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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) D6
管理番号 1340215 
判定請求番号 判定2017-600054
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 判定 
判定請求日 2017-12-20 
確定日 2018-05-10 
意匠に係る物品 ロッカー 
事件の表示 上記当事者間の登録第1498017号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠及びその説明書に示す「5人用ロッカー」の意匠は、登録第1498017号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1 判定請求人の請求の趣旨及び理由
本件判定請求人は、上記の趣旨の判定を求め、その理由を判定請求書の記載のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。

1.判定請求の理由
(1)判定請求の必要性
意匠登録第1498017号に係る本件登録意匠は、その実施に当たり本件登録意匠と同一のものではなく、扉に装着する引手兼用のシリンダ錠を含む錠設備にデザイン違いのものを装着した5人用ロッカー(以下、イ号意匠という)を実施することになった。しかしながら、現時点でイ号意匠は関連意匠の時期的出願要件を備えていないため、関連意匠の出願によって本件登録意匠との類否を審査結果に基づいて判断することができない。そこでイ号意匠が本件登録意匠に類似するか否かを判断するため本判定請求が必要となった。またイ号意匠の実施品に本件登録意匠の登録番号を付することができるか否かを見極めたいからでもある。
(2)本件登録意匠の手続の経緯
出願 平成25年6月26日
出願番号 意願2013一14425
登録 平成26年4月18日
登録第1498017号
(3)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は、甲第1号証の本件登録意匠公報に記載されたとおりのもので意匠に係る物品は「ロッカー」であるが、実質上はスポーツ施設などで不特定複数の人が使用時期を異にして共用できる5人用ロッカーである。このロッカーは、正面の縦横比が大略1:0.4の縦長長方形の筐体に、正面から見て略正方形に近い形で左右に並んだ上部の2つの収納区画とその下方に並んだ縦長の3つの収納区画を形成し、各収納区画に扉を設けて5人用ロッカーに形成されている。各収納区画の扉には、常時開錠方式であってカードキーとシリンダ錠キーの「2つのキー」による2重鍵方式で施開錠するようになった錠設備が、扉の引手を兼ねて設けられている。
使用に際しては、利用者はフロント等でカードキーを借り、開錠状態で扉が開いているその扉の裏面においてシリンダ錠の右側に配置されたカードキー挿入口(甲第1号証の意匠公報の「使用状態を示す参考図」参照)に、借りたカードキーを挿し込む。
カードキーが挿し込まれると、そのカードキーの下端辺がシリンダ錠のトリガー部を下方へ押下げ、当該シリンダ錠をシリンダ錠キーで施開錠できる状態にセットする。カードキーが挿し込まれないとシリンダ錠の施開錠動作は許容されない。
カードキーが挿し込まれてシリンダ錠が前記セット状態にあることは、各扉を正面から見たとき、各扉のシリンダ錠の右側に配置された大略長方形表示窓に、扉の裏面で差し込まれたカードキーが見えることにより、判別することができる。
なお、本件登録意匠公報において、「意匠に係る物品の説明」の欄に記載されている「カード錠」、及び同公報の図面において「使用状態を示す部分拡大参考図」の中に記載されている「カード錠」の語(又は部分)は、すべて「カードキー」が正しい記載であるから「カードキー」と読み替えられたい。
(4)イ号意匠の説明
甲第2号証の図面に示すイ号意匠は、本件登録意匠の筐体と略同じ筐体に、本件登録意匠と同様に夫々に扉を有する5つの収納区画を割り付けて形成された5人用ロッカーである。また、各扉に、カードキーとシリンダ錠キーの「2つのキー」で施開錠する2重鍵方式の引手を兼ねる錠設備が、本件登録意匠の設置位置と略同じ位置に設けられている点においても、本件登録意匠と共通している。
イ号意匠の説明書
イ号意匠は、スポーツ施設などで不特定複数の人が使用時期を異にして共用できる5人用ロッカーである。このロッカーは、正面の縦横比が大略1:0.4の縦長長方形の筐体に、正面から見て略正方形に近い形で左右に並んだ上部の2つの収納区画とこの2つの収納区画の下方で左右方向に並んだ縦長の3つの収納区画を形成し、前記5つの収納区画の夫々に扉を設けて5人用ロッカーに形成されたものである。
各収納区画の扉には、常時開錠方式であってカードキーとシリンダ錠キーの「2つのキー」による2重鍵方式で施開錠するようになった錠設備が、扉の引手を兼ねて設けられている。引手兼用の錠設備の位置は、上方の2つの収納区画の扉では、扉の上下方向に関して中間より少し下方の左側(扉のヒンジは右側)に配置され、下方の3つの収納区画の扉では、扉の高さの上方略1/5の左側に配置されている。
このロッカーの使用に際は、利用者がフロント等でカードキーを借り、開錠状態で扉が開いているその扉の裏面においてシリンダ錠の右側に配置されたカードキー挿人口(「使用状態を示す部分拡大参考図」参照)に、借りたカードキーを挿し込む。
カードキーが押し込まれると、そのカードキーの下端辺がシリンダ錠のトリガー部を下方へ押下げ、当該シリンダ錠をシリンダ錠キーで施錠できる状態にセットする。カードキーが挿し込まれないとシリンダ錠の施開錠動作は許容されない。
カードキーが挿し込まれてシリンダ錠が前記セット状態にあることは、各扉を正面から見たとき、各扉のシリンダ錠の右側に配置された大略長方形表示窓に、扉の裏面で差し込まれたカードキーが見えることにより、判別することができる。
(5)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
本件登録意匠とイ号意匠は、5人用ロッカーとして、斜視図、正面図、背面図、右側面図、平面図、底面図の全ての面において、扉に設けた引手を兼ねたシリンダ錠を含む錠設備の大きさ(形状)を除き、略同一といえるレベルで共通している。
唯一の相違点である引手を兼ねる錠設備は、本件登録意匠が横長の略四角形の外形であるのに対し、イ号意匠の引手兼用の錠設備が略正方形に近い外形である点で大きさ(形状)が僅かに異なり、またカードキーが挿し込まれていることを見るための窓の大きさ(形状)も前記外形の違いに起因して異なっているが、これらの相違点があっても、両意匠では、引手兼用の錠設備の外形が略四角形である点で共通し、且つ左半にシリンダ錠が配置され右半が錘状に窪んだ底にカードキーの覗き窓を備えている点で外観上の印象に大きな共通性を感じさせる。
(6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
イ号意匠と本件登録意匠は、5人用ロッカーとしてのロッカー本体の形態(筐体の縦横比、筐体の奥行き、収納区画の面割り)が、ほぼ同一のレベルで共通しており、唯一異なる引手兼用の錠設備も、全体の外形が略四角形である点て共通し、且つその左半にシリンダ錠を配置し右半にテーパ錘状に窪んだ底に裏面のカードを見るための窓を有する点て共通しているから、引手兼用の錠設備の形態においても、創作の共通性と外観上に共通の印象が醸し出されている。よってイ号意匠は、全体として観ると本件登録意匠に類似する意匠であると思料する。
(7)むすび
以上より、イ号意匠が本件登録意匠に類似する意匠であることは明白であるから、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する意匠であるとの、請求の趣旨通りの判定を求める。

2.証拠方法
甲第1号証 本件登録意匠の意匠公報(意匠登録第1498017号)
甲第2号証 イ号意匠の図面(六面図と参考図)
上記各号証により判定請求人の主張事実を立証する。

第2 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成25年(2013年)6月26日に意匠登録出願され(意願2013-14425号)、平成26年4月18日に登録(登録第1498017号)の設定がなされ、平成26年(2014年)5月26日に意匠公報が発行されたものであって、願書及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「ロッカー」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである(判定請求人が提出した甲第1号証(別紙第1)参照)。
すなわちその形態は、
基本的構成態様は
A 全体は、略縦長直方体であって、正面視で、大きく分けて、上段部、下段部及び底部から成り、上下各段は横方向に等分した複数の収納区画から成る施開錠可能なロッカーであって、各々に開閉扉が設けられており、
具体的構成態様は、
B-1 全体の縦幅、横幅及び奥行きの長さ比率は約7.5:3:2であり、
B-2 正面視で上段部は、上から全長の約10分の3の縦幅の長さであって、横幅方向に2等分して2つの縦長長方形状の収納区画とし、各収納区画は、縦幅と横幅の長さ比率が約3:2のものであり、下段部は、上段部下端から全長の約10分の7の縦幅の長さで、横幅方向に3等分して3つの縦に細長い長方形状の収納区画とし、各収納区画の縦幅及び横幅の長さ比率は約5:1で、全体で5つの収納区画から成り、底辺側には下段部の開閉扉の下辺部の下側に細幅の底部が全体の横幅いっぱいに配され、
B-3 各収納区画の開閉扉には、手掛け付き錠部が設けられ、上段部の開閉扉には、各々、正面視で縦幅の約2分の1の左端寄りの位置に、下段部の開閉扉には、各々、正面視で上から縦幅の約7分の1の左端寄りの位置に設けられている。
B-4 手掛け付き錠部は、正面視で、略横長長方形状であって、上段部の開閉扉に比して縦幅で約7.5分の1の長さで、横幅で約3分の1の長さのものであって、左側に縦幅と横幅の長さ比率が約2:1のシリンダ錠の鍵設置領域を設け、右側の横幅の約3分の2を、上下が内側に僅かに傾斜して成る陥凹した手掛け部とし、手掛け部の底に当たる略鉛直方向の平坦面がカードキーの略横長矩形状の正面側表示窓となっている。
B-5 各収納区画の扉を開いた状態で、内部には、下方に棚板部が設けられ、各々の開閉扉裏面には、手掛け付き錠部の裏に当たる位置に、開扉状態で左側寄りの上部を略隅丸四角状に切り欠いた挿入口を備えた、錠部より一回り大きい略横長長方形状の(シリンダ錠に連動する)カードキーの収納部が設けられている。

2.イ号意匠
本件判定請求の対象であるイ号意匠は、判定請求書と同時に提出された「イ号意匠を示す図面」及び「イ号意匠」(各部名称を示す斜視図)により示されたものであって、意匠に係る物品は「5人用ロッカー」であると認められ、その形態を、イ号意匠を示す図面及びイ号意匠に表されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。
すなわちその形態は、
基本的構成態様は、
a 全体は、略縦長直方体であって、正面視で、大きく分けて、上段部、下段部及び底部から成り、上下各段は横方向に等分した複数の収納区画から成る施開錠可能なロッカーであって、各々に開閉扉が設けられており、
具体的構成態様は、
b-1 全体の縦幅、横幅及び奥行きの長さ比率は約7.5:3:2であり、
b-2 正面視で上段部は、上から全長の約10分の3の縦幅の長さであって、横幅方向に2等分して2つの縦長長方形状の収納区画とし、各収納区画は、縦幅と横幅の長さ比率が約3:2のものであり、下段部は、上段部下端から全長の約10分の7の縦幅の長さで、横幅方向に3等分して3つの縦に細長い長方形状の収納区画とし、各収納区画の縦幅及び横幅の長さ比率は約5:1で、全体で5つの収納区画から成り、底辺側には下段部の開閉扉の下辺部の下側に細幅の底部が全体の横幅いっぱいに配され、
b-3 各収納区画の開閉扉には、手掛け付き錠部が設けられ、上段部の開閉扉には、各々、正面視で縦幅の約3分の2の左端寄りの位置に、下段部の開閉扉には、各々、正面視で上から縦幅の約6分の1の左端寄りの位置に設けられている。
b-4 手掛け付き錠部は、正面視で略正方形状であって上段部の開閉扉に比して縦幅で約8分の1の長さで、横幅で約5分の1の長さのものであって、左側に縦幅と横幅の長さ比率が約2:1の縦長長方形状のシリンダ錠の鍵設置領域を設け、右側の横幅の約5分の3を、上方がやや大きく、下方が僅かに内側に傾斜して成る陥凹した手掛け部とし、手掛け部の底に当たる略鉛直方向の平坦面がカードキーの略縦長矩形状の正面側表示窓となっている。
b-5 各収納区画の扉を開いた状態で、内部には、下方に棚板部が設けられ、各々の開閉扉裏面には、手掛け付き錠部の裏に当たる位置に、開扉状態で左側寄りの上部を略隅丸四角状に切り欠いた挿入口を備えた、錠部より一回り大きい略横長長方形状の(シリンダ錠に連動する)カードキーの収納部が設けられている。

3.本件登録意匠とイ号意の対比
(1)意匠に係る物品
本件登録意匠は「ロッカー」であり、イ号意匠も「5人用ロッカー」であって、実質的に本件登録意匠とイ号意匠(以下、両意匠という。)の意匠に係る物品は、人が荷物や衣服などを一時的に収納しておく機能、用途について共通するので、両意匠の意匠に係る物品は共通する。
(2)両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると、主として以下の共通点及び相違点が認められる。
(2-1)共通点
基本的構成態様として
(あ)全体は、略縦長直方体であって、正面視で、大きく分けて、上段部,下段部及び底部から成り、上下各段は横方向に等分した複数の収納区画から成る施開錠可能なロッカーであって、各々に開閉扉が設けられている点。
具体的構成態様は、
(い)全体の縦幅、横幅及び奥行きの長さ比率は約7.5:3:2である点。
(う)正面視で上段部は、上から全長の約10分の3の縦幅の長さであって、横幅方向に2等分して2つの縦長長方形状の収納区画とし、各収納区画は、縦幅と横幅の長さ比率が約3:2のものであり、下段部は、上段部下端から全長の約10分の7の縦幅の長さで、横幅方向に3等分して3つの縦に細長い長方形状の収納区画とし、各収納区画の縦幅及び横幅の長さ比率は約5:1で、全体で5つの収納区画から成り、底辺側には下段部の開閉扉の下辺部の下側に細幅の底部が全体の横幅いっぱいに配されている点。
(え)各収納区画の開閉扉には、四角状の手掛け付き錠部が設けられ、上段部の開閉扉には、各々正面視左端寄りに設けられ、下段部の開閉扉では、各々正面視左端寄りで上寄りの位置に設けられている点。
(お)手掛け付き錠部は、左側に縦幅と横幅の長さ比率が約2:1のシリンダ錠の鍵設置領域を設け、右側は上下が内側に傾斜して成る陥凹した手掛け部とし、手掛け部の底部に当たる略鉛直方向の平坦面がカードキーの表示窓となっている点。
(か)各収納区画部内の扉を開いた状態で、内部には、下方に棚板部が設けられ、各々の開閉扉裏面には、手掛け付き錠部の裏に当たる位置に、開扉状態で左側寄りの上部を略隅丸四角状に切り欠いた挿入口を備えた、錠部より大きい略横長長方形状の(シリンダ錠に連動する)カードキーの収納部が設けられている点。
について共通する。
(2-2)相違点
具体的構成態様として
(ア)手掛け付き錠部の具体的位置について、本件登録意匠は手掛け付き錠部が上段部の開閉扉の各々約2分の1の位置に設けられ、下段部の開閉扉では、各々上から約7分の1の位置に設けられているのに対し、イ号意匠は上段部の開閉扉の上から約3分の2の位置に設けられ、下段部の開閉扉では、上から約6分の1の位置に設けられている点。
(イ)手掛け付き錠部の具体的形状及び大きさについて、本件登録意匠は、正面視で、略横長長方形状であって、上段部の開閉扉に比して縦幅で約7.5分の1の長さ、横幅で約3分の1の長さのものであって、右側の横幅の約3分の2を、上下が内側に僅かに傾斜して成る陥凹した手掛け部とし、カードキーの正面側表示窓が略横長矩形状であるのに対し、イ号意匠は、正面視で略正方形状であって、上段部の収納区画の扉に比して縦幅で約8分の1の長さ、横幅で約5分の1の長さのものであって、右側の横幅の約5分の3を、上方がやや大きく、下方が僅かに内側に傾斜して成る陥凹した手掛け部とし、手掛け部の底に当たる略鉛直方向の平坦面がカードキーの略縦長矩形状の正面側表示窓となっている点。
について相違する。

4.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し、本件登録意匠の出願前に存在する公知意匠を参酌し、需要者の注意を引きやすい部分を考慮した上で、本件登録意匠とイ号意匠が類似するか否かについて、考察する。
まず、基本的構成態様に係る共通点(あ)は、上下段で複数の収納区画から成るロッカーとして両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点であるから、この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
次に、具体的構成態様の共通点(い)については、全体の縦幅、横幅及び奥行きの長さ比率は約7.5:3:2である点は、全体の具体的構成比率に関わるところ、「ロッカー」の物品分野において例示するまでもなく、ほぼ同様の構成比率のものは、よく見受けられるものであって、この点が類否判断に与える影響は一定程度のものである。また、共通点(う)は、収納区画の具体的な配置及び構成比率についてであって、「ロッカー」の物品分野において、上下段で5つの収納区画から成るものは本願出願前に見受けられ、(例:意匠登録第1092195号、意匠登録第1198462号)両意匠のみに共通する特徴とまではいえないが、具体的な分割態様及び各収納区画の構成比率はほぼ同じであるから、両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものである。そして、共通点(え)は手掛け付き錠部の位置についてであって、手掛け付き錠部は各開閉扉の左端寄りに設けられており、後述する上下方向の位置の相違はあるものの、この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度あるものである。さらに、共通点(お)については、手掛け付き錠部の左側に縦幅と横幅の長さ比率が約2:1のシリンダ錠の鍵設置領域が、右側には手掛け部が設けられ、その手掛け部は、上下が内側に傾斜して成る陥凹部であって、底部に当たる平坦面がカードキーの表示窓となっている点は、両意匠に共通する特徴的な態様であって、使用時には、扉の開け閉め及び施錠開錠を行う箇所であるから、看者の注意を惹くところでもあって、この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。最後に、共通点(か)は、各収納区画部内部の態様及び開閉扉裏面の態様についてであるが、各収納区画部内の扉を開いた状態で、内部に、下方の棚板部が設けられたものは「ロッカー」の物品分野において、ごく普通に見受けられるものである(例:意匠登録第1092195号)が、開閉扉裏面の手掛け付き錠部の裏に当たる位置に、錠部より大きい略横長長方形状のシリンダ錠に連動するカードキーの収納部が設けられている点については、カードキーの差し抜きを行う箇所であり、開閉扉の表面側と連動する裏面側の手掛け付き錠部の形態というべきものでもあって、両意匠の類否判断に与える影響は大きいといえる。
とすると、この種物品においては、これらの共通点は、共通点(あ)が両意匠の類否判断に与える影響が小さいとしても、共通点(い)、ないし共通点(え)は両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものであって、共通点(お)及び共通点(か)は両意匠の類否判断に与える影響は大きく、これらの共通点は、あいまって、見る者に与える共通の印象を一層強くするものである。
これに対し、相違点(ア)は、各収納区画の開閉扉上の手掛け付き錠部の具体的位置の相違であるが、上段部の開閉扉の、本件登録意匠は縦幅の約2分の1の位置に設けられているのに対し、イ号意匠では上から約3分の2の位置であるとしても、ほぼ半ばか,半ばよりやや下方の位置程度、つまり、上から6分の3(2分の1)か6分の4(3分の2)程度の上下方向の多少の位置の相違に留まり、下段部の開閉扉は、共に上下方向の上寄りの位置に設けられた中での、上から約7分の1か約6分の1のかの、注視してそれと分かる程度の上下方向の位置の相違であるから、これらの位置の相違が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。次に相違点(イ)は手掛け付き錠部の具体的形状及び大きさの相違であって、本件登録意匠とイ号意匠は、正面視で、略横長長方形状か略正方形状かの点で相違するが、手掛け付き錠部の縦幅は、上段部の開閉扉に比して、約7.5分の1と約8分の1で、両意匠は,ほぼ近値の縦幅であるから、概ね、この相違は、手掛け付き錠部の横幅長さの相違ということができ、さらに、両意匠は、その手掛け付き錠部の左側のシリンダ錠の鍵設置領域が共に縦幅と横幅の長さ比率が約2:1のものであるから、つまるところ、手掛け付き錠部の右側の手掛け部の横方向の長短(占める割合)の相違といい得る。そして、共に略四角状で、左側にシリンダ錠の鍵設置領域を設け、右側に上下が内側に傾斜して成る陥凹した手掛け部であって、その底に当たる平坦面にカードキーの正面側表示窓を設けた態様が共通する中では、この相違点は手掛け付き錠部の部分的な構成比率の相違に留まり、また、手掛け部の陥凹部の上方が傾斜態様の相違は、陥凹部内側の見え難い箇所の部分的な相違でもあり、この相違点が両意匠の類否判断に与える影響一定程度に留まる。
そして、これら相違点は、相違点(イ)については両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものであるとしても、相違点(ア)については類否判断に及ぼす影響は小さく、あいまっても両意匠の類否判断を左右するほどの影響を及ぼすには至らないものである。

5.両意匠の類否判断
上記のとおり、両意匠は、意匠に係る物品については共通し、形態については相違点が両意匠の類否判断を左右するほどの影響を及ぼすには至らないものであるのに対して、共通点はあいまって、見る者に与える共通の印象を一層強くするものであって、相違点の印象は、共通点の印象を覆すには至らないものであるから、意匠全体として見た場合に、両意匠は類似する。

第3 むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。

よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2018-05-02 
出願番号 意願2013-14425(D2013-14425) 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (D6)
最終処分 成立 
前審関与審査官 松下 香苗 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 正田 毅
渡邉 久美
登録日 2014-04-18 
登録番号 意匠登録第1498017号(D1498017) 
代理人 樋口 盛之助 
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