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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1343052 
審判番号 不服2015-5586
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-25 
確定日 2015-07-13 
意匠に係る物品 イヤホン 
事件の表示 意願2014- 8625「イヤホン」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成26年(2014年)4月18日に意匠登録出願されたものであり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「イヤホン」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたもので,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(本願の出願前発行の刊行物に掲載された意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2008年11月28日に受け入れた内国カタログ「インナーイヤーヘッドホン New Products 2008 Autumn」第1頁所載の「イヤホン」の意匠のイヤホン軸部に設けられた突起部分(特許庁意匠課公知資料番号第HC20021694号)であって,その形態は,同カタログに掲載されたとおりのものである(別紙第2参照)。

第3 当審の判断
以下,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)を対比することにより,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行い,本願意匠が,引用意匠に類似するか否かについて判断する。
なお,両意匠の対比にあたっては,意匠に係る物品はもとより,本願が物品の部分について意匠登録を受けようとするものであるから,意匠登録を受けようとする部分として実線で表された突起部分と引用意匠のそれに相当する突起部分について,その用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲(以下,「位置等」と言う。)と,その形態を対比する。

1.両意匠の共通点及び相違点の認定
(1)両意匠の共通点の認定
意匠に係る物品は,本願意匠が「イヤホン」であり,引用意匠が「インナーイヤーヘッドホン」であるから,共通する。また,突起部分の用途及び機能については,左右一対のイヤホンを耳に装着する際の左右の識別を指先で行えるようにするためのものであるから,共通する。
そして,突起部分の位置等及び形態について,主に,以下の(A)及び(B)の点が共通する。
(A)位置について
コードの一端から軸部(コード保護部)を介して本体部が表れる左右一対のイヤホンにおいて,ともにどちらか一方の軸部側面の外側(耳挿入部とは反対向き)に表れている。
(B)形態について
ともに突起部の頂部に対して正視した場合の形状(本願においては底面図に表れる形状)が略円形状の凸状に表れている。

(2)両意匠の相違点の認定
突起部分の位置等及び形態について,主に,以下の(ア)ないし(ウ)の点が相違する。
(ア)位置について
本願意匠の突起部分は,コードの一端に軸部と本体部が一体的に側面視略L字状に表れるイヤホンにおいて,軸部の端部寄り(コード寄り)に配されているのに対して,引用意匠のそれは,コードの一端から軸部を介して本体部が水平方向に張り出すイヤホンにおいて,本体部の底部から垂直に延びる軸部の本体部寄りに配されている。
(イ)大きさについて
突起部分の高さ及び底面部の直径を,突起部分を配置した箇所の軸部の直径(当該直径は両意匠ともにコードの直径の約3倍程度の長さ(太さ)と認められる)と比較した場合,本願意匠の突起部分は,ともに約2分の1の高さ及び長さであるのに対して,引用意匠のそれは,底面部の直径が約4分の1,高さは明確には言えないものの,同等か,4分の1より少し小さく表れている。つまり,イヤホンの左右を識別するための突起部分の絶対的な大きさとして,本願意匠の突起部分は大きく表れ,引用意匠のそれは小さく表れているものと認められる。
(ウ)形態について
本願意匠の突起部分は,膨らみのある略円錐形状をした所謂砲弾形状で,その高さは底面の直径の約1.2倍の長さ(高さ)があるのに対してり,引用意匠のそれは,略半球形状で,その高さは斜めから見た図であるため明確には言えないものの,底面の直径の長さと同等か,それよりも小さく(低く)表れているものと認められる。

2.両意匠の共通点及び相違点の評価
(1)両意匠の共通点の評価
共通点(A)は,突起部分の位置について大まかに捉えたものに過ぎず,具体的に見れば,相違点(ア)として記載したとおり,軸部のコード寄りに設けたか,軸部の本体部寄りに設けたかという相違があり,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を単に大きく評価することはできない。
共通点(B)は,突起部分の形状を平面視形状で捉えたものに過ぎないから,突起部分の全体の形状を特徴付けるものとはなり得ず,共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

(2)両意匠の相違点の評価
相違点(ア)は,突起部分の位置を,軸部のコード寄りとしたものも,軸部の本体部寄りとしたものも,どちらもありふれたものではあるが,その相違は目立つものであることから,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。
相違点(イ)は,本願意匠の突起部分の大きさが,指先で摘まめる程度に突出し,軸部の外形状を構成する程の大きさと言えるものであるのに対して,引用意匠のその大きさが,指先では摘まめないような小さなものであり,あえて目立たないように小さくしたと思えるものであるから,相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点(ウ)は,左右識別のための突起部分の形状として,本願意匠の所謂砲弾形状がありふれたものではなく,略半球形状のものとは形状が大きく相違するから,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。

そうすると,両意匠の相違点は,特に相違点(イ)及び(ウ)が相俟って,かつ,相違点(ア)とともに,両意匠に視覚的に異なる印象を与えるものと言える。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品及び意匠登録を受けようとする突起部分の用途及び機能については共通するものの,同突起部分の形態及び位置等については,共通点は概括的なものであって,両意匠の類否判断を決するものとはならず,一方,相違点が相俟って生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕するものであって,両意匠に異なる美感を起こさせるものである。
したがって,本願意匠は,引用意匠に類似するものではない。

第4 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-07-01 
出願番号 意願2014-8625(D2014-8625) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤原 宗久良 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 正田 毅
江塚 尚弘
登録日 2015-08-21 
登録番号 意匠登録第1533848号(D1533848) 
代理人 特許業務法人スズエ国際特許事務所 

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