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審決分類 審判 査定不服  工業上利用 取り消して登録 H7
管理番号 1343948 
審判番号 不服2018-4746
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-06 
確定日 2018-07-31 
意匠に係る物品 誤操作防止機能付き電子計算機 
事件の表示 意願2017- 2537「誤操作防止機能付き電子計算機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
平成29年 2月10日 意匠登録出願
平成29年 6月16日付け 拒絶理由通知書
平成29年 8月 4日 意見書
平成29年 8月 4日 手続補正書
平成29年 9月21日付け 拒絶理由通知書
平成29年11月 6日 意見書
平成29年11月 6日 手続補正書
平成29年12月22日付け 拒絶査定
平成30年 4月 6日 審判請求書

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとするものであり、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「誤操作防止機能付き電子計算機」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって、願書の「意匠に係る物品の説明」及び「意匠の説明」には、以下のとおり記載されている(別紙第1参照)。
(1)意匠に係る物品の説明
本物品の正面図表示部に表れる画像は、「カメラ設定」や、「画面設定」、「通話設定」など機器の基本機能の設定変更が可能な電子計算機の、設定画面の誤操作防止のための画像である。左下隅に表れる隅丸矩形ボタンをタッチすることにより、設定画面の表示状態を入力不可状態から入力可能状態に切り替えて、設定画面の操作が可能となる。当該画像は、非操作時に不用意に設定が変わらないよう、設定画面を表示しただけではタッチ入力ができず、ユーザーが当該操作ボタンをタッチすることにより、画面の表示状態が入力不可状態から入力可能状態に切り替わり、ユーザーが、当該ボタン以外の他の領域をタッチすると「変化状態正面図」に黒及び灰色で表す通り、現在表示中の画像が透過して見える程度に、画面全体を暗転するとともに、操作ボタンから光が拡散するように、当該ボタンを重畳した明調矩形を徐々に拡張させ、ユーザーを視覚的に画面表示の入力状態切替操作のためのボタンに誘導する。前記画面の暗転及び明調域の拡張は、一時的に表出した後、元の状態の画面に戻る。
(2)意匠の説明
破線で表された部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。「正面図」及び「変化状態正面図」中、固定の隅丸矩形濃灰色部分以外の、薄灰色部分及び黒色部分は、表示中の画像が透けて見える程度に透明度を有し画像に重なって表れる。また、「使用例参考正面図」及び「変化状態の使用例参考正面図」1、2において、六面図各図及び「変化状態正面図」1、2に表された図形以外の図形、色彩等は、本物品の使用の一例を説明するためだけに表したものである。「底面図」は「平面図」と、「左側面図」は「右側面図」と、夫々同一に表れる。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由(平成29年9月21日付け拒絶理由通知書)は、本願意匠が、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないとしたものであって、具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録出願の『意匠に係る物品の説明』では、『本物品の正面図表示部に表れる画像は、「カメラ設定」や、「画面設定」、「通話設定」など機器の基本機能の設定変更が可能な電子計算機の、機器設定変更画面の操作のための画像であって、』と記載されており、当該記載によれば、正面図等に表された画像は、『カメラ設定』や、『画面設定』、『通話設定』など機器の基本機能である複数の機能の設定変更の際に共通して用いられる画像であり、画像を操作することにより発揮することができる機能が、『カメラ機能』、『通話機能』等のうちいずれであるか特定することができません。『意匠に係る物品』についても、『機器設定変更機能付き電子計算機』は抽象的であり、設定が変更される物品の機能(カメラ機能、通話機能等)を特定することができません。
また、『意匠に係る物品の説明』において、『本物品の正面図表示部に表れる画像は、「カメラ設定」や、「画面設定」、「通話設定」など機器の基本機能の設定変更が可能な電子計算機の、機器設定変更画面の操作のための画像であって、』・・・『画面表示状態が入力不可状態から入力可能状態に切り替わる機能において』・・・『表示中の画面全体が、現在表示中の画像が透過して見える程度に暗転するとともに、』と記載されており、『意匠の説明』では、『「背面図」及び「変化状態背面図」中、固定の隅丸矩形濃灰色部分以外の、薄灰色部分及び黒色部分は、表示中の画像が透けて見える程度に透明度を有し画像に重なって表れる。』と記載されており(当審注:平成29年9月21日付けで拒絶の理由を通知したときは願書の「意匠の説明」に「背面図」及び「変化状態背面図」と記載されていたが、同年11月6日の手続補正により『正面図』及び『変化状態正面図』に変更された。)、これら記載内容によると、正面図等に表された画像は、カメラ設定等の画像に重なるように、一部透過状態で表示されるものを意図したものと認められます。
他方、添付図面の『正面図』には、意匠登録を受けようとする部分内には薄灰色のボタンのみ表されていることから、無地の表示部にボタンが一つ表示された画像と認められます。同様に、『変化状態正面図1』、『変化状態正面図2』も、無地の表示部に重なるように、ボタンや暗転部、明調矩形部が表示された画像と認められます。
そうすると、この意匠登録出願の意匠は、カメラ設定等の画像中に重ねて表示されるものであるとの願書の説明の記載と、無地の表示部に重ねて表示された状態を表した添付図面の記載が一致せず、一の意匠を導き出すことができないため、具体的なものとは認められません。
なお、意匠法においては、物品を離れた画像そのものではなく、画像が表された表示部について、物品の部分として意匠登録を受けることができます。複数の画像が透過状態で重ねて表示される場合にも、重なった状態が一つの画面として物品の一定の領域を占める部分を構成するため、そのうちの一つの画像のみ取り出し、意匠登録を受けようとする部分とすることはできません。意匠登録を受けようとする部分の領域内のうち、図形が表されていない部分は、何も図形が表されていないものと認定されます。」

第4 当審の判断
以下、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するか否かについて検討する。

1 本願意匠
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する(別紙第1参照)。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は「誤操作防止機能付き電子計算機」である。
(2)本願物品の用途及び機能
前記第2(1)の「意匠に係る物品の説明」、及び願書に添付した図面中の「使用例参考正面図」「変化状態使用例参考正面図1」及び「変化状態使用例参考正面図2」によれば、本願物品は、左下隅のボタンをタッチすることによって、設定画面の表示状態を入力不可状態から入力可能状態に切り替える機能を有し、また、他の領域をタッチすることによって、使用者(ユーザー)を視覚的に当該ボタンに誘導する機能を有している。これらの機能により、本願物品「誤操作防止機能付き電子計算機」の「カメラ設定」「画面設定」「通話設定」などの機器の基本機能を設定する画面の誤操作防止を行う用途を有している。
すなわち、左下隅のボタンはいわゆるロック解除ボタンであって、そのボタンにタッチしない限り機器の基本機能を設定する画面には移行せず、そのボタン以外の領域をタッチする(誤操作)と、当該領域がロック解除ボタンではないことが視覚的に示され、使用者は左下隅のボタンをタッチするように誘導される(誤操作防止)。本願物品は、このような機能が付加された電子計算機であると認められる。
(3)表示部に表示された画像
本願物品の正面の表示部に表示された縦長長方形状の画像(以下「本願画像」という。)は、本願物品の上記付加機能を発揮できる状態にするために行われる操作の用に供される画像であり、また、本願画像が、本願物品に表示される画像であること、本願物品に記録された画像であると推認できること、及び画像を含む本願物品が意匠法の対象とする物品と認められることから、本願画像は、意匠法第2条第2項に規定する画像(操作画像)を構成するものであると認められる。
本願について部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、本願画像であって、願書に添付した図面中の「正面図」「変化状態正面図1」及び「変化状態正面図2」において、破線で表された部分以外の部分である。なお、「正面図」の左下隅のボタン以外の領域は、前記第2(1)「意匠に係る物品の説明」に記載された「他の領域」であり、同説明によれば使用者がタッチできる領域であると認められる。
(4)本願画像の用途及び機能
本願画像の用途は、左下隅に表されたボタンを選択して機器の基本機能を設定する画面に移行すること、及びそのボタン以外の領域を選択したときに左下隅のボタンを選択するように誘導することであり、また、本願画像の機能は、設定画面の表示状態を入力不可状態から入力可能状態に切り替える機能(左下隅のボタンの機能)と、使用者に対して左下隅のボタンを選択するように誘導する機能である。
(5)本願画像の位置、大きさ及び範囲
本願画像は、全体が平板状である本願意匠において、正面下端寄りを除く正面のほぼ全域の位置にあり、本願意匠の正面縦幅の約1/1.2、正面横幅の約1/1.2の大きさ及び範囲を占めている。
(6)本願画像の形態
ア 本願画像の外形状
「正面図」「変化状態正面図1」及び「変化状態正面図2」における本願画像の外形状は、縦横比が約9:5である縦長長方形状である。
イ 「正面図」における本願画像の形態
左下隅に、略角丸横長長方形の小さいボタンが表されており、その縦幅は本願画像の縦幅の約1/23、横幅は約7.6である。
ボタンは濃灰色で表されている。
ウ 「変化状態正面図1」における本願画像の形態
左下隅に、「正面図」と同様の小さいボタンが表されており、ボタンの外周線が白く表されている。
ボタンの周りに薄灰色の略角丸横長長方形領域(以下「周囲部1」という。)が表されており、周囲部1の縦幅はボタンの縦幅の約1.5倍、横幅は約1.4倍である。
ボタンと周囲部1以外の領域は黒色で表されている。
エ 「変化状態正面図2」における本願画像の形態
左下隅に、「正面図」と同様の小さいボタンが表されており、ボタンの外周線が白く表されている。
ボタンの周りに薄灰色の略角丸横長長方形領域(以下「周囲部2」という。)が表されており、周囲部2の縦幅はボタンの縦幅の約4倍、横幅は約3.6倍である。
ボタンと周囲部2以外の領域は黒色で表されている。
オ 参考図について
本願の願書には、意匠の理解を助けるための参考図(意匠法施行規則様式第6備考14)として、「使用例参考正面図」「変化状態使用例参考正面図1」及び「変化状態使用例参考正面図2」が添付されている。これらの参考図にはF値の設定が表示されており、願書の「意匠に係る物品の説明」に「カメラ設定」や、「画面設定」、「通話設定」など機器の基本機能の設定変更」と記載されているから、この中の「カメラ設定」が示されていると認めることができる。そうすると、これらの参考図は、機器の基本機能の設定の一例を示すのみであって、本願物品は、他の基本設定、例えば「画面設定」や「通話設定」などの設定がなされる場合があるということができる。そして、前記(4)で認定したとおり、本願画像においては、左下隅に表されたボタンを選択して機器の基本機能を設定する画面に移行するので、参考図に示された機器の基本機能を設定する画面は、本願画像に対する操作後の画像、本願画像の用途及び機能とは異なる画像であると認められる。
また、願書の「意匠に係る物品の説明」には「ユーザーが、当該ボタン以外の他の領域をタッチすると「変化状態正面図」に黒及び灰色で表す通り、現在表示中の画像が透過して見える程度に、画面全体を暗転する」と記載されており、「変化状態使用例参考正面図1」及び「変化状態の使用例参考正面図2」では黒色領域と薄灰色領域の背後に機器の基本機能を設定する画面が透けて見えているところ、この機器の基本機能を設定する画面には様々なものがあり得ることは上述のとおりであり、その背後の画面の濃淡や色彩によって透けて見える態様も様々であるので、この2つの参考図に示されたものは、透過の態様の一例にすぎないことは明らかである。加えて、参考図は意匠の理解を助けるためのものであって、意匠を構成するものではないから、2つの参考図に示された機器の基本機能を設定する画面は、本願画像を構成するものではない。

2 工業上利用性の判断
画像を含む意匠として意匠登録出願されたものが、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するためには、それが意匠を構成するものであって、その意匠が具体的なものであり、工業上利用することができるものでなければならないと解せられる。
そこで、本願画像について検討すると、前記1(3)で認定したとおり、本願画像は意匠法第2条第2項に規定する画像(操作画像)を構成するものである。そして、前記1(4)及び(5)で認定したとおり、本願画像の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は具体的なものであり、形態についても、前記1(6)で認定したとおり具体的であると認められる。さらに、本願画像を含む意匠に係る物品は「誤操作防止機能付き電子計算機」であるから、本願画像が工業上利用することができるものであることはいうまでもない。
そうすると、本願画像は、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するといわざるを得ない。
原審の拒絶の理由において、審査官は、「この意匠登録出願の意匠は、カメラ設定等の画像中に重ねて表示されるものであるとの願書の説明の記載と、無地の表示部に重ねて表示された状態を表した添付図面の記載が一致せず、一の意匠を導き出すことができないため、具体的なものとは認められません。」と判断したが、本願画像の用途及び機能並びに形態が具体的なものとして特定されていることは上述のとおりであり、また、前記1(6)オで摘示したとおり、2つの参考図に示されたものは透過の態様の一例にすぎず、2つの参考図に示された機器の基本機能を設定する画面は本願画像を構成しない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-07-18 
出願番号 意願2017-2537(D2017-2537) 
審決分類 D 1 8・ 14- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 智加 
特許庁審判長 木本 直美
特許庁審判官 小林 裕和
宮田 莊平
登録日 2018-09-07 
登録番号 意匠登録第1614673号(D1614673) 
代理人 阿部 琢磨 
代理人 黒岩 創吾 

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