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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 K3
管理番号 1340186 
審判番号 不服2017-11813
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-08 
確定日 2018-04-03 
意匠に係る物品 植木鉢 
事件の表示 意願2016- 15299「植木鉢」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)7月16日の意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「植木鉢」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第2 当審の拒絶の理由及び引用意匠
当審の拒絶の理由は,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,以下のとおりである。
1.本願意匠について
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)7月16日の意匠登録出願であって,本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「植木鉢」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,図面記載中の「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたもの(別紙第1参照)である。

2.本願部分について
(1)部分意匠としての用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分の用途及び機能は,写真,絵,メモ用紙あるいは名刺などの薄手のシートを挟み込んで保持することができるホルダーであって,その背面側ほぼ全面に設けられたマグネットシート等の吸着手段により,スチールシートあるいはマグネットが埋め込まれた植木鉢の前面壁に着脱自在に取り付けることができるものである。
また,本願部分の部分意匠としての位置,大きさ及び範囲は,外形が略倒頭切四角錐状の箱体の植木鉢の平板な前面壁中央部分に取り付けられた,背面側の吸着手段の部分を除いた正面視略横長長方形状のホルダーの部分である。

(2)形態
本願部分の形態は,透明な略縦長長方形状の板体を側面視幅の狭い略U字状になるように折曲して二重の板体としたものであって,その正面視における縦横比を約1:1.5とする略横長長方形状に形成したものである。

3.当審における拒絶の理由
本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について,すなわち,当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討した結果,本願意匠は,以下のとおり,意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当するものである。
本願部分は,背面側にマグネットシート等の吸着手段を有するホルダーにおける,背面側の吸着手段の部分を除いた,薄手のシートを挟み込んで保持するホルダーの部分であるが,このような透明な略縦長長方形状の板体を側面視幅の狭い略U字状になるように折曲して二重の板体とした正面視略横長長方形状のホルダーの形態は,意匠1にあるように本願意匠出願前に公然知られたものであるから,独創的な着想による特徴的な態様であるということはできない。
また,本願意匠が属する植木鉢の分野において,植木鉢の前壁中央部分に薄手のシートを保持することができるホルダーを取り付けることは,意匠2及び意匠3にあるように本願意匠出願前に公然知られたものであって,独創的な着想によるものとはいえず,植木鉢にホルダーを取り付けることに特筆すべき創意は認められないものである。
そして,ホルダーを着脱自在とするために,ホルダーの背面側全面にマグネットシート等の吸着手段を有する部分を設けることも,意匠1にあるように既に見られるものであって独創的な着想によるものではないから,マグネットシート等の吸着手段によってホルダーを植木鉢に着脱自在とすることに特筆すべき創意は認められないものである。
そうすると,本願部分の形態は,本願意匠の出願前に公然知られたと認められる意匠1のホルダーの態様に僅かな変更を加えて創作したにすぎないものであるから,本願意匠は,当業者であれば,容易に創作をすることができたものと認められる。

意匠1(別紙第2参照)
インターネットアーカイブ Wayback Machine(情報のアドレス:http://archive.org/web/)で記録,提供されている情報によると,
2013年7月18日に,有限会社コモン戸田オフィスが運営しているウェブサイト「マグネットとマグネットシート製品の作成」で公開された,
表題「マグネットを使った名札プレート」(情報のアドレス:http://nameplate.common-d.net/A16-magnet.html)に掲載された6及び7の「マグネット付アクリル名札プレート」の意匠における背面側のマグネットを除いたプレートの部分

意匠2(別紙第3参照)
特許庁発行の公開実用新案公報記載
平成1年実用新案出願公開第077345号の「植木鉢」の意匠

意匠3(別紙第4参照)
特許庁発行の公開実用新案公報記載
平成6年実用新案出願公開第013444号の「カード・ホルダー付き植木鉢」の意匠

第3 請求人の主張
本願部分意匠の用途及び機能は,本拒絶理由通知に記載されているように,「写真,絵,メモ用紙あるいは名刺などの薄手のシートを挟み込んで保持することができるホルダーであって,その背面側ほぼ全面に設けられたマグネットシート等の吸着手段により,スチールシートあるいはマグネットが埋め込まれた植木鉢の前面壁に着脱自在に取り付けること」である。
特に本願意匠は,「スチールシートあるいはマグネットが埋め込まれた植木鉢」であることが特徴的な態様の一つになっている。
一方,別紙第2の意匠1には,背面にマグネットシートを有するホルダーが掲載されている。しかしながら,マグネットシートを有するホルダーは,一般的にその表面がマグネット吸着可能な金属で形成された被吸着体(例えば金属製のラック)に吸着させることを目的としたものである。現に別紙第2には,スチールシートあるいはマグネットが埋め込まれた被吸着体に当該ホルダーを取り付ける旨の記載はない。
また意匠2及び意匠3に開示されている植木鉢は,「スチールシートあるいはマグネットが埋め込まれた植木鉢」でないので,本願部分の用途及び機能とは異なる。
したがって,意匠1ないし3のすべてを考慮しても,せいぜい「マグネットシート等の吸着手段を有するホルダーを,その表面がマグネット吸着可能な金属で形成された植木鉢の前面壁に着脱自在に取り付ける」という態様に留まり,上述した本願の特徴的な態様に想到し得ない。本願意匠は金属を表面に露出させないので錆の発生を抑えることができる。
よって,本願意匠は,上述した独創的な着想による特徴的な態様を有しており,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものではないので,意匠法第3条第2項の規定に該当するものではなく,登録すべきものである。

第4 当審の判断
請求人の主張を踏まえ,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について,すなわち,当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて,以下検討し,判断する。
1.本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,スチールシート等が設けられた植木鉢の前面壁中央部分に,薄手のシートを保持可能なホルダーを,ホルダーの背面側に設けたマグネットシート等の吸着手段によって着脱自在に取り付けることができるホルダー付きの「植木鉢」である。

2.本願部分
請求人の主張によれば,本願部分は,植木鉢の前面壁中央部分に設けられた平板状のスチールシート等の部分(以下「部分1」という。),及び該部位の前面部分に着脱自在に取り付けられた,略横長長方形板状のホルダーの部分(以下「部分2」という。)からなるものである。
(1)部分意匠としての用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分の用途及び機能については,写真,絵,メモ用紙あるいは名刺などの薄手のシートを,ホルダーによって保持し,植木鉢の前面壁中央部分に着脱自在に取り付けることができるものである。
また,部分意匠としての位置,大きさ及び範囲は,部分1については,植木鉢の前面壁中央部分に位置し,ホルダー裏面のマグネットシート等に隠れる大きさ及び範囲の平板状のスチールシート等の部分であり,部分2については植木鉢の前面壁中央部分に取り付けられた,植木鉢の前面壁の左右幅に収まる大きさの裏面のマグネットシート等を除いた略横長長方形状のホルダーの部分である。
なお,部分1及び部分2は,磁力により着脱可能な一対の部分であって,機能的一体性が認められるものである。

(2)形態
本願部分の形態は,部分1については,平板状のものであり,部分2については,透明な略長方形状の板体を折曲して二重にし,その間に設けた隙間部分に薄手のシートを挟み込むことができるように形成したものであって,その正面視における縦横比を約1:1.5としたものである。

3.当審の拒絶の理由における引用意匠
(1)意匠1
意匠1は,「マグネット付きアクリル名札プレート」に係る物品であり,その形態は,透明な略長方形状の板体を折曲して二重にし,その間に設けた隙間部分に薄手のシートを挟み込むことができるように形成した,背面側に設けられたマグネットを除いたプレートの部分である。

(2)意匠2
意匠2は,「植木鉢」に係る物品であり,その形態は,前後に仕切られた前方側が後方側より一段下がった態様の2つの植設用室からなる植木鉢の前面壁部分のほぼ一杯に,正面視略横長長方形状で側面視略コの字状のフレームと,そのフレームの前面開口部分に透明又は半透明の窓部を設けたホルダーを配設したものであって,ホルダーの両端部に形成された開口部から横長長方形状のプレートを着脱自在に挿入できるものである。

(3)意匠3
意匠3は,「カード・ホルダー付き植木鉢」に係る物品であり,その形態は,上方に向かって拡径している略円筒形状の植木鉢前面壁に,正面視略長方形状のフレームを形成し,その前面部分にセルロイド板を嵌め込んだカード・ホルダーを,植木鉢と一体成形により取り付けたものであって,カード・ホルダー上面側に湾曲した略コの字状のスリットを設け,そのスリット部分からメッセージカードなどをホルダーに収納できるものである。

4.本願意匠の創作容易性の判断
本願意匠は,意匠に係る物品を「植木鉢」とするものであり,その前面壁中央部分に設けられたスチールシート等の部分1と,その前面部分にマグネットシート等の吸着手段によって着脱自在に取り付けられるホルダーの部分2が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であるところ,透明な略長方形状の板体を折曲して二重にし,その間に設けた隙間部分に薄手のシートを挟み込むことができるように形成したホルダーの形態は,意匠1で示したように公然知られた形態であるといえる。
しかしながら,植木鉢の形態において,スチールシートあるいはマグネットが貼付あるいはその前面壁に埋め込まれたものは,引用している意匠2及び意匠3に見当たらないものであり,本願意匠における該部位の形態は,この種物品分野において公然知られたものではなく,独自の着想によって創出したといえるものであるから,本願意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたとはいえないものである。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,当審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから,この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-03-22 
出願番号 意願2016-15299(D2016-15299) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (K3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石川 天乃富永 亘清野 貴雄 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 竹下 寛
江塚 尚弘
登録日 2018-05-11 
登録番号 意匠登録第1605906号(D1605906) 
代理人 星野 裕司 

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