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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K0
管理番号 1342054 
審判番号 不服2018-2075
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-14 
確定日 2018-06-26 
意匠に係る物品 プラズマ処理装置用放電チャンバ 
事件の表示 意願2017- 807「プラズマ処理装置用放電チャンバ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年(2017年)1月20日の意匠登録出願であって、平成29年6月28日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年8月14日に意見書が提出されたが、平成29年11月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「プラズマ処理装置用放電チャンバ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠は、日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成21年6月8日)に記載された、意匠登録第1361441号(意匠に係る物品、半導体基板プラズマ処理装置用反応室容器)の意匠であり、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は、「プラズマ処理装置用放電チャンバ」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「半導体基板プラズマ処理装置用反応室容器」であるが、いずれも半導体製造で使用されるプラズマ処理装置における、放電によりプラズマを生成する反応が行われる空間を形成する容器であるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。

2 形態の対比
両意匠を対比すると、両意匠の形態については、以下のとおり、共通点及び相違点がある。
なお、対比のため、本願意匠の図の向きを使用状態における向きである引用意匠の向きに合わせ、本願意匠の「正面図」を右に90°回転させ、本願意匠の「左側面図」を本願意匠の「平面図」とし、本願意匠の「平面図」を右に90°回転させて本願意匠の「右側面図」とし、その他は、これらに準じて表されているものとする。
(1)形態の共通点
(共通点1)両意匠は、全体の基本構成が、透明な略縦長円筒形状である点で共通する。
(共通点2)両意匠は、略円筒形本体外周部の上部及び下部開口部付近において、水平な略中空薄板円板状の鍔部を形成している点で共通する。

(2)形態の相違点
(相違点)本願意匠は、略円筒形本体の下部開口部付近の鍔部の上面側に、鍔部より縮径した略中空薄板円板状の段部を、鍔部と一体的に形成した形態であるのに対し、引用意匠は、下部開口部付近の形態が、上部開口部付近の鍔部と同様の段差のない形態である点で、両意匠は相違する。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、放電によりプラズマを生成する反応が行われる空間を形成する容器であって、主たる用途及び機能が共通するから類似する。

2 形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、半導体製造で使用されるプラズマ処理装置に設置されて使用される大型の透明な容器であるが、その使用により容器の内面部分が汚れるため、定期的に取り外して洗浄等のメンテナンスを行う必要がある。そのため、当該意匠に係る物品の需要者は、メンテナンス作業の効率化といった観点で、両意匠に係る物品を観察するということができる。
したがって、両意匠に係る物品の形態において、メンテナンス作業の効率化を図る目的で形成された部分については、需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。
(1)形態の共通点
両意匠の意匠に係る物品は、プラズマ処理装置で使用される反応用容器であって、反応の状況を観察する必要から透明なものとし、かつ、その使用状態から容器の周囲を均一に暖める必要もあって略縦長円筒形状とすることが普通に見られる形態であるといえるので、(共通点1)における透明な略縦長円筒形状である形態は、この種物品分野として一般的なものにすぎず、両意匠のみに認められる格別の特徴ではないから、この(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)における略円筒形本体外周部の上部及び下部開口部付近に水平な略中空薄板円板状の鍔部を形成している形態は、プラズマ処理装置に当該容器を固定する際に、プラズマガスが漏れないように密閉するために形成された部分であって、この種物品分野において、本体開口部付近に鍔部を設けることは既に見られるものである上に、鍔部自体の形態も特段特徴のない略中空薄板円板状のものにすぎないものであるから、この(共通点2)が意匠全体の美感に与える影響も小さい。

(2)形態の相違点
(相違点)は、略円筒形本体の下部開口部付近の鍔部の上面側部分に係るものであって、鍔部上面に縮径した略中空薄板円板状の段部を鍔部と一体的に形成した本願意匠の形態は、当該反応容器である放電チャンバの交換の際に、その天地方向を明確に示すことができ、かつ、ヒートジャケットといった他の部材を放電チャンバの周囲に配置する際にも、その位置決めが容易になるといった効果等を持つことから、メンテナンス作業の効率化に資する部位に注目する需要者の注意を強く惹く部分であるといえる。そして、本願意匠の形態は、シンプルな上部開口部付近の鍔部と、肉厚で堅牢な下部開口部付近の鍔部が組み合わさったものとの印象を与えるのに対して、引用意匠のものは、シンプルで対称形の上部及び下部開口部付近の鍔部からなるとの印象を与えるから、両意匠は、下部開口部付近の鍔部の上面側部分の美感において大きな差異があるといえる。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、メンテナンス作業の効率化といった観点から需要者の注意を強く惹く、略円筒形本体の下部開口部付近の鍔部の美感に大きな差異があるから、全体の基本構成、及び略円筒形本体外周部の上部及び下部開口部付近に略中空薄板円板状の鍔部を形成している形態の共通性を考慮しても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は類似するが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、本願については、原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-06-13 
出願番号 意願2017-807(D2017-807) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K0)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小柳 崇 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2018-07-27 
登録番号 意匠登録第1611626号(D1611626) 
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所 

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