とパッド片の間に4個の小穴が穿設されている点において差異を有する。
差異点キ 本件意匠の電極部に形成された小穴の形状は,円形であるのに対して,引用意匠の電極部に形成された小穴の形状は,6角形である具体的構成態様において差異を有する。
差異点ク 本件意匠のパッド部裏面中央には,円形の幾何図形が形成されているのに対して,引用意匠のパッド部裏面中央には円形の電池部が配置され,その中央に蓋開閉用のコイン掛けが,周縁には細溝が凹設されている具体的構成態様において差異を有する。

4.本件意匠と引用意匠の形態の共通点及び差異点の評価
(1)本件意匠と引用意匠の形態の共通点の評価
ア.上記共通点Aの基本的構成態様は,公知例には全く見ることのできない新規且つ独創的なものであり(甲3の1?4),表面は,物品の正面且つ全体に亘るものであって看者の目を惹くものであるし,直接肌に触れてマッサージ効果を奏する機能部であることにより看者の注意を強く惹くものであるから,上記共通点Aが両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。
イ.上記共通点Bの電池部がパッド部の中央に配置されている具体的構成態様は,パッド片が6枚のものにおいては新規な構成であるが,4枚のものにおいては公知例に開示されており,両意匠の類否判断に与える影響は大きいとはいえない。
ウ.パッド部裏面の電極部の小穴の配置の具体的構成態様に係る共通点Cは,公知例には全く見ることのできない新規且つ独創的なものであり,本件物品の表面且つ正面における目立つ部分である点,及び,裏面の機能面という注意を惹く部分である点において,看者に与える共通感は強いものであって,両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。

(2)本件意匠と引用意匠の形態の差異点の評価
ア.上記差異点アにおける上段のパッド片が,電池部を挟んで水平に配置されているか否かの差異については,引用意匠の上段のパッド片の傾斜の程度は緩やかなものであって,本件意匠との間に大きな差異感を奏するものでない。また,電池部を中心に上下及び左右を対称とした審判請求人の意匠が,引用意匠を本意匠とする関連意匠として登録になっている(甲4)ことからも明らかなとおり,この点の差異が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいというべきである。
イ.上記差異点イにおける各段のパッド片間の隙間の形態の差異については,この隙間の形状は特異なものではなく,これらが全体に占める面積は小さいことから,両意匠の類否判断を左右する要素にはならない。
ウ.上記差異点ウにおけるパッド部上辺及び下辺の輪郭,左辺及び右辺の輪郭の差異については,本件意匠の上辺及び下辺における中央部円弧状の切り込み口が各辺の長さの3分の1に及んでいることにより,中央部が下方に傾斜した印象を呈しており,両者の差異は両意匠の類否判断を左右する要素にはならないというべきである。また,本件意匠の上下辺中央部における円弧状の切り込みは,公知例(甲3の2?4)に開示されており,左辺・右辺両辺の垂直な輪郭は,公知例(甲3の2及び3)に開示されているものであり,さらに,上辺及び下辺における切り込みのない審判請求人の意匠が,引用意匠を本意匠とする関連意匠として登録になっている(甲5)ことからも明らかなとおり,この点における差異も両意匠の類否判断を左右する要素にはならない。
エ. 上記差異点エにおけるパッド片表面の線模様については,隅丸5角形を構成する3本の溝の有無において一定の差異を有するとは言え,縁取り線と線模様の差異において,本件意匠の縁取り線と引用意匠の線模様は,ともにパッド片周縁の縁取り線としての共通感を呈しており,両意匠の類否判断を左右する要素にはならない。
オ.上記差異点オにおける電池部の構成については,電池部が円形でありその表面に十と一の表示がされている点は,公知意匠(甲3の3及び4)に開示されており,両意匠の類否判断を左右する要素にはならない。また,本件意匠は電池部が装着された形態を有するものであるから着脱の可否は両意匠の類否判断を左右する要素にはならない。
カ.上記差異点カにおける小穴の有無については,穴は小さいものであり,形状もありふれた形状であるから,両意匠の類否判断を左右する要素にはならないというべきである。
キ.上記差異点キにおける電極部の小穴の形状の差異については,その形状の差異は容易に識別できない程に小さなものである上に,多数の小穴が密接に配置されていることから,個々の形状の差異は,多数の小穴の密集感に埋没されて目立たなくなることとも相侯って,両意匠の類否判断を左右する要素にはならない。
ク.上記差異点クにおけるパッド部裏面中央の構成については,本件意匠では,引用意匠の円形の電池部に対応する位置に,円形の幾何図形が形成されている点において近似感を強めており,両意匠の類否判断を左右する要素にはならない。

5.本件意匠と引用意匠の意匠に係る物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく類否の結論
上記のとおり,本件意匠と引用意匠は,意匠に係る物品は共通であり,両者は類似の関係にある。
次に,本件意匠と引用意匠は,その形態において,基本的構成態様を共通にし,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,上述のとおり,極めて大きい。また,具体的構成態様におけるパッド部裏面電極部の小穴の配置の共通性も,両意匠の類否判断に及ぼす影響が,上述のとおり,極めて大きい。
これに対して,具体的構成態様における差異点は,上述のとおり,いずれも両意匠の類否判断を左右する要素にはならない。
よって,両意匠の差異点は,両意匠の共通点が創出する美感を凌駕するものと評価することは出来ず,本件意匠は,引用意匠に類似することは明らかである。

6.むすび
したがって,本件意匠は,引用意匠と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号の規定により,無効とすべきである。

第5 当審の判断
1.本件意匠
本件意匠は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「トレーニング機器」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)
そして,本件意匠の形態について,主に以下の点を認めることができる。

[基本的態様について]
(形態1)全体は,正面から見て,薄いシート状であって,略上下左右対称であり,略横長隅丸4角形状の上パッド,中央パッド及び下パッドが,上下に間隔を空けて左右に平行に延びるように合計6つ配置された,略「王」字形状の本体と,本体の正面中央に設けられた,略円形のコントローラで構成されている点。
(形態2)本体の上片及び下辺中央に,円弧状の切り欠き部が形成されている点。
(形態3)本体正面は平坦で,外周を縁取るように連続する線模様が1つ設けられている点。

[具体的態様について]
(形態4)コントローラは,背面が略平坦な略レンズ形状で,本体に着脱可能に設けられている点。
(形態5)本体背面中央に,コントローラよりも大きい円形の線模様が設けられ,各パッドに,周囲に余白を残して,略横長隅丸4角形状で,略同形同大の電極が配置され,各電極が中央の円形模様と接続され,円形模様の内側が平坦である点。
(形態6)電極内に略楕円形状の区画が略千鳥状に配されて,中央の区画は大きく,上下の区画は中央から離れるほど小さくなっている点。
(形態7)本体には,正面及び背面を貫通する通気孔が設けられていない点。
(形態8)コントローラの外周近傍の右及び左寄りに,「+」及び「-」の表示が設けられている点。
(形態9)本体周縁は,正面側の平坦面から切り立ったような垂直面である点。

2.甲1意匠
甲1に係る意匠(以下「甲1意匠」といい,本件意匠と合わせて「両意匠」という。)は,甲1の記載からみて,意匠に係る物品を「トレーニング機器」とし,形態を甲1の図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第2参照)
そして,甲1意匠の形態について,主に以下の点を認めることができる。

[基本的態様について]
(形態1’)全体は,正面から見て,薄いシート状であって,略左右対称であり,略横長隅丸4角形状の中央パッドが,左右端が若干上に傾くように配置され,中央パッドの上に,略横長隅丸5角形状の上パッドが,左右端が中央パッドよりも上に傾くように配置され,中央パッドの下に,略横長隅丸5角形状の下パッドが,左右端が中央パッドよりも下に傾くように配置された,合計6つのパッドからなる本体と,本体の正面中央に設けられた,略円形の強弱調整ボタンで構成されている点。
(形態2’)本体の上片及び下辺中央に,略「V」字状の切り欠き部が形成されている点。
(形態3’)本体正面は,各パッドの外周を縁取る線模様が,パッドごとに分断して合計6つ設けられ,その内側に,各パッドの外形に相似するような隅丸略5角形状の線溝が,相似形に3本施されている点。

[具体的態様について]
(形態4’)強弱調整ボタンは,本体から突出して設けられた略円筒状の強弱調整ボタン基部の上に同心に配置され,正面側が閉塞する略円筒状で,本体に一体に設けられている点。
(形態5’)本体背面中央に,ボタン基部よりも大きい円形の線模様が設けられ,各パッドに,周囲に余白を残して,略横長隅丸4角形状で,略同形同大の電極が配置され,各電極が中央の円形模様と接続され,円形模様の内側に,周囲に放射状の線模様が施され,中央にコイン掛け溝を有する電池部蓋が設けられている点。
(形態6’)電極内に略6角形状の区画が略千鳥状に配されて,中央の区画は大きく,上下の区画は中央から離れるほど小さくなっている点。
(形態7’)本体のボタン基部の斜め上下左右に,正面及び背面を貫通する略隅丸3角形状の通気孔が設けられている点。
(形態8’)強弱調整ボタンの正面上下に,「+」及び「-」の表示が設けられている点。
(形態9’)本体周縁は,正面側のゆるやかな傾斜面から滑らかにつながる,ごく低い垂直面である点。

3.両意匠の対比
(1)両意匠に係る物品
本件意匠に係る物品は「トレーニング機器」であり,甲1意匠に係る物品も「トレーニング機器」であるから,両意匠に係る物品は一致する。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
<共通点>
基本的態様として,
(A)全体は,正面から見て,薄いシート状であって,略左右対称であり,横長多角形の上パッド,中央パッド及び下パッドが合計6つ配置された本体と,本体中央に設けられた略円形のコントローラ(強弱調整ボタン)で構成されている点。
(B)本体の上片及び下片中央に切り欠き部が形成されている点。

具体的態様として,
(C)本体背面中央に,コントローラよりも大きい円形の線模様が設けられ,各パッドに,周囲に余白を残して,略横長隅丸4角形状で,略同形同大の電極が配置され,各電極が中央の円形模様と接続されている点。
(D)電極内に同形の区画が略千鳥状に配されて,中央の区画は大きく,上下の区画は中央から離れるほど小さくなっている点。
(E)コントローラに「+」及び「-」の表示が設けられている点。

<相違点>
基本的態様として,
(ア)本体が,本件意匠は,上パッド,中央パッド及び下パッドが,いずれも略横長隅丸4角形状であり,上下に間隔を空けて左右に平行に延びるように配置されて,正面視略「王」字形状となっているのに対して,甲1意匠は,中央パッドが略横長隅丸4角形状で,左右端が若干上に傾くように配置され,上パッドが略横長隅丸5角形状で,左右端が中央パッドよりも上に傾くように配置され,下パッドが略横長隅丸5角形状で,左右端が中央パッドよりも下に傾くように配置されている点。
(イ)本体の上片及び下辺中央の切り欠き部が,本件意匠は円弧状であるのに対して,甲1意匠は略「V」字状である点。
(ウ)本体正面が,本件意匠は平坦で,外周を縁取る線模様が連続して1つ設けられているのに対して,甲1意匠は,外周を縁取る線模様がパッドごとに分断して合計6つ設けられ,その内側に,各パッドの外形に相似するような隅丸略5角形状の線溝が,相似形に3本施されている点。

具体的態様として,
(エ)コントローラが,本件意匠は,背面が略平坦な略レンズ形状で,本体に着脱可能に取り付けられているのに対して,甲1意匠は,本体から突出して設けられた略円筒状の強弱調整ボタン基部の上に同心に配置され,正面側が閉塞する略円筒状で,本体に一体に設けられている点。
(オ)本体背面中央の円形模様の内側が,本件意匠は平坦であるのに対して,甲1意匠は周囲に放射状の線模様が施され,中央にコイン掛け溝を有する電池部蓋が設けられている点。
(カ)電極内の区画が,本件意匠は略楕円形状であるのに対して,甲1意匠は略6角形状である点。
(キ)本件意匠は,本体の正面及び背面を貫通する通気孔が設けられていないのに対して,甲1意匠は,コントローラの斜め上下左右に,正面及び背面を貫通する略隅丸3角形状の通気孔が設けられている点。
(ク)コントローラの「+」及び「-」の表示が,本件意匠はコントローラの外周近傍の右及び左寄りに設けられているのに対して,甲1意匠はコントローラの正面上下に設けられている点。
(ケ)本体周縁が,本件意匠は,正面側の平坦面から切り立ったような垂直面であるのに対して,甲1意匠は,正面側のゆるやかな傾斜面から滑らかにつながる,ごく低い垂直面である点。

4.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)両意匠に係る物品の評価
両意匠に係る物品は一致するところ,トレーニング機器,すなわち電極を通じて微弱電流を流して筋肉を刺激する機器(以下「この種の機器」という。)は,両意匠のほかにもありふれて見られるから,両意匠に係る物品が一致することによる,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。

(2)両意匠の形態についての共通点の評価
共通点(A)は,全体が,正面から見て,薄いシート状であって,略左右対称であり,横長多角形の上パッド,中央パッド及び下パッドが合計6つ配置された本体と,本体中央に設けられた略円形のコントローラで構成されているというものであるところ,この種の機器の分野において,本体中央に設けられた略円形のコントローラは,例えば甲3の3(別紙第3参照)に見られるようにありふれた態様であるが,本体に,上パッド,中央パッド及び下パッドが合計6つ配置された態様は,両意匠のほかには見られないから,共通点(A)は,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
これに対して,共通点(B)は,本体の上片及び下片中央に切り欠き部が形成されているというものであるが,そのような態様は,例えば甲3の3に見られるようにありふれた態様であるから,共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また,共通点(C)は,本体背面中央に,コントローラよりも大きい円形の線模様が設けられ,各パッドに,周囲に余白を残して,略横長隅丸4角形状で,略同形同大の電極が配置され,各電極が中央の円形模様と接続されているというものであるが,本体の背面に円形部を設け,パッドの周囲に余白を残して,略横長隅丸4角形状で,略同形同大の電極が配置され,各電極が中央の円形部と接続された形態は,例えば,特許庁が平成28年(2016年)1月12日に発行した意匠公報記載意匠登録第1541180号(意匠に係る物品,トレーニング機器)の意匠(以下「参考意匠」という。別紙第4参照)に示すように,両意匠のほかにも見られる形態であるし,背面側の形態であって,この種の機器の使用時には目に付くものではないから,共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
さらに,共通点(D)は,電極内に同形の区画が略千鳥状に配されて,中央の区画は大きく,上下の区画は中央から離れるほど小さくなっているというものであるが,そのような形態は,参考意匠に示すように,両意匠のほかにも見られる形態であるし,背面側の形態であるから,共通点(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も小さいものである。
そして,共通点(E)は,コントローラに「+」及び「-」の表示が設けられているというものであるが,そのような形態は,例えば甲3の3に見られるようにありふれた形態であるから,共通点(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。

(3)両意匠の形態についての相違点の評価
相違点(ア)について検討すると,本件意匠の本体は,上パッド,中央パッド及び下パッドが,いずれも略横長隅丸4角形状であり,上下に間隔を空けて左右に平行に延びるように配置されて,略「王」字形状となっていることから,単調で,変化に乏しい印象を与えるのに対して,甲1意匠は,中央パッドが略横長隅丸4角形状で,左右端が若干上に傾くように配置され,上パッドが略横長隅丸5角形状で,左右端が中央パッドよりも上に傾くように配置され,下パッドが略横長隅丸5角形状で,左右端が中央パッドよりも下に傾くように配置されていることから,変化に富み,躍動的で活気のある印象を与えるといえ,両意匠が正反対の印象を与えることから,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。
また,相違点(イ)は,本体の上片及び下辺中央の切り欠き部が,本件意匠は円弧状であることから,穏やかで静かな印象を与えるのに対して,甲1意匠は略「V」字状であることから,鋭く勢いのある印象を与えるものであり,相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きいというほかない。
さらに,相違点(ウ)は,本体正面が,本件意匠は平坦で,外周を縁取る線模様が連続して1つ設けられているのに対して,甲1意匠は,外周を縁取る線模様がパッドごとに分断して合計6つ設けられ,その内側に,各パッドの外形に相似するような隅丸略5角形状の線溝が,相似形に3本施されているというものであり,甲1意匠は,線模様や線溝により,各パッドが独立して浮き上がったような印象を強く与えるのに対して,本件意匠は,全てのパッドが平たく一体である印象を与えるといえ,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きいというべきである。
そして,両意匠に係る物品が,主に腹筋のトレーニングに使用されることを合わせて考えると,相違点(ア)ないし(ウ)に係る甲1意匠のパッドの形態から,需要者は,トレーニングによって鍛えられて,浮き上がったような腹筋を想起し,力強い印象を受けるといえるのに対して,本件意匠のパッドの形態から,そのような印象を受けることはないから,相違点(ア)ないし(ウ)による視覚的印象は,両意匠において全く異なるものといわざるを得ない。
さらに,相違点(エ)は,コントローラが,本件意匠は,背面が略平坦な略レンズ形状で,本体に着脱可能に取り付けられているのに対して,甲1意匠は,本体から突出して設けられた略円筒状の強弱調整ボタン基部の上に同心に配置され,正面側が閉塞する略円筒状で,本体に一体に設けられているというものであるが,コントローラが本体に着脱自在となっている形態は,この種の機器の分野において,ほかには見られない本件のみの特徴といえるから,相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きいというべきである。
これに対して,相違点(オ)は,本体背面中央の円形模様の内側が,本件意匠は平坦であるのに対して,甲1意匠は周囲に放射状の線模様が施され,中央にコイン掛け溝を有する電池部蓋が設けられているというものであるが,背面側の形態であって,この種の機器の使用時には目に付くものではないから,相違点(オ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
また,相違点(カ)は,電極内の区画が,本件意匠は略楕円形状であるのに対して,甲1意匠は略6角形状であるというものであるが,背面側の形態である上に,区画自体がごく小さいから,相違点(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また,相違点(キ)は,本件意匠は,本体には,通気孔が設けられていないのに対して,甲1意匠は,コントローラの斜め上下左右に略隅丸3角形状の通気孔が設けられているというものであるが,この種の機器は,体に密着するように取り付けるものであることを考慮すると,この通気孔は,需要者に,空気がたまりやすい本体中央を密着して取り付けできるように,細やかな配慮がなされているという印象を与えるのに対して,本件意匠は,そのような印象を全く与えないから,通気孔自体が小さいものであるとしても,相違点(キ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。
さらに,相違点(ク)は,コントローラの「+」及び「-」の表示が,本件意匠はコントローラの外周近傍の右及び左寄りに設けられているのに対して,甲1意匠はコントローラの正面上下に設けられているというものであるが,コントローラの形態,すなわち相違点(エ)とあいまって,略レンズ状のコントローラの外周近傍に表示されるか,正面側が閉塞する略円筒状のコントローラの正面上下に表示されるかは,異なる視覚的印象を与えるといえるから,相違点(ク)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるといえる。
そして,相違点(ケ)は,本体周縁が,本件意匠は,正面側の平坦面から切り立ったような垂直面であるのに対して,甲1意匠は,正面側のゆるやかな傾斜面から滑らかにつながる,ごく低い垂直面であるというものであるが,ごく小さな部分の僅かな相違であるから,相違点(キ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。

(4)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,それによる両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であり,共通点(A)が両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものの,共通点(B)ないし(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,いずれも小さいか,微弱なものであることから,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
これに対して,相違点(ア)ないし(エ)及び(キ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きい上に,相違点(ク)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度あることから,相違点(オ)及び(カ)並びに(ケ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいか微弱であるとしても,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本件意匠は,甲1意匠に類似するということはできない。

第6 むすび
以上のとおりであって,本件意匠は,甲1意匠をもって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,請求人の主張及び証拠によっては,本件意匠登録を無効にすべきものとすることができない。
よって結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2017-09-14 
結審通知日 2017-09-20 
審決日 2017-10-03 
出願番号 意願2016-2431(D2016-2431) 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (J7)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 原川 宙 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2016-11-11 
登録番号 意匠登録第1565074号(D1565074) 
代理人 櫻木 信義 
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