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審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 B4 |
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管理番号 | 1340190 |
審判番号 | 不服2017-16014 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-10-30 |
確定日 | 2018-04-10 |
意匠に係る物品 | 財布 |
事件の表示 | 意願2016- 16735「財布」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,本意匠を意願2016-16721号(意匠登録第1575811号)(以下「本意匠」という。)とする平成28年(2016年)8月4日の関連意匠の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「財布」とし,その形態は,願書の記載及び願書添付の図面に記載されたとおりのもので,「紫で着色した部分以外の部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。つまり,一対の開閉部材部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由及び本意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものである。 その理由として,本願意匠と願書記載の本意匠である意願2016-16721の意匠(以下「本意匠」と記載)(別紙第2参照)は,いずれも意匠登録を受けようとする部分は一対の開閉部材部分であり,その開閉部材部分の外側両面に表された模様の態様が異なるため,両意匠は類似しないものと認められる,としたものである。 具体的には,本願意匠及び本意匠も,開閉部材部分の外側両面中央に縦線模様部(本願意匠では縦線模様であり本意匠では上部に孔の開いた縦線状の凹部)がある点は共通しているが,本願意匠では開閉部材横方向全体に横線模様が表されており,意匠全体から見た場合には,この横線模様が開閉部材の正面背面両側に表れる差異点が意匠の美感に与える影響は大きいことから,両意匠は類似しないものと認められる,というものである。 3.本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の対比 そこで,本願意匠が本意匠と類似するか否かについて,以下検討する。 (1)意匠に係る物品 両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本願意匠は,「財布」であり,本意匠は,「携帯用小物入れ」であるが,いずれも袋状の内部に仕切りなどを設け,開口部を開閉できる小型の小物入れであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (2)用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)は,いずれも,小物入れの開口部の開閉部材であるから,意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。 (3)形態 両部分の形態については,以下の共通点及び差異点が認められる。 (3-1)共通点 (A)部分全体を小物入れの開口部の開閉部材とし,正背面に扁平な横長長方形状の薄板状の板材(以下「板材」という。)を設け,それぞれの内側の横幅一杯に扁平な略凸字形状の薄板状のマグネット開閉部が取り付けられたもので,正背面の板材とマグネットをそれぞれ同形同大とした点, (B)正面視した板材の中央部に上面の前方寄りから縦長長方形状で白木調の別部材を埋め込んでいる点, (C)正面視した板材の縦横比を約1:11とした点, (D)正面視した板材の両肩部を隅丸状とした点, (E)板材の表面に木目模様が表れている点, において共通する。 (3-2)差異点 (ア)正面視した板材の態様について,本願部分は,板材の上下中央の水平方向に細帯状で明色の木材が左右側面の外側寄りから連続して設けられ,縦長長方形状の別部材と十文字状に交差しているのに対して,引用部分は,そのような細帯状の別部材がない点, (イ)縦長長方形状の別部材の態様について,本願部分は,孔がないのに対して,引用部分は,やや上方寄りに薄板状のマグネット開閉部まで貫通する小円形孔がある点, において差異が認められる。 4.類否判断 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は,共通している。 (2)両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通している。 (3)両部分の形態 以下,両部分の形態について検討する。 (3-1)共通点 まず,共通点(A)については,部分全体を小物入れの開口部の開閉部材とし,正背面に扁平な横長長方形状の薄板状の板材を設け,それぞれの内側の横幅一杯に扁平な略凸字形状の薄板状のマグネット開閉部が取り付けられ,正背面の板材とマグネットをそれぞれ同形同大とした態様は,両部分の基本的な構成を成すものであり,特に,板材の内側に横幅一杯に扁平な略凸字形状の薄板状のマグネット開閉部が取り付けられた構成は,需要者に共通の印象を起こさせるもので,両部分の類否判断に大きな影響を与えるものである。 次に,共通点(B)についても,正面視した板材の中央部に上面の前方寄りから縦長長方形状で白木調の別部材を埋め込んでいる態様は,この種の小物入れ等の分野において他には見られない両部分に特徴的な態様であって,需要者の目につく部分であり,共通の美感を強く起こさせるものといえる。よって,共通点(A)の部分全体の構成と相俟って,共通点(B)の態様も両部分の類否判断に大きな影響を与えるものである。 そして,共通点(C)の正面視した板材の縦横比が約1:11と共通する態様は,前記した共通点(B)と相まって,正面視した板材が共通する印象を与えるため,需要者に共通感を与えるもので,両部分の類否判断に影響を与えるものである。 また,共通点(D)についても,正面視した板材において,両肩部を隅丸状とした態様は,この種の小物入れ等の物品分野においては,開閉部材がどのような態様であるかは,使用に際して需要者が深く注意を払う点であり,また,正面視した板材の印象を他のものとは異ならせるものであるから,需要者に共通感を与えるものといえ,両部分の類否判断にある程度の影響を与えるものである。 さらに,共通点(E)についても,部分的な共通点ではあるが,板材の表面に木目模様が表れている態様が素朴な印象を与え,正面視した板材の印象を他のものとは異ならせるものであるから,需要者に共通感を与えるものといえ,両部分の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものである。 そうすると,前記共通点(A)ないし(E)に係る態様は,需要者に共通の美感を強く起こさせ,とりわけ,共通点(A)及び共通点(B)の部分全体の構成と縦長長方形状の別部材を設けたという板材の顕著な共通性に鑑みれば,それらが相乗して生じる視覚的な効果をも考慮すれば,両部分の類否判断を決定付けるものである。 (3-2)差異点 これに対し,差異点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱であって,両部分の共通する美感を変更するまでのものとはいえない。 すなわち,まず,差異点(ア)の水平方向の細帯状で明色の木材の有無について,当該部位を注視すれば,確かにその違いが認識できるものではあるが,細部に係る部分的な差異であり,それのみで両部分を別異のものとする程の大きな差異とはいえず,両部分の顕著な共通性と比較した場合,両部分の共通する態様の中に埋没してしまう程度の,細部における目立たない差異といえるものであるから,この差異点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 次に,差異点(イ)の縦長長方形状で白木調の別部材における小円形孔の有無について,この種の小物入れ等の物品分野において,小円形孔のあるものもないものも,他にも見受けられる態様といえるものであって,格別注意を惹くものとはいえず,その差異は,両部分の共通する態様の中に埋没してしまう程度の細部の差異といえるものであり,この差異点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 そうすると,差異点(ア)及び差異点(イ)は,いずれも両部分の類否判断に大きな影響を与えるものとはいえず,部分的,微細な差異に留まるものであって,それらが相乗して生じる視覚的な効果を考慮しても,両部分の類否判断を決定付けるものとはいえない。 (4)小括 以上のとおり,本願意匠と本意匠は,出願人及び出願日に関して意匠法第10条第1項の要件を満たし,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲が共通し,また,両部分の形態においても,前記差異点を総合しても,その視覚に訴える意匠的効果としては,前記共通点が生じさせる効果の方が差異点のそれを凌駕し,両部分の意匠全体として需要者に共通の美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似する。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定する意匠に該当し,本願意匠は,本意匠を意願2016-16721号(意匠登録第1575811号)とする関連意匠の意匠登録出願として認められ,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-03-27 |
出願番号 | 意願2016-16735(D2016-16735) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(B4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山永 滋、田村 佳孝 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
斉藤 孝恵 渡邉 久美 |
登録日 | 2018-05-11 |
登録番号 | 意匠登録第1606033号(D1606033) |
代理人 | 三好 秀和 |