• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判    F4
管理番号 1342061 
審判番号 無効2017-880007
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-07-07 
確定日 2018-06-18 
意匠に係る物品 物品包装用袋 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1578031号「物品包装用袋」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件意匠登録第1578031号の意匠(以下「本件登録意匠」という。)は,平成28年(2016年)11月1日に意匠登録出願(意願2016-23814)されたものであって,審査を経て平成29年5月12日に意匠権の設定の登録がなされ,同年6月5日に意匠公報が発行され,その後,当審において,概要,以下の手続を経たものである。
・平成29年 7月 7日 審判請求書提出
・平成29年 9月 8日 審判事件答弁書提出
・平成29年11月 1日 審判事件弁駁書提出
・平成30年 1月11日 審理事項通知書
・平成30年 2月16日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
・平成30年 3月 2日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
・平成30年 3月16日 口頭審理

第2 請求人の申し立て及び理由
請求人は,「登録第1578031号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と請求し,その理由として,以下のとおり主張し,その主張事実を立証するため,甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1.請求の理由
(1)手続の経緯
出願 平成28年11月1日
意願2016-23814
登録 平成29年5月12日
意匠登録第1578031号
(登録原簿を甲第1号証として提出する。)
意匠に係る物品:物品包装用袋
(2)無効理由の要点
本件登録意匠は,以下に述べる如く,本件登録意匠の出願前に日本国内において公然知られた形状等の意匠に基づき当業者が容易に創作をすることができた意匠である。
公然知られた意匠として,[1]実開昭49-59916号公開公報(甲第3号証)の第1図及び第2図によって表された複数のほぼ正三角錐形の包装用袋がミシン目を介して連設している連包装袋の意匠(意匠1)が公開されていて,更に[2]特許第2798601号特許公報(甲第4号証)に掲載の第6図によって表されたミシン目を介して複数連結したピロー状の包装袋の最上部にミシン目を介して吊下げ用ヘッダ部が設けられた意匠(意匠2)が存在していた。意匠1の連包装袋を店頭において販売し易くするために,吊り下げ用のフック孔を備えたヘッダ部を最上部に設けることが当業者であれば容易に思いつくところであり,簡易に実施するには,当該連包装袋最上部のエンドシール部に紙等の素材からなる吊り下げ用ヘッダを人手によりホチキス等で止着することもできる。事実,本件登録意匠の出願前に公然知られた「2016年ハローウィン用カタログ」((株)イズミクリエーション)(甲第5号証)第2頁中央左側にその実施例(意匠3)が掲載されている。更に,公然知られた意匠2によれば,吊り下げ用ヘッダ部と意匠1の連包装袋を同一包装資材で形成することが生産能率の点からも優れていることが記載されており,そのことは当業者であれば誰しも想起できるところである。そこで意匠3を踏まえて,当業者であれば意匠2の連包装袋の部分を意匠1の連包装袋で置き換えるに過ぎないというありふれた手法で本件登録意匠を容易に創作することができると言える。
従って,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項の規定により無効とすべきである。
(3)本件登録意匠を無効にすべき理由
1)本件登録意匠の説明
本件登録意匠に係る物品は,甲第2号証登録公報に掲載のとおり,「物品包装用袋」であって,菓子等の物品を内包可能なほぼ正三角錐形の包装用袋(小袋)を複数連ねて構成され,店舗等で吊り下げて陳列するものである。
更に詳細に説明すると,同一包装資材(帯状フィルム等)を使用して吊下げ用フック孔が設けられたヘッダ部を最上部に設け,その下部に複数のほぼ正三角錐形の包装用袋(小袋)が連続して成形されていて,各包装用袋の末端同士が互いに横ヒートシール(熱溶着)され,横ヒートシール部の中央に設けられたジグザグ状の切り離し用切込み部を介して接続され,横ヒートシール部とその下に続く横ヒートシール部とは互い直交する形態で連続している。
2)意匠法第3条第2項の規定(創作非容易性)違反
[1]意匠1ないし3に基づく創作容易について
本件登録意匠は,前述の出願前に日本国内において頒布され公知となった意匠1ないし3に基づいて,当業者であれば容易に創作可能な意匠である。先ず,本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された甲第3号証公開公報の図面第1図及び第2図によって表された複数のほぼ正三角錐形の包装用袋の末端部同士が横ヒートシールされ,該ヒートシール部中央のミシン目を介して接続され,各ヒートシール部同士が互いに直交する形態で連結している連包装袋の意匠(意匠1)が公然知られている。甲第3号証公開公報第2頁下から第12行?第10行目の記載によれば,この連包装袋は,『複数の四面体状袋がミシン目を介して連設しているのでハンガー掛等で展示販売し・・・・』とあり,吊り下げ用のヘッダ部がないため,ハンガー掛けをせざるを得ず吊り下げて陳列販売することができなかった。当然,販売者のみならずお客の立場においても,ハンガー掛けよりも吊り下げて陳列された方が分かり易く好都合であることは容易に推測できる。現在では,コンビニ等で販売されているのど飴や珍味等の袋物は,袋の上部に吊り下げ用ヘッダ部を設けた吊り下げ陳列が主流になっている。意匠1の連包装袋には,最上部に横ヒートシール部があるため,簡易な方法としては,紙等の素材で作成した吊り下げ用ヘッダを人手によりホチキス等で止着することもできる。事実,甲第5号証の「2016年ハローウィン用カタログ」((株)イズミクリエーション)第2頁中央左側にその実施例(意匠3)が掲載されている。なお,このカタログが本件登録意匠の出願前に公然知られたものであることは,表紙や各ページ上部に「2016.5.20ご注文締切」とか「2016.6.30ご注文締切」とかの記載があることから,当然のことながら,これら注文締切前に頒布,公表されているものと考えられる。
しかしながら,甲第4号証特許公報に掲載の第6図によれば,ヘッダ付き連包装袋の斜視図が開示されており,複数連結したピロー状の包装袋部分に吊下げフック孔を備えたヘッダ部が設けられた意匠(意匠2)が公知となっている。これはヘッダ部と複数の包装体が同一包装資材を使用して一体的に製造されたものである(公報第2頁4欄第34行?第38行)。
意匠1のような連包装袋を創作できる技術力をもっている当業者であれば,意匠3の実施例も踏まえて,意匠2の複数連結したピロー状の包装袋の部分を意匠1の連包装袋で置き換えることは,即ち,同一包装資材を使用してヘッダ部付きの連続包装袋を創作することは容易なことと思料する。
因みに,連結した包装用小袋(ほぼ正三角錐形)の作り方を簡単に説明すれば,当業者であれば周知のことであるが,先ず,帯状フィルムに縦ヒートシールを施して筒状フィルムを形成し,その筒状フィルムを所定の長さのところで横ヒートシールし,その横ヒートシール部中央に切込み部(ミシン目等)を設け,次に横ヒートシールを行う位置で前記筒状フィルムを90°回転して横ヒートシールし,その横ヒートシール部中央に切込み部(ミシン目等)を設ける。これを交互に繰り返すことで連結したほぼ正三角錐形の包装用子袋が,各横ヒートシール部が直交する形態で連続して形成されるのである。
[2]ヒートシールの波状ラインについて
本件登録意匠の正面図や背面図等において,包装用袋に模様らしき複数の横ラインや縦ラインが表れているが,これは,拡大平面図やD-D線部拡大図,J-J線部拡大図等の各種拡大図に示されているとおり,ヒートシール(熱溶着)を行った部分が波状に表われているに過ぎず,意匠として評価できるものではない。本件登録意匠のような包装用袋を製造する際,先ず,帯状フィルムを筒状にするために縦ヒートシールが施される結果,縦の波状ラインが必然的に表れ,その筒状フィルムから包装用袋を形成する際に,両端を密閉するために横ヒートシールを施す結果,必然的に横の波状ラインが表れるに過ぎないのである。意匠図面では格別これらを詳細に表していない例も少なくなく意匠の創作としては無視できる類のものである。敢えて証拠を示すまでもなく,昨今,のど飴やおつまみ等を入れた包装袋のシール部にはこのような波状のラインが表れているが,意匠的な評価ができないことは誰もが認めるところである。
[3]切り離し用切込み部のジグザグラインについて
本件登録意匠のヘッダ部と連結包装用袋をそれぞれ接続する切り離し用切込み部のジグザグラインにしても,敢えて証拠を示すまでもなく,ミシン目に代わるものとしてあらゆる分野で使われていて,包装用袋の分野において極めてありふれたものである。これも意匠の創作としての評価はできないものである。
(4)むすび
以上のとおり,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前から日本国内において公然知られた意匠1ないし3に基づいて当業者が容易に創作することができた意匠である。また,本件登録意匠の図面上表れている縦横複数の波状シール線や切込みジグザグ線にしても,前記[2]及び[3]の項において述べたとおり,意匠上の創作とは言えないものであるから,到底これにより創作非容易とはならず,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項の規定により無効とすべきである。
2.証拠方法
[1]甲第1号証・・・・・・・・・登録第1578031号登録原簿
本件登録意匠の権利状況を確認する。
[2]甲第2号証・・・・・・・・・意匠登録第1578031号公報
本件登録意匠を特定する。
[3]甲第3号証・・・・・・・・・実開昭49-59916公開公報
本件登録意匠創作の容易性を立証する。
[4]甲第4号証・・・・・・・・・特許第2798601号特許公報
本件登録意匠の創作の容易性を立証する。
[5]甲第5号証・・・・・・・・・2016年ハローウィン用カタログ
((株)イズミクリエーション)
http://www.dagashiya.co.jp/images/izumi_2016hw.pdf
本件登録意匠の創作の容易性を立証する。

第3 被請求人の答弁及びその理由
被請求人は,平成29年9月8日付けの審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)において,答弁の趣旨を「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」とし,その理由として,要旨以下のとおりの主張をし,その主張事実を立証するため,乙第1号証を提出した。
1.本件登録意匠の特定について
(1)請求人の主張
請求人は本件登録意匠につき,次のように特定している。
「本件意匠登録に係る物品は,甲第2号証登録公報に掲載のとおり,『物品包装用袋』であって,菓子等の物品を内包可能なほぼ正三角形の包装用袋(小袋)を複数連ねて構成され,店舗等で吊り下げて陳列するものである。
更に詳細に説明すると,同一包装資材(帯状フィルム等)を使用して吊下げ用フック孔が設けられたヘッダ部を最上部に設け,その下部に複数のほぼ正三角錐形の包装用袋(小袋)が連続して成形されていて,各包装用袋の末端同士が互いに横ヒートシール(熱溶着)され,横ヒートシール部の中央に設けられたジグザグ状の切り離し用切込み部を介して接続され,横ヒートシール部とその下に続く横ヒートシール部とは互いに直交する形態で連続している。」
(2)請求人の主張の誤りについて
請求人は本件登録意匠について,上記のように特定している。しかし,その主張は,以下の点において誤っている。
1)ほぼ正三角形の包装用袋としている点
1-1)請求人は,「本件意匠登録に係る物品は,・・・・,菓子等の物品を内包可能なほぼ正三角形の包装用袋(小袋)を複数連ねて構成され,」とする。
1-2)しかし,本件登録意匠における包装用袋(小袋)は,ほぼ正三角形ではなく,正面図,背面図及び左右側面図において曲線で表わされている稜線から明らかなように,正面視,背面視及び左右側面視において紡錘型ないし砲弾型を呈するものである。これにより,本件登録意匠の場合は膨出感が醸し出され,正三角形のものの場合にはない外観上の美感が感取されるのである。
2)正面図,背面図等に明確に表われている波状ラインを意匠的な評価ができないとしている点
2-1)請求人が,この波状ラインについて意匠的な評価ができないとしている理由は,以下のとおりである。
・本件登録意匠の正面図や背面図等において,包装用袋に摸様らしき複数の横ラインや縦ラインが表れているが,これは,拡大平面図やD-D線部拡大図,J-J線部拡大図等の各種拡大図に示されているとおり,ヒートシール(熱溶着)を行った部分が波状に表われているに過ぎず,意匠として評価できるものではない。
・本件登録意匠のような包装用袋を製造する際,先ず,帯状フィルムを筒状にするために縦ヒートシールが施される結果,縦の波状ラインが必然的に表れ,その筒状フィルムから包装用袋を形成する際に,両端を密閉するために横ヒートシールを施す結果,必然的に横の波状ラインが表れるに過ぎないのである。意匠図面では格別これらを詳細に表していない例も少なくなく意匠の創作としては無視できる類のものである。
2-2)しかし,各図から明らかなように,本件登録意匠において請求人が縦の波状ライン,横の波状ラインと称している部分は,単なるヒートシールの結果生成される目立たないラインではなく,縦断面が彫りの深い波形を呈する帯状ラインであり,各図において明確に視認されるように,本件登録意匠の重要な形態要素となっているのである。
そして,各図から視認されるように,本件登録意匠における縦の波状ライン及び横の波状ラインは,それ自体,並びに,横の波状ラインの場合は更に切離用の鋸歯状ラインと相俟って,意匠上重要な要素となっているのであるから,これを意匠の要素と見ることなく,意匠として評価できないとする請求人の考えが誤りであることは,明らかなところである。
請求人は「意匠図面では格別これらを詳細に表していない例も少なくない」とするが,それは,その場合のラインが,本件登録意匠のように一形態要素として目立つように深く生成されていないからに他ならないのであって,本件登録意匠をそれらと同列に扱うことはできない。
(3)小括
上記のとおり請求人は本件登録意匠の特定を誤っているので,その誤った特定の下に展開される以下の主張もまた,当を得ないものであることは言うを侯たない。
2.意匠法第3条第2項の規定(創作非容易性)違反との主張について
(1)請求人は,本件登録意匠は,引用の意匠1ないし3に基づいて,当業者であれば容易に創作可能な意匠であるとする。
(2)上記主張に対する反論
1)意匠1ないし3の形態
意匠1は,正面視及び側面視においてほぼ正三角形を呈する包装袋を5つ,平坦なヒートシール部を介して連結した外観を呈するもので,包装袋は無模様である。
意匠2は,正面視においてほぼ正方形を呈し,側面視において紡錘形を呈する包装袋を4つ,平坦なヒートシール部を介して連結し,端部にシート状のヘッダを連設した外観を呈するもので,包装袋は無模様である。
意匠3は,正面視及び側面視においてほぼ正三角形を呈する包装袋を5つ,平坦なヒートシール部を介して連結した外観を呈するもので,包装袋にはその全体に,ハロウィーン関連の絵柄模様が施されているが,凹凸模様は視認できない。
なお,甲第5号証(意匠3)には,2016.5.20の日付が入っているが,甲第5号証自体単なる注文書であり,その日付は信憑性に欠けるものである。
2)意匠1ないし3の形態は以上の通りであるが,そのいずれにも,上記本件登録意匠における形態上の特徴である,横の波状ライン及びこれに交差する縦の波状ラインの凹凸模様は,全く見られない。
請求人は,上記理由によって,本件登録意匠は意匠1ないし3に基づいて,当業者であれば容易に創作可能な意匠であるとしているが,そこにおいて請求人は,この本件登録意匠において,横の波状ライン及びこれに交差する縦の波状ラインの凹凸模様を配することが,意匠1ないし3に基づいて容易になし得たことについて,何ら言及していない。これは,その凹凸模様が本件登録意匠の重要な形態要素であることを看過していることの必然的結果である。
3)請求人は,本件登録意匠が創作容易であることの理由を,製造面や機能面に求めている。
しかし,本件登録意匠が創作容易であったか否かは,本願意匠の形態(主にその凹凸模様)が公知意匠に表わされているか否かによって決せされるべきである(乙第1号証:知財高裁平成19年(行ケ)第10078号判決参照。この判決においては,「・・・機能面からの制約を受けたとしてもなお,様々な意匠を選択する余地がある。」,「意匠の個々の構成態様が,ありふれたものであっても,・・・本願意匠の特徴を選択することは,当業者が容易に創作し得たとはいえないから,被告の上記主張は理由がない。」とされている。)。
従って,本件登録意匠は創作容易であるとの請求人の結論は,誤った判断方法に基づくものであり,その必然的結果としてその結論も誤ったものとなっている。
3.まとめ
以上の理由により,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前から日本国内において公然知られた意匠1ないし3に基づいて当業者が容易に創作することができた意匠ではないので,本件意匠登録は,意匠法第48条第1項の規定により無効とされるべきものではないと考える。
よって,本件審判請求には理由がないので,答弁の趣旨のとおりの審決を求める次第である。
4.証拠方法
[1]乙第1号証・・・・知財高裁平成19年(行ヶ)第10078号判決
知財高裁における意匠の創作容易性の判断方法を立証する。

第4 請求人の弁駁及びその理由
請求人は,被請求人の答弁に対し審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)を提出し,以下のとおり主張をし,その主張事実を立証するため,甲第6号証及び甲第25号証を提出した。
1.本件登録意匠の特定について
(1)被請求人は,請求人提出の審判請求書における用語を正確に引用していない。平成29年9月8日提出の答弁書第3頁第12行(当審注:本審決の第3 1.(1))の「ほぼ正三角形の包装用袋」は「ほぼ正三角錐形の包装用袋」の間違いである。他にも,同頁下から第9行,第7行,第6行及び第2行において,「正三角形」としているが,いずれも「正三角錐形」の間違いである。請求人は,本件登録意匠における一つひとつの包装用袋を立体的に捉えて「ほぼ正三角錐形」と表現しているのである。その証拠にいずれも立体形状の「包装用袋(小袋)」を形容する形で「ほぼ正三角錐形の包装用袋(小袋)」としているのである。立体的に捉えるか一方向からの視点で捉えるかの違いに過ぎないのかも知れないが,引用するのであれば,正確に引用すべきである。
本件登録意匠における各包装用袋は,「テトラパック形」と表現するのが一般的には解り易いのかも知れないが,「テトラパック」が登録商標であるため,それに代わる表現として請求人は,「ほぼ正三角錐形」を採用したのである。この点に特に誤りはないものと考える。因みに,小学館の国語辞典『大辞泉』によれば,「テトラパック」について「牛乳や飲料などを入れて運搬・販売するための三角錐形の紙容器。商標名」としている(甲第6号証)。
(2)被請求人は,答弁書第3頁「(2)請求人の主張の誤りについて」(当審注:本審決の第3 1.(2)1-2))の項において,「本件登録意匠における包装用袋(小袋)は,ほぼ正三角形ではなく,正面図,背面図及び左右側面図において曲線で表わされている稜線から明らかなように,正面視,背面視及び左右側面視において紡錘型ないし砲弾型を呈するものである。」と主張している。更に,「これにより,本件登録意匠の場合は膨出感が醸し出され,正三角形のものの場合にはない外観上の美感が感取されるのである。」と述べている。本件登録意匠における包装用袋(小袋)を立体的に捉えて「ほぼ三角錐形」と表現するか一方向からの視点で捉えて「紡錘型ないし砲弾型」と表現するかは,対象物の形状を三角形や円形や台形等の幾何学的な用語を用いて表現するか,それとも自然物や馴染みのある物をイメージした表現にするかの単なる表現上の問題に過ぎない。ここでもっと重要なことは,被請求人が美感を生み出すとして重視している曲線で表された稜線により醸し出される膨出感に関して,請求人が提出した甲第5号証「2016年ハロウィン用カタログ」第2頁掲載の商品「ハロウィンテトラ(5パック)」(意匠3)において,正面視及び側面視稜線が曲線で描かれているため膨出感を印象付ける商品が本件登録意匠の出願前に世の中に開示されているのである。なにも被請求人が本件登録意匠において初めて膨出感を醸し出す曲線の稜線形状を創出したわけではない。むしろこの膨出感を醸し出す曲線の稜線は,被請求人が本件登録意匠の出願前に公然知られた意匠3に基づき容易に創作し得たものと言うべきである。
なお念のため,包装用袋の膨出形状に関して言及すると,フィルム包装材を使用した包装用袋の場合,フィルムの柔軟性のため,実際に袋が膨らむか否かは内容物の種類や量により物理的に決定されるのである。しかしながら,本件登録意匠の図面は,「使用状態参考図」を除き,当然内容物が含まれていない状態の物品が表わされている筈であるから,内容部が無い場合は膨らみ具合が小さくなり正三角錐形に近似した形状となるのが事実に近いと言える。いずれにしても請求人が「ほぼ」と表現したのは,正三角錐形そのものではないがそれに近似した形状であることを概略的に表現した結果である。従って,「ほぼ正三角錐形」には外形線が曲線で若干膨らんだ印象を与えるものも当然含まれるものと思料する。なんら本件登録意匠の特定に誤りはないと考える。
(3)被請求人は,答弁書第4頁「2)正面図,背面図等に明確に表われている波状ラインを意匠的な評価ができないとしている点」(当審注:本審決の第3 1.(2)2))の項において,請求人の主張に対して次のように反論している。
縦横の波状ラインは,「単なるヒートシールの結果生成される目立たないラインではなく,縦断面が彫りの深い波形を呈する帯状ラインであり,各図において明確に視認されるように,本件登録意匠の重要な形態要素となっているのである。」ということである。しかしながら,その主張は,フィルム包装接着技術としては基本中の基本であるヒートシール(熱溶着)により表れる波状ラインをまるで被請求人が新規に創作したデザインであるかのように過大評価していると言う他ない。
被請求人は,同項において「横の波状ラインの場合は更に切離用の鋸歯状ラインと相侯って,意匠上重要な要素となっているのであるから,これを意匠の要素と見ることなく,意匠として評価できないとする請求人の考えが誤りであることは,明らかなところである。」と主張する。しかしながら,請求人は,意匠の要素ではないとは言っておらず,重要な形態要素であるとの評価はできないと言っているのである。
以上により,縦と横の波状ライン形状にしても,横の波状ラインと鋸歯状ラインが相侯った形状にしても,意匠として重要な形態であるという評価はできないという請求人の判断に誤りはないものと思料する。
2.意匠法第3条第2項の規定(創作非容易性)違反との請求人の主張に対する被請求人の反論について
(1)意匠1ないし3の形態について
意匠1については,ヒートシール部の中間に位置するミシン目(2)の存在を無視している。正確な認識をしていない。
意匠2についても,ヒートシール部の中間に位置するミシン目(C1)について触れていない。
意匠3については,被請求人自ら「正面視及び側面視においてほぼ正三角形を呈する包装体」(アンダーラインは請求人が記入)と記載している。包装体の外形ラインが曲線で若干膨らんでいる三角形を捉えて「ほぼ正三角形」と表現していることは,本件登録意匠の特定に関する請求人の認識と大差ないことになる。この点からしても,前述の本件登録意匠の特定に関して請求人の認識に誤りがあると言われる筋合いはないのである。意匠3について切り取り線の言及がないことは意匠1及び2と同じである。
また,甲第5号証(意匠3)のカタログの「2016.5.20」の日付に疑義があるようであるが,商業上の常識から考えて論外と言うしかない。昨今日本でもハロウィン(ハロウィーン)の行事が行われるようになっているが,ハロウィンは毎年10月31日に行うものである。因みに,小学館の国語辞典『大辞泉』によれば,「ハロウィーン【Halloween】」について,「諸聖人の祝日の前夜(10 月31日)の祭り。秋の収穫を祝い悪霊を追い出す古代ケルト人の祭りが起源。アメリカでは,カボチャの提灯などを飾り,仮想した子供たちが近所の家々からお菓子をもらう。」となっている(甲第25号証)。甲第5号証の2016年ハロウィン用カタログは,その年のハロウィン10月31日に使うお菓子の注文を請けるためのものである。その発注期限を2016年5月20日迄と設定して,出荷予定日を2016年9月5日としているのである(第6頁参照)。商売上当然,このカタログは遅くとも発注期限の2016年5月20日前に頒布公表しなければ意味のないことは常識として理解できることと考える。従って,本件意匠登録の出願日2016年11月1日前に公表されたものであることは疑いの余地がないことと考える。
(2)被請求人の主張によれば,意匠1ないし3のいずれにも,本件登録意匠における形態上の特徴である,横の波状ライン及びこれに交差する縦の波状ラインの凹凸模様が全く見られないということである。請求人は,包装袋製作においてヒートシール工程を経ることでその熱シール部が波形(凹凸)のラインとして当然に生じるものと考え今更示すまでもないと考えた。
3.むすび
従って,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項の規定により無効とすべきである。
よって,請求の趣旨のとおりの審決を求める次第である。
4.証拠方法
[1]甲第6号証・・・・国語辞典『大辞泉』(小学館)表紙及び奥付並び
に第1830頁「テトラパック」
用語を明確にする。
[2]甲第25号証・・・国語辞典『大辞泉』(小学館)表紙及び奥付並び
に第2180頁「ハロウィーン」
これにより用語を明確にする。

第5 口頭審理
本件審判について,当審は,平成30年1月11日付け審理事項通知書を通知し,これに対して,被請求人は,同年2月16日に口頭審理陳述要領書(以下「被請求人陳述要領書という。」)を提出し,請求人は,同年3月2日に口頭審理陳述要領書(以下「請求人陳述要領書」という。)を提出し,同年3月16日に口頭審理を行った(平成30年3月16日付け口頭審理調書)。
1.請求人の主張
請求人は,請求人陳述要領書に基づき,以下のとおり意見を述べ,その主張事実を立証するため,甲第26号証の1ないし5を提出した。
(1)弁駁書の「1.本件登録意匠の特定について」(当審注:本審決の第4 1.)の項について
1)被請求人陳述要領書第2頁第1行?第15行(当審注:本審決の第5 2.(1)1))の主張について
被請求人は,本件登録意匠を構成する包装用袋について,平面図や底面図,更にはI-I線拡大端面図を根拠として角部が丸みを帯びた四角錐状の形状を呈するものであって,決して三角錐形状ではないと断言している。またそれ故,個々の包装用袋のみならず,複数連になれば一層意匠1及び意匠3とは異なった美感が発現され全く異なった印象をもって捉えられる,と主張している。
しかしながら,この主張が被請求人の間違った認識に基づいてなされていることは当業者でなくても明らかである。四角錐状の五面体で本件登録意匠のような複数連の包装用袋をどのように作るのか。ここに来て,本件登録意匠を構成する個々の包装用袋が四角錐形状であることを前提とする被請求人の反論は,牽強付会の論としか言いようがない。
2)被請求人陳述要領書第2頁第16行?第3頁第1行(当審注:本審決の第5 2.(1)2))の主張について
被請求人は,請求人が被請求人提出の答弁書第3頁「(2)請求人の主張の誤りについて」(当審注:本審決の第3 1.(2))の項における被請求人の主張に対して反論したことについて,本件登録意匠を構成する個々の包装用袋は,角部が丸みを帯びた四角錐状の形状であって,決して三角錐形状ではないという間違った理由で誤りであると主張している。この被請求人の主張が誤りであることは,最早論ずるまでもないことである。また,意匠3の稜線が正面視においても側面視においても曲線とは到底言えない,と主張しているが,これも苦しい反論であり,客観的にみて曲線を呈している部分が視認できることは明らかである。
3)被請求人陳述要領書第3頁第2行?第8行(当審注:本審決の第5 2.(1)3))の主張について
格別言及することはない。
4)被請求人陳述要領書第3頁第9行?最下行(当審注:本審決の第5 2.(1)4))の主張について
請求人は,審判請求書第5頁(当審注:本審決の第2 1.(3)2)[2])で主張したとおり,本件登録意匠の包装用袋に表れている模様らしき複数の波状の横ラインや縦ラインは,ヒートシール(熱溶着)を行った部分が必然的に波状に表れているに過ぎず,意匠の創作として評価はできないし,仮に意匠の創作だとしても当業者であれば周知技術或いは慣用技術と言えるヒートシール(熱溶着)作業で容易に創作できることである。今回,被請求人は乙第2号証と乙第3号証を提出して,既存の模様や形状を意匠の形態要素として採用することは何ら問題なく,その模様等をどのように配置するか,他の形態要素との関係でどのように組み入れるかが意匠においてポイントになると述べている。確かに既存の模様等の組み入れ方次第で創作性豊かな意匠が誕生することは事実である。
しかしながら,乙第2号証や乙第3号証の登録意匠に施されている模様と本件登録意匠の個々の包装用袋に表れている横や縦の波状ラインとでは,意匠の創作性や創作難易度の点において比較にならないくらの違いがある。それは,前述したとおり,本件登録意匠に表れている横や縦の波状ラインは,当業者が本件登録意匠のようなほぼ三角錐形状の連続包装用袋を製作する為にヒートシール(熱溶着)作業を行えば,必然的に袋上に表れるに過ぎないものだからである。
(2)弁駁書の「2.意匠法第3条第2項の規定(創作非要旨性)違反について」(当審注:本審決の第4 2.)の項について
1)被請求人陳述要領書第4頁第5行?第16行(当審注:本審決の第5 2.(2)1))の主張について
請求人は,被請求人が言う「ライン模様」が何も特別なものではなく,当業者が本件登録意匠のような連続したほぼ三角錐形の包装用袋を製作する際にヒートシール(熱溶着)を縦及び横に行うことにより必然的に波状ラインが生じるので,何ら創作が難しいことはない,と審判請求の当初から主張している。当業者にとっては普通の作業である。
2)被請求人要領書第4頁第17行?第20行(当審注:本審決の第5 2.(2)2))の主張について
菓子等のカタログ受注生産を行っている株式会社イズミクリエーションのホームページ(http://www.dagashiya.co.jp/)から「ホーム」(甲第26号証の1),「会社案内」(甲第26号証の2),「事業内容」(甲第26号証の3)及び「カタログ」(甲第26号証の4),並びに「カタログ」から「HALLOWEEN CATALOG 2017」(甲第26号証の5)を取り出した。このカタログは,2017年版のハロウィンカタログであり時期は経過しているが,意匠3のハロウィンカタログ(2016年版)に相当するものである。毎年,ハロウィンやグリスマス,バレンタイン等の時期に合わせてカタログによる受注活動を行っている。この(株)イズミクリェーションによるインターネットを通じての受注活動に何ら疑義を抱く余地はないものと考える。
(3)証拠方法
[1]甲第26号証の1ないし5・・・(株)イズミクリェーションホーム
ページの「ホーム」,「会社案内」,「事業内容」,「カタログ」及
び「HALLOWEEN CATALOG 2017」写し
甲第26号証の5のようなカタログを所望により適時取得し,商品の
発注ができることを示す。
2.被請求人の主張
被請求人は,被請求人陳述要領書に基づき,以下のとおり意見を述べ,その主張事実を立証するため,乙第2号証及び乙第3号証を提出した。
(1)弁駁書の「1.本件登録意匠の特定について」(当審注:本審決の第4 1.)の項について
1)請求人は弁駁書の第2頁(1)(当審注:本審決の第4 1.(1))の項において,答弁書における「ほぼ正三角形状の包装用袋」の記載は,「ほぼ正三角錐形状の包装用袋」の間違いであるとしている。即ち,本件登録意匠を構成する包装用袋は「ほぼ正三角錐形(テトラポッド形)の包装用袋」であるとしている。
しかし,甲2の各図,特に平面図及び底面図,並びに,I-I線拡大端面図から明らかなように,本件登録意匠の包装用袋は,角部(I-I線拡大端面図における4つの角)が丸みを帯びた四角錐状の形状を呈するものであって,決して三角錐形状ではない。
個々の包装用袋を取ってみても,上記角部が丸みを帯びた四角錐形状の袋と,角部がそのような丸みを帯びていない三角錐形状の袋とでは,見た目が異なっていて受ける印象も異なるが,それが複数連なった場合には,一層異なった美感が発現され,全く異なった印象を以て捉えられる。
従って,本件登録意匠の包装用袋が,意匠1及び意匠3と同様の,角部に丸みのない三角錐形状であることを前提とする請求人の主張がすべて当を得ないものであることは,言うまでもないところと考える。
2)また,請求人は弁駁書の第2頁(2)(当審注:本審決の第4 1.(2))の項において,被請求人提出の答弁書第3頁「(2)請求人の主張の誤りについて」(当審注:本審決の第3 1.(2))の項における被請求人の主張に対し,次のように述べている。
「本件登録意匠における包装用袋(小袋)を立体的に捉えて『ほぼ正三角錐形』と表現するか一方向からの視点で捉えて『紡錘型ないし砲弾型』と表現するかは,対象物の形状を三角形や円形や台形等の幾何学的な用語を用いて表現するか,それとも自然物や馴染みのある物をイメージした表現にするかの単なる表現上の問題に過ぎない。ここでもっと重要なことは,被請求人が美感を生み出すとして重視している曲線で表された稜線により醸し出される膨出感に関して,請求人が提出した甲第5号証『2016年ハロウィン用カタログ』第2頁掲載の商品『ハロウィンテトラ(5パック)』(意匠3)において,正面視及び側面視稜線が曲線で描かれているため膨出感を印象付ける商品が本件登録意匠の出願前に世の中に開示されているのである。なにも被請求人が本件登録意匠において初めて膨出感を醸し出す曲線の稜線形状を創出したわけではない。むしろこの膨出感を醸し出す曲線の稜線は,被請求人が本件登録意匠の出願前に公然知られた意匠3に基づき容易に創作し得たものと言うべきである。」
しかし,この主張は,上記1)に述べた理由によって誤りであることが明らかである。
また,請求人は,甲第5号証の意匠3に関し,「正面視及び側面視稜線が曲線で描かれているため膨出感を印象付ける商品」としているが,意匠3の稜線は,正面視においても側面視においても,曲線とは到底言えない。
3)請求人は,弁駁書第3頁4?6行(当審注:本審決の第4 1.(2))において,「フィルム包装材を使用した包装用袋の場合,フィルムの柔軟性のため,実際に袋が膨らむか否かは内容物の種類や量により物理的に決定されるのである。」と述べているが,通例,本件登録意匠のような菓子等の包装用袋の場合,その袋の形状が変わってしまう程の量を充填することはない。そのように多量充填すると,包装用袋本来の形状が失われ,甲第5号証の意匠3のような場合,外表面に印刷されたキャラクターの表情が変わってしまう可能性がある。
4)請求人は,弁駁書(3)の項の第6頁19?24行(当審注:正しくは「第3頁20?23行」)(当審注:本審決の第4 1.(3))において,被請求人の縦横の波状ラインついての主張に対し,「その主張は,フィルム包装接着技術としては基本中の基本であるヒートシール(熱溶着)により表れる波状ラインをまるで被請求人が新規に創作したデザインであるかのように過大評価していると言う他ない。」と反論している。
しかし,被請求人は,本件登録意匠においては,熱溶着によって表れている「ライン模様」が重要な形態要素となっていると主張しているのであって,その波状ラインが,被請求人が新規に創作したデザインであると言っている訳ではない。
なお,言うまでもなく,既存の模様や形状を,意匠の形態要素として採用することに何ら問題はなく,その模様等をどのように配置するか,他の形態要素との関係においてどのように組み入れるかが意匠においてはポイントとなる。例えば,乙第2号証及び乙第3号証の登録意匠の場合,その全体形状は一般的と考えられるが,その配されている曲線模様に特徴があるが故に登録になったものと推測される。そして,その曲線模様は,さほど特徴のあるものではなく,一般に見られるものである。
被請求人の本件登録意匠もこれと同様に考えるべきである。即ち,熱溶着によりできるラインを「模様」と捉え,それを従来にない,従来に表現されていない態様で包装用袋に配したもので,そのラインは,本件登録意匠の「重要な」構成要素となり得るものであり,且つ,本件登録意匠における「ライン模様」の表現態様は,本件登録意匠の出願前から公知であった物品等から,転用し得たものではないと言える。
以上の点から,本件登録意匠の全体形状及び模様は,意匠1乃至3のみならず,出願前から公知であった物品等から容易に創作できたものではないと考えるのが至当である。
5)以上の点から,上記弁駁書の(1)ないし(3)における請求人の主張には理由がないと考える。
(2)弁駁書の「2.意匠法第3条第2項の規定(創作非容易性)違反について」(当審注:本審決の第4 2.)の項について
1)弁駁書第7頁1?下から2行(当審注:本審決の第4 2.(1)及び(2))において請求人は,意匠1及び意匠2のヒートシール部のミシン目について,被請求人は「無視している。」,「触れていない。」旨主張している。
この点については,上述のとおり,被請求人は,熱溶着によりできる「ライン模様」を本件登録意匠の重要な形態要素と捉えているのであり,前出ミシン目を加えた説明にすると,熱溶着によりできる「ライン模様」を各包装体分断部を構成する「ミシン目」を通過した模様が本件登録意匠の重要な形態要素となると主張しているのである。
本件登録意匠のような「ライン模様」の配し方,及び,「ライン模様のミシン目の通過態様」は,従前の物品にはなく,その点が本件登録意匠の重要な形態要素となっており,従前の物品からして,創作非容易であったと考えている。
2)なお,請求人は,被請求人による甲第5号証に記載の日付の信憑性の主張に対し,「商業上の常識から考えて論外というしかない。」と主張しているが,被請求人は,その日付の信憑性のみならず,実際に使用された注文書であるのか不明であり,客観性に欠けると主張しているのである。
以上の点から,本件登録意匠は,意匠1乃至3に基づいて創作容易であったということはできないと考える。
(3)むすび
以上のとおり,請求人による審判請求書及び弁駁書における主張によっては,本件登録意匠を無効とすることができないと考える。即ち,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前から日本国内において公然知られた意匠1ないし3に基づいて当業者が容易に創作することができた意匠ではないので,本件意匠登録は,意匠法第48条第1項の規定により無効とされるべきものではない。
よって,答弁書に記載のとおり,本件審判請求には理由がないので,答弁の趣旨のとおりの審決を求める次第である。
(4)証拠方法
[1]乙第2号証 意匠登録第1364694号公報
[2]乙第3号証 意匠登録第1453178号公報
3.審判長
当合議体が審理事項通知書の審理事項(2)において,弁駁書の記載内容に審判請求理由の要旨を変更する記述が含まれていると指摘した点について,請求人は,請求人陳述要領書において,請求の理由の要旨を変更することにはならない旨主張していたので,審判長は,口頭審理の冒頭,当合議体の心証に変更はないことから審理事項通知書に記載したとおり,弁駁書における甲第7号証ないし甲第24号証の2に基づいた主張は審理の対象とせず,また,請求人陳述要領書の第2頁から第4頁にかけての「A」に記載された主張についても,審理の対象とはしない旨述べた。
そして,審判長は,この口頭審理において甲第1号証ないし甲第6号証,甲第25号証及び甲第26号証の1ないし5並びに乙第1号証ないし乙第3号証について取り調べ,請求人及び被請求人に対して,本件無効審判事件の審理終結を告知した。

第6 当審の判断
1.本件登録意匠(甲第2号証の意匠)(別紙第1参照)
本件登録意匠の認定は,以下のとおりである。
(1)意匠に係る物品
意匠に係る物品は,「物品包装用袋」であり,菓子等を収容して,吊り下げた状態で陳列できるものである。
(2)形態
本件登録意匠の形態は,以下の(あ)ないし(く)のとおりである。
(あ)袋部の上端に吊り下げ用のヘッダ部を備えたものであり,袋部とヘッダ部とは,切り離し用の切り込み部を介して一体的に形成されたものである。
(い)袋部は,複数(4個)のやや膨らみのある略正三角錐形状の小袋部からなり,正面視にて上から順に逆三角形と三角形が交互に表れるように水平方向に90度向きを変えた態様で連接され,小袋部の上下両端には,袋状にするために熱溶着された横長帯状のヒートシール部分(以下「横ヒートシール部」という。)が表れており,切り込み部を介して連接されている。
(う)ヘッダ部は,掛止用フック孔を設けた略四角形板状体であり,上下両端には横ヒートシール部が表れているものである。
(え)小袋部及びヘッダ部は,背面視右寄りに,横ヒートシール部及び切り込み部と直行する帯状のヒ-トシール部分(以下「縦ヒートシール部」という。)が表れているものであり,縦ヒートシール部は,立ち上げることができる帯状片となっており,通常は,願書の添付図面に表れているとおり袋体に沿わせて横に倒れているものである。
(お)横ヒートシール部及び縦ヒートシール部は,それぞれ長手方向にわたり断面視波状の凹凸が形成されたものであり,波状の凹凸の稜線が,横ヒートシール部においては横縞状に,縦ヒートシール部においては縦縞状に表れている。
(か)縦ヒートシール部は,【D-D線部拡大図】から明らかなように,波状の凹凸が,帯状片の縁を含む全体に形成されたものである。
(き)切り込み部は,ギザギザ状としたものである。
(く)ヘッダ部の上端と最下段の小袋部の下端は,ギザギザ状としたものである。
2.無効理由の要点
(1)請求人が主張する無効理由
請求人が主張する無効理由は,本件登録意匠は,「意匠3を踏まえて,当業者であれば意匠2の連包装袋の部分を意匠1の連包装袋で置き換えるに過ぎないというありふれた手法で本件登録意匠を容易に創作することができると言える。従って,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項の規定により無効とすべきである。」というものである。
なお,請求人は,本件登録意匠の横ヒートシール部及び縦ヒートシール部が縞状の線模様として表れている態様,切り込み部をギザギザ状とした態様は,証拠を示すまでもなく,包装用袋の分野ではありふれたものであると主張している。
3.引用意匠
(1)意匠1(甲第3号証の意匠)(別紙第2参照)
意匠1は,本件登録意匠の出願前である昭和49年(1974年)5月27日発行の公開実用新案公報の実開昭49-59916号(考案の名称:特殊連結袋)の第1図(正面図)及び第2図(側面図)に示された包装用袋の意匠である。
その形態は,複数(5個)の略正三角錐形状の小袋部が,正面視にて上から順に逆三角形と三角形が交互に表れるように水平方向に90度向きを変えた態様で連接されたものであって,小袋部の上下両端には,横ヒートシール部が表れているものであり,上下小袋部の連接部には切り込み部を設けたものである。切り込み部は破線状で直線状である。なお,縦ヒートシール部は表れていない。
(2)意匠2(甲第4号証の意匠)(別紙第3参照)
意匠2は,本件登録意匠の出願前である平成10年(1998年)9月17日発行の特許公報の特許番号第2798601号(発明の名称:縦型製袋充填包装機)の【図6】に示された包装用袋の意匠である。
その形態は,袋部の上端にヘッダ部を備えたものであり,袋部とヘッダ部とは,切り込み部を介して一体的に形成されたものである。袋部は,複数(4個)のピロー状の小袋部が連接されたものであって,小袋部の上下両端には,横ヒートシール部が表れているものであり,切り込み部を介して連接されている。ヘッダ部は,掛止用フック孔を設けた略四角形板状体であり,上下両端には横ヒートシール部が表れているものである。切り込み部は破線状で直線状である。なお,縦ヒートシール部は表れていない。
(3)意匠3(甲第5号証の意匠)(別紙第4参照)
意匠3は,遅くとも本件登録意匠の出願前である2016年(平成28年)6月30日までには公然知られたものと認められる株式会社イズミクリエーションの「HALLOWEEN CATALOG 2016」(甲第5号証)の第2頁中央左側に掲載された包装用袋の意匠である。
その形態は,袋部の上端にヘッダ部を備えたものであり,袋部は,複数(5個)の略正三角錐形状の小袋部が,正面視にて上から順に逆三角形と三角形が交互に表れるように水平方向に90度向きを変えた態様で連接されたものであって,小袋部の上下両端には,横ヒートシール部が表れているものである。なお,上下小袋部の連接部には切り込み部を設けているように見えるが,はっきりせず,縦ヒートシール部については,正面と側面の写真を見る限りでは,その存在を確認することはできない。
なお,このカタログは,10月末日のハロウィンのお祭りの時期に向けて,(株)イズミクリエーションが受注活動を行うに当たりインターネット上において公開したものと考えられ,表紙(甲第5号証の1枚目:別紙第5参照)や商品注文書の頁(甲第5号証の4枚目:別紙第6参照)に「2016.5.20ご注文締切」とか「2016.6.30ご注文締切」との記載があり,また,翌年の「HALLOWEEN CATALOG 2017」(甲第26号証の5)においても,同じような月日を注文締切日とする記載がなされていることから,毎年,(株)イズミクリエーションが同じ時期に受注活動を行っているものと考えられ,そして,これらの日付の記載について,特に信用性を疑わせる事情は認められないから,このカタログの公知日を上記のとおり認定した。
4.無効理由の検討
(1)意匠法第3条第2項の該当性について
請求人が主張する無効理由である,本件登録意匠は当業者が意匠1ないし3の形態に基づいて容易に創作することができた意匠であるか否か,すなわち,意匠法第3条第2項の該当性について検討する。
まず,袋部の形態として,複数の略正三角錐形状の小袋部が,正面視にて上から順に逆三角形と三角形が交互に表れるように水平方向に90度向きを変えた態様で,小袋部の上下両端には,横ヒートシール部が表れ,切り込み部を介して連接したものは,意匠1に見られるとおり,本件登録意匠の出願前に公然知られたものといえる。
なお,本件登録意匠の小袋部がやや膨らみのある略三角錐形状であるのに対して,意匠1の小袋部は膨らみのない略三角錐形状であるが,立体的に捉えればどちらも略正三角錐形状といえるものであるし,商品として販売されている状態において,小袋部が,内部に入った空気によって膨れて丸みのある態様となっているものもあり,本件登録意匠における膨らみのある態様を意匠の創作として特段評価することはできない。
次に,袋部の上端にヘッダ部を備えたもので,本件登録意匠のように,ヘッダ部と袋部とが一体的に形成され,ヘッダ部の形態を,掛止用フック孔を設けた略四角形板状体とし,その上下両端には横ヒートシール部が表れているものは,意匠2に見られるとおり,本件登録意匠の出願前に公然知られたものといえる。
それから,本件登録意匠のように,複数の略正三角錐形状の小袋部が連接された袋部の上端にヘッダ部を設けたものは,意匠3に見られるとおり,本件登録意匠の出願前に公然知られたものといえる。
また,一般的にこの種の袋は,1枚の帯状シートに縦ヒートシール部を施して筒状とし,小袋部を形成するために横ヒートシール部を水平方向に施し,そこに切り込み部を設けて形成されるものであって,小袋部の形状を略正三角錐形状とするのであれば,横ヒートシール部を交互に水平方向に90度回転させて形成されるものであることは,当業者であれば熟知しているところである。
以上のことから,複数の小袋部を連接してなる包装用袋を店頭において販売しやすくするために,掛止用フック孔のあるヘッダ部を最上部に設けることは,当業者であれば意匠2や意匠3から容易に思い付くことであり,本件登録意匠の形態のうち,(あ)ないし(う)については,意匠2の袋部を意匠1の袋部に置き換えたに過ぎないものといえる。
しかしながら,(え)の縦ヒートシール部を背面視右寄りに配した態様については,意匠1の袋部にはそもそも縦ヒートシール部が表れておらず,また,縦ヒートシール部はこの種物品の製造過程において必然的に形成され,袋部の背面側に設けることが常套的な手段であるとしても,背面における具体的な位置には選択の余地があるから,この配置態様を必然的なものとはいえないし,当該態様の意匠全体に占める割合は一定程度認められるから,意匠の構成要素として軽視できるものではなく,意匠2の袋部を意匠1の袋部に置き換えることによって,縦ヒートシール部を背面視右寄りに配することができたとまでいうことはできず,また,この態様を,証拠を示すまでもなくありふれたものとはいえない。
その余の(お)ないし(く)についても,(お)の横ヒートシール部及び縦ヒートシール部の長手方向にわたり断面視波状の凹凸を形成した態様は,意匠全体に占める割合が一定程度認められるものであって,この種物品において既に見られるものであったとしても,この態様に限られるものではなく,必然的な態様とはいえず,(か)の縦ヒートシール部において帯状片の縁を含む全体が波状の凹凸に形成されている態様は,細部に係るものであるとしても,意匠全体に占める割合が一定程度認められるものであって,縁を含む全体を波状とするか否かという選択の余地があり,必然的な態様とはいえず,(き)の切り込み部及び(く)のヘッダ部の上端と最下段の小袋部の下端をギザギザ状とした態様は,意匠1や意匠2の直線状した態様とは異なるものであり,また,意匠全体に占める割合が一定程度認められるものであって,どちらもこの種物品において既に見られるものであったとしても,両態様があいまって統一感のあるものとなっているから,(お)ないし(く)の態様は,いずれも,意匠の構成要素として軽視できるものではないし,また,これらの態様を,証拠を示すまでもなくありふれたものとはいえない。
そして,請求人は審判請求時に,(か)及び(く)として挙げた態様については,何も述べておらず,(え)及び(お)として挙げた態様については,この種袋の製造過程において必然的に形成されるものである旨述べるに止まり,(き)として挙げた態様については,ありふれたものである旨述べるに止まり,意匠1の袋部及び意匠2のヘッダ部をどのように改変すれば本件登録意匠の袋部及びヘッダ部となり,その改変が容易であるのかどうかという論証がなされていない。つまり,本件登録意匠は意匠1ないし3に基づいて容易に創作することができた旨の請求人の主張は,単に(あ)ないし(う)からなる態様が容易に創作することができたといっているに過ぎない。
そうすると,意匠1ないし3の形態だけでは,(え)ないし(く)の態様を含めた本件登録意匠の具体的な構成態様には至らない,といわざるを得ない。
(2)小括
以上のとおり,本件登録意匠は,当業者が意匠1ないし3に見られる公然知られた形態に基づいて容易に創作することができた意匠とはいえず,意匠法第3条第2項に該当するということはできない。

第7.むすび
以上のとおりであって,請求人の主張する上記無効理由には理由がないので,本件登録意匠の登録は,意匠法第48条第1項によって無効とすることはできない。
審判に関する費用については,意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-05-10 
出願番号 意願2016-23814(D2016-23814) 
審決分類 D 1 113・ 121- Y (F4)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 鶴田 愛 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 正田 毅
温品 博康
登録日 2017-05-12 
登録番号 意匠登録第1578031号(D1578031) 
代理人 齋藤 晴男 
代理人 高柴 忠夫 
代理人 安部 聡 
代理人 松岡 龍生 
代理人 齋藤 貴広 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ