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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 F4
管理番号 1342062 
審判番号 不服2017-17151
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-20 
確定日 2018-07-10 
意匠に係る物品 包装用箱 
事件の表示 意願2016- 23162「包装用箱」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)10月25日の意匠登録出願であって,平成29年5月31日付けの拒絶理由の通知に対し,同年7月6日に意見書が提出されたが,同年8月10日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年11月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用箱」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,当該部分を「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用した意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,下記に示すように,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,以下のとおりである。

「包装用箱の分野において,箱の面の中央に孔を設けることは意匠1?意匠4に表される通り,当該極普通に行われているところです。そこで,この願書に表された意匠の意匠登録を受けようとする部分を観察すると,意匠5のように容器の一部が僅かに丸く面取りされた箱に対し,意匠1の正面の中央に表された円形の孔部を単に配したに過ぎませんので,容易に創作することができたものと判断されます。

意匠1(当審注:別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1207004号の意匠

意匠2(当審注:別紙第3参照)
特許庁意匠課が2006年1月12日に受け入れた
MIZUNO GOLF EQUIPMENT GUIDE 2006
第14頁所載
包装用箱の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC17060953号)

意匠3(当審注:別紙第4参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2008年4月2日に受け入れた
BRIDGESTONE GOLF GEAR 2008 SPRING
& SUMMER
第47頁所載
包装用箱の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC20004528号)

意匠4(当審注:別紙第5参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1366943号の意匠

意匠5(当審注:別紙第6参照)
大韓民国意匠商標公報 2015年9月15日15-36号
包装用箱(登録番号30-0815432)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH27437782号)」

第4 請求人の主張の要旨
審判請求人は請求書において,本願意匠と引用した意匠を対比した上で,概略以下のとおり主張した。
公知意匠1ないし4と本願意匠については,共通点に係る「縦長長方形の包装箱の一面において円形孔が設けられていること」という形態については,公知意匠1ないし4から既によくある形態であることは明白である。よって,「縦長長方形の包装箱の一面において円形孔が設けられていること」という形態は重視することができない。
一方,公知意匠1ないし4と本願意匠とでは,「円形孔が設けられている位置」が異なる。本願分野のようなゴルフボール用の包装用箱が店頭に陳列される場面では,正面が上側または正面側になるよう並べられるのが通常である。このような事情がある中,公知意匠1ないし3のように正面に円形孔を設ける場合と,本願意匠のように側面に円形孔を設ける場合とを比較すると,公知意匠1ないし3では円形孔が需要者からよく見えてゴルフボールが良く見える形で並べられるのに対し,本願意匠では,複数個陳列した場合,一番右端にだけ円形孔が見えるが,その他の包装箱では円形孔が見えずゴルフボールがその存在を主張しない状態となる。よって,本願意匠と公知意匠1ないし3とは,需要者に全く異なる全体印象を与える。また,公知意匠4のように,円形孔が設けられているのが平面左端である場合と比較すると,右側面中央に円形孔を設けた本願意匠は,「端」と「中央」とで需要者に与える美感が全く異なる。特に,蓋上部前面が円弧形状になっている関係上,右側面上部に円形孔を形成すると強度上の問題を生じる可能性がある。そこで,そのような問題を生じさせないために,本願意匠では,右側面中央に円形孔を形成している。このように,本願意匠と公知意匠4とでは,創作上の工夫においてその思考過程が異なる。
このように,円形孔の位置が異なることにより,公知意匠1ないし4と本願意匠とは意匠の骨格,全体印象,機能が全く違ったものになる以上,円形孔の位置の相違が意匠の類否に与える影響は大きい。したがって,公知意匠1ないし4は,本願意匠の創作性否定の根拠にはならない。
本願意匠と公知意匠5との「蓋部分の構成・形状の相違点」については,蓋部分というのは,需要者が包装用箱を開封して中身を取り出す際に,目で見て,手に触れる部分である。使用場面において需要者が注視する部分である以上,蓋部分の構成・形状の相違点は重視されるべきである。さらに蓋のベロ部分を差し込む形であるか,重ねられた蓋同士が糊付けされている形であるかなど,蓋部分の形状の違いにより開けやすさも異なってくるため,両意匠は機能面においても大きく相違する。外観においても,本願意匠では蓋が平面の四角と同形であるのに対して,公知意匠5の蓋は後端の左右端が円弧となっており,また,左右辺は後方に向けて内側に狭くなっている。これによって,公知意匠5の蓋の箱本体と平面において同形ではなく,蓋の左右端から箱本体が見える形状となっている。このように,本願意匠と公知意匠5の蓋形状は全く異なる。よって,公知意匠5も,本願意匠の創作性否定の根拠にはならない。
創作の観点からみても,本願意匠は「円形孔」と「正面から天面に繋がる部分が緩やかな円弧を描く形状」の両者を構成中に含めることにより,全体として丸みを感じさせ,ソフトな全体印象を与えることを,そのデザインコンセプトにしている。一方,公知意匠1ないし4は「円形孔」,公知意匠5は「正面から天面に繋がる部分が緩やかな円弧を描く形状」をそれぞれ有しているものの,その両方の要素を構成に含む意匠は公知ではなく,公知意匠1ないし5と本願意匠とでは,デザインの方向性も全く異なっている。
以上のとおり,骨格,全体印象,機能が本願意匠とは全く異なる公知意匠1及び4の円形孔を,本願意匠とは全く異なる蓋形状を有する公知意匠5の箱に当てはめても,本願意匠を容易に創作することはできない。

第5 当審の判断
以下,請求人の主張を踏まえ,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるか否かについて検討し,判断する。

1.本願意匠の認定
(1)意匠に係る物品
意匠に係る物品は,「包装用箱」である。
(2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分は,包装用箱の正面略中央部分を除いた位置,大きさ及び範囲であり,ゴルフボールを収納する包装用箱の用途及び機能を有するものである。
(3)本願部分の形状
本願部分の形状は,全体を,平面視形状を略正方形とし,正面視縦横比を約3対1とする略直方体形状としたものであり,上面は,左右側面視において正面側から背面側へ向けてごく緩やかな下り傾斜とし,上面と正面が接する稜線部は弧状面とし,右側面は,略中央に円形の孔部が形成されたものである。

2.引例した意匠の認定
(1)意匠1ないし意匠4
意匠1ないし意匠3は,意匠に係る物品をゴルフボール用の包装用箱,意匠4は包装用箱とするものであって,いずれも,包装用箱の物品分野において,箱の面の中央に孔部を設けることがごく普通に行われていることを示すために原審において引用されたものである。その引用目的の範囲で形状を認定すれば,意匠1は,図の向きを本願意匠に合わせれば,左側面の中央に楕円形の孔部を設け,正面の中央に円形の窓部を設けたものであり,意匠2は,正面の中央に円形の孔部又は窓部を設けたものであり,意匠3は,写真の向きを本願意匠に合わせれば,正面に円形の孔部又は窓部,左側面に楕円形の孔部又は窓部を設けたものであり,意匠4は,図の向きを本願意匠に合わせれば,右側面の上面寄りに円形の孔部を設け,正面の中央に三角形の窓部を設けたものである。
(2)意匠5
意匠5は,包装用箱であって,その形状は,全体を,平面視形状をやや縦長の略長方形とし,正面視縦横比を約3対1とする略直方体形状としたものであり,上面と正面が接する稜線部を弧状面とし,上面の蓋部は,正面側から背面側にかけて漸次狭まる平面視略台形としたものである。
なお,上面は,水平とし,周側面は,孔部を備えていないものである。

3.創作容易性の判断
本願部分のように全体を正面視縦横比を約3対1とする略縦長直方体形状とし,上面と正面が接する稜線部を弧状面としたものは,意匠5に見られるとおり本願出願前から既に知られたものである。
また,側面の中央に孔部を有する態様は,この物品分野において既に見られるもの(意匠1)であり,孔部の形状を円形としたものも既に見られるもの(意匠4)であるから,本願部分における右側面の中央に円形の孔部を設けた形状は,意匠として格別な創作がなされたものとはいえない。
しかしながら,本願部分の,正面から湾曲面を介したごく緩やかな下り傾斜面とした上面の形状は,意匠5に見られるものではなく,この物品分野においてありふれた形状といえるものでもなければ,ありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものといえる証拠もない。また,本願部分と意匠5における本願部分に相当する部分とは,上面の蓋部について,平面視略正方形としたものであるか,それとも略台形としたものであるか,さらに,差し込み用の係止片を備えたものであるか否かという点においても相違している。
そうすると,本願部分は,単に意匠5の右側面の中央に円形の孔部を設けた形状であるとはいえないし,その形状を,ありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものであるともいえないから,本願意匠は,当業者が公然知られた形状に基づいて容易に創作することができたものではない。

第6 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-06-25 
出願番号 意願2016-23162(D2016-23162) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 成田 陽一 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2018-07-20 
登録番号 意匠登録第1611014号(D1611014) 
代理人 宗助 智左子 
代理人 鈴木 行大 
代理人 松井 宏記 

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