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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 H1
管理番号 1340185 
審判番号 不服2018-5
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-04 
確定日 2018-03-30 
意匠に係る物品 パワー半導体モジュール 
事件の表示 意願2017- 34「パワー半導体モジュール」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成29年(2017年)1月5日の意匠登録出願であって,本願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「パワー半導体モジュール」であり,本願意匠の形態は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって,願書の【意匠の説明】には「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で,それ以外の部分を破線で表している。一点鎖線は,部分意匠として登録を受けようとする部分とそれ以外の部分との境界のみを表すものである。意匠登録を受けようとする部分を示す参考斜視図において薄墨を施した部分は意匠登録を受けようとする部分である。」と記載されている(別紙第1参照)。以下,本願意匠において実線で表された部分を「本願部分」という。

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠(平成29年(2017年)1月5日付けの出願番号特定通知書により意願2017-31と通知された意匠登録出願の意匠。)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとの理由であって,具体的には以下のとおりである。
「本願意匠と願書記載の本意匠(2017‐000031)とは,平面図における左右両端の態様に顕著な差異があり,類似するものとは認められません。」

第3 手続きの経緯
上記原審の拒絶の理由に対して,請求人は意見書を提出し,本願意匠が本意匠に類似し,その関連意匠として登録を受けることができるものである旨主張したが,同主張を採用することなく拒絶の査定がなされたため,同査定を不服として平成30年(2018年)1月4日に審判を請求し,原査定を取り消し本願意匠を登録すべきとの審決を求めるとともに,同日に手続補正により本願の本意匠の表示を削除した。

第4 当審の判断
以下,本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて検討する。

1 本意匠
本意匠に係る出願は,本願と同日の平成29年(2017年)1月5日に意匠登録出願がなされ,同年8月18日に意匠権の設定の登録がなされて,同年9月11日に意匠公報が発行されている。
本意匠の意匠に係る物品は同公報の記載によれば「パワー半導体モジュール」であり,本意匠の形態は同公報の【図面】に記載されたとおりであって,同公報の【意匠の説明】には「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で,それ以外の部分を破線で表している。一点鎖線は,部分意匠として登録を受けようとする部分とそれ以外の部分との境界のみを表すものである。意匠登録を受けようとする部分を示す参考斜視図において薄墨を施した部分は意匠登録を受けようとする部分である。」と記載されている(別紙第2参照)。以下,本意匠において実線で表された部分を「本意匠部分」という。

2 本願意匠と本意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「パワー半導体モジュール」であり,本意匠の意匠に係る物品も「パワー半導体モジュール」である。
(2)本願部分と本意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分の位置,大きさ及び範囲は,略扁平直方体状のパワー半導体モジュールの上面に載置された略薄板状の部分(以下「略薄板状部」という。)と,平面視左右に2つずつ設けられた4つの電力端子部から成り,略薄板状部に取り付けられたコネクタや半導体などは除かれている。そして,コネクタや電力端子部にケーブルを接続させるという用途を有しており,それぞれのケーブルが干渉しにくいという機能を有している。
本意匠部分の位置,大きさ及び範囲も,略扁平直方体状のパワー半導体モジュールの上面に載置された略薄板状部と,平面視左右に2つずつ設けられた4つの電力端子部から成り,略薄板状部に取り付けられたコネクタや半導体などは除かれているが,略薄板状部と電力端子部の間に略倒扁平台形状の接続部が設けられている。また,本願部分と同様に,コネクタや電力端子部にケーブルを接続させるという用途を有しており,それぞれのケーブルが干渉しにくいという機能を有している。
(3)本願部分と本意匠部分の形態
本願部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
ア 共通点
両部分の形態には,以下の共通点が認められる。
(A)略薄板状部
略薄板状部は平面視略横長長方形状であり,左右方向中央に,略横長直方体状のコネクタ台座部が形成され,上端寄り中央やや左と,下端寄り中央やや右に小突起状の保護回路用ピン端子が配されており,コネクタ台座部と保護回路用ピン端子を除く部分が平坦状に表されている。
(B)電力端子部
4つの電力端子部は全て同形同大であり,各電力端子部は平面視略横長長方形状であって外側の角部が切り欠かれており,外側端部寄りに略円形孔が形成されている。
イ 差異点
一方,両部分の形態には,以下の差異点が認められる。
(a)接続部の有無及び電力端子部の間隔についての差異点
本意匠部分では,平面視右側(又は左側)の2つの電力端子部が,略倒扁平台形状に延出した接続部を介して,電力端子部の縦幅の約2/3の間隔を空けて配されているのに対して,本願部分では,電力端子部が延出した接続部を介さずに,電力端子部の縦幅の約6/5の間隔を空けて配されている。
(b)略薄板状部についての差異点
(b-1)コネクタ台座部
本願部分では,コネクタ台座部が平面視上下方向上寄りに形成され,上下方向中央にほぼ横一列状に並んだ4つの半導体設置部(本意匠部分以外の部分)を囲うように本願部分が構成されている。これに対して,本意匠部分では,コネクタ台座部が上下方向中央に形成され,コネクタ台座部の右上及び左下に2つずつ配された半導体設置部(本意匠部分以外の部分)を囲うように本意匠部分が構成されている。
(b-2)縦横比及び切り欠きの有無
本願部分の略薄板状部は縦横比が約1:2であって,左端及び右端の中央に円弧状の切り欠きが形成されているが,本意匠部分では,縦横比は約5:8であって,そのような切り欠きは形成されていない。

3 類否判断
(1)意匠に係る物品
前記認定したとおり,本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。
(2)両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
前記認定したとおり,両部分の用途及び機能は共通し,位置,大きさ及び範囲についても,略扁平直方体上面に載置された略薄板状部と4つの電力端子部から成る点で共通する。しかし,略扁平直方体上面に載置された略薄板状部と4つの電力端子部から成るパワー半導体モジュールは,本願の出願前に普通に見受けられる(例えば,特許庁意匠課公知資料番号HJ24016862の意匠(参考意匠)。別紙第3参照。)ことから,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
他方,本意匠部分には略薄板状部と電力端子部の間に細幅面状の接続部が設けられているのに対して本願部分にはそのような接続部がなく,この差異は需要者の視覚的印象に変化を生じさせるというべきであり,後記(5)で詳述するとおり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
(3)パワー半導体モジュールの意匠の類否判断
パワー半導体モジュールは,略薄板状部に取り付けられたコネクタや略薄板状部左右の電力端子部にケーブルを接続させるという用途を有しているから,需要者は,略薄板状部上のコネクタ台座部の位置や,電力端子部の配置に注目するというべきであり,特に,パワー半導体モジュールの需要者には,電子機器に関する専門的知識を持つ者や,配線や組み立てを行う電子機器関連業者も含まれると考えられる。したがって,パワー半導体モジュールの意匠の類否判断においては,そのような需要者も念頭において,略薄板状部上のコネクタ台座部などの配置や,電力端子部の配置及び間隔などの具体的態様を含めて,これらの各項目を総合して全体として形態を評価する。
(4)両部分の形態の共通点の評価
共通点(A)及び共通点(B)で指摘した両部分の形態の共通点のうち,略薄板状部が平面視略横長長方形状である態様,及び4つの電力端子部が平面視略横長長方形状であって外側の角部が切り欠かれ,外側端部寄りに略円形孔が形成されている態様は,パワー半導体モジュールの物品分野の意匠において本願の出願前に普通に見受けられる(例えば参考意匠。別紙第3参照。)ことを踏まえると,パワー半導体モジュールの需要者はこれらの共通点に注意を払うとはいい難いので,これらの共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。また,上端寄り中央やや左と,下端寄り中央やや右に配された保護回路用ピン端子は,小突起状であって両部分全体に占める面積は小さく,需要者がその保護回路用ピン端子の形状に特に注目するとはいい難いので,保護回路用ピン端子に係る共通点も両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(5)両部分の形態の差異点の評価
これに対して,両部分の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(a)で指摘した,接続部の有無及び電力端子部の間隔についての差異は,需要者が一見して気付く差異であり,本願部分の電力端子部の間隔が電力端子部の縦幅よりも大きく,本意匠部分ではその間隔が電力端子部の縦幅よりも小さいから,略倒扁平台形状の接続部の有無の差異とあいまって,需要者が両部分を全体として観察する際に異なる視覚的印象を抱くこととなる。したがって,差異点(a)が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点(b-1)で指摘した,コネクタ台座部が平面視上下方向上寄りに形成されているか(本願部分),上下方向中央に形成されているか(本意匠部分)の差異については,コネクタ台座部が平坦状(フラット状)の略薄板状部の上に突出した略横長直方体であるから需要者の注意を惹くものであるから,この位置の差異が両部分を観察する看者が抱く視覚的印象に変化を加えているといえるので,差異点(b-1)が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方,本願部分の略薄板状部と本意匠部分の略薄板状部は共に横長であって,略薄板状部の縦横比が約1:2(=約4:8)である本願部分と約5:8である本意匠部分とを比べると,この縦横比の差異が需要者の美感を異にするほどであるとはいい難く,また,本願部分に見られる円弧状の切り欠きは,パワー半導体モジュールの物品分野の意匠において本願の出願前に普通に見受けられる(例えば参考意匠。別紙第3参照。)ことから,差異点(b-2)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
したがって,上記(a)及び(b)の差異点を総合すると,差異点(b-2)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいものの,(a)及び(b-1)の差異点が両部分の類否判断に及ぼす影響が大きいことから,形態の差異点は,総じて両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
(6)総合判断
以上のとおり,両部分の形態の共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいのに対して,両部分の形態の差異点を総合すると,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼし,形態の差異点が共通点を圧するということができる。
(7)小括
したがって,両意匠の意匠に係る物品は同一であり,両部分の用途及び機能も共通するが,接続部の有無の点で両部分の位置,大きさ及び範囲が相違し,両部分の形態についても,差異点は共通点を圧して両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすので,本願意匠は,本意匠に類似しないものと認められる。

4 本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて
本意匠は,本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから,意匠法第10条第1項に規定されている本意匠の要件を満たしている。
また,本願意匠と本意匠は,本願意匠の意匠登録出願の日が本意匠の意匠登録出願の日以後であって本意匠の意匠公報の発行の日前であるから,本願意匠の意匠登録出願の日は,意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。
しかし,上述のとおり,本願意匠は本意匠に類似するものとは認められないので,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定されている,本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たさない。
したがって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当しない。

そして,前記第3のとおり,本願は,審判請求日と同日に願書の本意匠の表示を削除する手続補正がなされているから,原審の拒絶の理由によっては拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当しないから,本意匠の関連意匠としては意匠登録を受けることができないものであって,願書の本意匠の表示を削除する手続補正がなされているから,原審の拒絶の理由によっては拒絶することができない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-03-14 
出願番号 意願2017-34(D2017-34) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (H1)
最終処分 成立 
前審関与審査官 北代 真一 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 渡邉 久美
小林 裕和
登録日 2018-05-11 
登録番号 意匠登録第1605558号(D1605558) 
代理人 恩田 誠 
代理人 恩田 博宣 
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