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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D4 |
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管理番号 | 1340184 |
審判番号 | 不服2017-18917 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-12-20 |
確定日 | 2018-03-30 |
意匠に係る物品 | エアーコンディショナー |
事件の表示 | 意願2016- 21695「エアーコンディショナー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成28年(2016年)10月5日の意匠登録出願であって,本願の願書の記載によれば本願意匠の意匠に係る物品は「エアーコンディショナー」であり,本願意匠の形態は願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,下記の意匠である。 大韓民国意匠商標公報 2015年 3月 5日15-09号 エアーコンディショナー(登録番号30-0786578-0001) の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH27408944号。別紙第2 参照。) 第3 本願意匠と引用意匠の対比 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「エアーコンディショナー」であって,鍔状に張り出されたパネル面上に吸い込みグリルと吹き出しルーバーが設けられ,4つの吹き出しルーバーが四方に配されていることから,本願意匠は,エアーコンディショナーの物品分野における通常の知識に照らせば,室内の天井面に埋め込まれるものと推認される。一方,引用意匠の意匠に係る物品も「エアーコンディショナー」であって,鍔状に張り出されたパネル面上に吸い込みグリルと吹き出しルーバーが設けられ,4つの吹き出しルーバーが四方に配されていることから,本願意匠と同様に,引用意匠は室内の天井面に埋め込まれるものと推認される。したがって,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の用途及び機能は共通しており,両意匠の意匠に係る物品は同一であると認められる。 2 両意匠の形態 両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 (1)共通点 両意匠には,以下の共通点が認められる。 (A)全体が,略正方形板状の前面パネルの後面に,背面視隅切り正方形状の略直方体状である本体を設けて一体としたものであり,前面パネルは本体よりも一回り大きくフランジ状に形成され,本体は前後がやや扁平なものであって,前面パネルの正面中央には,吸い込みグリルを配した略正方形状のグリルパネル部が形成され,その周囲四方に,細幅長方形板状の吹き出しルーバーが配されて,前面パネルの正面四隅には,同形同大のコーナーパネルが形成されている。 (B)グリルパネル部について (B-1)グリルパネル部の構成 グリルパネル部は,1辺の長さが前面パネル全幅の約10/13であり,隅部がコーナーパネルに囲われるように,コーナーパネルに近接して配されている。 (B-2)吸い込みグリル 吸い込みグリルは,グリルパネル部の中央に,周囲に余地部を残して配されており,縦桟と横桟から構成されている。縦桟は横桟を約3分割するように2本並んでおり,横桟は多数密に並んでいる。 (C)コーナーパネルの構成態様について (C-1)コーナーパネルの態様 コーナーパネルは,正面から見て中央寄りの隅が切り欠かれた略鈎型形状である。 (C-2)コーナーパネルの構成 コーナーパネルは,最大縦幅と最大横幅が同じであって,その長さは,前面パネル全幅の約1/5である。 (D)吹き出しルーバーの態様について 吹き出しルーバーは,グリルパネル部の四方に近接して,吹き出し口を覆うように設けられており,軸支によって回動する。 (E)前面パネルの外周各面の構成について 平面,底面及び側面から見て,前面パネルにはコーナーパネルの境界線が表されており,各面のコーナーパネル:中間部:コーナーパネルの長さの比は,約1:2.7:1である。 (2)差異点 一方,両意匠には,以下の差異点が認められる。 (a)吹き出しルーバーとその周囲の構成態様について 引用意匠では,吹き出しルーバーの外側に接した,正面視細幅長方形状のパネル(以下「吹き出し口外側パネル」という。)がコーナーパネルの間に嵌合されるように設けられており,その長辺の幅は吹き出しルーバーの長辺方向の幅と同じであり,短辺の幅は吹き出しルーバーの短辺方向の幅よりも小さい。これに対して,本願意匠では,そのような吹き出し口外側パネルは無く,吹き出しルーバーのみが表されており,短辺方向の幅がコーナーパネルの端部の幅と同じである。 (b)前面パネルの態様について 引用意匠の前面パネルの外周面はやや厚みがあり,平面,底面及び側面から見て,コーナーパネルと吹き出し口外側パネルの厚みは同じであるが,本願意匠では,コーナーパネルの厚みは引用意匠に比べて小さく,コーナーパネルの間の吹き出しルーバーの厚みは,そのコーナーパネルの厚みよりも更に小さい。 (c)グリルパネル部とその周囲の構成態様について (c-1)グリルパネル部の端部形状 引用意匠のグリルパネル部は,前方に僅かに突出して,平面,底面及び側面から見た突出部がごく僅かに傾斜して表されているが,本願意匠では,そのような突出はない。 (c-2)グリルパネル部とその周囲との境界 本願意匠では,グリルパネル部と,周囲の吹き出しルーバーやコーナーパネルとの間(及び吹き出しルーバーとコーナーパネルとの間)にごく僅かな隙間が形成されて,境界が正面視2重線状に表されているが,引用意匠では,そのような隙間は形成されておらず,境界は正面視単線で表されている。 (c-3)グリルパネル部角部の態様 引用意匠のグリルパネル部の4つの角部は小さな弧状に形成され,前面パネルの角部も同様に小さな弧状に形成されているのに対して,本願意匠では,グリルパネル部と前面パネルの角部は略直角状である。 第4 類否判断 1 意匠に係る物品 前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は同一である。 2 エアーコンディショナーの物品分野の意匠の類否判断 室内の天井面に埋め込まれるエアーコンディショナーの通常の使用状態において,需要者がエアーコンディショナーを観察するに当たっては,そのエアーコンディショナーを主として正面方向又は正面斜め方向から眺めることとなり,正面の構成態様,特に,前面パネルの構成態様や,グリルパネル部,コーナーパネル及び吹き出し口などの構成態様について注意を払うことになる。したがって,エアーコンディショナーの物品分野の意匠の類否判断においては,上記の項目を特に評価し,かつそれ以外の項目も併せて,各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。 3 形態の共通点の評価 両意匠の共通点(A)で指摘した構成態様,具体的には,略正方形板状の前面パネルの後面に略直方体状である本体を設けて一体とさせ,前面パネルを本体よりも一回り大きくフランジ状に形成して,前面パネルの正面中央に,吸い込みグリルを配した略正方形状のグリルパネル部を形成し,その周囲四方に,細幅長方形板状の吹き出しルーバーを配して,前面パネルの正面四隅に同形同大のコーナーパネルを形成した構成態様については,室内の天井面に埋め込まれるエアーコンディショナーの物品分野の意匠において,本願の出願前に普通に見受けられることから,需要者の注意を惹くものとはいえない。したがって,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 また,共通点(B)については,グリルパネル部の中央に,周囲に余地部を残して,縦桟と横桟から構成された吸い込みグリルを配して,縦桟を2本,横桟を多数にした構成態様が,エアーコンディショナーの物品分野において本願の出願前に普通に見受けられる(例えば,意匠登録第1275992号の意匠。別紙第3参照。)ことを踏まえると,共通点(B)に対して需要者は殊更注意を惹くということはできず,グリルパネル部の1辺の長さが前面パネル全幅の約10/13とした構成態様も需要者の注意を惹くほどの特徴ではないから,共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 そして,共通点(C)ないし(E)についても,コーナーパネルを中央寄りの隅が切り欠かれた略鈎型形状とすること,及び回動する吹き出しルーバーをグリルパネル部の四方に近接して設けることが,エアーコンディショナーの物品分野の意匠においては本願の出願前に普通に見受けられ,コーナーパネルの最大幅が前面パネル全幅の約1/5である点や,平面,底面及び側面から見て,前面パネルにはコーナーパネルの境界線が表されており,前面パネルの外周各面のコーナーパネル:中間部:コーナーパネルの長さの比が約1:2.7:1である点も,需要者に確たる美感を与えるほどの特徴とはいえないので,共通点(C)ないし(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 このように,共通点(A)ないし(E)は,いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいというほかない。 4 形態の差異点の評価 一方,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,上記共通点の影響を圧して,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 まず,差異点(a)については,吹き出し口外側パネルの有無に関わる差異であって,需要者が一見して気が付く差異であるというべきであり,本願意匠では吹き出し口外側パネルが無く,コーナーパネルの端部と同じ幅を持つ吹き出しルーバーの意匠全体に占める面積が引用意匠に比して大きく,吹き出しルーバーが吹き出し時に回動することによって,吹き出しルーバーの大きさが更に目立つこととなることは明らかであるから,需要者は吹き出し口外側パネルの有無に関わる差異,及び吹き出しルーバーの大きさの差異に特に注目することとなる。したがって,差異点(a)は両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといえる。 また,差異点(b)については,前面パネルの外周面をやや厚みがあるものとして,平面,底面及び側面から見たコーナーパネルと吹き出し口外側パネルの厚みを同じにした引用意匠の前面パネルの態様は,前面パネル全体があたかも大きな平板であるかのような印象を需要者に与えるものであるのに対して,コーナーパネルの厚みを小さくし,コーナーパネルの間の吹き出しルーバーの厚みをそのコーナーパネルの厚みよりも更に小さくした本願意匠の前面パネルの態様は,天井に設置された際に天井面からの突出を目立たなくさせる印象を需要者に与えるから,両者の前面パネルの態様の差異は需要者に与える視覚的印象を異にするというべきであり,差異点(b)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 他方,差異点(c)で指摘した,グリルパネル部の僅かな突出の有無,グリルパネル部周囲の境界の態様,及びグリルパネル部角部の態様に係る差異は,いずれも局所的な部位における目立たない差異であって,需要者はそれほど注目することはないので,差異点(c)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 そうすると,(a)及び(b)の差異点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,差異点(c)の影響が小さいものであるとしても,両意匠の差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,両意匠の共通点を凌ぐものであるということができる。 5 小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は同一であるが,両意匠の形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて小さく,これに対して,両意匠の形態の差異点を総合すると,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,共通点が需要者に与える美感を覆して両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-03-14 |
出願番号 | 意願2016-21695(D2016-21695) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 翔子、松下 香苗 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 渡邉 久美 |
登録日 | 2018-05-11 |
登録番号 | 意匠登録第1605475号(D1605475) |
代理人 | 櫻木 信義 |