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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 F3
管理番号 1343947 
審判番号 不服2017-3155
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-02 
確定日 2017-08-25 
意匠に係る物品 ノート用紙 
事件の表示 意願2016- 4457「ノート用紙」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)2月29日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,「ノート用紙」であり,本願意匠の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」ともいう。)は,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「各拡大図においてあらわされた黒丸部が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。拡大図を含めて意匠登録を受けようとする部分を特定している。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。)(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における平成28年9月2日付けで通知した拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,「 本願意匠が属する物品分野では,用紙の表面に横罫線が引かれ,その罫線上に黒丸を配したものは,本願出願前から広く知られています(例えば,公知意匠1,公知意匠2。)。
本願意匠は,横罫線の上方右端と中央と下方左端に,単なる黒丸模様を1つずつ,表裏同一の態様で表したに過ぎませんので,この態様を考案的観点からみればともかく,視覚による美感を考慮する意匠の観点からみると,容易に創作できたものと認められます。

公知意匠1
特許庁発行の公開実用新案公報記載
昭和58年実用新案出願公開第133474号
(考案の名称:目盛り付き罫紙)第5図に表された罫紙の意匠

公知意匠2
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1492951号の意匠
(意匠に係る物品:ノート用紙)の意匠」
というものである。

第3 請求人の主張
これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。
1 本願意匠が登録されるべき理由
(1)本願意匠の創作ポイントについて
この種ノート用紙は,紙質等による書き心地はもちろんのこと,ノート用紙にあらかじめ印刷された罫線やドット等の印(しるし)の態様は,勉強や作業時等の集中力の度合いや持続性等の作業効率性,使用感等に多大な影響を及ぼす実情にあり,この種ノート用紙の需要者は,老若男女問わず幅広い使用者が対象となるが,小学校低学年等の低年齢から,大学,社会人等の大人まで,年齢層等によって使い易いと感じる罫線やドット等の印の態様は異なることから,様々な年齢層等を対象とした罫線が種々デザイン創作されてなる実情がある。係る実情に鑑みて,本願意匠の創作者は,勉強や作業時等の集中力が向上し,かつ,勉強や作業等の効率も向上することができるノート用紙であることを需要者が一見して把握でき,かつ,強く印象付けるべく,人間の心理や行動を科学的に探求して得られた知見に基づき本願意匠を創作したものである。
(2)本願意匠について
本願意匠は,意匠に係る物品を「ノート用紙」とする部分意匠であって,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分をノート用紙表裏の3箇所に形成された黒丸(ドット)とするものであり,その構成は,ノート用紙表裏の右上,中央,左下の3つのみの黒丸が略直線状に設けられてなり,また,前記3つの黒丸の内,右上と左下の黒丸は中央の黒丸よりもやや大きく形成されてなり,さらに右上と左下の黒丸は罫線上ではなく罫線の延長線上に設けられてなる構成からなるものである。
これは,本願意匠が,他と異なるものに注意が引き寄せられるという人間の視覚特性を利用するためノート用紙の3箇所のみに黒丸を設け,さらに,何かを見る場合の人間の眼球運動が「左から右へ」および「右上から左下へ」を繰り返すという性質(いわゆる「Zの法則」)があることを利用し,人間の視線を効果的に誘導し,勉強や作業時等の眼球運動の効率を促進させるために,ノート用紙の右上,中央,左下の3箇所に略直線状に黒丸を設けることでそこに人間の視線を誘導し,加えて,右上,左下の黒丸の大きさを中央の黒丸よりも大きくすることによってわずかに規則性を崩すことにより注意を引き,視線を誘導することを目的とした,人間の視線の動きを眼球運動の特性と心理面の両面から研究し,検討に検討を重ねたものであり,係る本願意匠の創作性は高く評価されるべきであると思料する。
(3)引用意匠(公知意匠)について
今回審査官が引用した公知意匠1は,昭和58年実用新案出願公開第133474号(考案の名称:目盛り付き罫紙)の第5図に表された罫紙の意匠であり,その構成は,複数行に設けられた連続点からなる罫線にその連続点と大きさの異なる点を目盛りとして等間隔に形成されてなる構成からなるものである。
また,公知意匠2は,意匠登録第1492951号(意匠に係る物品:ノート用紙)の意匠であり,その構成は,複数行に設けられた罫線上に小さい黒丸が形成され,罫線の延長線上にも前記黒丸と同じ大きさの黒丸が形成されてなり,罫線同士の行間に罫線上に形成された黒丸よりもさらに小さい黒丸が格子状に多数形成されてなる構成からなるものである。
(4)本願意匠の創作性について
本願意匠と引用意匠とを対比すると,本願意匠がノート用紙の他の箇所に存在しない3つのドットを他の箇所から強く際立たせて形成している点において特徴的であるのに対し,引用意匠1及び引用意匠2は何れも用紙全体に渡って等間隔に黒丸又は空白が,目立たないよう認識できる程度の大きさで配置されたものであって,何れかの黒丸が際立って目立つ構成ではないため,公知意匠1または公知意匠2から,若しくは公知意匠1と公知意匠2を組み合わせたとしても本願意匠の構成にはならないことから,これらの公知意匠にあらわされた構成とまったく異なる,特徴的で斬新な構成を備えた本願意匠の創作性は高く評価されるべきであると思料する。
仮に,用紙全体に黒丸が形成された引用意匠から一部を取り出して黒丸の配置パターンや大きさを創作するとしても,多種多様で無数の選択肢がある中で本願意匠の黒丸の数,大きさ,位置関係に配置することは一意に決まるものではなく,創意工夫の余地が認められるものであることから,本願意匠が当業者にとってありふれた手法によって創作された意匠であるとは到底考えられない。
また,本願意匠は,右上,中央,左下に略直線状に,かつ,用紙の中央を中心として大きな黒丸が形成されてなり,右上,左下に形成された黒丸は罫線上ではなく罫線の延長線上に形成されているのに対し,公知意匠1には該当する箇所にそのような黒丸が形成されておらず,また,公知意匠2にあらわされた黒丸は何れも本願意匠よりはるかに小さく,本願意匠のような大きさ,位置に黒丸を配置することの示唆もなく,また,仮に公知意匠1と公知意匠2を組み合わせたとしても本願意匠の構成にはならないことから,これらの公知意匠に接した当業者が本願意匠を容易に創作できたとは到底考えられない。
さらに,本願意匠に形成された3つの黒丸は,上述したように右上,左下の黒丸が中央の黒丸よりもやや大きく形成されてなることでわずかに規則性を崩し,人間の視線を誘導する目的で創作されたものですが,引用意匠にあらわされた罫線上のドットは,使用時の目盛りの役割のために設けられたものであり,本願意匠とは機能・目的が異なることから上記のような配置や形状の違いが生じているため,そもそもの目的(デザイン思想)が異なる引用意匠から本願意匠を創作することがありふれた手法とは到底認められず,本願意匠を容易に創作できたとするには無理があるものと思料する。
(5)むすび
よって,本願意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作することができたものとはいえず,意匠法第3条第2項の規定に該当しない。

第4 当審の判断
請求人の主張を踏まえ,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠が容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。
1 本願意匠
本願は,意匠に係る物品は「ノート用紙」であり,その形態は,前記第1のとおりのものである。すなわち,本願意匠は,具体的には,(イ)全体は,略縦長長方形状の表裏面からなる罫線の引かれた表裏面同態様のノート用紙とし,(ロ)円形の点を全体の上方(上から約4分の1)の罫線上の右端の位置に一つ,略中央(上から約9分の5の左右約等分)の罫線上の略中央位置に一つ,下方(上から約11分の9)の罫線上の左端に一つ,合計3つ設けて(ハ)中央の円形の点より左右端の円形の点は僅かに大きいものとしたものである。
2 公知意匠1
公知意匠1の意匠に係る物品は「目盛付き罫紙」であり,その形態は,略縦長長方形の用紙に,極小の略円形の点及び大きな略円形の点を横一列に配し,6列,ほぼ等間隔に用紙上に配置したものであって,各列は,列の両端に大きな略円形の点が配されるように大きな略円形の点を8個ほぼ等間隔に配し,大きな略円形の点の間に極小の略円形の点を等間隔に4つずつ配したものである。
3 公知意匠2
公知意匠2の意匠に係る物品は「ノート用紙」であり,原審が引用したのは,ノート用紙裏面を除いた表面全体の部分であって,その形態は,略縦長長方形状の用紙上の上端寄りに1本見出し用の横線を設け,少し間隔を空けて,下方に31本の横線(罫線)を等間隔に配し,下端及び左右両端は,各罫線間の長さ(行幅)よりやや幅がある程度の余白を設け,各罫線については,上下両端の罫線については,左右両端を除いて,線上に行幅と同じ長さの間隔でごく短い縦線(目盛)が配され,その内,5目盛ごとにやや大きな円形の点が配されてなり,その他の罫線は,左右両端を除いて,線上に行幅と同じ長さの間隔で円形の点が設けられ,罫線と罫線の間には,罫線上の点も含めて5×5となるように上下等間隔に極小の円形の点が(点方眼状に)埋めるように配置され,上から5本目ごと罫線には,左右端近傍にやや大きな円形の点が表されてなるものである。
4 本願意匠の創作容易
本願は,意匠に係る物品は「ノート用紙」であり,その形態は,前記第1のとおりのものである。
物品の部分の意匠における創作容易性の判断については,当該部分の形態が,当該意匠登録出願前に公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであるか否かを判断すると共に,当該部分の用途及び機能を考慮し,「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において,その位置,大きさ及び範囲とすることが,当業者にとってありふれた手法であるか否かを判断することにより行うべきところ,
本願意匠部分の用途及び機能は,ノート用紙として,記入する,あるいは,記入内容を確認する上での目印としての用途であって,その記入する,あるいは,記入内容を確認する上で視認性を高める機能に係るものと認められる。
本願出願前に「ノート用紙」の物品分野において何らかの目印を記載して,
その記入や確認の用に役立てるものは,本願出願前にもごく普通に行われているものであって,格別の機能用途に係るものであるとまではいうことはできない。
次に,位置,大きさ及び範囲について検討すると,その,大きさ及び範囲については,ノート用紙の物品分野において,ノート用紙上に用いられる目印の円形の点としては,例示するまでもなく,ごく普通に見受けられる程度の大きさであり,そのノート用紙の全体の中で占める範囲についてもノート用紙に用いられる円形の点としてごく普通に見受けられる程度のものである。
しかしながら,その位置については,ノート用紙上の多数の罫線のうち,表裏面の上方の罫線の右端,略中央の罫線の略中央,下方の罫線の左端に1つずつ配されたものであって,物理的に離れた意匠登録を受けようとする部分ではあるものの,相似形の円形の点であって,一体に創作された1の意匠と認められる。そして,このような,上方の罫線の右端,略中央の罫線の略中央,下方の罫線の左端の位置に1つずつ配された相似形の円形の点については,引用意匠(公知意匠1及び公知意匠2)には表されておらず,他にも見受けられない本願意匠部分独自のものと認められる。
そして,本願意匠部分の形態については,上記1に記載したとおり表裏面それぞれ3つ(併せて6つ)の円形の点であって,中央の円形の点より上方右端及び下方左端の円形の点が僅かに大きく形成されているものであるが,点を円形とした点については,この種「ノート用紙」の物品分野において,目印として記載される形態自体としては,ごく普通に見受けられるありふれた形状であって,様々な大きさの円形点についてもこの種「ノート用紙」の物品分野において,ごく普通に見受けられるものであるから(公知意匠1及び公知意匠2)各点を円形としたことについて,また,小さな円形点及び僅かに大きな円形点を目印として用いたことについては格別の創作を要したものとは認められないところ,本願意匠部分は,上記(イ)に記載したように表裏面同態様のものであるが,この種「ノート用紙」の物品分野において,表裏面同様の位置に配することはノート用紙に係る物品分野の基本的態様としてごく普通に見受けられる態様であって,この点については,格別の創作を見いだすことはできないものの,上記(ロ)に記載のとおり,円形の点を表裏面の全体の上方の罫線上の右端の位置に一つ,略中央の罫線上の略中央の位置に一つ,下方の罫線上の左端に一つ,設けた態様については,引用意匠(公知意匠1及び公知意匠2)からは見ることができない態様であって,他によく見受けられる態様とはいえず,また,(ハ)ついて,「ノート用紙」の物品分野において,罫線上に円形の点を設けること及び罫線上に大小の点を混在して配することは,公知意匠1に見られ,また,同じノート用紙内に小さな点が設けられている罫線及び大きな点が設けられている罫線を配することは公知意匠2に見られるから,それぞれ,本願出願前に見受けられる手法であるとしても(ロ)に示すような各円形の点の配置が大きく離れているものについて,中央の円形の点より左右端の円形の点を僅かに大きいものとしたものである点は,公知意匠1及び公知意匠2には見受けられず,上記(ロ)とあいまって,共に本願意匠部分の独自の特徴であるといえる。
よって,本願意匠部分の用途及び機能とすること,また,「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において,その大きさ及び範囲とすることが,当業者が公然知られた意匠に基づいて容易に想到することができたものであり,本願意匠部分の形態自体がごく普通に見受けられる態様であって格別の創作を要したものではないとしても,本願意匠部分の位置については,独自のものであって,本願意匠部分の形態を本願意匠部分の位置,大きさ及び範囲としたことによる具体的態様については,独自の態様を創出したものというべきであるから,(イ),(ロ)及び,(ハ)からなる本願意匠部分は,意匠全体としては,公知意匠1及び公知意匠2に基づいて容易に想到することができたものとはいえない。
したがって,本願意匠部分は,当業者であれば,公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作することができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の拒絶の理由によっては,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときに該当しないので,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2017-08-10 
出願番号 意願2016-4457(D2016-4457) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (F3)
最終処分 成立 
前審関与審査官 木本 直美上島 靖範 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 正田 毅
渡邉 久美
登録日 2017-09-15 
登録番号 意匠登録第1587600号(D1587600) 
代理人 石井 隆明 
代理人 藤本 昇 
代理人 野村 慎一 
代理人 藤本 昇 
代理人 石井 隆明 
代理人 野村 慎一 
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