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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J6 |
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管理番号 | 1341138 |
審判番号 | 不服2017-17483 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-27 |
確定日 | 2018-05-31 |
意匠に係る物品 | 拳銃 |
事件の表示 | 意願2016- 23730「拳銃」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成28年10月31日 意匠登録出願 平成29年 5月10日付け 拒絶理由通知書 平成29年 7月25日 意見書提出 平成29年 8月25日付け 拒絶査定 平成29年11月27日 審判請求書提出 第2 本願意匠 本願は、2016年5月5日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願(意願2016-23730号)であって、その意匠は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「拳銃」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものであって、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。破線で表した部分は、その他の部分である。本物品の表面に表された点は、質感が異なっていることを表す点である。」「ただし、本体部分における点の濃淡の連続的な変化は、立体形状を表すものであり、意匠の模様を構成するものではない。」としたものである。(以下、本願の意匠を「本願意匠」という(別紙第1参照)。また本願の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を以下、「本願部分」という。) 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」という。)は、 「独立行政法人工業所有権情報・研修館が2015年 6月17日に受け入れた Peterson Publishing Company(アメリカ合衆国)発行の外国雑誌「GUNS & AMMO」 7号 59巻 第44頁最上段所載(製品名:Smith & Wesson M&P9 Shield) 拳銃の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HB27002350号) なお、主な類否判断の対象となるのは、引例の意匠の、本願意匠が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に対応する部分です。」(当審注:以下、本願の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分を「引用部分」という(別紙第2参照)。また、本願部分と引用部分を合わせて「両部分」という。) である。 第4 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「拳銃」であり、引用意匠の意匠に係る物品も「拳銃」であるから、本意匠と引用意匠(以下、「両意匠」という。)の意匠に係る物品は一致する。 (2)両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 本願部分は、「拳銃」のスライド部、引き金部、各種レバー部(分解用レバー部、スライドストップ部、マガジンキャッチ部など)及び正面視下端のマガジンカバー部を除く拳銃のフレーム部分であり、引用部分も同様であるから、どちらも、拳銃のフレーム部として、スライド部や引き金などを支持し、(グリップ部で)弾倉を収納し、拳銃を確実に把持するための用途及び機能を有するものである。 したがって、両部分の物品全体の中での用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は共通する。 (3)両部分の形態 両部分の形態を対比すると、主として、以下の共通点と相違点が認められる。 引用意匠の向きは本願意匠の向きに合わせて認定する。 (ア)共通点 基本的構成態様 (A)両部分は、正面視で横長棒状の銃身の下方フレーム部(以下、「下方フレーム部」という。)、隅丸鉤状のトリガーガード部及び下方フレーム部後寄りから斜め後方に突き出して設けられ、略縦長長方板状のグリップ部から成る点。 具体的構成態様 (B)正面視で横方向の各部長さ比率は全長と等しい下方フレーム部を9として、前側下方フレーム部、トリガーガード部、グリップ部、後側下方フレーム部が約2:3:3:1である点、 (C)正面視で縦方向の各部長さ比率は、下方フレーム部、トリガーガード部、グリップ部が約1:1.5:4.5である点、 (D)正面視でグリップ部の下端の左端(後端)に段部を形成し、その左側の縦幅ほぼいっぱいに、大きく右方(前方)に膨らんだ略半円状の目の粗いグリップ材部を設けて、右側には左方(後方)が円弧状に凹んだ略隅丸縦長長方形状の目の粗いグリップ材部をトリガーガード部の下側内周面より下方に設けている点、 (E)左側面視でグリップ部の横幅(厚み)は正面視でのグリップ部の横幅の約2分の1であって、下方フレーム部からグリップ部の上部にかけては、正背面側がごく緩やかにくびれており、左側面視で下方フレーム部はグリップ部とほぼ同幅で、下方フレーム部の後端部の上端は角張った凹凸状で、2本の凸状部を等間隔に設けており、右側の凸状部は低めの四角状で、左側の凸状部は先端が先細で右側のものより縦方向に長いものである点。 (イ)相違点 具体的構成態様 (a)正面視で本願部分は、下方フレーム部後側下面からグリップ部の後面上方にかけて、略半円状に刳れたような円弧状凹部の、円弧のほぼ中央の位置に略半円状の左側のグリップ材部の上方先端部が配され、右側のグリップ材部の上端右側は隅丸状でトリガーガード部の下方に配されているのに対し、引用部分は、円弧状凹部の円弧中央の位置よりも円弧の下端寄りに略半円状の左側のグリップ材部の上方先端部が配され、右側のグリップ材部の上端右側は、トリガーガード部のグリップ側付け根の外周部まで嘴状に延設されている点、 (b)正面視で本願部分は、左側のグリップ材部と右側のグリップ材部の間にごく細い余地部を挟んで、角部が丸みを帯びた右方に大きく湾曲した目の粗い略C字帯状のグリップ材を配しているのに対し、引用部分は中間部にグリップ材を何ら設けていない点、 (c)左側面図で、下方フレーム部後端の左側の凸状部について、本願部分は、その凸状部の先細部の左側に段部を設けてから上方に向けて斜状に形成されているのに対し、引用部分は段部を設けずに上方に向けて斜状に形成されており、左側面視で、グリップ部のグリップ材部は、正面側及び背面側から回り込んできたグリップ材部の間に中央に縦長細帯状の目の粗い中間グリップ材部を設け、その両脇に直線状のごく細い余地部を設けているのに対し、引用部分は正面側及び背面側のグリップ材部は一つながりに形成され、中間グリップ材部及び直線状の余地部は設けていない点、 (d)右側面図視で本願部分のトリガーガード部は横幅の約2分の1の幅で設けられ、グリップ部については、正面側及び背面側から回り込んできたグリップ材部の間に中央に縦長細帯状の目の粗い中間グリップ材部を設け、その両脇に直線状のごく細い余地部を設けているのに対し、引用部分は、右側面図視の態様については、正面及び左側面の図版で現されたものであるから不明である点、 (e)背面視で、本願部分は正面視で表された形状とほぼ対称の形状であるのに対し、引用部分は、背面視の態様について、正面及び左側面の図版で現されたものであるから不明である点、 (f)本願部分は全体に明暗調子を施していないものであるのに対し、引用意匠は全体に暗調子が施されている点。 2.本願意匠と引用意匠の類否 (1)意匠に係る物品の評価 上記、1.(1)のとおり、両意匠の意匠に係る物品は、一致する。 同様の意匠に係る物品であるものは、多数見受けられ、意匠に係る物品が共通することにより、両意匠の類否判断に与える影響は、小さいものである。 (2)両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲の評価 上記、1.(2)のとおり、「拳銃」の物品分野において、両部分と同様の、スライド部、引き金部、各種レバー部及び正面視下端のマガジンカバー部を除く拳銃のフレーム部分、として対比可能な、用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲を有する意匠は、本願出願前にごく普通に見受けられるので、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲の共通点が、両部分の類否判断に与える影響は、小さい。 (3)両部分の形態の評価 (3-1)両部分の形態の共通点の評価 共通点(A)の全体形状については、両部分の形態を概括的に捉えた場合の基本的構成態様の共通点にすぎないものであり、「拳銃」の物品分野において、本願の出願前にごく普通に見受けられる基本的構成態様であるから、この共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。 共通点(B)及び(C)については、具体的な各部の構成比率であって、全体のプロポーションに関わるものであるが「拳銃」の物品分野において、このような各部の構成比率のものはよく見受けられる態様であるから、この共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。 共通点(D)は、正面視のグリップ部におけるグリップ材部の共通点であって、両部分の特徴部分に係る共通点であるが、後述する具体的構成態様の相違点もあり、両部分の類否判断に与える影響は、一定程度にとどまる。 共通点(E)は左側面視での横幅(厚み)比率についてと下方フレーム部の後端部の上端の形状についてであるが、「拳銃」の物品分野において、このような厚み比率のものはよく見受けられ、フレーム部の後端部の上端の形状はスライド部の係合に関わる部分ではあるが、左側面でのみ認められる小さな部分の形状であるから、この点が両部分の類否判断に与える影響は、一定程度にとどまる。 そうすると、共通点(D)及び共通点(E)は類否判断への影響が一定程度あるとしても、共通点(A)、共通点(B)及び共通点(C)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、いずれも小さく、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両部分の共通点は、両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないということができる。 (3-2)両部分の形態の相違点の評価 これに対して、相違点(a)については、正面視でのグリップ部のグリップ材部の相違であって、左側のグリップ材部は、上方先端部の配置位置の上下からくる若干の縦方向長さの相違にとどまり、注視して分かる程度の相違であるが、右側のグリップ材部の上端右側の形状の相違は、部分的相違であるが、一見して、看取できる相違でもあり、この相違点は、両部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。 相違点(b)は正面視のグリップ部におけるグリップ材部の具体的形状の相違に関わり、左側のグリップ材部と右側のグリップ材部の間に角部が丸みを帯びた右方に大きく湾曲した略C字帯状のグリップ材を配しているか否かの相違であって、本願部分がグリップ部を、それぞれの目の粗いグリップ材部の間にごく細い余地部を挟みつつも、ほぼ隙間無く覆っている印象を与えるのに対し、引用部分は正面視で本願部分と基本的形状は同様のグリップ材部をグリップ部前後に配しているものの、正面視の中央部においては下方フレーム部と繋がった上方へ抜ける平滑な広いエリアを設けていると視認され、ほぼ隙間無く目の粗い表面材で覆われた印象の本願部分と中央に大きな抜けのある印象の引用部分とでは、グリップ部の表面態様の視覚的効果による印象が大きく異なり、グリップ部は両部分の大きな範囲を占める部位でもあって、この点が両部分の類否判断に与える影響は大きい。 相違点(c)及び(d)については、フレーム部後端の左側の凸状部については、ごく小さな部分の僅かな部分的相違であり、トリガーガードの厚み比率についてもごく普通に見受けられるものであるが、左右側面図視のグリップ材部の形状の相違と中間グリップ材部及び余地部の有無については、上記相違点(b)ともあいまって、両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。 相違点(e)は本願部分が正面視で表された形状とほぼ対称の形状であるのに対し、引用部分は、背面形状が不明である点についてであるが、「拳銃」の物品分野において、フレーム形状及び、グリップ材部の態様などについては、正背面対称に形成されるのがごく普通であって、おおむね、引用部分についてもフレーム形状及び、グリップ材部の態様などは正面と対称の形状と推認し得るところ、その余の背面態様については不明であって、この点は、両部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。 相違点(f)は、全体の明暗調子に関する相違であって、本願部分のように意匠登録出願に当たり明暗調子を施していないものとすることはごく普通であって、引用部分のように暗調子が施されているものも図版においてはよく見受けられるものであるから、この点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。 (3-3)両部分の形態の総合評価 そうすると、共通点(A)ないし(D)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、相違点(f)は、類否判断に与える影響が小さく、相違点(a)及び相違点(e)が両部分の類否判断に与える影響一定程度にとどまるとしても、相違点(b)ないし相違点(c)は、類否判断に与える影響が大きく、それら相違点(a)ないし(c)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると、相違点は、共通点を凌駕して、両部分を別異のものと印象付けるものである。 3.小括 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は共通するが、これらの共通点が類否判断に与える影響は小さく、形態の共通点も未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、形態の相違点は、両部分の類否判断に及ぼす影響が大きく、共通点のそれを凌駕して、両部分を全体として別異のものと印象付けるものであって、これらを総合して判断すると、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-05-21 |
出願番号 | 意願2016-23730(D2016-23730) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 加藤 真珠 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
正田 毅 渡邉 久美 |
登録日 | 2018-06-15 |
登録番号 | 意匠登録第1608412号(D1608412) |
代理人 | 山本 健策 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 飯田 貴敏 |
代理人 | 石川 大輔 |