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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 H1
管理番号 1340181 
審判番号 不服2014-22092
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-30 
確定日 2015-04-24 
意匠に係る物品 コンセント用基板 
事件の表示 意願2012- 19316「コンセント用基板」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,願書に記載した意願2012-019315(意匠登録第1486343号)の意匠を本意匠とする関連意匠に係る,平成24年(2012年)8月9日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「コンセント用基板」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。左側面図及び底面図は,意匠登録を受けようとする部分以外の部分のみが現れるので省略する。参考正面図において薄墨色で着色した部分は貫通孔である。」としたものである(以下,本願において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由と本意匠
(1)原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないというものであって,具体的には,本願意匠部分と,本願意匠部分に相当する,願書に記載した本意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下,「本意匠部分」という。)とは,アンテナ及び貫通孔の正面から見た形状について,本願意匠部分は隅丸の横長長方形状であるのに対し,本意匠部分は略横長小判形状である点が相違し,また,アンテナと貫通孔の位置関係についても,本願意匠部分はアンテナの中心と貫通孔の中心とがずれて位置しているのに対し,本意匠部分はアンテナと貫通孔とがほぼ同心に位置している点が相違しており,両意匠はこれらの相違点が相まって別異の視覚的印象を与えるから,類似しないものと認められる,というものである。
(2)本意匠
本願の願書に記載した本意匠は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成24年(2012年)8月9日付けの意匠登録出願(意願2012-019315)の意匠であって,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「コンセント用基板」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。左側面図及び底面図は,意匠登録を受けようとする部分以外の部分のみが現れるので省略する。参考正面図において薄墨色で着色した部分は貫通孔である。」としたものであり,その後平成25年11月15日に設定の登録がなされたものである(意匠登録第1486343号)。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠及び本意匠の意匠に係る物品は,共に非接触通信を介してプラグ内に実装されたデータキャリアからデータを読み取ることによって,現在どの機器のプラグがコンセントに差し込まれているのかを認証する目的でコンセント内に実装して用いる「コンセント用基板」であり,一致する。
(2)本願意匠部分と本意匠部分(以下,「両意匠部分」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分の用途及び機能については,両意匠部分は共に,現在どの機器のプラグがコンセントに差し込まれているのかを認証する目的で用いる,プラグ内に実装されたデータキャリアから非接触通信を介してデータを読み取るための基板に設けられたコイル状のアンテナ部とプラグ受け用孔部であるので,用途及び機能は一致する。また両意匠部分は共に略縦長長方形薄板状の基板に,プラグ受け用孔部とその孔部の周りにコイル状のアンテナ部(基板の片面のみ)を縦に複数配したうちの1つの部分であって,その位置は若干異なるものの,大きさ及び範囲については概ね共通するものである。
(3)形態
両意匠は,全体を,略縦長長方形薄板状の基板に,プラグ受け用孔部とその孔部の周りにコイル状のアンテナ部を,略同形同大のものとして縦に2つ又は3つ配した態様のものであって,両意匠部分は,そのうちの1つのコイル状のアンテナ部とその内側にあるプラグ受け用孔と孔の空いた基板部分である。この両意匠部分の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
(A)共通点
(あ)両意匠部分は,基本的な構成態様として,プラグ受け用孔部とその孔部の周りにコイル状のアンテナ部を配している点が共通する。
そして,具体的態様として,
(い)孔部の形状とその周りに設けたアンテナ部の外形を,僅かに大きさの異なる相似形状としている点,
(う)孔部とアンテナ部の形状を,若干横幅が広い概略長方形のような形状としている点,
(え)アンテナ部のコイル状の巻幅を,コイルの外形状寸法に対して細幅としている点,
が共通する。
(B)相違点
具体的態様として,
(ア)孔部とアンテナ部の形状について,
本願意匠部分は,隅小丸の正方形状に近い横長長方形状であるのに対して,
本意匠部分は,上下が平行で,左右が外に弧状に膨出した略三味線胴状(略扁平ビア樽状)である点,
(イ)孔部とアンテナ部の配置態様について,
本願意匠部分は,アンテナ部の内側に,左右はほぼ等幅の,上下は幅に差のある余地を残して,偏って孔部を設けているのに対して,
本意匠部分は,アンテナ部の内側に,上下左右に極めて僅かな余地をほぼ同幅に残して孔部を設けている点,
が相違する。
2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価,総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
(1)両意匠の意匠に係る物品並びに両意匠部分の用途及び機能
上述の1.(1)及び(2)のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,また両意匠部分の用途及び機能も一致することから,本願意匠は本意匠と類似すると判断するための条件を備えている。
(2)両意匠部分の意匠全体に対する位置,大きさ及び範囲
上述の1.(2)のとおり,両意匠部分の意匠全体に対する大きさ及び範囲は共通するが,位置が若干相違している点については,この位置の相違は意匠登録を受けようとする部分以外の部分である基板全体にプラグ受け口を縦一列に複数設けるというこの種物品においては普通に見られるありふれた態様の中における中段又は下段という程度の相違であることから,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものではない。したがって,位置についてもありふれた範囲であって概ね共通するものと言え,意匠全体に対する位置,大きさ及び範囲に関し,本願意匠は本意匠と類似すると判断するための条件を備えている。
(3)両意匠部分の形態についての評価は,以下のとおりである。
(A)共通点について
(あ)の共通点については,その態様がこれまでにない比較的新しいものであるから,その態様の共通性は未だ基本的な概略を表す態様のレベルであるとしても,相当程度に類否判断に与える影響があるといえるが,この共通点だけで類否を決するほど大きな影響を及ぼすものとは言えず,各部の具体的な態様と相まって判断されるべきものである。
そして,具体的態様については,
(い)の孔部とアンテナ部の形状を相似形状としている点については,孔の縁に沿って線状を配したという観点から見れば,さほど斬新とはいえない比較的ありふれた態様ともいえるが,先行意匠には見られない態様であることから,両意匠部分における大きな特徴の共通性であって,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は相当程度あるといえる。
(う)は,僅かに横幅が広い比較的大きな孔が開いているという印象を与える点では共通し,類否判断に僅かながら影響を及ぼすものといえる。
(え)のコイル状の共通点については,孔部以外の両意匠部分を構成する唯一の要素であり,アンテナ部及び孔部の全体の大きさとの関係からも一定程度影響を及ぼすものといえる。
以上の共通点を総合してみると,(う)がほとんど類否判断に影響を及ぼすものでないとしても,(あ)と(い)が相まった態様の基本となる部分の共通性が,先行意匠には見られないこれまでにない新しいものであることを踏まえ,かつ(え)の細幅なコイル状の共通性をも加味すると,それら共通点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいと言うべきである。
(B)相違点について
(ア)については,確かに形状の違いではあるが,本願意匠部分の形状も本意匠部分の形状もいずれもプラグの端部あるいはコンセントのプラグ受け部分の形状として公然知られたありふれた形状であることから,その相違を高く評価することは適当ではなく,類否判断に与える影響は一定程度に留まるものと言わざるを得ない。
(イ)については,確かに子細に見ると偏心(中心位置のズレがある)と同心の相違があるが,共通点の評価において述べたとおり,(あ)と(い)が相まった態様の共通性が,先行意匠には見られないこれまでにない新しいものであることを踏まえると,コイル状アンテナ部と孔部の間隔の部分的な僅かな違いであって,両意匠部分の印象を大きく異ならせるほどのものとは言えない。
そして,以上の相違点を総合すると,最も大きな相違点といえる(ア)にあっても,この種物品において従前から見られるありふれた形状同士に基づく相違であることから,やはりその相違が両意匠部分の印象を大きく異ならせるほど類否判断に影響を及ぼすものとはならず,その他の相違点を合わせて相乗的な効果を考慮するとしても,両意匠部分に及ぼす影響は未だ小さいと言わざるを得ない。
(4)小括
そうすると,両意匠は,意匠に係る物品並びに両意匠部分の用途及び機能が一致し,両意匠部分の意匠全体における位置は概ね共通し,大きさ及び範囲については共通しており,また両意匠部分の形態においては,相違点が未だ両意匠部分の類否判断において別個の意匠であることを決定付けるまでには至らないものであるのに対して,共通点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点のそれを凌駕しており,両意匠部分は,全体として観察する場合視覚的印象を同じくするものであるから,それらを総合して判断すると,本願意匠は本意匠に類似するものと認められる。

第4 むすび
以上のとおりであって,本願はその本意匠に係る出願と同日に同人が出願したものであり,本意匠の意匠権について専用実施権が設定されておらず,かつ本願意匠は,願書に記載した本意匠である意願2012-019315(意匠登録第1486343号)の意匠と類似するものであるから,意匠法第10条第1項に規定する意匠に該当するものと認められるので,原査定の拒絶の理由によって,拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2015-04-13 
出願番号 意願2012-19316(D2012-19316) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 佑二宗 裕一郎 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 中田 博康
橘 崇生
登録日 2015-05-29 
登録番号 意匠登録第1527830号(D1527830) 
代理人 五味 飛鳥 

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